官能小説(オリジナル18禁小説)
- Это убивает【3/29本編更新】
- 日時: 2015/03/29 21:08
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: https://m.youtube.com/watch?v=l4TG-epVTzc
※15歳未満の方はブラウザバックでお戻りください
題名日本語訳:エータ ウビヴァーチ(これ殺すよ)
テーマソング:MELL【Red fraction】
(参照からどうぞ)
現在オリキャラ(警察、広報部、凪の親族といっても両親兄弟は不可)を募集しております。お待ちしております。
!!Attention!!
この小説はかなりのグロ成分及び死ネタを含みます。義務教育の修了されてない方の閲覧はご遠慮下さい。
学校生活が何分忙しいこともあり、更新は早くて二週間に一度です。最悪一ヶ月以上は更新できないこともあります。御了承下さい。
荒らしやチェンメ、暴言などは一切断らせていただきます。
Maincharacters
Hero:凪(Nagi)♂
本作の鍵となる『殺人鬼を殺す殺人鬼』の一人。
いつも無表情で、少し近寄り難いが、校内ではファンクラブがあるほど女性人気が高い。
交友関係も広く、充実した学生生活をしているようだ。
特技は裁縫、趣味は料理といった考えられないような一面も持つ。
Heroin:嵜(Saki)♀
彼女もまた、『殺人鬼を殺す殺人鬼』の一人。
凪とは正反対で、ごく限られた人間しか彼女の素性を知らず、近寄るものはほとんどいない。
かなりの低血圧で、学校を休むことがしばしばあるが、午後になると嘘のように元気になる。
凪が頭を抱えるほどのヘビーゲーマー。
classmate:一ノ宮 鬨(Toki Ichinomiya)♀
凪たちの同級生であり、嵜のクラスメイト。
広報部に所属しており、部長を努めている。
どこかの修造のように、スイッチが入れば、それはもう熱くなり、周りが見えなくなることもしばしば。
凪に淡い想いを寄せている。
cooperator:廻間(Hazama)?
素顔を紙で隠しており、行動の意図が全く読めない極めて謎が多い人物。
格好も、白い法衣に両腕には重々しい鎖を着けているなど、考えが見えない。
どうやら、凪や嵜の関係を知っており、しかも過去まで知っているらしいが………
???:???(???)?
十年前、ある凄惨な事件を起こした真犯人。
現在国際指名手配中。
誰も見たことがないというが、それが真か偽かは定かではない。
どうやら以前にも殺人事件を起こしており、まさに『殺人鬼』という名の似合う犯人である。
噂によるとPSYCHOPATHらしい。
Subcharacter
public relations club:矢車 御言(Mikoto Yaguruma)♂
(提供:純金リップ様)
今年始め、広報部に所属した新入生。
部長である一ノ宮を敬愛しており、彼女には頭が上がらない。
真面目で正義感溢れているが、それゆえ騙され痛い目を見ることも。
しかし勘は鋭く、情熱に溢れているので、それを強みとして頑張っている。
cooperator:村雲 夏蓮(Karen Murakumo)♂
(提供:蜻蛉様)
嵜のゲーム友達であり、協力者。出会いは格ゲーのオンライン対戦より。
全てを客観的に見てしまう癖があり責任感がない。善悪の判断がいまいち 他人とずれていて、外に出ると度々問題を起こす。が、今は引きこもっていることがほとんど。流行には異常に詳しく、最先端を常に欲する。
enemy:斗澤 永楽(Eiraku Tozawa)♂
(提供:愛深覚羅様)
元軍人そして現警察官で、殺人鬼を殺す殺人鬼を追っているが、それが凪と嵜だとは気付いていない。
警察と言うがどちらかというと犯罪者寄りの考えをもっていたりする。正論を淡々と言いつつ逃げ道を無くすのが大好き。道徳心が 欠けていて、被害や自分の事は考えない。とりあえずルールが好き。PTSDらしい。
rival:大形 愛(Ai Ogata)♂
(提供:モンブラン博士様)
凪たちのライバル。
愛を愛し、不殺生をモットーとする人物。
世界最高レベルの弓の腕前とオリンピック選手並みの身体能力を併せ持つエージェント。敵を愛し、正確に敵の行動を封じ込める人体のツボを射て、動けなくなったところを優しく抱きしめて敵に癒しと安らぎを与える。
enemy:柊紅葉(Kureha Hiragi)>>5
(提供:モンブラン博士様)
〃 :園村修兵(Syuhei Sonomua)>>9
(提供:るみね様)
relative:曙(Akebono)>>12
(提供:蜻蛉様)
classmate:館内正人(Masato Kannai)>>16
(提供:HIRO様)
Story
夜に紛れて、息の根を止める殺人鬼。
だが彼らは殺人鬼でも、特殊な殺人鬼、『殺人鬼を殺す殺人鬼』。
そんな彼らが人知れず罪を重ねる理由とは――――――
オリキャラ募集用紙
##name##
position(立場)
gender(性別)
age(年齢)
tanning(性格)
setting(設定)
deathflagOk?(死亡フラグOK?)
voice(サンボイ三つ以上)
table of contents
prologue>>1
firststory―Is a murderous fiend a person?―
>>4 >>11 >>14 >>15
Secondstory―A murderous fiend's work―
>>18 >>19 >>20
Thirdstory―An informer's true purpose―
>>21 >>22
Forcestory―Nostalgic dream―
>>23 >>25-27
- Re: Это убивает【新キャラ募集】 ( No.18 )
- 日時: 2014/10/10 21:47
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://m.youtube.com/
Secondstory―A murderous fiend's work―
「ふう………今日も疲れた」
学校から帰り、凪は部屋に戻った。
そこらへんにカバンを置き、ベッドに横たわる。
白い天井を見上げた。
明かりは眩しく、凪は思わず腕で目を覆う。
今日はいろいろとあって走り回ったせいか、足が少し痛い。
凪は物思いにふける。
進路はどうだだの、次のターゲットは誰だだの、妙に引っかかる『一部の過去』だの。
あれやこれやと考えるが、途中から睡魔が襲ってきた。
凪は体を起こし、ブラックコーヒーを飲みに下へとおりた。
☆
台所はすっきりとしていて、不快感とかそういうのは特になかった。
シンクもピカピカしており、料理器具もきちんと整備してあった。
これから料理でも作りそうな雰囲気だったが、今の凪が作らんとしているのは食べ物ではない。
眠気を覚ます時にピッタリなブラックコーヒーだ。
凪はコーヒー豆を挽き、ゆっくりと湯を注いだ。
香ばしい湯気がたつ。
近くにあった椅子に座り、さあ飲むぞというところで、とある物のせいで凪の表情が一瞬イラッとしたものになった。
『ゴマダレ-(メール着信音)』
こんな時に誰だと思いつつ、スマフォを見る。
メールの差出人には『HAZAMA』とだけ。
間違いなく情報屋『廻間』からの物であった。
本文はこんなことが書かれてあった。
『燃 夜 12 殺』
最後の文字が些か物騒ではあるものの、殺人予告ではない。
これにもちゃんと意味があるのだ。
まず、『燃』という文字。
これは曜日の『火曜日』を意味する。
次に『夜』。これはそのままだ。
そして次、『12』。これは先程の夜と繋げて読み、『夜の12時』を意味する。
最後の『殺』。これは彼らにとって殺されることを意味するのではなく、『殺す目標を確認したよ』、という意味合いになるのだ。
つまり、『火曜日夜12時、殺す目標見つけたんで処分ヨロシク』、ということになる。
凪はそれを理解したあと、目付きが変わった。
今までちょっと緩かった目もとが、一気に引き締まりまさしく王の眼光、のようになっていた。
スマフォを閉じてテーブルの上に置くと、凪はコーヒーを啜り、愉悦に浸った。
「今度は腕っ節いいの来てくれよ」
☆
一方ここは嵜の部屋。
あいも変わらずゲームに没頭する日々。
嵜は対戦格ゲーに夢中になり、他の物には目をくれようともしなかった。
その嵜が丁度対戦を終わらせたあと、嵜のスマフォにメールがはいった。
『メールだって。穏やかじゃないですね』
嵜はスマフォを取り出し、メールを確認した。
内容は凪のと同じだ。
嵜はスマフォを閉じ、また格ゲーにのめり込んだ。
「うぜえ」
内心廻間をぶん殴りたいのを抑えるため、嵜はキャラに入り込んだ。
廻間は見てないようで見ている。
だから変化とかにもすごく早く気付きすぎる。
でも恐ろしいものだと嵜は心の中で思う。
嵜はもんもんとした何かを吹っ飛ばすように、技を決めた。
☆
「これでよしっと」
メールの送信が完了したのを見ると、電源を切りスマフォを置く。
ここはどこかの書斎。
壁には本がぎっしりと並べられていて、隙間の一つも存在しない。
廻間はその中からひとつの本を取り出し、ただ本を広げた。
本を読むわけでもない、が、眺めるのは好きらしい。
「後は明日を待つだけかあ。なかなか楽しそうだね」
廻間は素顔を隠している白い紙を、ペラっとめくった。
そして奇妙な笑い声が部屋に広がる。
その笑は三日月のよう。
「 」
その時出た言葉は、あまり聞きなれない言語だった。
To be continued
- Re: Это убивает【新キャラ募集】 ( No.19 )
- 日時: 2014/10/19 19:43
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
「あれ?もう帰るの?」
翌日、凪が帰る準備をしていると、ふと後ろから声をかけられる。
振り向くと別のクラス、即ち嵜と同じクラスの女生徒だった。
茶がかかったミディアムくらいの黒髪に、爛々と光る茶色の瞳。
腕には『広報部』とかかれた腕章が付けてあった。
それこそまさしく、『一ノ宮 鬨』の、放課後の姿であった。
凪は至極普通に答える。
「ああ、用事あるしな」
「嵜は?ここ最近学校来てないけど」
「いつもの低血圧だろ。気にするこたーねーって」
そう言うと、一ノ宮に背を向ける。
「じゃ、またな」
一言だけつぶやくと、凪は真っ直ぐ階段へと向かっていった。
その姿を見て一ノ宮は暫くぼうっとしていた。
「(かっこいい………)」
顔がだんだんりんごのように赤く染まっていく。
瞳はとろんとしており、なんだか危険な雰囲気を匂わせる。
だがそれもすぐに消える。
「部長ー!どうしたんですか棒立ちになって………って部長!?本当にどうしたんですか!?熱あるんですか!?」
「ハッ!?」
突如声をかけられ、われに戻る一ノ宮。
隣を見ると、心配そうにのぞき込む後輩の姿があった。
制服はぴしっと決めており、髪の毛も整っておりまさに理想の学生像、と言っても過言ではないだろう。
その人物こそ、最近入部した広報部1年生、『矢車 御言』だった。
矢車は苦笑いしながら一ノ宮に話しかける。
「部長、新しい記事できましたよ。例の殺人鬼についての」
そう言って一枚の紙を見せると、一ノ宮は素早くそれをひったくった。
その記事を見るなり瞳は輝いていった。
「いいわねコレ!早速纏めましょ!」
「はいっ!」
一ノ宮はダッシュで部室へと戻っていき、矢車もそれに続かんとばかりに、全速力で部屋に戻る。
今日も、桜庭高校広報部は、活気に溢れている。
☆
一方ここは誰かの家。
庶民的な家で、その部屋はゲームがたっくさんおいてあり、ゴミなどはほとんどなかった。
若干光は弱いものの、パソコンの光でなんとか普通に保っているようだった。
そんな部屋に、1人の男子の1人の女子がいた。
1人の女子というのは、あのゲーマー少女嵜のことだ。
では1人男子というのは?
「『夏蓮』、暇」
「と言われても要件全部済んだんじゃねえの?」
「帰るのめんどくさい」
「そんな無茶な」
嵜の一言を苦笑して受け流す少年。
引きこもっているせいか肌白く、髪は少しボサボサだった。
しかしながら顔立ちはそこそこよく、印象はまだいいほうだ。
この少年の名前は『村雲 夏蓮』。嵜の良きゲーム友達だ。
出会いはネトゲのギルドメンバーだったことがきっかけで、そこから仲良くなったという。
ちなみに彼は殺人鬼を殺す殺人鬼の正体を知っており、協力者の立場にいた。
ある意味嵜が、凪以外に心を開ける他人という好ポジションにいる。
そんな彼の家にいる嵜。
一体どんな用件だったのだろうか。
「それにさ、今度夏蓮をうちに招待しようかと思って………無理だな」
「ちょっと待てなんだ最後の諦め」
「いやだって、夏蓮さあ、外に出るといっつも問題起こすじゃん。だから無理だなって」
「そりゃ確かに起こすけど………」
「じゃあ無理だな」
「頼む俺に彼女の家で彼女と2人きりなんて夢を抱かせてくれ」
「彼の家、ってのはやり尽くしたからね。何?今度はR-18的な話になるの?」
「俺お前と同じ高校生な。しかも3年な。まだ純粋な。そんな大人の階段まだ登るのは早すぎるな。だから俺落ち着け、な」
「…………………」
彼らの関係。
一言で言うならば「恋人同士」と言った方が早いだろう。
どちらが告白したとかそういう話はなく、ただ単に気があったし付き合ってみるか、という彼らの概念によって、「恋人同士」となっただけである。
お互いに好意を抱いているのかは分からないが、村雲が嵜を好いているのは確かだ。
「そんなことよりな、修理終わったぜ」
村雲は話題を変えようと、棚から二丁の拳銃を取り出し、嵜に投げた。
ゴトッと重々しい音がした。
見てみるとそれは嵜の武器である、『S&W3566』というとんでもない拳銃だった。
S&W 3566というのは、s&w M59ベースの競技用拳銃である。
カスタム部門のs&wパフォーマンスセンターによるカスタムのため「PC356」と呼ばれる。
.356TSW弾を使用し、高いストッピングパワーを持つ。
現在はカタログ落ち状態で、かなりレアであったりする。
初めて見た時、どこで仕入れたのだろうかこんなレア物、と一瞬村雲は思ったが、段々そんなことはどうでも良くなった。
嵜はそれを手に持つと、くるくると回してみたりと、いろいろ試した。
ジャキッと銃をしまうと、コクコクと頷きながら
「うん、かなりいいよコレ。夏蓮に任せておいてよかった」
と言った。
村雲はかなり頑張った、と嵜に笑った。
「今夜の仕事バッチリ決めろよ」
村雲はそういうと、嵜に拳を突き出した。
嵜も拳を突き出し、こつんと合わせた。
☆
リア充め!!!!
この廻間を置いといて何をしとるか!!
「また盗聴?」
うん、なかなか帰ってこないから。
いやあ青春っていいねえ殺すぞ。
「僻むなこの不審者」
君も大概だけどね?
第一拷問が趣味の人って聞いたことないよ物騒じゃないか。
あれでしょ?拷問で苦しむ人の顔を楽しむんでしょ?あー怖い怖い。
「彼らに殺人鬼やらせてる君も大概だけどね」
はて、なんのことやらあ?
「ガロットかエクスター公の娘かどっちがいい?」
やめろ後者は知ってる人いないから。
つーかどっちにしろやめろ。
「あ!異端者のフォークとかどう!?」
てめえ殺すぞコノヤロー。
「冗談だって。冗談だから。だからGDPはやめてイタイイタイイタタタタタタ」
ったく君は本当に変態だな。
拷問かけたやつのもがき苦しむ顔をオカズにするんでしょ?
うわー引くわー
「エクスター公の娘と結婚しろ」
やめてください死んでしまいます。
「「ま、それはおいといて」」
今夜なんだよなー、楽しみ楽しみ。
まあ『アイツ』も見てるんだろうけどさ。
「『アイツ』って、あのアイツ?僕もアイツはどうにもならない野郎だなーとは思ってるけど」
何れはこの手で直接殺す。
見てるとホント殺意しか沸かないんだよな。見ててイラつく。
「1回拷問かけさせてよ」
あー楽しそうだなそれでも。
でもま、まずは今夜の仕事を楽しんでから考えるとしましょうかね。
「はは、了解」
To be continued
- Re: Это убивает【新キャラ募集】 ( No.20 )
- 日時: 2014/11/01 22:12
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
※今回終盤にR-15グロ要素を含みます。苦手だという方はブラウザバックを推奨します。
月が満ちる夜。
とある場所に二つの影があった。
一人は幾分か大人びた青年。
余計に長い黒髪を、後ろで適当に下でまとめている。
もう一人は年齢にあったような少女。
こちらは黒髪を肩のところで、バッサリと切られており、整われた短髪だった。目が悪いのだろうか、メガネをしている。
そんな彼らの傍らにあるのは、その容姿に合わぬ、一本の刀と二丁の銃。
明かりがそれらを鈍く光らせる。
そんな場所にもうひとつの影がやってきた。
白い法衣を身にまとい、白い紙で素顔を隠している、男とも女とも言えぬ人物。
白い肌が月明かりに照らされ、見事な輝きに包まれていた。
お察しの通り、彼らこそ凪と嵜、それに廻間だ。
「やあやあやあ。お二人さん今晩は。いい夜だね。月が本当に明るいし空気もよく澄んでる」
「本来なら、いい夜だと言いたいところなんだがな」
「そうとも言えないからね、特に今日は」
「まあそりゃ、こんないい月が出てるってのに、人殺しの夜となっちゃあねえ。準備は大丈夫?」
廻間の口から人殺しの夜、という言葉が出た。
そう、彼らの本業は『殺人鬼を殺す殺人鬼』。殺人鬼だけを殺すことを生業としている。
ちょうど今日が、その『殺人鬼を殺す殺人鬼』の活動日だった。
二人は当たり前だというように首を縦に振った。
「よしじゃあ目標の説明をするね。ターゲットは最近巷で有名な殺人鬼。主に女子大生が狙い目みたい。そいつに捕らわれた人は、強姦された後に惨殺死体となって発見されてるらしい…………んだけど、知ってた?」
「よくそういうニュースが流れてると思ったらそいつの仕業か」
「まあここら辺は知ってたか。んで、そいつの特徴なんだけど。そいつねえとんでもない性癖の持ち主で、犯した女をメッタ刺しにしたくなるらしくて。しかも人体収集癖も持ってるみたいで…………集めてんのはs…………うげえ吐き気が」
「なんとなく想像ついた」
「私も」
廻間のその説明を聞き、げっそりとした顔になる凪と嵜。
凪から手渡された袋に吐瀉物を吐き出し口を近くの水道で濯ぐと、廻間はまた説明を再開する。
「そいつは普段スタンガンで気絶させてから家に連れ去るみたいなんだ。絶縁Tシャツ来てきたよね?」
「そう言う事だったのか。納得」
「もちろん着て来てる」
「よし。それで今夜そいつがまたやるらしくてさ。追っているところを狙って殺して欲しいんだ」
「成程な。んじゃ早速ひと仕事行くか。行くぞ嵜」
「御意」
一通りの説明を聞いたあと、凪と嵜は人間離れした跳躍力でその場を去った。
廻間はそれを見届けたあと、ちらりと後ろを伺う。
その後ろからまた新たなる影が現れた。
笑顔を浮かべたまま、その者は近づいてくる。
そんな人物に廻間は、渾身のドロップキックをかました。
モロに食らって転ぶその人物。
「やあっとお出ましかい。曙。もう彼らは行ってしまったよ。お仕事にね」
「だからと言ってドロップキックを予告なしでやるのはやめてくれないかな!?」
「予告したらよけるじゃないか」
「痛いのはやだからね!!」
涙目になって反論する人物。
その人物こそ、廻間の知り合いである『曙(アケボノ)』であった。
彼は自称博愛主義で、常に笑顔を絶やさない人物だ。
だがそういうのは表の仮面で、裏は拷問が趣味というとんでもない性格の持ち主なのだ。
どういう訳か、凪たちとは面識があり、相談役を一役買っているのだ。
ただ彼は拷問が趣味なので、殺してしまう彼らには些か不満もあるようだが。
「ほら早く立って。見に行こ」
「ごめんの一言すらないとは」
そんな言い合いをしつつ、彼らもまた人間離れした跳躍力でその場を去った。
☆
「目標…………あ、あれかな」
凪と別行動をとってから数分。
ひと足早くターゲットを見つけた嵜。
そこには一人の男が気持ち悪い笑みを浮かべながら、血なまこにして獲物を探していた。
髪型も服装もあまり綺麗ではなく、小汚いほうだった。
目はぎょろりとしており、どこぞの怪物のようであった。
嵜は廻間から事前から手渡されていた写真とその男を見比べて、それが今回の目標であることを確認すると、すぐに凪に電話をかけた。
「目標発見」
「了解、今そっちに向かう。ターゲットから目を離すなよ」
「襲われそうになったときは、殺しても構わないんでしょ?」
「構わん」
それだけ会話をすると、嵜は例の目標に目を向けた。
「今回はそれなりに、いい相手なんだよねェ?期待どおりだといいなァ」
どことなく、ギィッと言葉を連ねながら。
そう数分も経たないうちに、凪はやってきた。
いつもの涼しいカオで、凪は目標の男をちらりとみる。
「うっわ、見るからにそれっぽいやつだな………」
「着てる服も、どことなく血の香りがする」
言っていることは間違いではなかった。
確かに血の匂いがするのだ。
「さてと、さくっと殺っちゃうか」
「うん。さくっとね。首を」
そんな談笑をしつつも、彼らは各々の獲物を構え、その男に音もなく近づいていった。
その男は探していた。
今日の獲物を。即ち女子大生を。
こんな夜遅くまで出歩いている学生と言ったら大学生くらいなものだ。だから女子大生を探しているのだ。
胸は大きい方がいい。
スタイルもいいに限る。
そう思って探していたその時だった。
突如悪寒が走った。
誰かに狙われているそんな気がした。
後ろを向いてもどこを向いてもその者はいない。どこにいるんだ。
気配を殺してこちらに来ているのか。
それとも気のせいなのか。
男は落ち着かなかった。
懐からスタンガンを取り出し、威嚇のようにそれを構えた。
だが一向に悪寒が消えることはない。
それどころか冷や汗までも流れ出す始末だ。
男はたまらず逃げ出した。
走って走って走りまくった。
けども妙な恐怖心は消えてはくれない。
何なんだ、一体何なんだ。
男は次第に涙目になり、息をせききって体力のある限り走った。
ある程度走って、もう大丈夫だろうと思い呼吸を整えている時だった。
「みーつけた」
「みーっけた」
二つの声が重なり、男に向けられた。
慌てて後ろを向くとそこには意外な人間がいた。
まだ未成年であろう男女の二人組だ。
だが男には彼らが普通の男女の二人組には見えなかった。
彼らには武器があった。
男の方は上等な日本刀。女の方はレア拳銃が二丁。
そして、尋常じゃない殺気。
それが彼らを包んでいるかのように男は見えた。
「ここがお前の今日の寝床だ」
「いや、今日からの寝床だよ」
「誰にも見つからない冷たい寝床さ」
「良かったね。新しい家見つかって」
無感情にそう言い放つと、男は刀を抜き、女は二丁の銃を構えた。
その矛先は間違いなく男に向けられていた。
男は逃げようとしたが、目の前が壁であることと来た道をその男女の二人組に塞がれていることに気付き、身動きが取れなくなっていた。
スタンガンを使おうとするも、まさかの自らの手にそれは握られていなかった。
逃げるときに落としたのだ。
絶望的な状況に男は何を思ったか、男女の二人組に殴りかかった。
しかし二人組の青年の方に、かるくねじ伏せられ、首のあたりに刀がヒタリと押し付けられる。
やけに冷たかった。
「散々やっといて死にたくないとかなしな。今度はお前の番」
その言葉で、男は全てが潰れた。
男が最後に見た光景。それは――――
清々とした笑顔を浮かべた若い男女の二人組だったという。
☆
二人の目の前には、かつて人間の形をしていたモノ。
今ではすっかり腹を引き裂かれ、ありとあらゆる内蔵が取り出されて空洞になっていた。
首から上はすでに無く、四肢でさえ跡形もなくなっていた。
それはまるで、化物にくわれたかのよう。
目玉もくり抜かれ、そのくりぬかれた目玉は既に嵜がすり鉢のようなもので潰していた。
ちなみにどうやってくり抜いたかというと、ピーラーの芽を取る部分で目玉を抉ったという。
凪はそのピーラーで皮膚という皮膚を剥いてしまった。
当然爪の生皮もべりっと剥がした。
だがまだ足りないというような顔をしていた。
「やあお疲れ様ー………くぁwせdrftgyふじこlp!?」
「おわー………」
ちょうどその時、タイミングを見計らったかのように廻間と曙がやってきた。
しかし廻間はその場の状況に卒倒し、曙は曙で珍しく青ざめていた。
「ねえ、凪、嵜。これどういう…………」
「「見てのとおり」」
「…………」
さらっと答える彼らに対し、曙はただただ絶句していた。
これだけ派手にやってもまだ足りないのか………
曙は少しドン引きしながらも笑顔を保つ。
「と、とりあえず仕事終わったんでしょ?そろそろ帰って寝ようか…………ねえ?」
「わかった」
「御意」
遊び足りないとでも言いたげな彼らをよそに、曙はさっさと倒れた廻間を抱え、来た道を戻っていった。
それについていくように、凪たちも家へと帰っていった。
後には、無残に殺された『殺人鬼だったもの』があるだけだった。
End
- Re: Это убивает【11/1本編更新】 ( No.21 )
- 日時: 2014/11/13 08:30
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
Thirdstory―An informer's true purpose―
「おはよう嵜」
「おはよう曙」
あの夜から一夜明け。
曙は廻間の家へと全員を連れてきた。
家というより、別荘と言った方がいいだろう。
家というには、随分と豪華すぎ、随分と広すぎるのだ。
大理石でできた床、至る所にガラス細工を施された窓、やたらと高い天井。
どれをとっても普通とは言えない家なのだ。
むしろ、金持ちの持つ別荘と言われた方が、しっくりくる。
それがなぜ、廻間の家となっているのだろうか。
実は随分前に、放ったらかしにされていたこの別荘を、廻間が勝手に買い取ったのだ。
幸いこんな郊外に建っている別荘なんて、誰もほしがりはしなかったためか、あっさり廻間の家になった。
しかもこの別荘、とある金持ちの別荘だったらしいが―――――
その話はいずれ明らかになるであろう。
「珍しいね、凪より嵜が起きてるなんて」
「凪、頭いたいって」
「何で?それこそ珍しい」
「4日連続は流石にきつい、だって」
「廻間か」
「うん」
こくりと嵜は頷いた。
そう嵜の言う通り、2人は4日連続で例の仕事をこなしていたのだ。
流石に疲れがたたって、体のどこかをおかしくするわけだ。
だがそれでも体を崩さない嵜はある意味すごいのかもしれない。
「そっか。嵜、いつもの低血圧は?」
「今日は調子がいいんだ」
「あ、そうなんだ。じゃあ制服持ってこなきゃ―――――」
「いらないよ」
「へ?」
そう曙の言葉を遮るように、嵜はそうつぶやいた。
「うちの学校、私服だから」
「……………へっ!?いやでも凪は制服」
「学校変えたんだよ」
「いつの間に!?」
「ちょっと前。通信制自由登校の学校に」
「………あ、あーね。そういうこと」
曙は納得したようにぽんと手を打つ。
確かに、嵜は例の低血圧によって、欠席日数がかなり多くなっていたのだ。
そのためか、留年の道へと突き進んでいるのだ。
このままでは本当に留年してしまう。
それをなんとか避けるためにとった方法が、『自由登校制の学校への転校』だった。
この方法をとったことにより、手続きがいろいろと面倒くさいことこの上なかったが、嵜は留年を免れたわけだ。
ただ一ノ宮はどこか納得がいっていなかったが。
曙はふうと息をつき、ソファに座る。
「今日は行くの?」
「テキストやる」
「てことは行かないのね。わかった。じゃあ桜庭高校には凪の休みの連絡入れとかなきゃね」
「よろしく」
曙はまた立ち上がり電話を入れるために、ホールともいえる居間を後にした。
嵜は、曙がいつの間にか持ってきていたコーヒーを一つ取り啜った。
曙は凪ほどではないが、コーヒーを作るのがうまい。
いつも好み通りに作ってくれる。
これであの性格じゃなかったら完璧なのに、と一瞬思うことがある。
しばらくしていると、廻間が降りてきた。
何時もの白い紙に白い法衣、両腕につけられた重々しい鎖、という不審者スタイルは相変わずだった。
「あ、おはよ嵜」
「おはよう廻間」
「やっぱ4日連続は流石に無理があったか………ターゲットが結構いたからねえ」
「なんなんだこの街」
「まず1日目は殺人がその場で起こったからすぐに対処、2日目は特になかったけど見回ったじゃない?3日目はまた夜の見回り、んで昨日か例の殺人鬼」
「2日目と3日目は一体」
嵜は呆れたようにまたコーヒーを啜る。
なんだ仕事ないじゃん。
そう思いつつソファにもたれる。
今朝は調子がいいんだといいつつも、やはり眠いのだろうか、瞼が重そうに見える。
「頭痛薬買ってくるか………」
そういった後、嵜はまるで死ぬかのように眠りについた。
その寝顔はやけに清々としていた。
☆
寝ちゃったか。
まあ無理もないか。
なんせ曙よりも先に起きてたって話らしいしね。
あの早起きの曙より起きるなんて、大したことだと思うよ。
それにしても、頭痛か。
嵜もさっきぽつりと頭いたいって言ってたっけな。
もしかしてシンクロしてる?
もしもそうだったら……別に驚くことないか。
だって、凪と嵜は『実の双子』だもんね。
「廻間起きたのか」
やあおはよう曙。
いい朝だね。
1人はグロッキーだけど。
「それは君のせいだろう」
あはは、やっぱそうか。
んーん、やり過ぎちゃったか。
今度はスケジュール決めなきゃ。
「その前にそうそう殺人鬼なんていないだろ。スケジュールもなにもないって」
ですよねー。
わかってましたともうん。
「全く………というか、君の本当の目的ってなんだい?例の凄惨な殺人事件を起こした犯人を殺す以外にあるんだろう?」
あー、やっぱバレてましたか。
「なんとなく察してはいたがな。で、何が目的なんだ?」
決まってるだろ。
『ソイツ』に『会う』ことさ。この街にいることは確かなんだから。会ったら1度ぶん殴ってやる。凪と嵜の分までね。
To be continued
- Re: Это убивает【11/13本編更新】 ( No.22 )
- 日時: 2014/11/24 18:02
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
「ちょっと出かける」
暫くした後降りてきた嵜は、廻間たちにそう言い残すと、家を後にした。
みるからに、買い出しに行ったのだろう。ご丁寧にエコバッグを持っていた。
それを追うように、凪がフラフラと階段を下りてきた。
顔色が随分悪い。今にも死にそうな顔だった。
「ちょっと凪!?寝てなくていいの?」
「腹…………減った」
ボソボソと小声で喋るその様子から、かなりだいぶ参っているようだった。
廻間はそれでも凪を部屋に返そうとするが、なかなか戻ってくれない。
曙も持ってくるからと説得したものの、それでもうんとは言わず、台所に立とうとした。
「お前らが………作ると…………大抵…………ダークマターになってくるから…………作った方が………マシなんだよこんちくしょうが…………」
と、一言いうととたんに二人は押し黙った。図星だからである。
廻間が作ると大抵料理の原型がないし、曙は曙で、材料からして間違っている。
そして嵜なのだが、嵜もまたダークマターを作ってくるので、どんなに体がだるく、飯が食いたくても食えないので、自分で作った方がマシなのである。
「「(ごめんよ凪)」」
二人は心の中でそう凪に謝った。
☆
所変わって、ここは桜庭高校。
特に変わったものはない、至って普通の県立高校である。
そんな高校3年のとあるクラスに、広報部部長一ノ宮 鬨(イチノミヤ トキ)はいた。
いつもなら、朝の今はせわしなく情報を集めにしつこいほどクラスメイトに聞きに行くのだが、今日に至ってはそんなことはなく、逆にどこか落ち込んでいた。
「今日に限って凪が休みだなんて…………ついてないわ」
そう、落ち込みの原因は凪。
凪が突然の体調不良で学校を休んだと聞いてから、ずっとこの調子なのである。まさに乙女。
一ノ宮は快晴の青空を見上げ、ふうっと溜め息をつく。
「鬨、溜め息ついたら幸せ逃げるよ」
「それもう9回目よ聞くの」
親しい友人がそう指摘すると、一ノ宮は呆れたように返事をした。
その友人はありゃ、という顔をして、小じわが増えるよ、とだけ言い残してその場を去った。
いつもなら一ノ宮は慌てて鏡を取り出し、顔を確認するのだが、今日という今日は本当におかしい。慌てることすらないのである。
「明日来るかな…………」
一ノ宮はそう呟きながら、授業の準備をした。
その様子を見ていた一人の男子生徒が、一ノ宮の元へとやって来た。
少し乱暴そうな見た目で、制服をかなり着崩している少年。
凪や一ノ宮のクラスメイトであり、巻き込まれ気質な不幸な少年、館内正人(カンナイ マサト)である。
「一ノ宮、具合悪いなら保健室行ったらどうだ?」
「あ、館内くん。ううん、具合が悪いわけじゃないの。ただちょっと、悩みというか…………」
「俺で良けりゃ相談乗るけど」
「えっ!?ああ、えと………その」
実は、と言いかけたところで運悪く予鈴が鳴ってしまう。
館内は頭をかきむしりながらも、また後で聞く、と言って席に戻っていった。
一ノ宮は深いため息をついて、授業に臨む事となった。
☆
時所変わって廻間邸、現時刻午前11時を回った時。
凪は近くのソファで、ぐったりと体を投げ出し、唸りながら寝ていた。
廻間や曙はそんな凪を不安そうに見つめていた。元はといえば廻間が悪いのだが。
「ねえどうする曙?嵜に電話かける?」
「もうすぐ帰ってくるんじゃない?」
「いや出かけてから一時間かかるんだけど」
「あー………それはそうだけど」
そんな会話が聞こえてたのか、凪はそちらへと目を向け、かつてないほどの睨みで
「黙れ」
と言い放った。
顔色の悪さも相まってか、睨みが半端ないものになっていた。
またとたんに二人は押し黙った。
沈黙が部屋を包んでしばらくした時だった。
「ただいま」
と、扉があき、嵜が帰ってきた。
その声を聞いた途端に、ぱあっとふたりは明るくなった。
「おかえり嵜!」
「あと凪をどうにかして!」
と嵜のところへかけてやってきては、口々にそんなことを言った。
嵜はそんな二人を押しのけて、袋をがさごそと漁ると、凪に四角い箱を差し出した。
「飲んできな。楽になるかもよ」
「…………サンキュー、嵜」
凪はそれを受け取り、嵜に礼を言うと、フラフラと台所へ向かった。
廻間たちは嵜に聞いた。
「何あげたの?」
「頭痛薬とがその他諸々」
そう言うと、嵜は階段を上がり、自室へと戻っていった。
それをただ呆然と見つめるだけの、廻間と曙。
「その他諸々………?」
「ある意味双子しか分からないものかもしれないよ」
「いやでもその他諸々は無理あるって………」
廻間の一言:今日も双子は分からない。
To be continued
- Re: Это убивает【11/24本編更新】 ( No.23 )
- 日時: 2014/12/14 20:03
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
Forcestory―Nostalgic dream―
【渚グループ総帥夫妻、メッタ刺し殺人事件。そのおそるべし事件の内容は………】
199X年、X月X日。
渚グループ総帥夫妻、渚 直太郎(ナギサ ナオタロウ)、渚 撫子(ナギサ ナデシコ)共に―――――
死亡。
体全体を切り刻まれた傷跡が原因とみられるが、刃物の型を特定しようにも人間の原型が保たれていないくらいメッタ刺しにされていたため、凶器はナイフのようなもの、としか判明せず。犯人の手掛かりとなる痕跡は見当たらず、侵入されたあとすらない。犯行声明やダイイングメッセージも共になし。警察はこの事件を、『重大な狂気的殺人事件』として、捜査を進めているものの、その進展は見られず、世間からは白い目で見られていた。
犯人は今どこで、何をしているのだろうか。我々記者はこの事件の真相を探っていくとともに、遺族らに協力を呼びか――――――
「あーもうなんなんだようぜえなコレ」
突如読んでいた新聞が、ビリビリと引き裂かれゴミクズとなった。
そのゴミクズをぐしゃぐしゃにし、ぽいっとゴミ箱に投げる少年。
年齢は7〜8歳くらいに見えるが、随分と大人びた雰囲気をもっていた。
黒髪で、白い肌で。その顔にある黒い瞳はなにもかもを亡くしたあとの喪失感、否、諦めが入り交じっていた。
その瞳はどこを捉えることもなく、ただ虚空をじっと見つめていた。それはまるで、捨てられるとわかった時の、古びた人形のように。でもどこか言葉では表せない決意を秘めていたような。そんなことを伺わせる。
少年は近くにあった椅子に座ると、ふう、と溜め息を漏らす。疲れた時に出る溜め息なのか、諦めの溜め息なのかは少年すらも分からないだろう。
「お前らに父さんと母さんの何がわかる、俺らの苦しみの何がわかるってんだ。恥知らずが、戯言は夢ん中で言いやがれ畜生が」
そう、誰にもぶつけることない言葉の羅列を少年はただただ吐く。
少年の名は『渚 凪(ナギサ ナギ)』。渚グループ総帥夫妻の長男であり、跡取りでもあった。その総帥夫妻亡き今、彼に残されたのは、莫大な財産と権利、そして耐えられる筈がないプレッシャーや孤独感、そして逃げられることのないマスコミの追跡だけであった。とてもじゃないが、今の年齢でこれらを全て背負えるかと言われれば、不可能に等しいだろう。
そんな宿命を彼は背負ってしまった。
たった、10にも満たぬ年齢で。
我々にはその彼の苦しみというのは、到底理解できぬものでもあり、彼もまた理解されるとは思ってない。
「凪兄、どうしたの?」
そんな彼を心配の顔で近づく少女。
彼と同い年に見えるその少女は、彼とは逆に、どこか吹っ切れていた。
容姿は彼に似て黒い髪の白い肌。彼女の顔に埋め込まれたその瞳は、何かを見通しているようだった。何を、そしてどこを見通しているのかは、彼女にも我々にもわかるまい。
そんな少女の名前は『渚 嵜(ナギサ サキ)』。彼女もまた、渚グループ総帥夫妻の長女で、本来ならば間もなく海外の女学校留学を予定していたのだが。こんなことになってしまっては、それどころではない。
このように、彼らもまたこの事件の遺族及び『被害者』なのでもある。
「別に。どうもしねえ」
「じゃあなんでさっき独り言を言っていたの?」
「…………良く分からない」
「良く分からない、じゃ独り言なんて吐かないよ。何かあったんでしょ、もしかして新聞とか」
「五月蝿い、少し一人にさせてくれ」
凪はそう不思議がる嵜を部屋から追い払い、椅子の背もたれに体を預ける。
天井から吊るされてあるシャンデリアの光は、今の彼にとっては、もう眩すぎて、鬱陶しい存在となり果てていた。凪はそれを睨めつける。
だけどその睨みも、すぐにふっと終わって。どこか何もかもを投げ捨てたような、そんな目になった。
「……………」
彼は目を閉じ、そのまま寝息を立てた。
その直後に、彼の真上に、吊るされていたはずのシャンデリアが何者かによって落とされるのも知らずに。
To be continued
- Re: Это убивает【12/14本編更新】 ( No.24 )
- 日時: 2014/12/15 14:29
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
- 参照: http://sp.nicovideo.jp/watch/sm11984141
お知らせ
R-18板への移動を申請いたしました。
移動された際には、R-18板にへお越しください
- Re: Это убивает【12/14本編更新】 ( No.25 )
- 日時: 2015/01/17 17:20
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
「……………?」
不意に、体が浮かび上がる感覚がしたあとの状況確認。すなわち目を開けた。そして彼は数秒の確認のうち、その状況を理解することとなる。
彼は今空中に居る。
何者かもわからない、『白い紙で素顔を隠した人物』に抱えられて。
「ツッコミ所しかねえええええ!!」
彼がそう叫び降りようと暴れてみるも結局は徒労に終わった。どうやってみてもこの人物の握力はものすごく、ガッチリと彼の体を支えたままびくともしないのである。その人物はトッ、と軽い足取りで着地すると、ふうとため息をついたかと思えば、隠された素顔をどこぞへと向け、そちらへと声を大きくして口を開いた。
「随分とおっかないことをするんだね。そんなに彼を、いや彼らを殺したいのかい?」
その言葉に凪はハッと顔を先程までいたはずのソファへとむける。そこには、いくつものガラス片が満遍なく散らばっていたのである。その上を見れば、シャンデリアがなくなっているわけで。凪は確信した。ああ、シャンデリアが落ちてくるからコイツは俺を抱えて大げさな回避をしたのか、と。だがもうひとつの疑問が浮かんだ。なぜシャンデリアが落ちてきたのか?老朽化で落ちた、とは考えられない。なんせ、つい最近このシャンデリアは古いものと変えたばかりなのである。それがなぜ落ちてきたのか。考えられるのはほかにひとつしかなかった。『誰かが意図してシャンデリアを落とした』という他にない。だが凪は、今『なぜ自分が狙われたのか』、ということしか考えられなくなっていた。それほど、突然のことだったのだ。
「………応答はない、か。逃げたみたいだね。おっと、君、大丈夫?」
と、白い紙で素顔を隠した、明らかに不審人物であろう者が、凪に話しかけてきた。話口調や態度に、見たところ敵意はないらしい。凪はその人物を怪しみながらもふと懐かしいような感情を持った。久しぶりに会ったような、そんな気がしなくでもなかった。だが彼にとって、この人物とはこれが初対面のはず。なぜそんなものが込上がってきたのかは、今の彼には思い浮かぶまい。恐らくしばらくはわからない筈である。凪はハッとして、怪我はないとだけ伝えると、その人物はほっとしたように息を漏らした。そして目線に合うように、その人物はしゃがみ、凪をじっと見つめる。凪はその行動に驚きはしたものの、なぜかそれを許した。理由はわからない。だが、彼の心情はその人物に対して、懐かしみや会いたかった、などの感情が入り乱れていた。不思議なものだった。
「ねえ、凪。君は一生をこのプレッシャーとかいっぱいあるこの要塞の中で過ごすか、僕と一緒に来て、普通の暮らしを過ごすのと、どっちがいい?」
その質問は凪にとって、救われるような質問だった。一生を閉じ込めるこの箱の中で過ごすよりは、誰かもわからないこの人物と一緒にこの家を出ていき、自由のある普通の暮らしをした方がいい。凪は真っ先に、
「家を捨てたい」
と言った。その者はその答えに満足そうに頷くと、凪に手を出した。おいで、とその言葉が聞こえた気がした。凪はその手を握り締め、決意の顔をあげた。その顔は今の今までしていた顔よりも幾分か凛々しく、それでいて清々とした顔だった。
「よっし、決まりだね!あ、僕の名前を言ってなかったね。僕は『廻間』。廻間さ!よろしくね!凪、嵜!」
そういうと凪はふと、不思議な顔をした。今明らかに廻間なる人物は凪と嵜、と言った。しかしこの場には彼の妹である嵜はいないはず。なぜ嵜の名を呼んだのだろうか。凪はそう思い、辺りを見回した。するとふいにこちらを見るような視線が刺さった。その視線は廻間の後ろから送られていた。途端に訝しげな顔になり、後ろに回り込むと、ささっと何かが隠れたようだった。いらっとしたのか、凪はそれに向かって声をかけた。少し、低めのボーイアルトで。
「…………おい嵜」
そう呟くとビクッとさせ、慌てて凪の表に現れた。黒髪の艶やかなロングストレートに、少しばかり可愛くあしらわれた喪服、それでいて凪と顔が瓜二つ。まごうことなく彼の妹である嵜である。嵜はてへへと笑い、殺すような真似してごめんと軽く謝った。廻間もあっと声をあげてまた凪に軽く謝った。凪はそこで全てを察したようだった。
あのシャンデリア落下事故は何かの陰謀じゃなくて。老朽化でもなくて。要は凪と嵜が家を出るために仕組んだ廻間と嵜の計らいだったのだ。実は嵜は廻間とは両親の葬式のあと会っていて、なかなか外に出られないし、このままじゃ命を狙われるかもしれないから、ということで、わざと凪の上にシャンデリアを落下させ、それを外部の人間がやったように見せかける。そうすればあっさり渚を出られる、という計画を立てていたのだ。ちなみにシャンデリアを落としたのは嵜本人である。方法は単に、シャンデリアにBB弾をあてただけ。
それがわかり、凪は落胆したような呆れたような、そんな変なものが渦巻いた。当の2人はてへへと笑うだけである。これには毒気も抜けてしまう。
凪は深いため息をついて、そのあとは苦笑するしかなかった。
To be continued
- Re: Это убивает【1/17本編更新】 ( No.26 )
- 日時: 2015/02/22 09:22
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
…月…日 今日の日記
凪兄と私で、見知らぬ白い人と一緒に家を出ました。
とてもワクワクしています。
これからどんな事が起きるのか、楽しみです。
◆
廻間に抱えられ、連れてこられたのは郊外の別荘。丁度、海の近くと言った方がいいだろうか。見晴らしは良さそうな建物だった。廻間は足で乱暴にその扉を開けると、2人を下ろした。嵜は早速別荘へと入り、その綺麗さにはしゃいでいる。それもそのはず、この別荘は元々渚家の物で、渚が手放して以来、売りに出されていたのだ。それを廻間が買い取ったのだ。買い取ったのは実に3年前あたりくらいのことで、ここに誰も来ていなければ、埃だらけになっていたはず。それが、眩しいくらいに綺麗なのだ。小さな子供ならはしゃぐのも分からなくでもない。だが凪は、どこか腑に落ちない顔をしていた。ここは凪にとって、苦い思い出がある場所なのだ。というのも、まだこの別荘が渚の物だった頃、凪はここを大変気に入っており、いつものように隠れては遊びに来ていたのだ。ある日、その日は両親に許可を取り、付き人と一緒に遊びに来ていた時のこと、凪の一番好きな部屋を訪れた際、あたりが血だらけになっていたのだ。その血の池の真ん中にいたのが、凪と嵜をまるで孫のように可愛がってくれていた、長寿のメイドだったのだ。凪は今でもその光景を忘れられることなく、尚且つ誰にも話せぬまま、この別荘から離れた。それ以来、凪は寡黙になり、感情を表立って表すこともなくなった。そんな別荘にこれから住もうというのだから、凪は心が重くなるばかりだった。
「どうしたの?」
不意にそう廻間から声をかけられ、ハッと取り戻した。気がつくと冷や汗をびっしょりかいていた。気のせいだろうか、息も荒くなっている。口は微かに震え、手も真っ白。これでは廻間が心配になって声をかけるのも不思議ではない。廻間はそんな凪に、お風呂入ってきなよと声をかけ、別荘に入らせた。凪は急いで風呂場へ向かい、嵜はいつの間にかどこかへと行ってしまった。1人取り残された廻間は、気にすることなく書斎へと向かっていった。
「(やっぱり、忘れられない、か)」
廻間は知っていた。凪が何故あんなふうになったかを。あの血だまり事件。元はといえば例の『殺人鬼』が起こした事件だったのだ。同期も殺害時刻も、分かりはしない。だが廻間には、『分かっている』とこが幾つかあり、それを彼に話せばいい話なのだが、『事実』をいきなり言われ、狼狽えない人間がどこに居ようか。それだけ、廻間の秘密は彼、いや彼らにとっては重いものだった。かくいう廻間も、それを受け止め切れていない部分がある。それでもなお、廻間はその『殺人鬼』を追い求めている。
「(僕がどうこう、って出来るわけないんだけど。こういうことは、自分達で解決させる方がいいのかな)」
廻間は1人、誰にも話せない悩みを1人、抱えていた。
◆
「くそっ、なんて役立たずなんだっ」
ドンッと思い切り壁を殴る男が1人。
ここは警察署。とある市の警察署。その警察署に、一つの難題事件が降りかかっていた。そう、『渚グループ総帥夫妻殺人事件』である。どこをどう調べようにも、侵入された跡もなく、それでいて目撃証言もなく、そして困ったことにその夫妻の子供達が行方不明となっているのだ。これでは犯人はますます捕まらない。だが分かっていることが一つ。それは『例の殺人鬼』による犯行だということ。今までにその殺人鬼が起こした殺害の手口が、今回の事件と全く同じだからである。そのため、その殺人鬼を全国指名手配しているのだが、有効な手がかりは未だゼロ。これでは、犯人の手のひらで動かされているのと同じ事だった。そんなことに、この刑事、「斗澤 永楽(トザワ エイラク)」は苛立ちを隠せないでいた。
「犯人からの脅迫文とかもねえし、メッセージもねえし、かといって見かけた奴なんて1人もいねえし………どうなってやがる。それに、子供が行方不明?何なんだホントにあの家は!!」
またも苛立ちが隠せず、思いっ切り壁を殴る。そんな斗澤に後ろから「おい」という言葉がかかった。斗澤は振り返りもせず、その相手の名を呼んだ。
「…………なんなんだよ柊」
「気持ちは分からなくでもない。だが感情を噴出させるのはよせ。余計前が見えなくなる」
「分かってるっつーの。けどよ、ここまで何も無いってなると、我慢できねーんだよ………!くそっ」
「侵入された痕跡もない、目撃証言もない、渚家は関わるな一点張り、おまけにその子供が行方不明。………確かに、何もかも『出来すぎている』。俺でもお手上げだ」
2人は同時にため息をつく。
「園村は?」
「安斎家に行ってる」
「安斎?渚じゃなくてか?」
安斎家、というのは、元々渚コンツェルンだった時に別れた、言わば渚の分家である。しかし大半は渚に対し敵意を持っている人間ばかりで、やることなすこと、渚にとっては不都合なことばかりやってくるので、渚からはスカンされているグループだ。因みにその安斎に所属していたのが廻間である。もっとも脱退したが。
「ああ。いくら分家であっても、今回の事件に一枚噛んでそうだから。園村がそこらへんを調べてる」
「そうなんか。ってーなると、また難しくなりそうだな………」
「それには同意見だ。ややこしくなってくるな、確実に」
2人の刑事は、薄暗い廊下でまた深いため息をもらした。
To be continued
※追記
先程のスレは間違いです。
こちらをお読みください
- Re: Это убивает【2/22本編更新】 ( No.27 )
- 日時: 2015/03/29 21:07
- 名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM
「ん………」
すぅっと目が開き、光が入ってくる。
とりあえず体を起こし周りを確認する。時計を見てみればもう真夜中であった。熱も下がり、頭痛も止まっていた。あれだけつらかった気だるさももうない。いつの間にか縛っていた長い黒髪は解かれていて、体の上にはブランケットが被せられており、ぐるりと後ろを向くと、疲れ果てたのだろうか、嵜と廻間と曙が机に突っ伏して寝ていた。灯りは少し抑えられているようで、眩しさを感じなかった。恐らく廻間あたりが灯りを弱めたのだろう。そして自分が今までソファで寝ていたことに今更気がつく。なぜこんなことになったか思い出そうとするが、記憶がない。あまりの辛さにすっぽ抜けてしまったのだろう。凪はそう考える。
「それにしても随分と懐かしい夢を見たな………」
人は死ぬ前に走馬灯を見る、と言うが、先程までの凪はまさにそんな状況だったのだろう。凪はソファから立ち上がると、ジャケットを羽織り、台所に立った。あの様子だと誰も何も食べずに看病していたのだろうとか思い、せめてもの仕返し(と言う名の感謝)に、料理を作ってやろう、ということらしい。凪は手際よく準備をし、髪をひとまとめに縛り、料理を作り始めた。
『死ね。お前、死ね。死ね。死ね。死ね。死ね、死ね、死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね廻間、死ねえええええええええ!!!!!!!』
目前に迫るナイフ。目の前の女はそう絶叫して廻間にナイフを投げた。目は充血して、やつれていて顔色も悪くて、いびつに曲がった左腕が自分を掴んでいて、振りほどこうとするけど力が強くてふり解けなくて。もうどうでもよくなった廻間は目を閉じて意識がなくなるのを待った。が。何故か顔に、生暖かくてぬるっとした気持ち悪いものがかかった。目を開いてみると、そこには自分を殺そうとした女が、血を吐いて目を見開いていた。そしてその後ろに第三の人影が映っていた。その人物はニヤリと笑っていて、口を三日月のようにしていた。顔ははっきりとは見えない。だが、その人物の手に何かがしっかりと握られてあったのはちらりと見えた。廻間は女を振り解き、そちらを見てみる。その目に映ったのは
『自分と瓜二つの人間が、人を殺して楽しそうに背中にナイフが深々と刺さった死体で遊んでいる』光景だった。
「ッ!!」
「ごがっ!!」
ガバッと体を起こす。が、その反動により頭が何かにぶつかり、表し難い痛みが廻間を襲う。思わず頭を押さえて悶えて後ろを振り向いてみると、顎を抑えて壁と向き合っている凪の姿が。そうか、凪の顎にぶっけたんだ。そう納得しつつ凪に謝りながら近づく。凪は若干顔を歪ませつつもまあいい、と許してくれたようだった。しかし凪は廻間の様子を見てギョッとする。
「おい、廻間……」
「え?」
「お前……紙、透けてる」
「え……う、嘘っ!?」
慌てて自身の顔を隠している白い紙に触れると、確かにしおしお担っていて、触れただけでも簡単にボロボロになった。無意識にその白い紙をすべて崩していまい、廻間の顔が顕になる。流石に凪は見たらいけないなと思い、廻間の顔から目を逸らしてはいたが。急いで自室に駆け込み、鏡を見ると
確かに廻間は泣いていた。
「な、なんだ……いつも通りじゃないか………っ。ははっ…」
廻間は涙をふき、白い紙を見つけてそれを顔に張り付ける。すると自然に涙は止まった。改めて鏡を見て確認し、廻間に戻ると部屋を後にした。
『う………あ………うわああああああああああああああああ!!!!』
それは数年も前の話。廻間が顔を隠す理由となったとある事件。あまりの辛さに、廻間は自身の顔を白い紙で覆い隠してしまった。当時の廻間にとってみれば、それがなければ顔を隠すことなんてなかった。いや、そうであったはずだった。そして、廻間として生きることもなかった。今思い出してみればほんとうに些細なことではあったが、当時は本当に大事だった。廻間はその思い出を振り返らないことにし、そして今までの人生を捨て、『廻間』として生きることを決めた。この話は、彼ら二人には話してはいない。知っているとしても、今の身内でいえば曙くらいだ。
「いやあごめんごめん!心配かけちゃってさ!!」
「………いつもの廻間に戻ったか」
「はあー、それにしてもお腹減ったー。何食べようかなー」
「もうそろそろ出来るから準備して待ってろ。ついでに2人を起こしておいてくれ」
「はーい。ほら嵜、曙!起きて!夕飯できるって!」
凪にそう頼まれた廻間は、無邪気な子供のように、まだねている2人を起こして夕飯の準備を進めた。その日並べられた夕飯は3人の共通した好物で、皆が幸せそうに舌づつみを打った。
そんな様子を1人除く人間が、月夜に照らされて輝いている。白い法衣にじゃらじゃらとついた両腕に巻きつけられた鎖、そして吸い込まれるような白い肌。
「見つけた♪」
そうつぶやいた時には、もういなかった。
その後には赤い液体が落ちていた―――――。
Fourcestory fin