官能小説(オリジナル18禁小説)

貴方だって、愛してる ( No.12 )
日時: 2016/02/14 18:15
名前: ねむねむ

〜二章〜

1、抑圧と抗い


昔から、将生の両親は厳しかった。厳格な父と良家の出の母は、将生への理想が高かった。そしてことあるごとに、
「お前はこうあるべきだ。」
そう言っていた。

***

「……酷い、酷いです、将生さん……」
彩希の呻くような泣き声が、将生の体の下で聞こえる。ベッドのシーツに顔を埋め、周囲を涙と体液でじっとりと湿らせながら、将生に怒りのこもった言葉をぶつける。

将生は、申し訳ないと、本当に思った。

将生は独身で、さらに女好きだった。当然プレイボーイで、独り身を謳歌しながら、あらゆる手で使って、女性と関わってきた。しかし将生は、女性に乱暴をするのは好きでない。処女なら、なおさらだ。ガラス細工を扱うような丁重さになる。
それなのに、今夜の将生は違っていた。彩希を蹂躙し、レイプのような犯し方をした。
「調教したい」などという誘い文句を使ったくせに……

愚かすぎる自分の行いに、彩希の顔を見ることができない。
「さ、彩希…さん……その…」
「……」
彼女はすすり泣くだけで、何も言わない。無言の時間が、五分ほど流れた。
「……将生さんは、本当に私のことが好きなんですか…?」
ぽつりと、彩希が口を開いた。
「そりゃ、愛してるよ。すごく、すごく…信じてくれない、かぁ…」
即答したが、将生自身も答えることがためらわれた。あんな酷いことをした自分の言うことを、彼女が信じるはずがない。
だがふと、将生の頭に妙案が浮かんだ。一発で、彼女を信じさせられるような、魔法の言葉を。
「結婚、したいくらい彩希さんが…彩希が好きだ。」
「え…?」
今までずっとシーツに埋めていた顔を上げ、彼女がこちらを見た。その顔は、ずっと泣いていたせいか目の回りが赤くなっていた。
「結婚したい、結婚して…彩希を調教して…、それぐらい好きだ。」
「…………そう。」
それから、彩希は喋らなくなってしまった。顔を覗き込むと、規則正しい寝息と、少女のような寝顔が見えた。
静かに彩希の横に体を倒して、ベッドに潜り込んだ。
そうだ、明日起きたら彼女の連絡先を聞こう。婚約者の連絡先を知らないなんて、鼻で笑われてしまう。

頭の片隅で、セックスした時の彩希の歪んだ顔がちらつく。
それと同時に、今まで育て上げてくれた忌まわしいほど厳しい両親の顔が、不覚にも浮かんでしまった。

「くそ……」
掻き消すように、目をぎゅっと瞑った。