官能小説(オリジナル18禁小説)

Re: 貴方だって、愛してる【5/15更新!】 ( No.31 )
日時: 2016/06/05 09:20
名前: ねむねむ

〜最終章〜

変わらない結婚生活


朝。いつも通りに起きた将生。まだ春先だいうのに、ベッドはなぜだか汗びっしょりになっていた。隣に目をやると、彩希はまだ眠っていた。
トイレに行ってから起こそう。将生はそう思って、寝室を出た。
洋式のトイレに立ちパジャマを下ろし、陰茎を出そうとする。出そうとしたのだが、なかった。
「________え!?」
情けないくらいに慌ててしまう。当然だった。睾丸が、切り取られたように綺麗になくなっているのだ。
「おい!?どういうことだ!?」
寝室に駆け込んで、彩希を殴りそうな勢いで揺り起こした。
「んん…なぁに、将生さん。」
「何じゃない!俺の、俺の……!!」
腹が立って腹が立って仕方ないのに、将生は何故か殴る気力がなくなっていた。彩希は彩希で「あぁ」と、当然のように頷く。
「昨日、去勢したのよ将生さん。」
「は…?ふざけるな!勝手にこんな…!!」
また、力が入らない。怒鳴る気力も失せている。掴みかかっていた腕をぶらんと下ろして、頭が真っ白になった。
「誰だ…?誰がしたんだ?」
「私のお兄ちゃんよ。前に言ったでしょ?私のお兄ちゃんは、獣医だって。」
なら、昨夜に見た、彩希の兄の顔は夢ではなく、現実だったのだ。将生が寝ている間に麻酔を打ち、去勢を行ったのだ。将生の心を見透かすように、彩希が優しく声をかける。
「大丈夫よ、何も変わらないわ。」
「変わらない…?そんなわけ…」
「このことは、私と将生さんと、お兄ちゃんだけの3人の秘密。誰にも話さなければ、日常は何にも変わらないの。」
彩希が淡々と、笑いながらそう言う。将生も、確かにそうなのか、と納得しようとしていた。両親や、会社の同僚にも、言わなければいい話なのだ。
「なぁ、彩希…なんで、こんなことしたんだ?」

「知ってる?どんなに暴れる雄の猛獣でも、去勢すれば大人しくなるの。」

「将生さんが横暴だから、お兄ちゃんに相談したのよ。だって私、あのままじゃ死んじゃう。」

「だからお兄ちゃんは、私に『将生さんの去勢』を提案してくれたのよ。」

あぁそうか。将生は脱力してしまった。最初から全部、将生が騙されていたのだ。将生が横暴に振る舞えば振る舞うほど、彩希は兄にそれを、密かに相談していた。去勢するタイミングを狙っていた。あぁ、そうなのか。
彩希の言った通り、将生はすっかり大人しくなってしまったのだ。


***

数日後。2人は離婚や別居などはせず、今まで通り同棲を続けていた。今日は休日で、将生はリビングで新聞を読み、彩希は朝食に使用した食器を洗い終えたところだった。
「ねぇ、将生さん。私、ずっと考えていたんだけどね。」
「どうしたんだ?」
「養子をもらおうと思うの。女の子と男の子。1人ずつ。」
遠慮がちに話を切り出した彩希は、そんなことを言った。その提案に将生も賛成だった。
「あぁ、いいと思う。」
「ありがとう…あぁ、ずっと子供が欲しかったの。嬉しい…、私がお母さんで、将生さんはお父さんになるのね。」
跳ねる勢いで彩希は歌うようにそう言う。そう、何も生活は変わらなかった。彩希が言っていたように。
「これから忙しくなるわね。」

彩希は、嬉しそうに微笑んだ。


STORYEND