差し込む光はオレンジ色
地面を照らし、工場内を同じくオレンジ色に染め上げる。
かつこつと歩き、工場内の排気管を目指す。
俺の視界はオレンジ色で一色、頭がボーッとするような感覚に陥る
しかし、今の俺は美奈ちゃんを犯す為に思考がうまく作用しない
ボーッとしつつ排気管を目指していると、壁に落書きがあった。
ペンキで塗られたような絵だが一人で塗った物と違い、高さや絵柄がまったく違う。
太さもまちまちで、数人で描いたのだろう。
近付いて眺めると笑顔の絵が多く描かれていた。
近くで見るとペンキと言うよりは水彩絵の具で伸ばし塗りをしたような薄い色だが、その光景に少し俺は足を止めてふと思った。
(最近、俺は人間関係が薄れてきてないか?)
夕陽の淡い色により少し理性を取り戻すといきなり頭が回り始めた。
最近、俺は人間関係が薄い。
友人と遊びに行かず、最近は美奈ちゃん中心に動いている気がする。
あの子を犯す為に、快楽を求める為に。
これではいけない。
このまま進むとあの子に依存してしまうだろう。
そんな事になったら俺は日々を堕落で埋め尽くされた駄目人間になる。
(嫌だ、絶対に嫌だ!)
考えた未来を振り切り、頭を振る。
今の未来は人間ではない、獣欲に任せた畜生の末路だ。
そう考えるとこの先がとても恐ろしく思えた。
この先はまるで地獄の入り口のような......
刹那、体中が警報を鳴らした。
全身に鳥肌が駆け巡り千もの虫が体を這いずり回るような悪寒。
それが全て目の前の暗闇に向かっていた。
間違いない、この先は絶対に入ってはいけない
この先には人類が思考の範疇に入れてはならない存在がいる。
計り知れなく禁忌的で、なおかつ甘美で蠱惑的な存在が。
(........ッ!?今のは!?)
そして理解した。
いや、理解してしまった。
周りには夜のとばりが降りていた。
陽が落ちるには早すぎる時間。
太陽が差し込ませていたオレンジ色の光は何処にも見えない。
代わりに差し込むのは月の光。
そして月の光が差し込む先には。
「ーッ!?」
歪んだ笑顔を浮かべる子供の顔の絵があった。
先程までの楽しげな笑顔は無く、狂気に満ちた表情を浮かべていた。
歪んだ笑顔でこちらを見つめる子供の絵。
しかし俺は舌打ちをしていた。
「クソっ!もう逃げられねぇのかよ!」
気付いていた。
近くにもう。
「あーれれ、お兄ちゃん変わってるねぇ?」
.........逃げられぬ存在がいる事を。
暗闇からヒタリヒタリと近付く『ソレ』は愛くるしい幼女の姿だった。
しかし纏う雰囲気は一転し、妖艶さの中に本能的に恐怖を与える美しさ。
三日月のように歪む口にはイタズラな笑みが浮かぶ。
『美奈ちゃん』
先程まで俺がそう呼んでいた存在だ。
不可思議で、冒涜的で、魅惑的な存在。
「少なくとも君よりは年上だからな、年長者の余裕ってヤツよ」
俺はある確信めいた感覚と共に言い放った。
軽口も皮肉っぽく、子供では理解の出来ぬ意味を含め。
「.....乙女の年齢を詮索するなんて酷いね〜」
「と、なるとやっぱりクロか」
(これは美奈ちゃんの記憶だ。
肉体を置き去りにした記憶。
こっちには今までの記憶があるのではないか。)
そういう推測が立った
まぁ、外見が美奈ちゃんで言葉使いが成熟しているだけだが。
「今までのプレイはどうだった?お気に召したかい?」
「出合い頭の騙してレイプ、またまた騙して足コキからのレイプ.......許されるとでも?」
殺気を出して睨み付ける美奈ちゃん。
恐ろしい圧力に体が固まるが、強がって肩を竦める。
が、しかし
「でもお兄ちゃんなら許しちゃう」
「......えぇぇ?」
瞬間、脱力した。
俺は今言った言葉を聞き間違えたのだろうか。
自分でも中々に許されない事をしたなぁ......とは思ったが。
まさか許されるなんて思わなかった。
「実際に私Mなんだ、それにお兄ちゃん好みだし」
「あれ、ガチでお気に召した?」
「召したよ〜もう!あんなに乱暴にされるなんて思わなかった!」
「きゃー!」と言った様子で顔を赤くして頬に手を当て首を振る美奈ちゃん。
可愛らしい仕草に、つい呆れ笑いが出る俺。
「まぁ、Mだからって言うのもあるけど何より........」
「何より?」
含み笑いしつつ俺に近寄りいきなり抱き付いて来た。
そのままスリスリと頭を擦り寄せて満面の笑顔を浮かべる。
「私、一目惚れしちゃった」
「おおぅ.....」
夢にまで見た幼女からの告白はあまりにも雰囲気を考えて無かった。