大人二次小説(BLGL・二次15禁)

Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.48 )
日時: 2022/01/06 00:55
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』




恋とは、愛とは、一体どんな物だろうか。
それは渇望なのか、依存なのか、…或いは、執着なのか。
ずっとそれを、答えを、探している。
しかし未だ、分からないままだ。



昼休み半ば、人の居ない場所を求めて屋上への階段を登る。そしてドアノブを回すと、飛び込んでくる強い光に思わずぎゅっと眉間に皺が寄った。
無理矢理目を開くと、先には雲ひとつない青空。綺麗だな、と思うよりも先に、何か嗅ぎ慣れない匂いが鼻をついた。
その匂いの方を向くと、同じように空を見上げて座るよく知った人間が居る。しかし手に持つ匂いの元は、こいつには、というよりも高校生には似つかわしくない物だった。

「…る、い。それ、煙草…?何で…」

「司くん……あーあ、バレてしまった」

口ぶりとは裏腹に、ふふ、と笑った。そしてまた煙を吐き出すばかりで、悪びれる様子もない。

「そんな物、どうやって買ったんだ」

「ん?ああ…身長があるからね、マスクでもして黙りこくっていれば、案外成人と変わらないらしい」

そう言う類の煙草を咥えた横顔が、大人びてやけに官能的に思えて、目が離せなかった。
ふと目線を下げ、足元の地面に煙草を押し付ける。見ると随分短くなっていて、これで一本の吸い終わりらしい。じゅ、と音を立てて火を消し、携帯灰皿の中に入れてパチンと釦を閉めた。
そしてゆっくりと此方を見上げ小さく微笑むので、少し尻込みしながら口を開く。

「どうして喫煙なんて…何をやっているんだ」

「見る度毎回違う女の子を連れている君にだけは言われたくない」

変わらず優しい笑顔は崩さないのに何処か冷たい声色で、その威圧感に言葉が見つからず、ただじっと見下ろす。

「街中を歩いているとよく見かけるんだ。えむ君や寧々にも悟られないように、離れた所の他校で上手くローテ回しているようだけれど。君こそ何をやっているんだい?」

「それ、は…」

なるだけ目立たないように気を付けてはいたが、それでもひた隠しにしていた訳ではなかったので、いつか何処かで、誰かに突かれる事は覚悟はしていた。しかしそれが類では、些か相手が悪い。察しが良く、油断をすれば腹の中を、汚い中身を全て見透かされてしまうような心地がする。…なんて、第一そんな事をしている自分が本当に、全面的に悪いのだけれど。
此方を見る切長の黄色がすっと細まった。まるで品定めをするように、どう何を言うかを待っている。しかし一向に喋らない俺に、少し呆れたように溜息を一つ吐いた。

「はあ…じゃあ、こうしよう」

「え?」

「お互いに話す、糾弾もしない。それならどうだい?」

その提案にこくりと頷き、類の横に座る。そして少しの沈黙の後、じゃあ僕から、と、また煙草一本とライターを取り出した所で、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。しかし聴こえている筈のそれが聴こえない振りだけ通じ合い、類は燻らせながら話を始めた。

Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.49 )
日時: 2022/01/02 10:55
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』2


それから、類は色々な事を教えてくれた。
初めては高校に入って半年位の頃だったとか、常に必要な訳ではない、それでもあると頭が冴える気がする、とか。きっかけは、自棄になった時の縋るような思いと好奇心だった、なんて事も。

「苦しい事が重なって泥沼に嵌った時、どうにか外に出したくて目をつけた。今でも良さは分からないけれど、一度覚えたら何となく、あとはずるずると」

喫煙に走る理由なんて、成人も未成年も幾らだってあるけれど。それでも類のこれは、一人で抱えるにはあまりに大き過ぎる物だったんじゃないか、なんて少しだけ同情を向けてしまった。

「…つまりね、蟠って仕方がなかったんだよ。しかもそれは大抵が余計な事だった。ありもしない不安に掻き立てられて、遂にはこんな物に手を出した大馬鹿者さ」

トン、と煙草を灰皿に軽く叩きつけ、灰を落とす。そして目を伏せた後は、感傷的なようで、諦めや呆れとも取れるような乾いた笑いを薄く開いた唇から漏らした。

「…それを、どうして俺に話してくれたんだ」

「君の理由が知りたい、それだけだよ。もう見られてしまったし、秘密は片方が暴くんじゃあフェアじゃないだろう?」

「そこまでして知りたい事なのか」

「ああ。…女の子と並んでいる君が、後ろめたいような顔をしていたから。何か訳ありなのかと思ってね」

そう言って此方を覗くように見るこいつは、やはり鋭い。だが期待される程の話は持ち合わせていない上、自分でも矛盾だらけでぐちゃぐちゃだと思う。それを話すのは正直抵抗がどうしても拭えないが、提案を飲み込んで類に曝け出させた以上は此方も腹を括らなければならない。
類が君の番だよ、と促すので、震えた口で軽蔑しないでくれ、と告げる。するとまだ吸う部分の残っている煙草を灰皿に仕舞い、真面目な顔になって聞く姿勢を整えたようだった。

「…恋や愛が、知りたかったんだ。普通の人の言うそれが、どうしても分からなくてな」

「へえ。君はてっきり、そういう情に溢れた人間だと思っていたよ」

意外そうに目を丸くする類に、此方もつられて少しだけ目を見開く。
そんな風に思われていたのは、知らなかった。直接言われた事がなかったし当たり前と言えば当たり前だが、それでもそういう考え方等は、自分の行動や言動に滲み出ている気がしていたから。
実際、何か相手に淡白な返答をしてしまった時に、内心慌てながら繕おうとした事もあった。しかし案外、自分が心配するよりも周りには伝わっていなかったらしい。

「家族が大切だとか、お前達…仲間が大切だとか、そういうのはあるんだ。だからこれも続けていればいつか分かるだろうかと思って、女性からの誘いを断る事もしなかった」

告白をされれば一緒に過ごしてみるが、距離が近くなるといつも、「笑ってくれるし優しくしてくれる。でも何処か上の空で、用意された台詞を読み上げているだけにも感じる」というような事を言われ、興味を持てていない事を悟られて振られてしまう。そして気付けば、特定の相手を作る事も辞めていた。

「…成程。自分から誘う事もあるのかい?」

「いや。言われたら会って、食事をして、…抱き合って、終わったら帰るだけだ。次の約束もしない」

「体の関係もあるんだね。深く、相手を知る為?」

ああ、と一つ頷いて見せる。最初躊躇していた割にするすると言葉が出てくる自分の口に若干戸惑うが、もう止められなかった。まるで意識とは別に切り離されたように、本当は話すつもりなんてなかった事まで底から這い上がって、喉を通って声になっていく。

「熱くて、柔らかくて、気持ち良いんだ。優しくしてやれば、それなりの反応も返ってくる。なのに、心から欲しいとは、少しも思えた試しがない。
そういう事も俺からは働きかけないから、いつも体目的だとすら思われずに終わる」

しかし偶に、そういう事に気付かない相手にまた好意を持たれると、その度に息苦しくなった。なるだけ丁重に断るが、自分以外にも相手が居るのだと最初から知っている女性は強い。「何番目でも良いから」と受け入れる振りで、自分だけが付き合えている、なんて優越感が欲しいのが丸見えだった。そしてその瞬間に、元々冷めていた心が一気に凍るように、気持ち悪くて堪らなくなる。




Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.50 )
日時: 2022/01/04 11:18
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』3



「話を聞く限りすごく辛そうだけれど、どうしてそこまで固執するんだい?」

「周りが、本当に幸せそうだったんだ。笑顔でいっぱいになっていた。それと同時に、自分が空っぽな人間だったのを痛感した。それで、…このまま空っぽで居るのが、怖くて仕方がなくなった」

相手の事が好きなのだと言い聞かせて、最中愛を囁いてみたりもした。しかし言ったそばから後悔し「らしくもない」と心の中で吐き捨て、相手にさえそう言われる始末。建前の嘘は体に毒である事を知った。
結局、どう足掻いても駄目だった。このまま、漠然と恐怖を抱えて生きるしかないのかと思った。否、今でも変わらず、ずっとそう思っている。
そこまで話して漸く類の方を見ると、寂しげな笑顔を此方に向けていた。

「…うん、大体分かったよ、有難う。もう出会ってそんなに浅くないのに、僕は君の事を全然知らなかったんだね」

「そうだな…本当に、その通りだ」

突き放すように冷えた言葉が口から出てしまうのは、そんなものお互い様だと少しだけ苛立ったから。類がこんなに大きな物を抱えているなんて知らなかった。今までどれだけ我慢していたのか、話を聞いてもまだ想像がつかない。そしてその事実が何だか酷く虚しく思えて、同時に少しだけでも良いから知りたいと、柄にもない事が頭を過ぎり、困惑する。
…知りたい?こいつを?
どうして。
好きになる努力をする為、以外に自分から誰かを知りたいなんて、一度も思った事がなかった。寧ろ、好きになろうとした相手にすら、壁を作っていた位だ。
憐れみなのか、仲間だからなのか、或いは、こいつだからなのか。
もしもこいつだからなのだとしたら、それなら。

「なあ、類。俺と付き合ってくれ」

考えた直後、一度言葉を飲み込む事も出来ずに勢いのままぽん、と口から出たのはそんな告白だった。しかし告白と言うにはあまりに呆気なく、日常のどうでも良いような会話にも溶け込んでしまいそうな程の熱量。こんなに面倒臭そうな態度で言う人間が他に居るだろうかと、自分でも思ってしまう。少し気不味さを感じるが、しかし全て話してしまった後にあれやこれやと言い訳をするのも、かえって胡散臭くなるような気がしてそのまま黙った。
類の方を見ると、驚くでもなくただ変わらない真顔で此方を見つめている。

「それはまた突飛な話だ。どうして?まさか本気で好意がある訳ではないだろうし」

「俺にも、まだ分からない。だがお前に、愛されてみたいと思った」

此方に向けた黄色が、ぴくりと一瞬だけ見開かれる。が、すぐに眉を顰めながら口角を上げた。

「ふ、随分奥ゆかしい口説き文句だ」

「人に交際を申し込む理由は、優しいからとか、愛しいとか、そんなものでなければ駄目なのか?…駄目なら、もっともらしい事も言えるが」

確かにそうだね、と俯いて、再び灰皿を手に取り先程押し込んだ残りの煙草に火を点ける。そして少しの沈黙が流れ、良い加減焦ったくなって此方からまた何か言おうかと思った頃、類が漸くじゃあ、と切り出した。

「君のセックスフレンド全員切るなら構わないけれど」

冗談めかすように言う類に、分かった、と一言、携帯をポケットから出して一人一人電話帳や履歴から削除していく。元々連絡先を交換する程何度も会う相手も少なかったからそんなに時間はかからなかった。
家族や仲間以外の女性の名前がなくなって、すっきりとした画面を類の眼前に差し出す。

「ほら、これで良いか?」

「まさか本気だったとはね。それにしても、最後に何か一言位なくて良かったのかい?」

「連絡がつかなくなったら終わりだと前々から言ってある。それに、理解が得られる相手としか、繰り返し会ったりなんてしていない」

こういう事をするからこそ、絶対に忘れてはいけない引き際や必要な言葉もあると考えていた。それは全て自ら嵌めた枷だったけれど、そのお陰でこういう場面にもすぐに対応が出来るのだから、あながち間違い等ではなかったのかもしれない。
ふと類が自分の携帯を出し、時計を確認してからまたすぐに仕舞う。その後隣に座る俺の指と自分の指を絡めながら、くすりと笑うのだ。

「…どうする、司くん。次もサボってしまうかい?」

授業終了まではまだ時間があるようだったが、きっとこいつは"そういうつもり"で言っている。言葉程の熱は感じられないものの、その目には確かに俺への興味や少しの期待が滲んでいて。
すっと立ち上がり、類の方に向き直る。そして、なんて叙情的な誘いだと、皮肉っぽく言ってみせた。

Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.51 )
日時: 2022/01/06 12:25
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』4



空き教室の隅、ちゅ、と唇の重なる音が響く。静か過ぎるこの空間では、そんな小さな音すら激しく鼓膜を揺らすようで、何だか落ち着かない。
舌で相手の唇をこじ開け、そのまま強引に口内へと滑らせる。すると腰を抱く類の手にびくりと力が入り、そのままぐっと握って必死に刺激を逃そうとした。
絡める舌から独特な葉の香りや苦味が広がる。いつもなら嫌悪感しか湧かないこんなキスも、気持ち良いとか、好きだなんて到底言えないけれど、それでも自分から仕掛けた上、この煙草の味も含めて嫌でない事だけは鮮明だった。
また「らしくもない」と言われてしまうだろうか。そんな余計な事を考えながら口を離すと、類は薄く色付いた頬で喘ぐように酸素を取り込む。

「は、っふ…流石、キスも慣れているね」

「適当を言うな、舌噛むぞ」

「ふふ、それは恐ろしい」

少しも思っていないだろうにわざとらしく肩をすくめる類が癪に障って、思わず眉間に皺が寄る。
何だか今日は苛立ってばかりだ。そもそも誰と居ても、こんな風に感情が動く事があまりない。まして誰かの為ではなく誰かのせいで、自分だけの感情で怒ったりするなんて尚の事。普段と違う、自分が乱されていく感覚が、不思議な気分だけれど、これも大して嫌だとは思えなかった。そして嫌だと思えない事が、何より一番不思議で仕方がなかった。
類の手が制服の中へと入り肌を撫で、擽ったさで少し体が跳ねた。しかしそれ以上は何もせずに素直に手を離され、何だと思い訝しげに見つめる。

「そうだ司くん、脱がせて」

「何故だ、自分で脱げ」

「後学の為だよ」

「何の」

「勿論、君に触れる事の。普段女の子にするみたいに、やって見せて欲しいな」

お願い、と両手をぎゅっと握られる。更に少しだけ顔を傾け、自分の方が身長も大きい癖に、屈んで上目遣いで此方を覗くのだ。きっと何を言っても丸め込まれるだけだろうし、そんな事に時間を食う位なら従っておいた方が賢明だろう。
先に自分のカーディガンだけを脱ぎ、床に敷くように置いてそこに座れと示す。だが首を横に振り冷たい床に腰を下ろすので、そのまま端に寄せられた机の上に放り投げた。
嫌な態度は隠さずに、でも手つきだけは優しく、触れるだけのキスを繰り返しながら「それ」にするのと同じように布に触る。釦を一つずつ外して、灰色のカーディガンを取り払う。次はネクタイを片手で解き、しゅる、と音を立てて傍らに。女性相手であればここで服の中に手を入れ、ホックを外したりなんて作業があるが、その必要もない為シャツの釦に手を伸ばした。
類はふ、ふ、と合間に息を吐きながら、俺の手の感覚を追っている。口を離して、今度は見せるように外していく。そして片方ずつゆっくりと腕を抜いて上半身を露にし、シャツを畳んでネクタイと纏めた。

「君の手管が分かった気がする」

一見すればいつもとそう変わらない余裕そうな雰囲気だが、類の口から出て来たその言葉は、先程よりもずっと熱を孕んでいる。

「お前だって、大分地が出ているだろう」

それに気付いてしまったから、此方まで熱くなるのを誤魔化すように、また挑発的に返すのだ。

Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.52 )
日時: 2022/01/24 19:00
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』5



類のベルトに手をかけようとするが、良いよ、と押さえられ自分でバックルを掴んでしまう。するりとベルトを抜き、スラックスを下ろす様子をじっと見つめていると、居心地悪そうに顔をしかめた。気付けば類は下着だけ、それに対して此方はカーディガン以外は何も脱いでいない。だから脱ぐのを待っているのだろうと察し、シャツも何もかなぐり捨てて、類と同じ状態になる。

「司くん、自分の番になると途端に色気がないね」

「お前相手に繕っても仕方がないだろう」

雰囲気作りなんて、本当は御免なんだ。苦手だし、ただ確かめられれば、それだけで構わないと思っている。愉しみを錯覚する為のものだったから、こいつには、それをしなくて良いのは正直楽だった。相手に優しくするのは当たり前だが、それで自分の方にまで気を遣ってなんていられない。
類の顔が首筋に寄って来る。は、と息がかかる所まで近付いて、何か思い出すようにぴたりとそこで止まった。

「…触っても?」

静かに頷くと、そのまま一つ唇を落とされた。そして横に置いておいた自分のシャツを掴み俺の後ろに広げる。折角畳んだのに、と思うのも束の間、押し倒されて背中が敷かれたシャツに触れる。そんなに厚い生地ではないから床の温度が伝わってひやりとして、しかしそんなのはもうどうでも良かった。他にもっと、頭を回すべき事がある。

「ちょっと待て類、俺が下なのか…?」

「だって女の子の中で満足感を得られないんだろう?僕が下になったとして、そんな冷めた気持ちで腰を振られたくはないからね」

類の指の腹が首筋から鎖骨を這い、慣れない刺激で思わず体に力が入る。

「気持ちの問題もあるのかもしれないけれど、新しい快感なら、もしかしたら何か変わるかもしれないじゃないか」

喋りながら脇腹を触り、また次は上に戻って胸元に。爪の先で蕾をかり、と擦られて体が勝手にびくりと浮く。が、その後は焦らすように周りだけを緩く触られ、もう一度感じたいと思ったそれは中々来てはくれなかった。

「どうだい司くん。これで、初めて同士とするのは」

そう言う彼は、彼の表情は、自分の事を抱きたいと、切に訴えるようだった。
頷いてしまったら、肯定してしまったら、俺はどうなってしまうんだろうか。
…駄目だ、想像が出来ない。これでまだ分からないままだったらと、仲間さえ気持ち悪いと感じてしまったらと、考えれば考える程怖い。
怖い、のに。
気付けばそんな理性や恐怖は後ろに下がり、分かった、と口に出してしまって。類は満足そうに笑った後、すっかり固くなった乳首を執拗に弄り始めた。
爪と指の腹を使いながら、先程の一度だけの感覚を、今度は両方、何度も繰り返し与えられる。こんな所で感じたくないと思うが、その意に反して吐息や声は絶えず小さくこぼれていく。
目をぎゅっと瞑りながらひたすら、どうにか気を逸らそうと考える。だがそれも虚しく、暖かくぬる、とした感触に反射的にまた体がびくつく。

「ふふ、ここ好きなんだね。…ねえ、君はこんな事で、本当に女の子なんて抱けていたのかい?」

顔が少し上に向き、伸びて来た腕にくしゃりと頭を撫でられてかっと頬が熱くなった。
何で、こんなの、俺だって知りたい。
だって、こいつとこうするまでは、つい先日までは抱いていたんだ。こんな声だって、少しも出した事なんてなかった。
こんなに思い通りにいかないのは、これが初めてだ。
何も言えずにいると、また舌が胸に近付く。つんと当たればそれだけで、ぞわりと背筋から知らない何かが降りて、股に熱を集めていく。唇を噛みながら必死に息を吐いていると、牽制するように類の右手の人差し指と中指が口の中へ入って来た。
嫌だ、これじゃあ、声が抑えられない。
舌をぐにぐにと押しながら、口内を指が動き回る。その間にも、じゅ、と乳首を吸われ、舐められ、塞ぐ事の出来ない口からは自分の物だなんて信じられないような嬌声が溢れた。



Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.53 )
日時: 2022/01/08 00:42
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』 6




「るぃ、ッも、いたい…っ」

漸く放ったその一言に、舌と指が離れていく。ぷっくりと腫れた箇所を見て、何か愛おしむように目を細める。

「本当だ、赤くなってしまったね」

謝罪を付け加えるが、言葉だけで本当に悪いと思っているようには見えない。それならあってもなくても変わらないと思うのだけれど、それを口に出す気力はもう残っていなかった。
じゃあ次は、と下着をおろされる。ふるりと揺れながら顔を出したそれは既に先走りでどろどろで、下着の中心から糸を引いて床を汚した。

「ああ、もうこんなだったんだ。でも、申し訳ないけれどこっちはお預けだよ」

にこりと笑って類はカーディガンのポケットからハンドクリームを取り出し、中指に多めに乗せて後孔に当てる。
ああそうか、男同士は此処を使うのか、と。そこまでは理解が追いつくのは簡単だったが、クリームを塗りゆっくりと指を押し込まれる感覚に、また頭が置いてけぼりにされた。
何、何だこれ。
異物感が、体の中を蠢く。
苦しい、息がしにくい。
浅くなりそうな呼吸を、何とか落ち着かせようとする。吸って、吐いて、少しずつ。それでも無遠慮に、何かを探るように類の指がぐちゅぐちゅと音を立てる。

「司くん、力抜くの上手だね。良い所見つかるまで、気持ち悪いのもう少し我慢してね」

穏やかな声色と、それに似合わず傍若無人に中で動き回る細めで長い指。早く終わって欲しいと願っていると、それが中の一箇所に触れた瞬間、大袈裟な程腰が反った。

「ぁ゛ッ…!?嘘、っなに…」

「ん、これがそうかな…司くん、今のもう一度やっても良いかい?」

「待っ、やだ、無理…ッ!」

頭を横に振り抵抗するも、だーめ、と甘く語尾を上げながら擦り始めた。じゃあ訊くなと言ってやりたかったが、一文字発するより先に同じ刺激が来て、吸った息から言葉にならずに母音だけが抜けていく。
ひたすら体を捩り耐え続け、中のきつさにも慣れて来た頃。まだ拙いが一応息も整い、やっと楽になったと思えば、また質量が変わった。再び襲い来る圧迫感と快楽に、自然と涙が滲む。

「司くん頑張って、まだ指二本だけだ。これじゃあいつまでも僕のは入らないよ」

俺の足を押さえ見下ろす類。ショーの演出の事を考えている時とはまた別の嗜虐心を、隠し切れていない。…いや、隠そうとしていないのかもしれない。
自身はにっこにこで余裕そうなのに、此方には一つもそれを与えてくれず、寧ろ涙でぐしゃぐしゃで。こんなに苦しいのにそれすら快感として拾い上げてしまう上、彼曰くまだ前戯の序の口だというのだ。

「柔らかくなって来た。また指増やすからね」

「や、ッまだ、ーーーッ!!」

待ってくれ、と言う前に三本目の指を捩じ込まれ、はくはくと口が開いたまま閉じられなくなる。それと同時に視界が一瞬ブラックアウトして、すぐに次は白くなる。
何が起こったのか、分からなかった。ただ、下半身から急に、今までと違う快楽がせり上がって、体も震えて止まらなくなって、そうしたら、腹が温んだ。見ると濃い白濁が不規則に散って、腹筋の上に溜まって動く度ぷるぷると揺れている。
一度も中心を触られずに、後孔だけで、イった。

「…あは、ッ司くん、才能あるねえ」

羞恥がない訳ではないけれど、相手の今日一番の興奮した笑い声を聞いて、もう何でも良いか、なんて考える事を放棄する。放棄してしまう位には、こいつに絆されているのかもしれない。



Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.54 )
日時: 2022/01/08 14:25
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』 7



ずる、と指が一気に引き抜かれ、ひくりと再び体が震える。類も息を吐きながらボクサーを下ろして、窮屈そうに押し上げていた局部を寛げた。対面したそれは自分のものよりも少し大きく、本当に今からこれが入るのかと不安になる。クリームを追加した後ぴたりと当てられた熱に身構えて、生唾を飲みごくりと喉を鳴らしてじっと見つめた。しかし覚悟を決めたのに、窄まりを亀頭で擦るばかりで、中々挿れようとはしない。どうしたのかと思い類の顔を見ると、彼は徐に口を開いた。

「司くん、欲しいって、言って」

「え、…?」

言っている意味が分からない。ここまで来て怖気付いたからわざと焦らすのかとも考えたが、どうもそういう感情ではなさそうだ。

「君は今、好きでもない男とセックスをしようとしているんだよ。…だから、君がはっきりと、君の意思で、僕を欲して。そうしたら君がこの後口先だけで何を言っても、満足するまで抱いてあげる」

出て来た言葉に、目を見開く。
蕩けきった頭の時に、理性がほぼ残っていない時に、そんな事を言うのは卑怯だろう。
そう思っても、逆らえない。
だって仕方がない。こんなに中途半端に終わらせられたらもどかしいなんてモンじゃない。逃げようにも、きっともう足も震えて上手く立てやしないし、そもそも、そんな覚束ない状態では、服を着るのも難しい。
そうやって、幾らだって言い訳は出来る。自分が納得するだけの材料は揃っている。
なのに第一に頭に浮かぶのは欲ばかりで、劣情も望みも、無理矢理引きずり出される。
ああもう、もう知らない。
全部、類のせいだ。

「ッ、もっと、気持ち良くなりたい…お前のが、欲しいっ…」

気付けば、少し起き上がり自分で類のそれを掴んで当てがって、きゅう、と穴を収縮させていた。

「…有難う、司くん」

それを肯定や準備が整った事の目安にするように、一際嬉しそうに笑った後、ゆっくりと腰を進めていく。
苦しいなんて言葉じゃ済まされない。指とは比べ物にならない質量の塊が、中をぎちぎちに埋め尽くしていった。

「…ッ中、熱い…持って行かれそ、…」

体温で、興奮が筒抜ける。しかし熱いのは、此方だけじゃない。手を伸ばして類の横髪をさらりと耳にかけると、小さな吐息と共に肩が軽く跳ねた。

「…はは、るい、耳真っ赤。何だ、俺は色気がないんじゃなかったのか?」

「ふ、…君こそ、そんな戯言をいつまでも気にしていたのかい?」

互いに余裕がない癖して、軽口だけは叩き合う。こういう状態でなければ素直にむかつく事も出来たのだろうが、今は挑発すら昂りへと変わってしまっていた。
ぱん、と肌と肌が当たり、指も届かなかった場所を一気にこじ開けられる。また体が痙攣して、びゅ、と自身から精液が勢い付いて出た。

「まだ軽く突いただけだけれど…大丈夫かい?張り詰めていた糸が切れたのかな」

「ひ、ッぅ゛、るいだめだ、っ今うごくな…!!」

「駄目じゃないだろう、君が欲しいって言ったんだから」

ぐち、ぱつ、と律動と共に水音を立てられる度、絶頂を迎えているような感覚に陥った。手加減なんてしてくれない。的確に抉られ、突き上げられる。

「お腹側、ッここ。君が好きな所、前立腺っていうんだよ。ちゃんと覚えてね」

「やだ、ッむり、も、やめ…っ!」

ぐりぐりとそこを責め立てられ、死にそうな程の快楽に襲われる。また達したものの、出る液体は色が薄くなってきていて、一度目より勢いもない。飛ぶというよりもこぼれると表す方が近い位だ。
これ以上は本当に駄目になると思った。限界だった。
愛されるというのが、こんなにつらい事だなんて思わなかった。
類とのこれはただの肉欲なんかとはまるで違う。ぐずぐずに甘やかされて、内側から溶かされて、全部どろどろにされる。そんな苛烈な程の行為を知ってしまった今、例えばこいつが居なくなって、生きていられなくなったら、なんて依存心すら顔を出す。

「ねえ、ッ司くん。かんじてる、?」

丸く優しい声で、わざとらしく訊かれる。
これの何処を見たら、感じていないように見えるんだ。こんなにぐちゃぐちゃで、だらしなく口の端から唾液も伝って、類の顔すら上手く捉えられないのに。
それでも、自分ばかりが与えられるのは嫌で、上手く回らない頭で何とか伝えようとする。

「っ…きもち、良い」

「…身体じゃなくて、心の方の話なんだけれど」

トン、と奥を類の亀頭が叩き、またぞくぞくと全身に力が入る。足の先をぎゅっと丸め、手で押さえる心臓の辺りは、皮膚を引っ掻いてしまいひりついていた。それに気付いた類が慌てるように手を剥がすので、そのまま類の手を掴み返して引き寄せる。自然と顔が近付く体勢になり、触れるだけのキスを一度、しがみつくように背中に手を回した。

「分かんな、っけど、欲しい、こわい…ッ」

「…今は、その答えだけで許してあげる」

舌たらずに求める俺に、類は少し低く喉を締めながら、切なげに声を漏らした。




Re: 【BL・GL】おそ松さん、プロセカ等 ( No.55 )
日時: 2022/01/09 23:44
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』 8



また荒い抜き差しが繰り返され、自分の胸元と同じ傷を、次は類の背中に付けてしまう。だが今の彼にはそれすら興奮の材料になっているようで、爪を立てる度にあ、と上擦った声が耳を犯した。
能動的、というよりは、理性の飛んだ中身を覗かれているだけのような気もするが。それでも、人に欲しいと懇願したり、自分から何かを仕掛けるのも、本質を曝け出すのも、これまで経験して来なかった事だ。だからこそ快楽に潰されそうになりながらも一つ、後ろ向きな考えが、本能としてじわりと頭の中を埋めていく。

「やだ、るい、ッ嫌わな、で…」

突然口から零れ出て行くか細いその言葉に、動きを止めて少し離れ、心配そうに顔を見られる。類を抱き締めていた腕は拠り所を無くし、代わりにぼろぼろと落ちていく涙を隠す為に自分の顔を覆った。
つい先程までねえ、とか言って、とか散々催促していた癖に、今になって何も言わず、様子を見ながら、俺が口を開くのをじっと待っているようだった。

「いつもはこんなんじゃない、こんな、淫乱みたいなの、…っしらない…幻滅、しないでくれ…ッ」

しゃくり上げそうになるのを堪えながらどうにか紡ぐ。すると類は、何度も聴いたあの安心する声でふ、と笑いながら背中を支えて寄せ、俺を上に座らせるような体勢を取った。重力のまま腰がすとんと落ち、最奥がごりゅ、と強い刺激を受ける。それにまたがくがくと脚を震わせるが、子供を落ち着かせるように優しく背中をさする手に、最中とは別のあたたかさがじんと胸に込み上げた。

「大丈夫、大丈夫だから…ね、僕が嫌がったり、幻滅したりしているように、君には見えているのかい?」

「見え、ない…」

「うん。それじゃあ、君の捉えている通りだよ。何も気にしなくて良いんだ。…ただ享受してくれれば、それだけで」

尻たぶをぐっと持ち上げ、また力を抜いて落とした。内壁を擦って中に入り込み、ぐぽ、と人体から聞こえてはいけないような音がして、頭が痺れる。漸く出来るようになった苦しくない呼吸の仕方を、暴力的なまでの気持ち良さにまた忘れそうになって、ひゅ、と喉が鳴った。
享受なんて、到底出来ない。受け入れる事がままならない。なのに類はずっとずっと、奥にぶつけ続ける。此方が何度果てても止まらない。高く甘ったるい響きが二人分、教室の中に充満した。

「は、ッぁ゛、…つかさく、っつかさくん、きもちいい…ッ」

「や゛、だめ、るいっだめこわれ…ッやだぁあ゛…!!」

「だからだめじゃな、って…っほら、前、自分でさわって」

合間に手を掴まれ、自分の局部へと当てがわれる。どくどくと脈を打つそれはいつもよりも膨らんで、空の頭で言われるがままに触ると、ぐち、という音と共に上下する手を簡単に汚した。
ここに触れるのは、今日はこれが最初だ。とは言え慣れた刺激な筈なのに、後孔のそれと合わさり何倍にも膨れ上がる。

「これ、ッこれ、きもちい…っまた、いく、ッう゛、んぁ゛あっ…!」

自分で触っている筈なのに、自分じゃない何かに操られているような錯覚さえ起こす。どろりと指の間を流れる白濁を見ても尚、身体の奥底に溜まる熱は出て行ってはくれなかった。
ふいに類が、駄目、もたない、と小さく呟く。そして此方の体を倒し正常位に戻ると、再び激しく、貫くような律動が始まった。驚いた反動で局部からは手が離れたが、次は類の右手が伸びてくる。左手は腰をがっしりと掴み固定するので、逃げる事も出来ずただびくびくと身体を捩り、震わせるばかりだ。

「待っ、つよい、ッるい、ぅあ゛ッ…、るい、っるいまた、でちゃ…ッ!!」

「つかさ、くんッ…おれももうイきたい、っいく、…ッぁ゛…はッ…」

急ぐようにずるりと抜かれた類のそれから出る白濁で、下腹部の辺りがじんわりと温まる。此方も同時に類の手を汚し、受け止めきれなかったものがぼたりと落ちた。どうやら中には出さず、寸前で俺の腹の上に出す選択を取ったらしい。
少し遠くで、大丈夫かい、と言う類の声が聴こえる。言葉を返さなければ、服も着なければ、と、思いはするものの、思うだけで身体が動かない。視界がぼやけ、瞼も重くなり、そのまま意識が遠くなる。
ああ、そういえば。
類の「俺」って、久し振りに聴いた、かも。



Re: 【BL】プロセカで色々 ( No.56 )
日時: 2022/01/10 02:52
名前: 秋葉

神代類×天馬司
『クズはクズ同士』 9



「…くん、…司くん」

体をぽんぽんと軽く叩きながら名前を呼ばれて目が覚めた。寝てしまったと焦り、がばっと一気に起き上がる。が、身体の怠さと急激な腰の痛みに体勢を保てず、すぐに倒れて元の仰向けに戻った。

「無理はしちゃ駄目だ。…本当はゆっくり寝かせてあげたかったんだけれど、いつまでも此処に居る訳にもいかないから…」

ごめんね、と眉を下げる類だが、本当に謝らなければならないのは此方だった。
何も出来ず全裸のまま落ちた筈なのに、下着どころか制服まで元通りだ。あとは薄い黄色のカーディガンを羽織るだけの状態になっていて、どろついていた腹もしっかりと拭かれ、後処理が綺麗に終わっていた。
あの後全てやってくれていたのかと、少しの罪悪感に見舞われる。

「…片付け、有難うな。俺は、どの位眠っていたんだ」

「どういたしまして。そうだなあ…それでもまだ、三十分は経っていないと思うよ」

そう言われそうか、と安堵するのも束の間、また別の心配に駆られて、軋む身体をなるだけ急いで起こした。

「ッそうだ、ワンダーステージ、えむと寧々が待ってる」

「一時間位前に、えむくんが今日の練習は中止だと連絡を入れてくれていたよ」

横に出されていた携帯を取り、画面を確認する。そこには確かにえむからの通知があって、兄達と別でやらなければいけない事があるから、という旨の話が書かれていた。

「いやあ、タイミングが良かったね。君の事だ、この後も無理して練習に出ると言われそうだったから」

図星を突かれ、また何も言えなくなる。スターたるもの、日々の練習に穴を空ける訳にはいかないのだ。…まして、こんな理由では余計に。セックスで動けなくなりました、なんてあまりにも世話がない。そんなのは絶対に、何としても避けたかった。
俺が口を開かないのを確認すると、類が一本、煙草を取り出す。しかし持ったまま少しの間考えるように固まり、動いたと思えば出したそれを戻した。

「…吸わない、のか?」

「うん。窓を開けなければいけないから、君の疲れた身体に冷たい風は堪えるだろうしね。…それとも、一本付き合ってくれるのかい?」

「俺は吸わん」

「そうだろうね」

悪戯っぽく言ってからポケットに煙草を押し込む。そしてくるりと此方に向き直り、真っ直ぐ目を見つめて口を開いた。

「それで司くん、僕達は恋人、で良いんだよね」

「…ああ。しかし、どうしてこんなに馬鹿げた要求を呑んだんだ」

「僕は君に出会ってから、確かに君に依存している。君と一生居られるかと訊かれたら、喜んで頷ける位には、ね」

傍に移動し、優しくぎゅっと抱き締められる。身体中触られたばかりなのに、今更こんな事で、何かぴり、と緊張が走った。遠慮がちに、恐る恐る抱き締め返すと、耳元で穏やかにくすりと笑う。

「恋愛感情だって、ある種依存や執着と変わらない。だから、僕にとっては願ってもない申し出だったんだよ」

そう言う彼の表情は横にある為見えなかった。静かに、でもしっかりと重く響く優しいその声に、あれ程理解が出来なかった感情が、漸く形を成して、自分を潰しに来た気がした。瞬間、じっとしていられない程の焦燥感のような物が襲い来る。それに駆り立てられるように、堪らず類の無防備な首筋に顔を埋めて吸い付いた。

「ッ、司くん…?なに、どうしたんだい」

言葉も返せないまま、ちゅ、ちゅ、と唇を鳴らす。しかし望んでいるものは、中々そこに表れてくれない。すると類が背中をさすりながら、慎重なように名前を呼んだ。

「少し唇で食むようにして、…そう。そのまま、自分が思うより強く長めに吸ってごらん。痛くない、から」

言う通りにしてみると赤黒く残る痕がつく。それを見て、焦燥は少し落ち着いた。

「なあ、類…これが、俺のずっと知りたかった感情なのか…?」

「…それは、このキスマークの事かな」

「ああ…いや、これじゃなくても良かったのかもしれないが。何とかして自分を相手に残したいと思うのは、恋、なのか、?」

此方の投げた問いに、ふむ、と少し考えるように唸る。しかし答えが出なかったらしい。分からないな、と言われてしまったが、その後でも、と言葉を繋げた。

「自分が納得出来る形をゆっくり探していけば良いじゃないか。先延ばしにした所で、時間はまだまだあるんだし、さ」

何だか類らしい答えに、少しだけ泣きそうに震えた声でそうだな、と返して胸元に頭を擦り寄せる。そして相手の名前を一つ呼んで、帰ろう、とゆっくりと立ち上がり、カーディガンを羽織った。