官能小説(オリジナル18禁小説)
- Re: 創作BL短編等 ( No.4 )
- 日時: 2025/05/26 22:14
- 名前: 四阿
「延命」/端幡 燈香×花咲 彩葉
いつからこうなった。とか、そんな事を振り返ったって仕方がない。
ただ自分に得体の知れない感情が芽生えた時も、今の関係になってからも、俺は変わらず必死で。
変わらず、この男を渇望している。
「彩葉、ッ気持ちい、?」
「ん、ッぅ゛、きもち…っ」
身体が、頭が、熱い。彼が受け入れてくれる箇所も、全部。重過ぎる快感に、くらくらする。
「もっと、もっとほしい、っとぉ、かッ…」
今でさえどうにかなってしまいそうなのに、そんな甘ったるい声で自分の名前を呼ぶから、余計に熱に浮かされる。
でも、まだまだ飢えは満たされない。
自分の両手指を彩葉のそれと絡めて、ぎゅっと握って、この時間が続けば良いのにとただ思う。
揺さぶって、壊して、こうして自分の手の中にずっと納めておけたらどれだけ良いだろう。
幾らキスをしても、身体を重ねても、全然足りなかった。自分がこんなに欲の深い人間だとは知らなかった。
目を合わせれば瞬間、やけに喉が渇いて、堪らず彼に手を伸ばす。そうして抱き締めて組み敷い
て、優しく触ってやる度に潤む青白橡の瞳に、酷く欲情した。
お願いをすれば可哀想だと思う事もさせてくれた。何だって赦された。
最初は小さな欲求から始まり、それが次第に大きくなっても、彩葉はいつも頷く。そして上擦った声で悦ぶのが、愛おしかった。
それでも渇いて仕方がないから、彩葉が誰にも取られないように外堀を固めようとした。
誰よりも彩葉の事を理解して、誰よりも彩葉の望みに準ずる事の出来る人間になろうと努力をして。
「花咲彩葉の隣には端幡燈香だ」と、周りが自然に認識するように。
そしてそれは自惚れでも何でもなく、本当に当たり前として焼き付いた。
ずっと一緒に居る事を不思議がったり咎めたりする人間は、誰も居なくなった。彼に、好意を差し出そうとする人間も。
だってそんなものは、俺だけで良かった。
「とおか、っやだ、なんで」
「あ?どった、」
動きを緩めて浅い所だけを擦るように動いてやると、切なげに腰を浮かせながら震える。
あのどうしようもなく熟れた声で自分を強請るのが聞きたいと、思ってしまった。
多分こいつも気が付いている。こうなれば口に出すまで望む物を与えない事にも、それは自分のただの我儘である事にも。
「奥、いれて。おまえで、いっぱいになりたい
此方に向ける青白橡から、とうとう涙が溢れる。
それにぞくりとして思わず笑みをこぼすと、彼の後孔にもきゅ、と力が入った。分かった、と繋いだ手を離して頭を撫でる。そしてまた激しく腰を動かせば、びくびくと身体を跳ねさせ自身のモノを簡単に先走りで汚すのだ。
「とお、かぁ゛…っそれ、ッすき、」
「ッ、ちゃんと知ってる、…」
そう。全部知っている。何処をどうされるのが好きなのかは全部、彼が教えてくれた。
最奥を叩くように深く押し込むと一際高い声を出す事。それをゆっくりした時のじわりと襲う快感にも弱い事。その後また抽挿を激しくして舌を絡めてやれば、簡単に果ててしまう事。
何度も抱き合う中で自分だけに暴かせてくれた彩葉の痴態だ。他の誰でもない、自分だけが見て、きたものだ。
これがもっと欲しい。奪い尽くしてやりたい。
だからこそ、彼に与え続ける。
自分の抱える醜い感情を、快楽に溶かして混ぜ込んで、少しずつ少しずつ伝えていく。
でも好きだとか愛しているだなんて、そんな言葉では済まされない。それに恐らく、それが似合う程給麗なものでもないだろう。
だから彼への気持ちを示すには、これしか方法を持ち合わせていない。
腰の動きは止めずに、透明な液体ばかりがだらだらと溢れる彩葉のそれに手をかける。彼はびくりと肩を襲わせ目を見開いた後、腕を懸命に伸ばし、絶るように俺に抱きついた。直後、背中にひりつく痛みが走る。彼の爪が引っ掻いたのだろう。
一度に留まらず、二回三回と繰り返す。
痛い、痛い。でも、気持ち良くて仕方がない。
彼が身体に残る事がただ幸せなのだ。彼がくれるものなら、痛みだろうと関係ない。何だって欲しいと思うから。
それだけの事をしても、付き合いたいなんて望まない。いや、きっと望んではいけない。
自分がそうしているように、彼に依存されている自覚はある。その上でセックスまでしている。
だからこそこれで満足しておくべきだ。
今以上なんてない。ここにあるのは執着と肉欲だけで、コイとかアイだなんていう代物じゃない。
どうせ離れない。離れられない。
何も、変わらない。
際限なく求め続けるし、渇きもなくならない。
声も、身体も、根底の脆さも、花咲彩葉の全てを一つも余さず自分の物にしたい。そういう欲を抱え続ける。
みっともなく。情けなく。
あの時、そうして丁寧に磨き上げていた筈のグラスを噛み砕いてしまったんだから。
だから、いつかこいつに"もう逃げたい"と言われるまでは。
くどくて胸焼けする程の重い泥濘の中、終わりを先延ばしにし続ける。
本当はさっさと終わってしまう方がずっと楽で正しい筈なのに、それでもずっと、苦しみながらこの碌でもない感情を背負って。
あと何日一緒に居られるだろうか。