官能小説(オリジナル18禁小説)
- 第三の性~少女愛者への贈り物
- 日時: 2015/08/02 06:01
- 名前: 斎藤ロベール
緒言
二十世紀の後半から人類は、民族や人種によって自分を規定する考え方から実際的に解放されてきた。それは先進国において進んだことだったのだが、興味深いことに、思想が初めにあって生じた現象ではなく、国の経済的な理由から外国人労働者が増えたり、子供が生まれぬために外国人の養子を貰ったり、旅行や留学で知り合った外国人との間に子供が生まれたりといった、社会経済環境に促進されて起こったことだった。混血が増え、一民族内の狭い範囲で通用してきた常識や習慣は、多くが過去のものとなった。
他方、性差に基づく人類の対立は全く混乱を極めてきた。男女の二種類に人類全体は分類できるのである。それは人種や民族などより明確な自分の立ち位置となり得る。染色体の異常による性別確定不可能の人々が、例えば第三の性を主張して結束したことはなかった。ジェンダーという概念を創出して、肉体的な性別から精神生活を独立させる試みがはやったが、女は女の立場から自分を主張していたし、性同一性障害と呼ばれる人々は、社会的文化的規定というジェンダーの枠を超えて、精神的な実存としての男女にアイデンティティーを置いていた。同性愛者は、マイノリティーの権利を主張してきたが、畢竟自分達にしか関心がないようだった。ペドフィリアという人々は、子供の人権という、性とは別の概念によって、その存在に価値を認められないままだった。
こういった経過の中にあって、結婚という行為は十九世紀まで持っていた意味をまるで失った。性愛なども、あたかも方向の狂った本能の残存のようだった。
さて、ここに人類を驚かす事態が生じた。かつてヨーロッパでダウン症が注目されたときに結び付けられた黄禍論のような根拠のない思想は最早なかったが、それは人類滅亡をリアルに予感させる出来事だった。毎年数百万人単位で、生殖能力のない子供が生まれるようになったのである。このタイプに二種類が認められた。どちらも、生物としてより原初的である女性の形態をしていた。一つ目は、思春期に入る辺りで成長が止まるものである。知能も同様だった。二つ目は、思春期になって発見されることが多かった、第二次性徴の現れないタイプである。こちらは知能は平均並みで、体つきに女性的な変化がない分、運動能力は高かった。両タイプとも本格的な性欲を知らなかったが、自分の運命を認めることが、生きる上でやはり大きな課題となった。なお、後者はホルモン治療を継続的に行うと、その間のみ女性化することが分かったため、希望者には投与が行われた。それでも、その妊娠率は低かった。
原因として、化学物質の関与、電磁波や放射線の影響などが取り沙汰されたけれども、分からないままだった。これらの異常は、その染色体の類似から、共にウィルギニズム virginismと呼ばれ、前者がタイプB、後者はタイプAと名づけられた。
ウィルギニズムの第一世代は既に四十代になっていた。彼らの誕生が人類全体にとって不幸ばかりだったかと言えば、必ずしもそうではない。
スポーツでは、性別に対する議論が止まないものの、タイプAが女子の記録を塗り替えていった。議論が止まないのは、女性選手の入る余地がなくなるという主張もあれば、ウィルギニズムの方で、自分達は女性であるとの主張もあり、紛糾したのである。タイプBは、幼い頃にデビューし、息の長い活動をするジュニアアイドルになったし、また、それが発展して新たな人気分野を生むことになった。
さて、ウィルギニズムの誕生から恩恵を受けた者に、ペドフィリアの一群があった。タイプBはそもそも知能が充分でないため、子供同様、保護条例が設けられた。それでも、子供ではないことから、ヌード写真や、一部の風俗産業の対象となりえた。彼らは一概に知恵遅れとも障害者とも言いにくく、自活し独立する法整備が今だに進められている。彼らによって、子供同様の女の体に初めて触れることができたペドフィリアは多くいた。タイプAは、ペドフィリアの在り方に一つの進歩を促したと言ってよい。タイプAは成長しても女らしさがなく、少女の体つきのままであった。スポーツをしていれば、体操や新体操選手のような姿になった。次いで心の面でも、小学生の少女のようであり、女性ほどの細やかさや嫉妬心を持たなかった。それで、ペドフィリアは恐れず彼らと友人になれたのであった。
穿った見方をするなら、同性愛者はその同性愛によって滅び、ペドフィリアはウィルギニズムと共に滅んで、健康な人類が残るというシステムである。しかしなお、ウィルギニズムの存在によって、ペドフィリアたちは異性と社会生活を始めたのであった。精神的な進歩がそこにはあった。ペドフィリアたちはウィルギニズムたちを、第三の性として認知していた。
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- Re: 第三の性 ( No.1 )
- 日時: 2015/07/29 17:39
- 名前: 斎藤ロベール
あえかちゃん
清水良太郎( きよみずりょうたろう )は店の受け付けで、女の顔を見てはすぐ目線を下に落とすのだった。
「百二十分どこでも無制限射精コース、洗髪歯磨きトイレお世話コース、女の子を綺麗にするビデおしりコース、それからオプションで、オシッコお持ち帰り、パンツお持ち帰り、すこやか玉つかみ、ご指名あえかちゃん、でよろしいですか。」
気の強そうな、かなり美しい二十歳くらいの受け付け嬢は、学生のアルバイトだろうか。自分と歳が変わらないように見えた。はっきりした大きな声で男の欲望を読み上げ、清水を辱めた。
「女の子のお気に入り割引がございますので、こちらのお値段でお願いします。」
大学生の清水は、生活費の四分の一を女に渡した。そして、女が処理しているあいだ考えた。これは本物の女だろうか、それとも女に変装したウィルギニズムだろうか。肌の感じからでは分かりかねた。胸はブラジャーでごまかせる。あとは脚さえ見えたら分かるのに。女の正体を見破ることがせめてもの復讐になるような気がして、清水は観察した。
「ではカーテンの奥でお待ちください。」
しかし、カーテンをくぐる間もなく、清水は別の店員に呼ばれて部屋への通路に案内された。脚と腰の肉付きを見て、こいつは女だと思った。
暗い通路の行き当たりにドアがあった。ドアが開いて、まばゆく明るい光と色とに目を射られた。
「お帰りなさい、お兄ちゃん。」
目線のずっと下で声がした。赤毛の長い髪をした少女がパジャマ姿で立っていた。薄青い瞳に優しく見つめられた。
あえかという源氏名のこの子は子供ではなく、タイプBであった。このように、違法か合法か分からないような形で風俗業界にもウィルギニズムは入ってきているのだった。あえかちゃんはどうやら十九らしい。清水がこの子の元へ来るのは今日が三度めだったが、少しひねくれた質問をして、年齢を言わせてあったのだった。清水は二十二だった。十九と言っても、見た目は小学生である。但し、話していると、経験が子供とは違う色を魂に添えているのが分かる。
「あえか、きのうから待ってたの。おトイレ、先にしていい? でももうちょっと我慢できるから、お兄ちゃん先にしてほしい?」
清水は自分で服を脱ぎながら、俺は後でいいと答えた。部屋は広く、椅子などはなかったが、半分が座れるスペース、もう半分は風呂場になっていた。風呂場には腰掛けとおまるが置いてあった。
裸の清水はあえかちゃんを静かに脱がせていった。そばかすの多い白い肌が汗をかいていた。強い巻き毛の髪がにおった。パンツも女の子らしく汚れていたから、きのうから待っていたというのは本当だと思った。
蓋のついた紙コップを清水は渡された。あえかちゃんは、おまるは使わず、腰掛けに乗ってしゃがんだ。手に持ったコップが鋭い音とともに温まっていき、収まりきらないで溢れても止まらなかった。
タイプBは、頭のよい者でも、知的理解度が中学校レベルを超えることはなかった。だから仕事も限られてくる。職人にはたまに腕の良い者があった。高額所得者は、いてもアイドルや、あえかちゃんのような水商売に限られているだろう。
若いペドフィリアである清水は、あえかちゃんによって、長年にわたる望みを叶えることができたのだった。毎月このためにアルバイトと貯金をしていた。背が低くて大人しく、風采の上がらない清水を、あえかちゃんのほうでも好みの客と捉えてくれた。そして店に隠れてサービスを加えてくれるのだった。
朝にしてきたらしい汚れを舌で細かく拭いながら、人間の理不尽な存在を清水はつくづく感じた。日常、見るのも憚られる汚物を俺は買って、口にまでしている。それが無上の喜びなのだ。あえかちゃんも、一番見られたくないはずの所と場面とを人の顔の前で晒している。俺はともかく、あえかちゃんの、これは望んだ仕事なのだろうか。皺の数を無心に数えつつ清水が続けていると、あえかちゃんが声を上げた。女と同様、目の前でそこだけが勝手に動き出した。
あえかちゃんと清水は、いつも二時間ほとんど話をすることなく、体を合わせていた。清水はあえかちゃんのどこからでも入りたがった。しかも自分のどの部分でもそうしたがった。彼女にとっては感覚の発見であった。清水が動けないほど疲れると、彼女は彼女の実験を清水に始めるのだった。
店を出た清水に、夕暮れの町は何となく親しみを感じさせた。今回、あえかちゃんは自分の髪を切ったものを編んで清水にくれた。ひと月また貯めなければならないと清水は思った。画像や動画に頼って暮らしていた時に比べれば、今は大きな幸せと言えようが、心のどこかではうすら寒い風が吹いているようだった。
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