「な、佐々木のウワサ、知ってる?」
4時間目が始まるチャイムが鳴っている。
次の授業は体育だったので、教室にはもう俺たちしかのこっていない。
机に肘を立てて窓から外を眺めていた俺は、視線をそちらに向け口を開いた。
「なに、それ。」
「おまえ知らねぇのかよっ!いやさ、実はーーー」
嬉々として話し始めた彼、吉田とは高校で知り合った。
吉田は悪い奴ではないのだが、少々周りが見えていないところがあり、そこがたまに傷。
そして彼はよっぽどその噂話について話したかったのか、熱が入りどんどん口調が速くなっていく。所謂マシンガントーク状態。
「でさ?俺もどうせウソだろ〜って思ってよぉ・・・」
「おー」
適当に相槌をうちながら窓から吉田のほうに視線を向けた。
あ、後ろーーー。
「聞いた話だから証拠はねェんだえどよーーーうわっ」
「黙れ。いい加減うっせンだよ。」
「さ、佐々木・・・」
先ほど教室に入ってきた佐々木に気づいていなかった吉田は、胸倉を掴まれグッと持ち上げられる。
「や、ごめっ」
「チッ」
真っ青になった吉田の顔をみて佐々木は顔を歪めた。
そして掴んでいた胸倉を力任せに突き放すと、興味なさげに視線をそらした。
「・・・。」
佐々木はとても不機嫌そうな顔をしている。
振り返りざまにチラリと視線が合ったが、彼は何も言わずに教室を出て行った。
「ってェ〜〜〜」
突き放された時に腰をうったのか、吉田は腰をさすりながらこちらをジトリと睨む。
「お前さ、佐々木きてたって知ってたなら言えよ!!」
「はは、ごめんごめん。」
思わず笑ってしまった。
佐々木 長髪に軟骨ピアスでやや強面。独特の雰囲気を持っており、クラスでは少し浮いている。
吉田 どこにでもいそうな平凡顔。しかし愛想はいいので知り合いは多い。
俺 無気力。面倒くさがりで面白いことが好き。友達は少ない。
→続く