3.
「お、はよー吉田」
「重役出勤だな。もう昼休みじゃん」
「おい、聞いてんの?」
「吉田あ?」
* * *
「ったく、クソッ・・・携帯ないと何もできねーじゃンかよ」
息を切らしながら急いで階段をかけのぼる。
教室に携帯を忘れてきてしまったことを思い出したのは、1時間に1本しか走っていない電車に乗った瞬間。
急いで降りたものの、次の電車は50分後。
田舎の一駅は歩いていくのには結構な距離がある。
しかし電車を待つ時間が惜しかった吉田は、一駅分走って学校まで来た。
「ーーーー、」
「ーー〜?」
「・・・あ?誰かいんの?」
今は使われていない準備室から話声がする。何を言っているのかは聞き取れなかったが、片方は聞き覚えのある声。
足音を忍ばせながら近づく吉田は、なぜか自分の鼓動が速まるのを感じた。
「愉快愉快!だってあんな面白いこと、楽しまなきゃ損だろ」
「人の不幸がそんなに楽しいのかよ・・・」
教室のドアの隙間から覗く。後ろめたいことはないはずなのに、なぜか見つかってはいけない気がしたのだ。
1人は窓辺の椅子に座って窓から外を眺め、もう一人はその後ろに立っている。
しかしどちらも後姿。いくら目を凝らしても、窓の外に見える夕日に邪魔されシルエットしか見えない。
「・・・そろそろ飽きたか。」
「そうだねー。そろそろ次のオモシロイコト、起こらないかなあ。」
聞き覚えのある声、見覚えのあるシルエット。
しかし確信が持てない。
「起こらないかなあ。」
影が、ゆっくり振り返る。
「 。」
* * *
「吉田あ?」
「いやさー、ゲームしてたらいつの間にか寝ちゃってよ!気づけば時刻は10時を回っておりました、」
「馬鹿か、・・・ゲームってこの間買ったっていう、アレ?」
「そうそう、でもなかなか進まなくてさー」
コイツは何事もなかったかのように振る舞う。
けど、あの時確かに俺とコイツは目があった。
あの時確かに、コイツは言ったんだ。
「コイツハオレノ。」
「ねえ、あのウワサ。知ってる?」
「アレでしょ、佐々木くんがーーーー」
「そうそれ!佐々木君、」
「男とエンコーしてるって。」
2の続き。今度は吉田視点。