官能小説(オリジナル18禁小説)

盗撮事情
日時: 2015/07/30 16:37
名前: 斎藤ロベール

校舎内に人がいなくなった。私立の学校では、職員の退勤時刻やその確認者をチェックする決まりが公立学校より普通ゆるい。無論、そうでない所も沢山あるが、鈴音の勤めている小学校は特に緩いのだった。最後に残った教員が、点検をして施錠する習慣であった。

鈴音士郎は二十九歳。二十五歳から勤めて四年目になっていた。大学を卒業してすぐ大手のスーパーに就職したのだが、一年で辞めた。親から勧められての就職であったし、仕事内容に興味もなく、そういう仕事を割り切って続けられるような性格でもなかったからだ。しかしそれ以上に鈴音に耐え難かったのが大人との付き合いだった。気の合わない人間と一日中一緒にいることは鈴音にとって苦痛だった。しかもその時間が生活の大半を占めるとなれば、金は溜まっても、使う目標があるわけでもなし、生きることそのものに砂を噛むような思いしか感じられなくなっていったのだった。
鈴音は、何が自分の命にとって大切なのか、どうしても無くてはならないものは何なのか考えた。そして選んだ仕事が小学校の教員だった。教育学などに興味はなく、教員免許もなかった。だが、小学生には興味があった。ペドフィリアだったからである。鈴音は調べて、短期間に二級免許の取れる講座を見つけた。集中力のある鈴音は資格試験に合格したばかりでなく、地元の私立学校の教員試験を受けると、すぐに採られた。急遽、産休で退職する職員の代用が学校に必要だったことも幸いした。
受け持つことになった四年生は、鈴音にとって、ちょうど心惹かれる対象に入る年齢だった。若い男の教員は概して人気の出るものだが、鈴音もその例外ではなかった。クラスの子供には勿論のこと、よそのクラスの子供にも好かれた。ここに至って、真面目に教育に関わろうという意志が鈴音に目覚めた。愛は愛である。例えば高校の教員が男であれば、女子生徒に幾分か性愛の情を持たないことは無いだろう。しかしそれが必ず犯罪に結びつくなどということはあり得ない。ペドフィリアとて同じである。ただ、高校生と異なり、代償となるような対象が存在しない分、思いを叶えられる機会が見つけられず深刻なのである。そしてその機会は一生ない見込みが高い。そういうわけで、叶えられる機会が生じたなら、何を置いても実現させる運びにペドフィリアの場合なりがちなのだ。
教員の世界というものを鈴音が初めて内側から体験した時は、会社に比べて随分と変わった所だと感じた。はたから見れば職員室など暇そうで、授業のときだけ働けばよい楽な職場だと思われる。ところが、いざ働いてみると、休み時間にも子供の相手をしながら指導をし、しかも授業の準備は続けなければならない。採点はもちろん、印刷や集金といった事務的な作業がある。帰宅してからも生徒の家庭から長い電話があったりと、気の休まることがないのだった。また、土日は大抵部活動があった。
時おり研修で出張した時に、公立学校の教員と話すことがあったが、そこでよく異様な経験を鈴音はした。会話の成り立たない者がいるのである。教員としてしか話ができなくなっている人間が沢山いて、彼らは常に「教える」調子なのだ。公立の教員はそれ程までに研修で叩き上げられているのだろうかと鈴音は思った。閉口した鈴音は「教師病」とこれを名付けた。
他方、漫画やドラマと異なり、悪意のある人間が殆どいないことも分かった。会社には、露骨に悪人と言える上司や同僚、更には取引相手がいたものだ。記憶を辿れば、嫌な教師、恐ろしい教師は確かにいた。だが、生徒に映る教員の姿には、たいてい演劇性が伴っているものだと鈴音は知った。態度や言葉遣い、更には表情までを教室と職員室とで使い分けている者が沢山あった。ただ、授業とは別の顔を持つような人間が子供にとって信頼に足るものかどうか、鈴音には疑わしく思われてならなかった。
その時から四年が経過した今、その疑わしい人物に鈴音はすっかり成り下がっていた。演技の顔を作ったのでなく、行動が分裂したのである。

誰もいないことをもう一度確かめてから、鈴音は二階に上がり、高学年用女子トイレのドアを開けた。携帯電話のライトを点けて、ある個室の便器を覗いた。小型カメラの回収であった。そういうことを三度繰り返した。それから鈴音は、幾つか汚物入れを漁り、暗い校舎を後にした。

「先生ってさあ」
鈴音がいる教師机に両手を置いて体重をかけながら、クララが話しかけた。かかとを上げたり下ろしたり、嬉しそうに
「なんで結婚しないの」
話すあいだに、生地の薄い短いスカートがふわふわと動いた。
春先の五年生の教室である。五年生を受け持つのは鈴音にとって二度目のことだった。今日のクララのスカートは真っ白く、その映えように、もともと甘やかな乳色の腿が却って色濃く見えた。それはつややかに、一面熱を帯びた元気さを表していた。鈴音はスカートの動きが気になっても気づかぬ振りに努めた。
「一人じゃできないから」
「彼女いないの」
「その話は昨日もしました」
「あたしが一日だけお嫁さんになってあげようか」
「なんで一日だけ?」
「ずっとでもいいよ」
「ご飯つくれるの?」
会話は楽しかった。しかし、入り込んではいけないことを鈴音は半ば本能的に知っていた。会話にこっそり耳を傾けている女子がいたり、冷ややかに観察している男子がいたりするものだ。クラスの和がそこから乱れる危険は回避しなくてはならない。周囲に気を配るのを忘れる手ぬかりを鈴音がしたことはなかった。
今度のクラスには美しい女子が沢山いた。二十五人の生徒のうち女子が十五人もいたから、そもそも全体が大人しくて扱いやすかったし、かつ殆どの女子が綺麗だったので、鈴音はこのクラスが好きだった。
美人というのは同じ人間のくせに、良きにつけ悪しきにつけ、その存在だけで人に影響を与える。大した徳がなくても人を惹きつけるから、揉め事にもなりやすい。姿かたちを無視すれば、美人を取り巻く人間模様は下品な心情の坩堝である。そして徳のある子供など滅多にいない道理だから、ペドフィリアの場合、大抵不幸な関係しか築けないことになる。案外、徳のあるペドフィリアなら実はたくさんいるのだろう。それでも、子供に欲情し、愛情を欲しがるその部分はやはり幼稚な恥部であり、畢竟、誰も幸福にはなれない道理なのだ。
クララはしゃべっているあいだ、机の角を白い両腿の付け根に当て、足の動きに合わせて前後左右、上下と押し付けるのが癖だった。昼休み、ずっと鈴音のところに来てそうしている時もあった。何をしているのか大人の鈴音には明らかだったが、気づかず気にもせぬふりで、机の揺れが大きくなると
「字が書けませんよ」
とだけ言った。止めない言葉にクララは内心ますます高ぶるらしく、角を腿で締め付け、ついには足を浮かせてしまう。その時、クララの顔は上向き加減に、目は瞑り、眠っているときのように小さく唇を開いては閉じる。それからすとんと降りて立つのだった。遠くからでもよく目立つ大きな水色の瞳で鈴音を見つめるクララには、満足そうな、誇るような色がいつも顔に浮かんでいた。
クララは言わば中心的な生徒であったから、クララとの関係がうまく行っていれば、全体の指導もうまく行った。音の狂いやすい弦楽器の調弦をするが如き危うい関係を鈴音はクララと保っていた訳である。
クララを生徒として敬愛し、学習を助けながら、同時に鈴音は心で犯していた。そして、ついに行動においても、間接的ではあれ、思いの丈を鈴音は現し始めた。

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Re: 盗撮事情 ( No.1 )
日時: 2015/07/30 16:51
名前: 斎藤ロベール

五月の連休前に鈴音の学校で二泊三日の林間学校があった。帰途、生徒たちは一度教室に寄ったのだが、その拍子にクララほか数人が机に荷物を忘れていった。鈴音が中を見てみると、洗面用具と、替えた下着や靴下だった。川遊びの水着を忘れた者もいた。両方を一つの袋に入れて忘れていった生徒もあった。クララの場合、置き忘れどころか確信犯なのかも知れなかったが、とにかく中は少女の汚れものだった。それまで女子の着たあとの下着を目にする機会など、男兄弟ばかりの鈴音には無かったから、その汚れかたに鈴音はいたく驚いた。しかも、忘れていった女子の下着には、一つ残らず沁みがあった。子供の頃、白いブリーフを穿いていた自分を鈴音は思い起こしてみた。黄色い沁みがよく前に残ったものだった。それでも、これほど幅広く汚れたことは記憶になかった。女子は毎回ふいている筈ではないか。中に、蝋の固まったような厚い汚れのあるものがあった。青が似合う黒髪のペトラという生徒の下着だった。黒目勝ちで笑顔も愛らしく、清楚なペトラの体からこれが出ていると思うと鈴音は堪らず鼻に押し付けて嗅いだ。それから他の生徒のものを手にとって嗅ぎ比べた。
こういう「ある境界」を越えてしまうと、そもそもの認識からが大きく変わってしまう場合がある。
まずクララの下着を精液で汚し直したあと、鈴音は思った。ここでは、自分のやりたいこと、見たいこと、知りたいことに手が届くのだと。そして鈴音の想像力は、この時を境に、かつてないほど活発に働き始めた。行動に移るのが億劫な鈴音としては、自分の軽やかさが信じがたい位であった。こうしてその日から鈴音の悪業が実際化した。
女子生徒全員の上履きとリコーダーの口にまず鈴音は射精した。健康診断表をチェックして、まだ初潮を迎えた者のいないことを知った。私立で給食のないこの学校では、生徒は弁当を持ってくるのであったが、いつか鈴音はその弁当にも射精するアイデアを蓄えていた。クラスの女子生徒は、皆すぐ鈴音の精子に体のどこかで触れる訳である。していることは縄張りを主張する動物の雄と同じだと、行為者の鈴音自身、気が付いて驚いた。
カメラの取り付けも早かった。鈴音のパソコンには、この数カ月に撮影された動画が百を超えて貯められていた。服装で誰が写っているか分かるので、編集して名前ごとに整理されてあった。何組の誰が、排便時にどういった癖を持っているのか、発毛や中の形などはどうであるか、鈴音は研究する思いで観察した。偶然写った女の教員のものは不潔に感じて全て切り捨てた。
こうした一連の行為について、鈴音はもはや罪悪感を持たなかった。慣れによる道徳感覚の麻痺だとは理解したが、これ程までに平気に行えるものだとは鈴音自身、予想外の展開であった。ふと連想したのが、高校のころ飼っていた猫の避妊手術のことだった。最初、鈴音には、避妊手術ということが、人間の立場からの勝手で残酷な行為として受け入れられなかった。しかし、一度させてしまうと、二匹目からはもう平気であった。それどころか、進んで手術を受けさせるべきだとさえ思えてくるのだった。道徳律は内側からの発露を待っているのでは駄目なのであって、やはり人間は強制される必要があるのではないかと、教育的な視点を忘れられない自分に鈴音は苦笑した。
クラス運営も仕事も、変わらず順調に運んだ。不思議なことはと言えば、女子の態度にどこか女っぽい媚びが見えるような気が時々することだった。年齢のせいなのか。以前は感じなかった雰囲気だった。常に毎日向けられる鈴音の性的な目と思いが女子生徒に感応したのだと思う時もあった。

いつもの通り、カメラを回収する水曜日の晩、仕掛けたはずの便器にカメラが一つ無いことに鈴音は気付いた。見当たらないのは一つだけであったから、何かの拍子に落ちて流れたのかもしれないとは思いつつ、鈴音は大変な不安に駆られた。もしも誰かがカメラを回収していた場合、事が公になれば鈴音はきっと懲戒免職だろう。「露わにならない隠しごとは無い」という格言があるが、鈴音はその夜、苦しい後悔と恐れとに苛まされた。罪悪感は後から付いてきた。幾分かはペドフィリアとして、届かぬ望みに近づけた満足が勝っていたからである。だから、翌日こそカメラを仕掛けはしなかったものの、何も起こらなければ再開する意志が脳裏から消えていなかった。
結局、新たな計画に着手する前に、鈴音は無くなったカメラが気に掛かってならず、仕掛けておいたはずの便器をまた覗いたのだった。
カメラはあった。確かに先日はなかったはずである。これは鈴音の記憶違いでなければ、誰かが設置し直したものだ。ほかのカメラには、取り外したとき気づいていなかったのか、わざと残しておいたものか。いずれにしても、このカメラを回収しないわけには行くまい。これを取り付けた人物は、見つけたその時点で何のアクションも起こさなかったのだから、明らかに他意があると言える。共犯としてこちらから訴えられるかもしれない。
帰宅して見たそのカメラの映像に鈴音は驚いた。カメラは一度外されてから別な所に取り付けられ、そこから撮影されていたのである。だから、無くなったカメラを慌てて探す鈴音が写っていたことは言うまでもない。しかし鈴音が驚いたのは、その前に写っていた女性の映像だった。大人が個室に入ってくると、便座に腰掛け、変わった道具を使ってオナニーを始めたのである。しかもその際、汚物入れから適当に幾つか掴み出して嗅ぎながらであった。女性は学年主任であった。
映像の終わりには部屋で撮影したと思われるものがあった。意図的にカメラを使って写した、これもオナニーだったが、子供の裸であった。詳細に性器が写されていたのには、見せる意図が窺われた。左腿の内側の傷で、鈴音にはそれがクララだと分かった。鈴音は、内心ほっとしている自分に気付いた。クララが自分を訴えるつもりは無いだろうと思うと同時に、クララと関係が持てるのではないかと期待さえしたものである。それによって何が付随して起こるか、想像の中で鈴音は検討してみたが、クララと抱き合う希望に圧倒されて、まともに考えることができなかった。

Re: 盗撮事情 ( No.2 )
日時: 2015/07/30 17:14
名前: 斎藤ロベール

事態はしかし、より面倒になった。例の学年主任の映像がインターネット上に流されたのである。顔の上半分ほどが写っていたから、知っていればすぐに誰かが知れた。そして生徒の何人かはそれを知っているようだったし、本人も気付いているらしかった。もちろん、自分では何も言わない。これを保護者が知ればただでは済まない。教員のあいだでは、まだ知られていないか、黙殺されているかのどちらかである。鈴音は加わらなかったが、トイレや休憩室などで学年主任の話を数人がしている時があった。話題になれば、誰がいつ撮ったのかに言及されない筈がないから、いずれは鈴音の所にも手が回る。
鈴音はクララを放課後に呼んだ。どんな立場でどう話を切り出したものか、考えることを鈴音はやめた。
クララは、白いブラウスに赤い袖なしの上着を羽織り、薄桃色の短いスカート姿で、膝を綺麗に揃えて鈴音の前に座った。
しばらく沈黙が続いた。クララは鈴音の言葉を瞳で待ち受けていたし、鈴音はクララの大きな青い瞳から目を離さなかった。クララに警戒や非難の色は見えなかったけれども、鈴音の目には戸惑いが表れていたことだろう。その度にクララは瞳でそれを掬いとった。
「露わにならない隠しごとは無い」という格言がまた思い出されて、鈴音は嘘を言うのを一切やめようと思った。
「カメラのことだけど」
「カメラ?」
「君たちを裏切って申し訳ない。どうしても見たかったんだ」
「先生、何の話?」
「え?」
クララは本当に分かっていないようだった。
「君も写っていたじゃないか」
鈴音は、自分がカメラを仕掛けるに至ったことから、自分の性向、写っていた映像の概要をクララに聞かせた。クララは青くなった。
「ペトラだ」
クララは、自分とペトラがときどきそういったビデオを交換していることを話した。ビデオの内容を携帯電話に移してあった鈴音は、その一部始終をその場でクララに見せた。そして、このうちのある場面がネット上に出回っていると告げた。クララは怒って自分の携帯電話を取り出し
「見て」
と言った。裸のペトラがオナニーしている動画だった。歯ブラシを入れて動かしていた。クララはそれを鈴音の携帯に送信した。番号は調べて知っていたそうだ。
「先生もう帰れるの?学校じゃない所で話そうよ」
クララはそう言った。ところが、学校の教室が、こんな話をするには一番安全なのである。ほかの教室では怪しまれる。外の店などでは人の目がある。それでも、慌てるクララとここで話はできそうもなかった。ペトラに電話を掛けると言うのである。
鈴音は、クララの体調が悪いから車で送っていくということにし、学校を後にした。日は暮れかけていた。西の空が茜色に美しかった。
車中、クララはペトラに電話をし、現況を感情的になって報告した。そして、あんたのせいで皆が捕まるのだと誇張した解釈を話した。そしてネットの映像を消去しろと言った。あんたのビデオも先生に渡してある、だから誰にも話すなと言った。クララは通話の音声を外に出るようにしてあって、ペトラとの話が鈴音に全て聞こえていた。ペトラが言うには、映像はもう拡散しているとのことだった。鈴音は、元のを消して後は放っておけと伝えるようにクララに言った。
電話を切ると、クララは少し車を停めてくれと頼んだ。海辺の空き地に停車すると、クララが泣いて抱きついてきた。そして、スカートごと脱いでしまったクララの体の奥深くへ、助けを求めるように鈴音は入り込んだ。相手を求める本気の感情で女と交わったのは、鈴音にとってこれが最初であった。

結局、例のビデオは時間とともに忘れられていった。あれから学年主任は同じことをしてはいないだろう。鈴音も、生徒の物に手を出すことをやめた。カメラも勿論である。ペトラとも、互いに事情が分かった間柄として、むしろ親密になった。
今のところ、クララとの関係を絶つ気持ちは鈴音になかった。夫婦のような距離が余りに自然に表れている二人を、却って誰も注意しないのだった。しかしこれもクララの親にいつかは露見するのだろうか。このまま付き合いが続き、自分のペドフィリアも緩和されないものか。そのようにして、あと五年後であれば、親に知られても構わないと鈴音は思った。

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