官能小説(オリジナル18禁小説)

Re: 【BL】掃き溜め ( No.6 )
日時: 2021/08/30 18:15
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】1

「薫ちゃーん、レポート持って来たよ。単位頂戴!」

コンコン、と扉を叩く音が聴こえ、一つ馴染みのある高めの声が近付いて来る。授業の資料を作っている為あまり顔を上げる余裕はなかったが、喋り口調や机を挟んで私の目の前に椅子を持って来る様子で三好だとすぐに分かった。一旦作業を中断し、冊子を受け取って確認をする。

「ああ、分かりました。…うん、確かに。それじゃあ座らなくて良いので椅子を戻して帰って下さい」

「えー?だって今日一緒にご飯食べる約束でしょ!別にここで待ってたって困らないじゃん」

本当に困らなければこんなに拒んだりしていない。…という言葉は、相手の気持ちを知っている為飲み込んだ。しかし、此方にはこの人間を受け入れたくない理由が山程あるのも確かで、それなのに何度も離れるように伝えていても踏み込んで来る三好に、最近は半分諦めかけている。

「……じゃあせめて、そこに置いてあるレポートの山、仕分けをしておいて下さい。ただ入り浸るだけなんて許しませんからね」

居ても良い、と言ってしまったような物である。相手も当然そういう解釈をしているらしく、先程よりもぱっと明るい嬉しそうな顔をしながら紙の山をカサカサと弄り出した。
溜息をつきながらも結局こうして甘やかしてしまう。絆されかけているんじゃないか、なんて考える自分にも心底嫌気がさして、なのに三好に依存している事実にどうしようもなく腹を立てた。

「なんか薫ちゃん俺にだけ冷たくない?まあでも、そんな薫ちゃんも好きだけどさ」

「だから、…どうして私なんですか。大体三好君、半年位前まで彼女なんて一ヶ月もてば良い方だったじゃないですか」

三好は元々男が好きだった訳では全くないし、ましてまだ成人もしていない教え子。気の迷い等で済まされても可笑しくない筈なのだ。
例えば自分が本当に絆されてしまったとして、そんな事で馬鹿を見るのは御免だ。
今でさえ、最悪だと思っている位なのに。

「別に、だって本当に好きなんだもん。…あ、ねえ終わったよ。薫ちゃんももう終わらせて早く行こうよ」

そう急かす相手の前には綺麗に学籍番号順に整理された冊子が。見やすく束ごとに何番から何番までと付箋も貼ってくれている。

「君はこういう事もすぐに出来て要領も良いのに、どうしていつもレポート提出だけはギリギリなんですか……」

「うーん…期限守るのが苦手だから?」

「他の所のは余裕を持っていると聞きましたけど。…まあ良いです、三好君も外出る準備して下さい。行きますよ」

はーい、と返事を聴いた後、机を片付け薄い羽織を着る。物の少ないバッグを持って三好の方を振り向くと、既にドアの前で私の事を待っていたようだった。

「俺腹減ったよー……薫ちゃん何食べたい?」

「私は好き嫌いそんなにないので、三好君の好みでどうぞ」

「じゃあ俺今日魚の気分!美味い刺身あるとこ行こ!」

こう普通にしていればまるで恋人みたいなのに、なんて考えて胸が痛む。自分がただ相手の好意を利用して振り回しているだけなのに、よくもそんな思い上がった事が考えられたな、と、重い罪悪感を引き摺りながら、三好に言われるままに部屋を後にした。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.7 )
日時: 2021/08/21 05:04
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】2

美味しい物を食べてお腹も膨れたので、会計を済ませて店を出る。これから起こるだろう事への罪悪感なのか、それとも単なる嫌悪なのかは自分でもよく分からないが、それでも行く前よりも重苦しい感覚に襲われているのは確かで。
三好が言っている言葉にも上手く耳を傾けられず、ほぼ空になった頭で会計を済ませ、いつも店員に向かって言う筈の「ご馳走様でした」の言葉は、とうとう一文字も出て来なかった。

「はー美味かった!…で、薫ちゃん。この後ウチ来るでしょ」

そう口を開く三好と対照に、やっぱりこうなるか、と思いながら口をつぐむ。好きでもない、なのに身体は許している。そんな相手の所に「行く」と言ってしまうのは、つまり自ら犯されに行くのと何ら変わりない。
暫く黙っていると、急に三好にぐっと腕を引かれ、そのまま引っ張って歩かされる形になってしまった。

「あ、ッあの、三好君…!!」

「薫ちゃんにしてみればこうやって、無理矢理連れて行かれるって体になる方が都合良いでしょ。だから良いよ、俺の事利用させてあげる」

そんな事を言いながら、掴んだ腕を離さず進む三好。次はしっかりと断らなければ、家に入ったらもうやめよう、離れようと言って、置いてある私物だけ持って早々に帰らなければ、と。ぐるぐると思考を巡らせながらも歩かされる足は止まらない。人通りの多かった筈の街中を抜け、気付けばいつの間にか閑静な住宅街、その一角のマンションの前に来てしまっていた。
何を言う事も出来ず、階段を覚束ない足取りで登る。
カツン、カツン、と二人分の足音が響き、それが止めば今度は鍵を回す音。そしてドアが開いた所で、私は漸く、あれ以降閉ざしきっていた口から言葉を出した。

「あの、三好君、…もう、ああいう事は……置かせて貰っている私の物だけ持って帰りますから…」

「…はァ?」

俯いていても分かる程のピリっとした空気を感じる。恐る恐る上を向くと、やはり顔をしかめた三好がそこに居た。
怒っているような、何かに耐えているような、そんな顔で私を見下ろす。

「のこのこ好きだっつってる男の家に上がっておいて、まだそんな事言うわけ?」

はっ、と分かりやすい空笑いの後、先程までとは違う威圧感のある低い声でそう言った。

「や、ッ違、三好君が腕を引っ張って連れて来たんでしょう…!?」

「違わねえよ。あんたが何もかも忘れてぶっ壊れてえって顔してたんだろうが」

読まれている、と思った。
三好を受け入れたくない、傷付きたくない、自分には好きな人が居る。でもその実好きな人は振り向いてはくれないし、穴を埋めてくれる人が欲しくて、無理矢理犯されて一時だけでもいっぱいにしてくれる人間が欲しかった。
しかし、そんなに、顔に出ていただろうか。それとも、ただ単に三好がよく見ているだけの事なのだろうか。
どちらにせよ、ここまで言われてはもう、繕う必要もなくなってしまった。瞬間、糸が切れるように自分で必死に押さえ込んでいた欲が顔を出す。

「…じゃあ、分かってるなら早く抱けよ」

するりと首に両手を回し、身体を密着させる。身長差がある為唇へのキスは叶わず、その代わり首筋に吸い付いた。

「は、ッ薫、ちゃん…?」

「私の事を満足させてくれるのではないの?まさか、すぐにくたびれたりなんてしないだろう」

少し挑発的な態度を取る。三好は一瞬眉を顰めた後すぐに笑い、今度は少し屈んでキスをする。口の中を蹂躙され、舌を出して絡めようとすると少し強めに噛まれてひりつくような痛みが広がった。

「はは、人の事煽ったお返し。ほら、先にシャワー浴びて来な」

やりたい事は山程ある上言いたい事も出来てしまったが、シャワーを浴びない事には何も出来ないし進まない為、その言葉に、まずは従う事にした。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.8 )
日時: 2021/09/05 01:08
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】3


シャワーのお湯に当たりながら、まだ私は思考を巡らせていた。
結局向こうの思い通りだなんて考えてみるが、自分が何より"そうされる"事を切望してしまっていた事実に半ば無理矢理気付かされる形になって、その浅ましさに恥ずかしくなり、なんて自分勝手なのだと、消えてしまいたくなった。
それだって全て、確かに自分のせいなのだ。本命を諦める事も、三好を受け入れる事も嫌で、なのに三好に居なくなって欲しくない。そんな中途半端な、自分のせいなのだ。
しかしこうしていたって仕方がない。取り敢えず風呂場から出て、何もかも忘れて三好でいっぱいにしてもらおう、と。そんな事を考えながらシャワーを止めて、風呂場の扉を開けた。途端に、寒気がしてくしゃみが出る。
身体を洗い終わった後どれ位ああしていたのだろうか。このままでは冷えてしまうと思い、すぐに服を着て三好の部屋へと戻った。

「薫ちゃん遅かったね。すぐ湯冷めするんじゃない?温かいコーヒー淹れようか?ココアもあるけど…」

「…ココア。でも良いですよ、台所勝手にお借りしますから。三好君も早くシャワー浴びて来て下さい」

心配そうにしていた三好にそう言って突き放すが、当の本人はうん、と一言、嫌な顔や素振りを一つも見せずに風呂場へと向かっていった。
私も居間へ移動し、冷蔵庫から牛乳を、キッチン下から鍋を取り出し、注いで火にかける。そして後ろの食器棚から自分に用意されたカップとスプーンを出してココアパウダーを入れ、沸くのを待つ。
こうして当たり前のようにある自分用のカップや、何も訊かなくてもどこに何があるか分かってしまうキッチン周りに、常習的に家に出入りしてしまっている事を改めて実感してまた気が重くなった。

考え事ばかりしていると、牛乳が鍋の縁に泡を作り始め、次第にグツグツと音が出て来る。もう良いだろうと火を止めカップに牛乳を入れて、先程のスプーンで混ぜた。そしてミルクココアが出来たので三好の部屋に戻り、ベッドにもたれるようにして床に座る。舌を火傷しないように気を付けながら一口すすると、口の中に広がる甘い味にほっとした。
猫舌である事と、三好を待つ間手持ち無沙汰にならないようゆっくりゆっくり飲み進めて、いよいよもう一口といった所になって部屋のドアが開いた。

「ごめんね、お待たせ」

三好がタオルで髪の毛を拭きながら此方に笑いかける。ふわりと香る風呂上がりの相手の匂いに、自分も同じ匂いを纏っているのか、なんて柄にもない事を考えた。

「別に、そんなに待ってなんていませんよ」

くい、と残りのココアを飲み干す。一口しかなかったのと時間をかけて飲んでいたので、もう温みはなくなっていた。
カップと掛けていた眼鏡をベッド脇の机に置き、三好の方をじっと見つめる。しかし三好は微笑むばかりなので、焦れったくなって自らベッドに寝転んだ。

「はは、何薫ちゃん、やっぱ待ち切れてないんじゃん」

「貴方がさっさと動かないからです」

挑発的な事を言いながらまたがって来る三好に対して若干の苛立ちをそのままぶつける。それでもやはりこの男は、相変わらずの笑顔で、愛おしそうに笑うのだ。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.9 )
日時: 2021/09/07 23:14
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】4

「ね、薫先生。…キスしても?」

ゆっくりと頷くと、覆い被さるように体勢を変え顔が近付く。唇が重なると、顔の角度を変えながら触れるだけのキスを繰り返す。ちゅ、ちゅ、とリップ音が耳に響き、少しの間そうしていたと思うと次に唇をぺろりと舐められた。それを合図に舌を出すと、今度は噛む訳でもなく絡めてくる。互いの舌を舐め合うように動かした後、両手で三好の顔を引き寄せ此方からそのままキスを仕掛ける。玄関先でされたように、口内を蹂躙してやるのだ。上顎を舐め上げ、歯茎をなぞって、また舌を絡めて。三好が吐息を漏らす度に、私も少しずつ身体に熱が篭っていった。

「はぁ、ッは……、せんせ、何でこんなキス上手いの…」

「貴方に、仕込まれたんですけれど」

頬を少し赤く染め肩で息をする三好に、私はしれっと答えると、顔は赤らめたまま驚いたように目を丸くした。

「…天城先輩じゃ、ないの?」

そう言われた瞬間に、目を逸らしてしまった。嫌な所を突かれたと思っている事を、相手も簡単に察して来るだろう。それでも三好はそんな事では気を遣ったりしない、土足で人の腹の中に踏み込んで来るような人間だという事を私は知っているから、なるだけ毅然としたように、私は答えなければならないのだ。

「三好君がいつもしてくれるのが気持ち良いので、それを真似るようにしてみました。…あの人は、私にキスなんてしてくれた事は一度もありませんよ」

一瞬表情が曇ったような気がしたが、次にはすぐいつもの様子に戻っていた。
思い違いだったのか、それとも何か気に障る事があったのかは分からないが、考える間もなく私のシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外してからまた三好の顔が近くなる。そして私の首筋に息がかかる所まで来て、ぴたりと動きを止めて口を開いた。

「触っても?」

「いちいち聞かなくて良いです!」

らしくない事をする三好につい腹が立って少し声が大きくなる。三好はそんな私の怒りを尻目にふは、と吹き出すように笑って、首筋にキスをした。そこから鎖骨へと順にゆっくり唇を落とし、そして胸にも。ちろりと舌が当たると、小さな嬌声と共に身体が跳ねた。

「はは、薫ちゃんここ好きだもんね」

そう言った後また、執拗に胸を責められる。周りに舌を這わせて焦らし、少しだけ中心の蕾に刺激を与える、なんて意地悪な事を繰り返された。じわじわと押し寄せる快感がもどかしくて仕方がなくて、とうとう自分のモノに手を伸ばした。が、触る事は叶わず三好に手首を掴まれる。

「やだ、嫌だ何で…!触らせて欲しい、苦しいッ…」

「駄目。だからこっち……ね?」

静止をかけたまま、ローションを出し私のお尻に指を当てる。そのまま塗りたくり、ぐっと強く、でもゆっくりと押し込まれた。三好との時は家でも一人で弄ったりなどは全くしない為、指一本の質量でも大分苦しい。毎回の事なのに、三好はまた少し驚いたような顔をした。

「今日、シャワー結構長かったから解してるのかと思ってた…何、してたの?」

「ああ…貴方との事を考えていました。そもそも、三好君は触ってくれるのだから、自分でする必要なんてないだろう?案外、面倒なんですよ。自分でなんて気持ち良くもないし」

つい思い上がったような、甘えたような事を言ってしまったが、三好を見ると一際嬉しそうな顔で微笑んでいた。

「そっか…そっかあ。じゃあ、沢山気持ち良くしてあげないとね」

ゆっくりと指を奥に押し込まれ、前立腺に指先が擦れる。瞬間、身体に電流にも似たような強い快感が走った。びくびくと身体が震えるのを抑えられず、声も勝手に出てしまう。穴から漏れ出すローションは体温で酷く熱くて、自分がどれ程興奮しているのかを表すようで恥ずかしくなる。しかし、その全部が今の私には堪らなかった。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.10 )
日時: 2021/09/08 00:33
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】5

「薫ちゃん、指増やすね」

「…ッから…いちいち聞かなくて良、ッて、ぁ、ぅあ"ッ…!!」

返答など待たずに、言うだけ言ってまた二本目の指でこじ開けられ、先程よりもぐちゅぐちゅと空気を含んだような大きな音になり、苦しいような感覚にも段々慣れてくる。相手を受け入れる準備が整って来ている事の表れであった。

「あは、言われて来るって分かってからの方が気持ちい?いつもより反応良い気がする」

確かに、何も言われないと急に来るものだから、素直に快感を受け入れられず最初は驚きが勝ってしまう事も多かった。しかし本当に、この人間は身体を触るだけで何でも分かるのかと少し不思議に思ってしまう。

「ねえ、柔らかくなって来たから指また…」

言いながら三本目の指を窄みにあてがう。私は三好の手をぐっと押し、そのまま入っていた指も抜かせた。
小首を傾げながら見つめる三好に、頭が回らないながらもどうにか言葉を紡ごうとする。

「…も、いい、から…みよしくんの、早くッ…」

「いや、まだ早いよもうちょっと慣らさないと…薫ちゃんが痛いの、俺やだよ」

気を遣ってくれているのが伝わるが、生憎私はもう礼を言うような余裕は持ち合わせていなかった。優しくて、でも的確に良い所ばかりを責められて、ずっと甘い感覚が身体の中を巡る。大切にされたいのに、いざそうなると自分ばかりが気持ち良いのも、愛されているように触られるのも、耐えられなかった。多少痛くても、乱暴でも、全身で"好き"を示されるより遥かにマシだった。

「こ、こんなに、きもちいいの、嫌だ…もっと、酷くて良い、から」

「何、俺に触って欲しかったんじゃないの」

何となく真剣な面持ちになる三好。と、本命をつい比べてしまい涙が溢れてしまった。声も、身体も、触り方も。やり方全部が違って、それは至極当然の事なのに、私には酷く惨い事のように思えて、刺さって仕方がなかった。
情けなくしゃくり上げて、途切れ途切れにしか出て来ない言葉を無理矢理繋げて口に出す。

「だからって、こんな…!や、弥生君はもっと乱暴で、ぜったい触ってくれなくて、だから優しいのが、こわい…こんなに沢山愛してくれなんて、言ってな…ッ」

私が声を震わせながらそう言うと、三好は少し悲しそうにへらりと笑う。そして私の頭へと手を伸ばし、髪の毛を梳くようにくしゃりと撫でた。

「無理だよ。あの人と違って俺は好きだもん」

組み敷くように片手で私の両手首を頭の上に持って行き、押さえつけられる。何をされるのかと身構えてしまうが、それでも暴れるなんて事はしない。私にはそれだけの力も、気力もなかった。無抵抗にただ目を赤くして見つめていると、三好は空いている片手で再び私のお尻を弄り出す。
優しく掻き回され、前立腺も執拗に擦られ、涙も止まらないまま気付けば私は、三好の指を三本しっかり咥え切っていた。

「お願いだから、今は俺だけにしてよ。…天城先輩の事とか、言わないで。俺、薫先生の気が紛れるならいつでも優しくしてあげるから」

そう言って離された手首はじんじんと熱を持ち少しの痛みが出る。きっと痕が付いているんだろうな、なんて考えていると、太腿を持ち上げられ挿れるよ、と一言、先程までの比にならない質量をお尻に感じた。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.11 )
日時: 2021/11/14 05:28
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】6


「は、ッぁ…、やば……中あっつ…いつもより興奮してる…?」

呼吸をする事で精一杯の私の頬にそっと右手を添えて、そんな事を訊く。

「三好君だって、手、こんなに熱い…興奮しているのは、私だけじゃないッ…」

添えられた手を握りそのまますり寄せてみる。ぴくりと少しだけ指先が動いたので三好の顔を見てみると、緊張のような、恥じているような、変な表情で私をじっと見つめていて。…かと思えば急に腰を動かし始める。指とは全然違うもっともっと熱い物に、捩じ込んで、押し当てて、揺さぶられる。
ベッドの軋む音も、水音も、相手の吐息や汗ばんだ肌の感触も、全部が刺激になっているようで、昂って仕方がなかった。

「ぁ、ッう"…待、って、だめ、嫌だッ…!!」

「何で、何が駄目なの」

先程までと違う緩い腰の動きになり、じわりと底に溜まるような快感で焦らされる。それでも唇を噛み、何とかもどかしさに震える体を抑えようとした。それなのに急にまた荒く突かれて、思わず声が漏れる。

「ねえ、薫ちゃん、何が駄目なのってば」

私が果てないように緩急をつけながら、再び三好は問う。きっと答えるまでずっとこのままにするつもりだと悟り、まだ呼吸も整わないまま口を開いた。

「これ、以上、ほんとにだめッ…へんになる、何も考えられなく、なってしまう…ッ」

三好はまた少し動きを止めて、涙でぐしゃぐしゃになった私の目を見つめる。
三好とのそれはただの肉欲なんかとはまるで違って、触られると苦しい事も辛い事も、何もかも忘れられた。しかしつまりぐずぐずに甘やかされるという事で、内側から溶かされて、この人間が居なくなって生きていられなくなったらどうしよう、なんて不安に襲われる事でもあった。
しかしそんな私の心情を他所に、可愛い、なんて漏らしながらまた頭に手を伸ばし、男にしては長めな私の髪の毛の間に指を通してさらりと落とす。そして柔らかく目を細めた後、一層激しく前立腺を責めだした。

「や、だめ、ってほんとに、なんで、ッみよしく…ッ…!!」

「だめじゃないよ、ッ良いんだよ、いっぱい変になろ?ねえ」

そう言って、腰の動きはそのままに、これまでずっと触れて貰えなかった陰茎に手を伸ばし上下に扱かれる。

「大丈夫だよ、俺しか見てない、誰にも言わないから」

駄目と嫌だを繰り返す私に、三好は優しい声色でそんな事を言う。それと裏腹に動きは相変わらずで、私のを掴む三好の手は止まらない。静止をかける事もままならずに頭が真っ白になり、一際高い声と共に呆気なく吐精した。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.12 )
日時: 2021/11/14 13:29
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】7


肩で息をする私の中からずるりと三好のそれが抜ける。終わりなのかと一瞬考えたがやはりそんな訳はなく、私の膝裏に手を入れ脚を思い切り持ち上げた。

「ごめんね、薫ちゃん…でも俺まだ、イってねえのッ…」

「や、ッ待ってくだッ…ひぁ"…ッ!?」

そんな一言を放たれ、何をされるかが分かった頃にはもう遅かった。
再び中に三好が入り、しかし今までとは全く違い、結腸の奥まで貫かれて息が詰まる。

「ぁは、ッこれ…すげ、きもちい…持ってかれそ…ッ」

言いながら三好は動きを緩めない。もっとと望むようにぐりぐりと押し当てられ、その刺激で余計に三好のモノを締め付けた。肉壁を引っ掻いて出て行ってはまた奥に入り込んで、その度に肌の当たる音が響き、三好の荒々しい吐息と、私の理性の欠片もないようなだらしない声が部屋の中に充満する。

「あぁ"、ッう、んぁあ"…ッ!!くる、しッ…むり、むり、ッこわれる…!」

「うん、ッうん、いいよ、俺に壊されてよッ…」

暴力的なまでの快楽に、半ばパニックになりながら三好に訴える。苦しさすら快感として拾い上げてしまう身体には、これ以上は本当に限界だった。これ以上続けられたら、本気で駄目になると思った。それなのに三好は愛おしそうに私を見て、その全てを肯定する。
全部、どろどろにされる。
何も考えられなくなって、ただ目の前に居る人間の事しか見えなくなって、それで、次は。

「ほら薫ちゃん、前、ッ自分で触って」

手を掴まれ自身に当てがわれる。空の頭で言われるままに擦ると、熱くなった箇所からは先走りが溢れていて、上下する手を簡単にどろどろに汚した。過ぎた快感はそれでも留まる所を知らず、ひたすら与えられて、受け入れる事も上手く出来ない。

「だめ、ッも、すぐいく、でる、でるッ…ぅああ"、やぁ…ッ!!」

「いいよ、俺も限界、ッ出すね…」

自分本位な動きですら、甘ったるく焼きつくような気持ち良さでいっぱいになる。
私の叫びにも近いような声が三好の籠もった声と重なり、瞬間、私はまた腹を自身の液で汚し、中には脈を打ちながら、三好の熱いものが入って来た。

「は、ッはぁ…ッ薫ちゃん、大丈夫…?」

三好の問いに大丈夫だ、と答えてやりたかったが、漸く終わりかと思うと一気に力が抜け、言葉が、声が全く出て来ない。
片付けもしなければ、服も着なければと思いはしたものの、思うだけで身体も動かず、視界がぼやけ、瞼が落ちて来て、そのまま意識が離れていった。




次に目を覚ました時にはもう外は明るくなっていた。夢の余韻が抜けきらない中、大きめなベッドの上、隣に人の温みは殆どなく、三好は既に起きているようだ。
全裸のまま何も出来ずに落ちた筈なのに気付けばぶかぶかのTシャツを着て、下着もしっかり穿いている。あの後全部やってくれたんだな、なんて少しの罪悪感に見舞われた。

「い"ッ………」

時計を見ようと起き上がろうとしたが、腰に痛みが走り、倒れるように元の仰向けに戻る。昨晩散々愛されて、滅茶苦茶になった事の証明であった。
眼鏡を掛けようと意を決して体を起こした時、ふと、不安が過ぎる。最中の私は変な事を口走ったりはしなかっただろうか。
快楽にかまけて、もし、好きだなんて零してしまっていたら、それは。
そんな考えを掻き消すように、無理矢理ベッドの端に座りそのまま立つ。一つ一つの動作に痛みは伴うが、余計な事を考えるよりもずっと良い。



Re: 【BL】掃き溜め ( No.13 )
日時: 2021/11/14 14:27
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】8


寝室から出てリビングに向かうと、三好がキッチンの方で何かをしているようだった。

「三好君、おはよう御座います」

「アワッ…あ、お、はよ」

図らず背後から声を掛ける形になってしまい、驚いたように三好の体が跳ねた後、振り向いて挨拶を返される。その手にはマグカップが握られていて、すぐ側にはインスタントコーヒーの袋があった。

「コーヒー、私が淹れます。座っていて下さい」

マグカップを此方に渡して、と手を差し出して示す。三好は少しの驚きと心配を混ぜたような顔で私の事を見ていたが、真っ直ぐな目で見つめ返すと、折れるようにカップを渡してくれた。

「私も頂いて良いですか」

「あ、ッうん、良いよ、どうぞ」

せめてこれだけでも、と三好が私の分のカップを出す。その後は大人しくソファに座り、私が来るのを待っているようだった。
ケトルに水を淹れて沸かし、その間にカップに二人分のコーヒーの粉を入れておく。

「三好君、台所、もう少しお借りしますね。冷蔵庫の中、使っちゃいけない物はありますか?」

「エッ…いや、ない、大丈夫」

先程と同じような返事を三好の口から聞き、まずは目についた食パンをトースターに入れる。そして冷蔵庫を見ると、卵とベーコンがあったのでそれを出した。
油をひいたフライパンを火にかけ、ベーコンを焼く。その上に卵を一つ落とし、水を入れて蓋をする。
食パンが焼き上がり卵も良い半熟になれば、パンの上に乗せて塩胡椒を振って、軽い朝食の出来上がりだ。
ケトルのお湯も少し前に沸いていたようだったので、カップに注いで朝食の皿と共に持って行く。

「少しお待たせしてしまいましたね、どうぞ」

皿をソファ前のテーブルに置く。三好は一瞬目を輝かせた後、すぐに怪訝そうな顔になった。

「…薫ちゃん、自分のは?」

「血圧が低くて、朝はどうも食欲がないんですよ」

「そっか。…そういえば朝、いつもコーヒーだけだったね」

納得したような表情になり、行儀良く手を合わせて頂きます、と言う。そして一口齧って、美味しそうに笑った。まるで子供みたいな表情だ、なんて考えた後、いつも大人びているから意識しないけれど、そういえばまだ19歳なのか、と思い直した。

「うま……ありがと、薫ちゃん」

「別にこの位五分で出来ますから、全然。…私の方こそすみませんでした。後処理、全て任せてしまって」

「それこそ全然大丈夫だよ。俺がやりすぎたんだし、薫ちゃん軽いし」

大きな口に食べ物が吸い込まれるようになくなっていくのは、食い手の表情も相まって見ていて何だか気持ちが良い。会話をしながら、コーヒーも飲み進め、いつの間にかすっかり食べ切ってしまった。

「ご馳走様でした!」

「はい、お粗末様でした」

私もカップを空にしたので、二人分のカップと皿をシンクに置いてすぐに洗い物を始める。その様子を、三好はぎこちないような表情でじっと見ていた。

Re: 【BL】掃き溜め ( No.14 )
日時: 2021/11/14 15:51
名前: 綴 凪

【澤原 三好×憂月 薫】9


「三好君、何ですか?さっきから、というか起きてきてからずっと、何だか変ですよ」

皿を洗い終えて一息つき、ソファで三好の隣に座ってそう尋ねた。
もうあまり目を合わそうとはしてくれなくて、此方が一方的に顔を見る形になる。三好は変わらず緊張や気不味さもあるような、何やら困った顔をしていて、見ている此方も少しばかり不安になった。

「いや、えーっと……引かない、?」

「ええ、別に」

もじもじと両手を合わせて指先を弄りながら、漸く口を割る。

「あの、ね、…昨日の薫ちゃん、まじで可愛かったから、気ィ抜いたら、また勃ちそうで……ごめん…」

「…は?」

拍子抜けして、目を丸くしたまま一気に顔が赤くなる。それにつられるように、三好も耳まで赤くなっていた。
恥ずかしい事をぽん、と言って、言わせたのは私だけれど、だってまさか、そんな答えが返って来るなんて思わないじゃないか。
呆気に取られていると、三好が何か急ぐように立ち上がった。

「いや、まじでごめん!しない、しないよ大丈夫!多分落ち着くし、俺先に大学行くッ…」

言葉を遮るように、立ち上がった三好の服を掴んで引き寄せる。三好は驚いてよろけ、バランスを崩しながら何とかソファの背もたれ部分に手をついた。

「今日、一限ないじゃないですか…一回位、出来ますよ」

まさか自分から、そんな事を言う日が来るなんて。どうして言ったかも分からない、柄でもない、なんて言った側から後悔していると、余裕のない表情と共に後頭部を押さえ込まれ、噛み付くようなキスをされた。
体の芯から蕩けるような、しっかりと熱を孕むような、そんな三好のキスが堪らなく好きで、もう何でも良いか、と思考を溶かす。
暫くして離されると、お互い息も上がり、三好は先程までと違う切なそうな表情になっている。それを見て私も、何だか胸の奥がきゅっと締まるのだった。

「…正直本気でしたいけど、でも駄目だよ。薫ちゃんまだ痛むだろうし、無理かけちゃう。やっぱり出て適当に時間潰すから、薫ちゃんも適当に出て来て」

そう言って私の頭を撫で、家を出る準備を始める。シャツを着てスキニーを履いて、上着を羽織って玄関に行った所で私は三好を追いかけ、声を掛けた。

「あ、ッあの、三好君」

「ん?どうしたの」

人を呼び止めておいて、何となく、言葉に詰まってしまった。訊きたい事は明確に決まっているのに、焦って喉につかえてしまう。落ち着かなければ、なんて考えながら一呼吸置いて、少しずつ言葉を出していく。

「その…昨日、弥生君とキスの事を答えた時、少し怒ったような顔をしたのは、どうしてですか」

三好はああ、と言った後、振り返ってあの時と同じ顔をして答える。

「薫ちゃんにこんなに好かれてるのに、キスの一つもしてやらない天城先輩にむかついたから」

前を向き直って立ち上がり、とんとん、と靴の爪先を地面へ落とす。

「そうですか。…あの、こういう事を言うのは、卑怯だって分かっているんですけど」

再び此方を向いて様子を伺うような三好に私は目いっぱい抱きつく。泣いて縋る子供のようで、情けなくて顔は見せられなかった。

「私は、やっぱり、弥生君が好きです。…けれどセックスは、貴方とする方がずっと幸せだ」

それだけ行って離すと、そっか、なんて言葉を聞く。前を見ると、三好が玄関の扉を開け、背を向けたままひらひらと手を私の方に振っている。私は行ってらっしゃい、と小さく呟いたが、聞こえたのかそうでないのかも分からない内に扉が閉まり、私達を隔てた。

リビングに戻り、人の居ない他人の家に少しの違和感を覚える。
再びソファに座り、重力のままに倒れ込んでまた目を閉じた。

澤原三好という人間は、非常に愛情深い男だった。誰にでも優しいが、特別とそうでない者の区別はついている。
弥生が好きで、心酔していて、それ自体は何も変わらないけれど。
それでも三好に愛された後だけは、弥生と話したいとか、触りたいとか、そんな情は何故か持てないのだった。