官能小説(オリジナル18禁小説)

Re: Это убивает【11/24本編更新】 ( No.23 )
日時: 2014/12/14 20:03
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141

Forcestory―Nostalgic dream―



【渚グループ総帥夫妻、メッタ刺し殺人事件。そのおそるべし事件の内容は………】


199X年、X月X日。
渚グループ総帥夫妻、渚 直太郎(ナギサ ナオタロウ)、渚 撫子(ナギサ ナデシコ)共に―――――


死亡。


体全体を切り刻まれた傷跡が原因とみられるが、刃物の型を特定しようにも人間の原型が保たれていないくらいメッタ刺しにされていたため、凶器はナイフのようなもの、としか判明せず。犯人の手掛かりとなる痕跡は見当たらず、侵入されたあとすらない。犯行声明やダイイングメッセージも共になし。警察はこの事件を、『重大な狂気的殺人事件』として、捜査を進めているものの、その進展は見られず、世間からは白い目で見られていた。
犯人は今どこで、何をしているのだろうか。我々記者はこの事件の真相を探っていくとともに、遺族らに協力を呼びか――――――

「あーもうなんなんだようぜえなコレ」

突如読んでいた新聞が、ビリビリと引き裂かれゴミクズとなった。
そのゴミクズをぐしゃぐしゃにし、ぽいっとゴミ箱に投げる少年。
年齢は7〜8歳くらいに見えるが、随分と大人びた雰囲気をもっていた。
黒髪で、白い肌で。その顔にある黒い瞳はなにもかもを亡くしたあとの喪失感、否、諦めが入り交じっていた。
その瞳はどこを捉えることもなく、ただ虚空をじっと見つめていた。それはまるで、捨てられるとわかった時の、古びた人形のように。でもどこか言葉では表せない決意を秘めていたような。そんなことを伺わせる。
少年は近くにあった椅子に座ると、ふう、と溜め息を漏らす。疲れた時に出る溜め息なのか、諦めの溜め息なのかは少年すらも分からないだろう。

「お前らに父さんと母さんの何がわかる、俺らの苦しみの何がわかるってんだ。恥知らずが、戯言は夢ん中で言いやがれ畜生が」

そう、誰にもぶつけることない言葉の羅列を少年はただただ吐く。
少年の名は『渚 凪(ナギサ ナギ)』。渚グループ総帥夫妻の長男であり、跡取りでもあった。その総帥夫妻亡き今、彼に残されたのは、莫大な財産と権利、そして耐えられる筈がないプレッシャーや孤独感、そして逃げられることのないマスコミの追跡だけであった。とてもじゃないが、今の年齢でこれらを全て背負えるかと言われれば、不可能に等しいだろう。
そんな宿命を彼は背負ってしまった。
たった、10にも満たぬ年齢で。
我々にはその彼の苦しみというのは、到底理解できぬものでもあり、彼もまた理解されるとは思ってない。

「凪兄、どうしたの?」

そんな彼を心配の顔で近づく少女。
彼と同い年に見えるその少女は、彼とは逆に、どこか吹っ切れていた。
容姿は彼に似て黒い髪の白い肌。彼女の顔に埋め込まれたその瞳は、何かを見通しているようだった。何を、そしてどこを見通しているのかは、彼女にも我々にもわかるまい。
そんな少女の名前は『渚 嵜(ナギサ サキ)』。彼女もまた、渚グループ総帥夫妻の長女で、本来ならば間もなく海外の女学校留学を予定していたのだが。こんなことになってしまっては、それどころではない。
このように、彼らもまたこの事件の遺族及び『被害者』なのでもある。

「別に。どうもしねえ」
「じゃあなんでさっき独り言を言っていたの?」
「…………良く分からない」
「良く分からない、じゃ独り言なんて吐かないよ。何かあったんでしょ、もしかして新聞とか」
「五月蝿い、少し一人にさせてくれ」

凪はそう不思議がる嵜を部屋から追い払い、椅子の背もたれに体を預ける。
天井から吊るされてあるシャンデリアの光は、今の彼にとっては、もう眩すぎて、鬱陶しい存在となり果てていた。凪はそれを睨めつける。
だけどその睨みも、すぐにふっと終わって。どこか何もかもを投げ捨てたような、そんな目になった。

「……………」

彼は目を閉じ、そのまま寝息を立てた。



その直後に、彼の真上に、吊るされていたはずのシャンデリアが何者かによって落とされるのも知らずに。



To be continued