大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- 【ラブライブ】私ののぞみ【のぞえり】
- 日時: 2015/02/11 16:42
- 名前: Lie
苦しいの。でも、それでも隣に居れるなら―――――――。
・・そう、思っていた。
「えりちー!」
冬の寒さに部室の隅で身を縮めていると、廊下の方から私を呼びながら駆けてくる足音が聞こえた。
伏せていた顔を上げると、息を切らせた希がそこに。
しばらく呼吸を整えて後に、部室を見まわした彼女は不思議そうな顔をする。
「・・・・あれ、皆は?」
「・・・・皆、今日は用事が入っていて無理だってさっきLINEが来ていたわ」
私がそういうと、希は少し残念そうな顔で「そっか」と呟いた。
じゃあ、今日の部活はお休みやね。と。
寂しげな顔に、ちょっとだけ胸が締め付けられる。
そんな顔されると、こっちまで寂しくなるんだから。
「ほら、そんな顔しない!こんなときこそ笑顔の魔法よ!にっこにっこにー!」
ふっと、寂しそうな顔に笑顔が滲んだ。
「な、なんよ急に・・・えりちいつもとキャラ違くない?」
「おっ、笑ったー。それでいいのよ、私は希の笑顔が大好きなんだから」
「はいはい、褒めてもおだてても何もでーへんよー?」
「分かってるわよ〜。さ、帰りましょ?」
くすくすと可愛らしく笑う彼女の手を引いて。
校門を出たころにはすでに辺りは薄暗くて、冬なんだなと改めて実感した。
吐く息が白い。かじかむ手。
繋いだ手から、互いの温もりを共有する。冬の静かな帰り道。
「明日は降るのかしらね〜、雪・・・・」
寒さで震える私の唇の間から、他愛もない言葉が漏れる。
彼女は「そうやねー」といつものように相槌を打った後に、私の手を解き立ち止まった。
つられて私も立ち止まり、彼女の方を振り向く。
――――――――― 一瞬、私の視界が薄い紫色一色に染まった。
そしてその薄紫色の向こうには、恥ずかしそうに微笑む彼女が。
「こうした方が、暖かいやろ?」なんて。
一枚のマフラーが、私と彼女を繋ぐ。
暖かいのはきっと、温もりだけじゃなくて彼女の優しさも感じたからだろう。
「ずっと、こうしていれたらなあ・・・」
思わず零れた本音は、誰にも聞き届けられることなく目の前の空間に溶けて行った。
「・・・えりち?」
残ったのは、ちょっとだけ心配そうな彼女の表情。
なんでもないの、と笑顔で彼女の手を取り直す。
こうした方が、暖かいものね。
それからしばらく二人で歩いていたけれど、寒さのせいか口数も減っていき、しまいには二人とも無言で黙々と歩くことになった。
まあ、そんな静かな時間も嫌いじゃないけれど。
「・・・・・・とーどーけてー、せーつーなーさーにはー♪」
・・・・ただ、私が今どんな気持ちでこの歌を口ずさんだのか。
彼女は知ろうとはしなかった。
すっかりあたりも暗くなったころ。
いつもの分かれ道に二人して立ち止まる。
ああ、きっと彼女はまたいつも通りに「ほな、また明日な」と手を振ってこの道の向こう側に消えていくんだ。
そんな私の予想を裏切らない彼女は、利口で鋭くて、・・・鈍感だ。
いつも通りに手を振ろうと上げられた彼女の右腕を、ぎゅっと握った。
刹那、彼女の表情が驚きで固まる。
「希」
彼女が何かを言うより早く、名前を呼ぶ。
そのまま、引き寄せて抱き締める。
・・・・大丈夫。誰もいない。
いや、居たとしても関係ない。
「ちょ、え、えりち?!何なん―――――」
私は――――――――――――。
「・・・・・え、えり・・ち?」
薄紫のマフラーに、濃い紫のシミができる。
「な、なんで泣いてるん?・・・どっか、痛い?」
彼女の声を聞けば聞くほど、堪えがたい感情が大きな波となって私の理性を押し流すから。
彼女の残酷なまでに優しい問いかけに応えることができずに、ただただその胸に顔を埋めて泣きじゃくる私がそこに居た。
痛いよ、心が。痛いよ。本当は気付いてるんでしょう?どうして応えてくれないの。
我儘な感情ばかり溢れて止まらない。
声には、ならない。言えるわけない。
暖かく柔らかい温もりにただしがみついた。
「ほーら、どうしたのか言ってごらん?言わんとわからんよー?」
「わ、わからな・・く・・ていい・・の・・よ・・っ」
「ありゃ・・・」
どうせ応えてくれないから、とひねくれた気持ちは言ってしまう前に飲み込んだ。
しがみついた温もりと私との間に、冷たい壁を感じる。
見えないけれど、そこにある壁。
・・・それが、私が望んでいるものと彼女が望んでいるものの温度の差。
どちらが熱いのだろう。
意地っ張りやねー、とため息とともに吐き出した彼女は困ったように笑った。
その隙をついて。
「―――――――――――――っん?!?」
彼女が望んだ壁を無視して、奪う。
最低だって、わかっているつもり。酷いことをしているなんて、重々承知で。
それらすべてひっくるめて、・・・どうでもいい。
突然の事態に目を見開いたまま固まっている彼女をさらに食む。
すると少しして我に返った彼女に突き放された。
「・・・・・・これ以上やったら怒るよ?」
「・・・いいわ」
もう一度抱き寄せると、なにか破裂するような、乾いた音が響いた。
時差。
ひりひりと頬が痛む。
もう涙は出ない。
ただ、私は笑っていた。自分でも思うくらい、不気味に。
ああ、これですっきりしたな、と。
どうやら私の頭のねじは取れてしまったみたいだ。
「・・・・絵里の、馬鹿」
いつもの口調が消えた彼女は少しだけ、印象が違って見えた。
私は何も言わずにくるっと彼女に背を向ける。当たりはもう真っ暗。そろそろお別れの時間だ。
・・・・さようなら、私の初恋。
「ねえ、希」
「・・・・・・・・」
「希」
「何」
さようなら、私の――――――。
「私のこと、嫌いになった?」
「・・・今更何なの」
「私は―――――」
『大嫌いだよ。』
――――希。
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