官能小説(オリジナル18禁小説)
- 僕の愛しの花嫁
- 日時: 2019/04/03 15:56
- 名前: 追坂金夏
しばらくいなくなってました。すいません。ちなみに金夏が金貨になってたりしますけど誤打です。気にしないでね。
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- Re: 我が愛しの毒の花嫁 ( No.1 )
- 日時: 2019/03/29 15:39
- 名前: 追坂金夏
幼い記憶に微かに残るあの子。
混じりけのない金髪に切実に憧れたあの子。
僕が一年生に進学したお祝いと同時に、3歳の誕生日を祝ったあの子。
今はどこでどうしているんだろう。
それが気になったきっかけは、友達が貸し借りしていたアダルトビデオだった。
不純だと言われると立つ瀬がない。
「優佳は?借りる?」
教室の後ろの方で固まりになっていた男子の集団から、出席番号が近い、それゆえ多少話したことあるくらいの...えっと、吉田?が話しかけてきた。
「あー、いや、いいよ。」
「何でだよー、借りてけよー、結構エロかったぜ?これ。ボインだし。洋物だけど」
「んー、僕あんまり、胸大きい人って好きじゃなくて。」
これは本当だ。
母さんの仕事仲間がよくうちに来るけど、大きい胸って威圧感があって苦手だ。
「ふーん...じゃ返しちゃうけどいい?」
「そうして」
「へーい」
ワビ要らないってー、えー、という声が上がり、固まりはバラけて行った。
詫岡優佳。明後日が誕生日で、そしたら16歳。念願叶って行ける学区の準トップ高校に入学することができたが、校内での成績はあまり順風満帆とは言えない。
彼女はいない。女の子のあの、早口のしゃべり方とか、流行語とか、時に誰かを批判することで話題を盛り上げるのとかが...苦手だから。
勿論そうじゃない子もたくさんいるし、自分からわざわざ女子を避けたりはしない。
人並みには女子から好かれたりもしているし、告白されたこともあるけど、断ってきた。
きっとそれは、女の子のコミュニケーションが怖いってことだけじゃなく、あの子のことがひっかかっているからーーなんだろうけど。
コミュニケーションが怖いなんてのは、後付けで。
あの子がどこかで見ているような気が、なんだかずっとしているんだ。
帰ると、家のとなりに引っ越しのクルマが来ていた。
一台だけ。
作業の人が二人、暑いなか頑張っている。お疲れさまです。
「ただいまー」
僕の家はアパートの2階のはじっこだ。
戸を開けると、母さんはまだスナックに働きに行く前だった。
「おかえりー。ご飯用意しといたから。じゃあ母さんもう行くね。」
「はーい。勝手に食べとく」
「そうしてちょ〜 あっ、そうだ。」
持ち物を確認し、鍵を片手にさあ出ようという母さんは、一度そこで止まった。
プリンでも買ってあるのかと期待したけどそうではなく。
「おとなりにね、ユーリャちゃん来るんだって。覚えてる?あんたが小学校上がったとき三歳だったユーリャちゃん。金髪の」
「...金髪」
あの子?
記憶に微かに残るーーあの子?
「そっか...あいさつに来るかな」
「いや、どーらろーれ」
なんだか発音が変だったので母を見ると、手鏡で口紅を塗り直していた。
「ユーリャちゃん、ご両親のご学友だったそこの大屋さんに引き取られる形らしいから...なんでも、ご両親に...不幸がね」
「あー」
適当に聞き流しながら、夕飯のしょうが焼きを温める。
「でもまあ、気が向いたら遊んでおあげよ。一応あんたの、幼馴染みだ。あんたが女の子みてえな名前ーってからかわれたときにかばってくれたの、あの子だよ」
「ふーん」
その経験はありすぎて覚えてないなあ。
名前でからかわれることについては、全日本大会くらいなら台乗りできる自信がある。
優佳だよ?優佳。ゆうかくん。
親に文句を言うつもりも、改名する気も無いけど、苦労はした。小学校の先生に
「優佳さん」って呼ばれるし...。
「ユーカって言いやすいね」
ただ、舌足らずな発音のその言葉だけは、しっかりと鮮明に、思い出すことが出来るまま。
- Re: 我が愛しの毒の花嫁 ( No.2 )
- 日時: 2019/03/29 16:26
- 名前: 追坂金夏
棚咲・ユリア・優子。
アルバムに乗っていた写真のなかに、命名の半紙と並んで写る僕の写真があった。
写真で見ると、お母さんは白人さん、お父さんは日系人。
混じりけの無いとか言ったけど、ハーフだったんじゃないかーーと思ったけど、帰ってきた母によると、
「いんや、写真のおとーさんは違う人らよ」
らしい。
母は呑んでいた。
「むか〜しねえ、ユーリャちゃんのご両親、日本に語学留学に来てたんだよ。そんときはまだご両親じゃ無いわけだけどね。」
母の話をまとめると、隣のアパート(コーポ?)の大家さんと彼女の両親は大学で知り合った。大家さんと母は近所の縁で知り合った。彼女と僕は、数少ない子供の縁で知り合った、と言うことらしい。
そして彼女の両親に不幸が降り掛かり、親亡き子になった時、昔の学友に娘を託した...と。
僕は、風呂を上がり、皿を洗い終えた頃帰ってきた母の話を、課題をやりながら聞いた。
「かーいそーだよね。」
「ん?」
その言葉の低さ、じっとりとした重さに、僕は一旦シャーペンを殴り書く手を止めた。
「僕より3つ下...ってことは、中学校に入ったばかりってことだよね」
「うん?ああ、そうだね。」
「そうか...中学生か...」
中学生になって、物事がある程度わかるようになって、そんなとき、身近な人が。
否、身近なんてものじゃない...親なんて、身みたいなものだろう。
生まれてから数年、常に近くにいて。
幼稚園、小学校になっても、帰ればそこにいる。
中学生になったって、高校生になっても、僕は帰ったとき母さんがいないと寂しいからと言い、出勤時間を調整してもらっている。
それが正しいはずだろう?
それなのにーー
「...辛いだろうね。まだ、中学生なのに」
「あー、あんたはそっちか〜。」
ふーん、と言いながら母は酒の入ったグラスを片付けに立った。
そっち?
「あたしはね...ご両親の方が辛いんじゃないかって...思ってね。」
狭いアパートに、水と水の反射し飛び散る音が微かにしている。
重苦しい話のモザイクのような。
「まだ中学生の娘を一人残して...あんまりよそに言うんじゃないよ?ユーリャちゃんのお母さんとほんとのお父さん...離婚してるんだよ。その上、いやその下って言うべきなのかな。離婚より前に、結婚してるはずでしょ?結婚するとき...親に、勘当されたんだって。」
「...勘当」
「感動じゃないよ?縁を切るって...相手が、ロシアの男だからって。」
「...?それの、何がいけないの?」
「国全体がなのか...それともマリアの...ユーリャちゃんの家がなのかは知らないけど、外国人をよく思ってなかったみたい。だから、よその国の男と結婚するなら縁を切るって、言われたんだって。マリア、おなかが大きいときに教えてくれてね」
がらがらの水差しに、グラスが逆さに置かれる。
ぽたぽたと、雫が落ちる音が心地よく聞こえた。
「でも、あかんぼが生まれたとたん、マリアに当たるようになって...娘と自分を守るために離婚して、しばらく女手ひとつで育てた。あたしはこの頃のマリアとユーリャちゃんを知ってるからね...日本に来たんだよ。一才にもならないあかんぼを飛行機に乗せてね。そのリスクだってあっただろうに。覚えてる?それから3年、そこのアパートに住んでたの。その間に大家さんの紹介で新しい亭主も出来て...そして亭主連れてドイツに帰ったんだよ。...10年か。」
母の言葉が途切れたところにすかさず僕は、
「10年?」
と口を挟んだ。
「マリアが幸せだった時間さ。」
母は店のドレスを脱ぎ出した。
体質なのかなんなのか、もう40近いのに背中がきれいだ。
「あたしより4つ下だからーー33歳か。」
彫り物のような綺麗さが母にはある。作り物めいた、白さが。
「辛いだろうね」
それは、ユリアにも通じる部分があると思う。
- Re: 我が愛しの毒の花嫁 ( No.3 )
- 日時: 2019/04/03 00:48
- 名前: 追坂金夏
何て言うか、年頃の女の子が一人で住むには、淋しすぎる風情があると思う。
そんなコーポ・フラワー大倉は、大倉さんの経営する小さいアパートだった。
築年数はそこまでじゃ無いようだけれど、君が想像したのよりきっとぼろい。
1LDK、最寄り駅まで歩き20分。ピンポンは無い。家賃は町内会費含め月4万円。
あの日笑いあったユリアは、今どんなかおでーーー
途端、きぃぃぃと一階の左から二番目の扉が動く。
背景と同化してしまいそうな白い肌。純金を裂いたような髪。
でも寸足らずな体型。
の子供が、黒いごみ袋を両手で辛うじて持ち上げながら出てきたーーとても中学生には見えない。
なのでユリアじゃないだろうと思った自分の単細胞脳を呪いたい。
だって僕は。
その子がよろけて座り込んだりしなければ、声を掛けもしなかったわけでーー
「っっ!!大丈夫!?」
「...ぅ...ごめんなさい...だいじょ...ぶ...なので...」
まぶしい、とこぼしてうつむき、肩で大きく息をしている。
「大丈夫って...これ、ゴミだよね?僕が捨てて来るから...具合悪いんでしょ?」
「...でも...ごめんなさい..平気なの...。体力が...落ちてるだけ...」
傷痕ひとつ無い綺麗な細い首をもたげ、太陽に向き合う彼女ーー彼女は。
「ユリア...?」
「...ぇ」
ユリアは元気の無い、それでもあの頃と変わらないエメラルドグリーンの瞳で、僕を見つめた。
彼女がどこを、何を見ようと、その眼はエメラルドグリーンであるはずなのに。
なんだか僕に、用意されている色みたいな気がしているんだ。
「なんでわたしのこと、しって...る...ぇ、優佳?」
「うん」
しゃがみこんだユリアの体躯を抱き締める。
細くてーー中身が無いみたいに、不安定な、軽さが有って。
疲れきった母の、あの頃の母と似た臭いがしていた。
「やっと会えたんだよねーー優佳だよ」
「...ユーカ」
そう。
そのあどけない、舌足らずな発音の僕の名前。
その声が確かに僕のなかで生きていたから僕は、この名前を、この名前をつけた母を、許せてきたのかも知れないな。
「辛かったよねーーー近くにいられなくてごめん」
「ユー...カ...ぅぅ」
腕にユリアの涙の暖かさを感じる。
よかった。君はまだ、いてついて、凍えきって、冷えきってしまってはいなかった。
ちゃんと、暖かい。
- Re: 僕の愛しの花嫁 ( No.4 )
- 日時: 2019/04/03 17:48
- 名前: 追坂金夏
やっと落ち着いたユリアを部屋に戻し、ごみを捨てに走り、再びコーポ大倉に戻る。
鍵をしていないーー不用心だなあ、女の子が一人で住んでるのに。
鍵が開いていたのが悪い、僕は泥棒の気分で部屋へ侵入...入った。
「スンスン...ぅ」
女の子の...っていうか女性の匂いがする...きつい。
甘ったるい、でもどこか心地いいはずの匂いも、ここまできついと息苦しい。
行き過ぎた愛のような、苦しさ。
積まれた無数の段ボールは、一人の女の子の引っ越しにしては多すぎる気がした。
ユリアは、カーテンもない部屋に唯一出されたソファーベッドで仰向けに寝ていた。
手になにかを持っている。
「ユリア」
びくっ、と肩が跳ね、でもすぐに冷静沈着な声色で「優佳」と答えが聞こえた。
身を起こし、服の裾を気にしながら僕の方に向き直った。
つまり、ソファーベッドの「ソファー」状態の、正しい座り方をしたわけだ。
「その...さっきはごめんなさい。わたし、日の光に弱いの...向こうでも気を付けてたんだけど...やっぱり日本の方がきついんだね」
「あ...うん。日傘とか持たないの?」
するとユリアは行儀とかそういうの無く、僕を人差し指で刺した。
間違えた、指した。
?
「その中の、どこかにある」
そのなか...。
振り向くと、今まで壁だと思っていたものは壁ではなく、段ボールだった。
夥しい量の。
おびただしいって難しいね。
て言うか、とんでもない量だな...どれも開いていない。
キッチンには無数のペットボトル、インスタント食品のごみが堆(うずたか)く積み上げられている。あんなジャンクなもので、成長期の子供が生きていけるはずがない。
「手伝うよ。」
「え?」
直下(そそり)たつ段ボールの砦。
これを全部開け、出し、しかるべきところに仕舞いーー
いったい何時間かかるか。
「手伝うからーーここをユリアの家にしよう。」
住みづらい家の息苦しさは、僕が一番分かっている。
自分の居場所がない家の、暮らしづらさ。
だから僕は、ここをユリアの居場所に仕立てあげる挑戦をしようと思う。
- Re: 僕の愛しの花嫁 ( No.5 )
- 日時: 2019/04/05 21:12
- 名前: 追坂金夏
「だいたい...これで住めるくらいにはなってきたかな。」
段ボールの壁も取り払われ、なんとか人の住む場所に見える。
洋服とかDVD、CDと書かれた段ボールはそのままだけど、必要になり次第徐々に開けていけば問題ないだろう。
「ユーカはすごいな」
綺麗になった部屋を見渡すように立つ僕の横にちょこんとたち、賛辞の言葉を口にするユリアーーー思った以上に小柄だな...でもその...そんなゆるいタンクトップ一枚で..目の位置がそれより上だと...見えちゃうっていうか...その...。
大きい胸がコンプレックスの自覚はあったけど、それは必ずしも小さい胸に欲情するってことではない。
.......はずだ。
「一日のうちにこんなに綺麗になるなんてーーわたしには出来ない」
「あー、うん、ありがとう...」
「そうだユーカ。疲れてるところ悪いけれど、ちょっと頼みごとがあるの」
「頼みごと?」
「お風呂の使い方がわからなくて」
「あー」
確かに難しいかもね。
外国ではあんまりお風呂に入んないって言うし。
そもそも入浴って文化が無いんだっけーーそれはアメリカ?
ロシアのお風呂には詳しくないけど。
「この、ボタンが沢山ついててわからないの...水をお湯には出来たんだけど、お風呂にお湯を張るのは出来なかった」
「あー、そーゆーこと。えーっと...」
湯船の栓をして、ふろ自動。
じゃばばばばばばばっ!!
とたん、あの銀色のあれ(正式名称を知らない)から勢いよくお湯が放出された。
そんなに大きいお風呂でもないので、ユリアが感激している間にお湯は満杯になる。
「さっきみたいに、栓閉じてふろ自動したらお湯沸くから。じゃ、僕そろそろ帰るね」
「えっ」
「えっ」
「いっしょにおふろ...するんじゃないの...?」
「え...っいやいやいや、しないしない!!ユリア女の子でしょ!?」
「そう、だけど」
それが何か?と顔に書いてある。
やっぱお国柄なのかな...やめてよ...そんなしょんぼりした顔で見ないで...。
「あっ、ユーカは日本人だから、家族といっしょにおふろはしないんだね!」
「小さい頃はしたけど...」
実は結構最近まで母さんとおふろには入ってたし...。
具体的に言うと、中学出るまで。
「それとも、ユーカはわたしといっしょにおふろに入るのはいや?」
「嫌じゃ!!ないけど...僕は嫌じゃないけど...ユリアは平気なの?」
「平気」
「ぐぁぁ」
天然だ...。
天然だ...!!!
「?」
やめてくれ...そんな他意のない眼で見つめられると...っ。
いっしょにおふろに入るしか無いじゃないか...ッッ!!!!
- Re: 僕の愛しの花嫁 ( No.6 )
- 日時: 2019/04/07 21:20
- 名前: 追坂金夏
と言うわけで、ちゃぽーんシーンである。
いや、であるじゃないな。
て言うか僕は、湯船に入れていない。
ユリアの髪を洗っている。
「うちのお風呂は...もっと広くて、パーパとマーマと入っても、まだばしゃばしゃ出来たんだけど、だけどこのお風呂、わたし一人入っただけなのにせまい」
「そりゃ、独り暮らし用だしね...」
と言うわけで、二人入れないから僕は出ているわけ。
ちなみに自己志願した。
ずっと憧れていた綺麗な髪の毛が、ほこりまみれなんて耐えられなかった。というのは建前。
お風呂が狭くて二人で浸かれなかったと言うのは、単なる状況。
僕が興奮してしまうから一緒に入れないのが、本音。
「お風呂の設備きれいだよね...トイレとも別だし。...シャンプーとか、高いやつ使ってるんだね」
やっぱり女の子は、そういうの気にするんだなあーーうちはメ○ットを使ってるよ。
ユリアのシャンプーはエッ○ンシャル。
○リットも別に悪い訳じゃ無いんだけど、母さんは匂いが嫌いだとぼやいていた。
匂いなんて、流れちゃえば変わらないんじゃないの?
でも確かに、ユリアのエッセ○シャルは速乾タイプらしい。
「シャンプーとコンディショナーは、大家が持ってきてくれた...石鹸は、越してきたとき新品が置いてあったの。」
日本のおもてなしなんだねーーとよもやこっちを向きそうになったのを、サイドの髪を洗いに手を伸ばすことで阻止する。
きっと...だめだ...おっぱいは見ちゃいけないと思う。
一緒におふろに入るに当たり脱衣所で服を脱がざるを得なかったんだけど、その際お尻は見えちゃったんだけど、それは個人的には腰の延長線上とも言えるし、まあ、仕方ない。
僕のアレも見られちゃってる訳だし。
とここで、シャンプーはもう十分だと思い流しにかかる。一本一本が細いのか、かなり流れやすかった。
排水口がごぽごぽ苦しそうにあぶく。
「ユーカの手は、パーパと似てるな」
「そ...そう?」
「似てる」
コンディショナーをポンプし 延ばした片手を握る。
「指がしなやかで...少し骨ばってて、親指の付け根がぷくぷくしてるの。頭を洗うときの手つきも、似てる。」
「そっか...それは何て言うか...ありがとう?」
「読者の皆さん、今のはてなは誤打じゃ無いんだよ」
「...それは何て言うか...メタい!!」
「ふふふ」
その笑い声に癒されつつ、手に広げたコンディショナーをユリアの髪に馴染ませる。
「コンディショナーってすぐ流さないでおくといいんだって」
「そうなの?」
「馴染むとかなんとか...詳しくないけどね」
と言うわけで、ちゃぽーんシーン終了。
...なんか湯けむり温泉シリーズみたいだな。
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