官能小説(オリジナル18禁小説)
- 淡雪(glr18)
- 日時: 2023/12/24 01:27
- 名前: 白楼雪
久し振りのgl小説です。
お楽しみ戴ければ幸いです。
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- Re: 淡雪(glr18) ( No.1 )
- 日時: 2023/12/24 01:31
- 名前: 白楼雪
十二月という時は、濃密な月である。
一年を十二という数字で表せば一月は年の始まりのせいか、穏やかな時の流れを想わせるものだが、季節が冬から春に変わり、春から夏へと移り行くにつれ時の流れは速さを増させていくものだ。
それを想えば、川上から流れる水のようだとも言えるのかもしれない。
その一年を締め清めるだけではなく、クリスマスや大晦日など忙しなく駆け抜けていく。それが十二月というものなのだから。
「そろそろかしら」
そう呟く声は、この独身マンションに住む望月早苗(もちづき さなえ)の口から溢れた。
今日は早苗の同僚であり、友人でもある佐々木風歌(ささき ふうか)が遊びに来る予定なのだ。
視線をリビングの壁掛け時計に向ければ、時刻は正午を指している。
手元にあるスマホを見れば、風歌から送られてきた「お昼に遊びに行くから、一緒に昼食食べよう」というメッセージが表示されている。
早苗と彼女の関係は早苗が大学を卒業後、今の会社に入社したばかりの頃に出会いから始まった。
お互いに新社会人で、同じ事務職だった事で良く会話を重ねるようになり、仕事終わりに時々飲みに行く。
初めの頃はそんなありふれた、普通の同僚としての付き合いだった。
それが半年、一年と過ぎるうちに彼女との距離は近づき、今では風歌の事を友人のように思っている自分がいたのだ。
友人として風歌に情を懐くようになってからの一年半はあっという間で、その間に流れていった季節の中には風歌と過ごした思い出が幾つも出来た。
そして、今年の十二月もきっとその思い出がまた増えるのだろう。
それを想像して、早苗は瞳を伏せた。
数分経っただろうか。
聞き慣れたインターホンの音が、リビングに届く。
その音に誘われるように、早苗がソファーから身を起こし玄関へと向かった。
インターホンのスイッチを操作して来客の確認をすると、映し出されたのは自身より少し背の高い茶色のダッフルコートを着た女性の姿があった。
コートを着たその女性は、明るくも落ち着いた笑顔を浮かべている。
このマンションの一階玄関フロアには、入り口付近に呼び出し用パネルがある。
そのパネルに付属された数字キーを操作して、各部屋のインターホンにアクセスする仕組みだった。
だがここのマンションにセキュリティ設備を作る際、費用はあまり掛けなかったのだろう。
このインターホンに音声機能は付いておらず、その為早苗と玄関フロア前にて笑顔を浮かべている彼女に会話はなかった。
まず手元のインターホンパネルを操作して、エレベーターフロアのオートロックを解除する。そして彼女がエレベーターフロアに移動するのを確認してから、早苗はインターホンを切った。
その後は、寒空のなかに意気揚々と早苗に会いに来た友人。風歌のために暖房の効いた部屋と温かいコーヒーを用意するだけだった。
一階から早苗の住む四階の部屋までは、エレベーターを使えば数分掛かる。
その間を利用して早苗は廊下からキッチンへと移動して、電気ケトルでお湯を沸かす。
棚から取り出すのは白いマグカップを二つ。陶器のコーヒードリッパーと紙のフィルターも手早くテーブルに並べていく。
そしてお気に入りの荒挽きコーヒーを取り出したところで、部屋の玄関インターホンが二度響いた。
キッチンから玄関へと小走りに駆け、早苗の右手が扉の鍵を開ける。
そして扉を開くとそこに居たのは、先程まで一階フロアにいた友人の姿だった
「こんにちは。いやー、外寒かったよ。あ!これお土産ね」
慣れた動作で室内に入り玄関で焦茶革のブーツを脱ぐ風歌は、早苗の顔を見上げ困ったように笑っている。
靴棚の上には、彼女が持ってきた駅前のパン屋の紙袋が一つ。
紙袋から漂う香りから察するに、中身はきっと二人が好きな限定の『焼き立てベーコンガーリックトースト』だろう。
「お昼はシチューにしたから、それと一緒に食べよう」
靴を脱ぎ、廊下に上がった風歌から紙袋を受けとると、早苗がリビングに案内ついでに返事を返す。
彼女が早苗の家に遊びに来たのは、これが初めてではない。
寧ろ頻度を言うならば、風歌は月に一度から二度はこの部屋に遊びに来るのだ。
その為部屋の案内などは言葉だけの事で、おそらく部屋の間取などは言わずともがな彼女の記憶にある事だろう。
「シチュー?良いね。早苗の作るシチュー美味しいから好き」
リビングのソファに鞄や手荷物を置き、風歌が振り返る。
そしてそのまま距離を詰め、早苗に抱きつくまでが、風歌のいつもの行動だ。
「風歌重い。これじゃコーヒーもシチューも用意出来ない」
覆い被さるように抱きつく風歌の頭を優しく撫で、あやすように早苗がため息をついた。
自身より少し背の高い風歌が、頭を撫でられるて猫のように気持ち良さそうに目を細める。
「んー。早苗は抱き心地良いな。良い匂いもするし」
覆い被さる風歌が、早苗の首筋に擦り寄り腰に手をまわしてきた。
今日の彼女は何時もよりしつこい気がするなと思いながら、風歌の両脇腹に早苗の両手が這う。
- Re: 淡雪(glr18) ( No.2 )
- 日時: 2024/02/14 00:47
- 名前: 白楼雪
「いい加減…離れなさい!」
そう言い、早苗はそのまま風歌の脇腹を擽り始める。
「っ!?あっ、あはは。やめ、やめて…」
風歌は早苗と比べると幾分か身長も高く、発育も良い。筋力も華奢な早苗よりある事だろう。
そんな彼女を剥がすには、擽るのが一番効率が良いと考えたのだが、どうやら成功したようだ。
「まったく、おとなしく座ってなさい」
笑いすぎて涙目になっている風歌をソファに座らせ、早苗が土産の紙袋を手にキッチンへと向かう。
するとソファに座らせたはずの風歌が、後を追いかけるようにキッチンへ入ってきた。
「手伝うよ」
そう声を掛けてきた風歌は、コートを脱いだのだろう。
紺の長袖ブラウスに黒のAラインスカート。それに黒のストッキングという、落ち着いた服装をしていた。
服装と容姿だけを見れば、風歌は落ち着いていて品がある女性に見える。だが、彼女は早苗の見てきた範囲で言うならば、些か性格が幼く人懐っこいのだ。
しかし風歌の事を指摘出来るかと言えば、早苗自身もそこまで立派とは言えないだろう。
風歌からして見れば、早苗は危機感が薄く見守りたくなるらしい。
見守りたくなるかはわからないが、電気ケトルを放置していたのを忘れるくらいには危機感がないし、それに今の服装も少しばかりラフと呼べるだろう。
早苗の今日の服装はクリーム色の鎖骨が見える長袖セーターに、深緑のシフォンスカート。足に至っては素足だった。
いくら部屋を清潔にしているからと言って、客を迎え入れる服装とは言い難いものがある。
そうはいえ風歌と早苗の関係は今では長く深い縁となったのだから、変に気負う必要はないからこそ、早苗もラフな姿を見せられるのだけれど。
「じゃあ牛乳出して。あと温野菜も」
ドリッパーに挽いたコーヒー豆を入れ、ケトルの湯を注ぐ。
ふわりと香るコーヒーの香りを少し楽しんでから再び湯を注ぎ、二つのマグカップにそれぞれコーヒーを注いだ。
「砂糖一つだよね?」
コーヒー器具をシンクに片付けている背後に、風歌の声が聞こえる。
彼女はもう、早苗の部屋のキッチンをある程度扱えるくらいこの部屋に通いつめていたのだ。
「うん。ありがとう」
洗い物をしながら答えると、風歌が手際良くコーヒーに砂糖を一つずつ入れ、二つのマグカップに牛乳も少しずつ加えた。
そのまま冷蔵庫に牛乳を片付け、紙袋を漁る音が聞こえる。
洗い物を終え振り向くとテーブルにまな板を用意していた風歌と目が合い、互いに小さく微笑む。
そんな小さな出来事に、彼女と同居をしたらきっと楽しいだろうと思ったのは心の奥にそっと隠しておこう。
口にすれば風歌の事だ、きっと二つ返事で受けてくれるだろう。だが、誰かと共に暮らすのは簡単な事ではない。
互いの常識、良識を擦り合わせ、どこまで譲り合えるかに掛かってくるのだ。自己中心的な考えではやっていけない。
かと言って遠慮ばかりでも他人行儀になり、距離が離れてしまうものだ。
きっと今の関係が風歌にも早苗自身にも程好いのだろう。
そう思いながらコンロの上にシチューの入った鍋を置き、コンロの火をつけた。
中火で温められていくシチュー鍋の蓋を取り、レードルを手に中のシチューをゆっくり混ぜる。
「うーん、美味しそう。ガーリックトースト買ってきて正解だったな」
温めたトースターに薄切りしたガーリックトーストを入れ、白いサラダボウルに温野菜のブロッコリーと人参、ジャガイモを盛り付けた風歌がテーブルに寄りかかりコーヒーを味わっていた。
「風歌が買ってきてくれて助かったよ。私もここのガーリックトースト好きだから」
ここに第三者が居るならば、行儀が悪いと思われるだろうか。
けれども、キッチンで寛ぎコーヒーを飲むのは、料理を作る者の特権とも呼べるだろう。
なによりも、ここには風歌と自分しかいないのだから、気になどする必要もないのかもしれない。
そう思いながらシチューを混ぜ温めつつ、コーヒー片手に会話を楽しむのが早苗も穏やかな時間が好きだった。
だからこそ虚を突かれたのかもしれない。
「私もガーリックトーストは好きだけど、私はそれ以上に早苗が好きだな」
何気無い事のように話す風歌に、早苗は反応に一瞬悩む。
だがそれを悟られないように、笑って言葉を返した。
「私も風歌が好きよ。こんなに気の合う友人、他にはいないもの」
温まったシチューを確認して、コンロの火を消す。
そして自然な素振りでスープ皿を棚から取ると、風歌の横顔が見えた。
風歌の表情はいつもと変わらない。
やはり彼女の言う好きは、早苗を友人として好きだという意味なのだろう。
スープ皿にシチューを盛り付けていると、タイミング良くガーリックトーストが焼けた。
「そっち、持っていってくれる?」
トーストと温野菜を盛り付けた皿を運んでくれるように風歌に促すと、慣れた手つきで彼女は皿を持ち頷く。
「了解。先に行ってるね」
リビングに向かう風歌の背を早々に見送り、早苗もスープ皿とカトラリー容器を手にリビングに向かった。
- Re: 淡雪(glr18) ( No.3 )
- 日時: 2024/02/14 00:49
- 名前: 白楼雪
※※※
昼食を終え食器を片付けて数十分。
ソファで寄り添い寛いでいると、不意に風歌が問いかけてきた。
「早苗さぁ、今彼氏いるの?好きな人とか」
食休みに呆けていた早苗も言葉を返す。
「いないよ。風歌はいるの?」
問い返すと風歌が寄り掛かり擦りよってくる。
「付き合ってる人はいないんだよね。好きな人はいるんだけどな」
風歌に好きな人がいる事は初耳だった。
友人に好きな人がいるという事は、きっと良い事なのだろう。
だが、風歌に恋人が出来たら、こうして共に過ごす事も少なくなるのだろうなと思うと、応援したい気持ちと寂しさが交ざりあった。
「それなら、こういう事は好きな人にしたほうが良いんじゃない?」
寄り掛かる彼女を押し返すと、風歌は不満そうな表情を浮かべる。
「好きな人にしてるんだけどな」
静かな部屋で聞こえた声は、早苗の思考に疑問を持たせた。
好きな人にしている。それでは今まさに行っているように聞こえたのだ。
「ねえ、風歌?それってどういう意味?」
風歌の言っている意味がよく分からず、早苗が問い返すと風歌が吐息の掛かる距離に詰めてきた。
「ごめんね。私、早苗の事を恋愛として好きなの」
互いの唇が触れ合うまで数センチの距離。自分とは違う、甘く酸っぱい柑橘果物を想わせる風歌の香りに、早苗の心音が僅かに高鳴る。
「答えを急くつもりはなかったんだよ。でもさ、早苗とずっと一緒にいて、好きになるにつれて、焦りがでちゃったんだ」
不安そうな風歌の声を聞きながら、早苗は徐々に思い始める。
これから先はもう、今までの関係ではいられないのだろう。
恋人か、以前より遠い会社の同僚か。そのどちらかにしかなれない。
「早苗は、可愛いくて良い子だから、一緒にいてその事が良く分かったから、遠くない未来に誰かの恋人になっちゃう。そうしたら、たぶん私の気持ちを伝えなかった事、後悔しちゃうと思って」
懸命に伝えてくる風歌の表情は、叱られた幼い子供のように見えた。
彼女に、そんな悲しい表情をさせたいわけではないのに。
「風歌、聞いて」
だからこそ、気がつけば早苗は風歌を抱きしめていた。
先程まで友人としか見ていなかった彼女の思いに、どう答えればいいかなど分かるはずもない。
それでも懸命に思いを伝えてくれた風歌の事が大切だから、早苗の思いをそのまま伝えなくてはならないだろう。
「私、風歌の事を友人だと思ってた。だから、すぐに風歌の事をそういうふうに思えるかなんて分からないよ」
友人である彼女の背を撫でながら、早苗は続ける。
「でもね、もし風歌に恋人が出来たら、私も寂しいと思う。嫉妬もしちゃうと思うんだ」
紡ぎ出す言葉は、告白の答えと呼べるだろうか。
イエスでもノーでもない。曖昧で、はっきりしない気持ちだらけで、早苗自身が一番落ち着かない。
「これが、風歌と同じ好きかなんて分からないけど、私も知りたいと思うんだ」
抱きしめていた腕を緩め、風歌と顔を近付ける。
「だから、風歌が教えて?風歌なら、私は良いよ」
吐息がかかる。甘い柑橘の香りは、風歌の香水かシャンプーの香りだろうか。
その香りと、風歌の温もりに惹かれるように、早苗は自ら風歌の唇に自身の唇を重ねた。
- Re: 淡雪(glr18) ( No.4 )
- 日時: 2024/02/14 01:02
- 名前: 白楼雪
※※※
薄暗い部屋に、濃紺のカーテンの隙間から夕陽が細く溢れる。
室内にはベッドに座る部屋の主である華奢な女性と、隣に寄り添う少しばかり長身で育ちの良さそうな女性の影があった。
「本当に良いの?」
風歌が部屋の主である早苗に寄り添い、静かに問い掛ける。
早苗への恋慕を言葉にしたのは、確かに風歌の方だった。
そして彼女と口づけを交わし、早苗と悦に浸りたいという気持ちがあるのも嘘ではなかった。
だが、早苗の気持ちを聞けないままに流されるようにこの先に進んで良いのか、風歌の心に僅かな迷いが浮かぶ。
そんな風歌の手に、早苗がそっと手を重ねた。
「風歌なら良いの。だから…」
触れた手に指を絡め、柔らかく握り、早苗が再び風歌の唇に淡く唇を重ね合わせる。触れ合う手と唇から伝わる体温は、僅かに寒い室内でほんのりと熱を帯びていた。
彼女の指先から逃れ、風歌の手が早苗の腰を抱き寄せる。
華奢な腰と薄い胸が早苗の着ている冬物のセーターを隔ながらも感じ、その腰からセーターの裾に指先を滑らせ、早苗の繊細な素肌に触れていく。
「…ん、冷たっ」
触れた唇から早苗の声が甘く溢れたが、それでも風歌の手は止まらずにいた。
「もう少し、我慢して。すぐ温かくなるから」
早苗をベッドに抱き押し倒し、彼女に覆い被さるように風歌が早苗を見下ろす。
早苗はもちろんの事、風歌だって同性と夜の情事を過ごす事など初めてだ。
それなのに風歌が早苗を押し倒し、早苗のセーターを脱がす事に迷いがないのは、単に好きな人の知らぬ表情や仕草、姿を見たい。風歌の手で満たし、この一時の情事の間だけでも自分だけを想って欲しいという事に他ならない。
「あまり、見ないで」
衣服を脱がされ、繊細なレースに彩られた下着もベッドの下に落とされた早苗の姿は日に焼けていない肌が艶やかで、細い腕や腰、薄い胸も芸術品のように綺麗だった。
綺麗な肌を露にして、頬を薄紅に染めた早苗は視線を逸らし胸元を腕で隠してしまう。
同性の素肌だというのに、その姿に惹かれてしまうのは相手が早苗だからなのだろうと風歌は心の奥で思った。
これが興味もない、恋慕も懐けない相手ならば、風歌もなにも感じる事はなかったのだろう。
目の前で視線を逸らしている早苗も、相手が風歌だからこそ恥じらいを見せているのだとすれば、彼女の心情にも風歌に対して恋慕の色が少しは滲んでいるのかもしれない。
「ねえ、風歌も脱いで」
上半身を露にしている早苗が、風歌の紺色のブラウスの裾を摘まみ、上目遣いで願う。
「…うん、そうだね。私も脱ぐよ」
艶のある瞳で見つめられれば、それだけで風歌の頬も薄紅に染まり心音は高まるものだ。
そんな状態で早苗に脱がされでもすれば、風歌の方がこの先に進む事に躊躇しかねない。
その為、早苗の視線を受けながら、風歌はゆるりとブラウスと下着を脱ぎ、ついでに下肢を包むスカート等も脱ぎ捨てた。
「風歌、綺麗だな。胸も、私より大きくて良いな」
見上げ呟く早苗の言葉に、風歌は居たたまれない気持ちになるが、それ振り払うように早苗を抱き締め、唇に口づけを重ねる。
もうこれ以上、恥じらいを感じさせられぬように。尚且つ、早苗の熱を味わえるように、淡い口づけは深みを増させていき、呼吸は荒くなっていく。
「…はぁ、風歌。もっとゆっくり…」
酸素を求めるように僅に離れた唇からは、早苗の艶めいた声が溢れた。
そこに早苗が見せる色に嫌悪はなく、どちらかと言えば情事への悦が浮かんでいるように思えた。
- Re: 淡雪(glr18) ( No.5 )
- 日時: 2024/02/14 01:11
- 名前: 白楼雪
熱を帯びた早苗の表情に、風歌の理性は薄れゆく。
早苗の首筋に口づけを重ね、淡く甘噛みをすると、早苗が小さく熱に染まった声を溢した。
彼女の腰に風歌は手を這わせ、鎖骨に口づけを重ねる。
這わせた手は、早苗の腰から横腹を撫で、早苗の控えめな胸に触れた。
「早苗の胸、柔らかい」
小さく微笑み、鎖骨に唇を触れさせたまま囁くと、早苗がか細い声を上げる。
「そんな事、言わなくていいから…。それに、それを言うなら風歌のほうが…柔らかいし大きい」
それまで風歌の下でされるがままに喘いでいた早苗が、初めて風歌の肌に、その豊かな両胸に両手で触れたのだ。
「…っ、ぁ…早苗…」
早苗の手が風歌の豊かな胸を柔らかく掴み、指先で胸の尖りを撫でる。
その些細な手の動き一つにも、風歌の声が甘く溢れてしまう。
「早苗…、はぁ…っ…そんな、事…しなくていい…」
早苗の指先は巧みに動き、彼女の手は柔らかく風歌の胸に触れ、時折形を微かに歪める。
同性故だろうか。それとも情を寄せる人だからか。早苗の触れ方は風歌の感じる部分を程好く刺激して、これではどちらが求めているのかわからない様だった。
「私も、されてばかりは嫌だから。風歌も、気持ちよくなって?」
鎖骨に唇を寄せている風歌の耳に、早苗の熱を帯びた囁きが届く。
ああ、このままでは駄目だ。風歌が思うのは、早苗に悦んで欲しいという心。だが、早苗の言葉を思えば、二人で悦を味あわなければ意味がない。
そしてこのまま流されては、風歌だけが充たされてしまう事だろう。
だから、風歌は早苗の胸に触れる自身の手を胸から腹部に、そして早苗の華奢な身体を這うように腹部から早苗の内腿へと流していく。
内腿に触れると、早苗はその意味を察してからか、下肢を僅かに縮めてしまう。
「あ…、まって…風歌。そこも、触るの…?」
案の定、風歌の胸を弄る手も止めてしまうほど、早苗が動揺の声を上げ瞳を潤ませていた。
その潤んだ瞳に風歌の欲は強くなり、早苗の両内腿の隙間へと手を滑り込ませ、指先で早苗の秘部へと触れる。
触れる秘部は柔らかく、熱を含んだ蜜に濡れていた。
「だめ、あっ…そんな…っあ」
早苗の弱々しい制止などで止められるほど、今の風歌の欲は冷めておらず、寧ろ理性を崩すように煽られているのではないかとすら思えた。
力のない抵抗というものは、時に逆効果となる事は多々あるものなのだから。
「うん、早苗のここ…熱くて蕩けそうだね。もっと気持ち良くしてあげるから」
風歌の指先が、早苗の秘部の濡れた尖りを撫でると、早苗が悦の声で幾度と鳴いた。その声がもっと聴きたくて、風歌の指先が尖りを責めたてると、早苗は風歌の胸を責め立てる事も出来ずに、風歌の背を抱き与えられ続ける快楽に喘ぎ続けていた。
「風歌…、や…っ…私も、した…い」
尖りを責めたてていた風歌の指は、ゆるりと早苗の秘部のなかへと入りこみ、熱を帯びた蜜を絡めるように荒々しく、尚且つなかを傷つけぬよう責めていく。
その最中で悦に充たされながらも彼女を思う早苗の気持ちに、風歌も苦笑を溢さずにはいられない。
「良いのよ、早苗。私は、早苗が私の手で気持ち良くなってくれれば、それで良いの」
だから快楽に身を任せて、果ててくれて構わない。
その気持ちを込めて、早苗の唇に風歌は口づけた。
今この時だけでも、早苗を独占したい。自分だけを見て思って、求めて欲しい。それ以上に望む事など、今の風歌にはなかった。
その望みを思えば、風歌が快楽に充たされる事などどうでも良いのだ。
しかしそれを望んでいたのは、やはり風歌だけだったらしい。
「だめ…っ、私も…風歌に、気持ち良くなって欲しいから…。一緒に気持ち良くなれないなら…っ、意味ない…」
酸素を求め僅かに離した唇から、早苗が途切れ途切れに求めるような言葉を発したのだ。
口づけを重ねていた間も風歌の指は蠢き、早苗のなかを責める指は二つに増えていたというのに。悦に侵された身体では思考も熱に蕩けているだろうに。
それでも早苗の手は風歌の背から臀部へと這い、太股を撫で風歌の秘部へと流れていくのだから、早苗の風歌を思う気持ちは凄いと言わざる得ないだろう。
「…っ、早苗…。私は…」
熱のある蜜に濡れた秘部に触れる早苗の指は、細くしなやかに探るように風歌の欲を駆り立てる部位を求める。蜜に濡れた尖りを掠め、秘部のなかへと二本の指がぬるりと侵入して、探るように内壁を撫でていく。
「ん…風歌も、して?一緒にいきたいから…」
辿々しくも風歌のなかを責める早苗が、求めるように唇に口づけを重ねてきた。
「は…ぁ、…ん。早苗、好きだよ…」
僅かに離れた口づけの間で風歌が熱の隠った声で囁く。
そして風歌の指が早苗のなかを再び侵し始めると、早苗も悦を堪えるように風歌のなかをより激しく責め立ててた。
「あ…っ…風歌…。…もう…いっ…」
「ん…私も、…ぁ…っ」
数秒の差で共に果てた風歌と早苗は、荒い呼吸でそのままベッドに寝転がる。
気づけばシーツは乱れ、早苗のスカートも皺が出来ていた。
- Re: 淡雪(glr18) ( No.6 )
- 日時: 2024/02/14 01:13
- 名前: 白楼雪
「…スカート、皺になってるかもね」
数分の間を置き呼吸が落ち着いた頃、早苗がぽつりと呟く。
風歌自身、焦りがあったわけではない。なるべく落ち着いてしようと思っていたのだ。
だが、情事を終えて思い返せば、冷静で居られたのは始めだけだったのではないか?いや、そもそも冷静な思考など、風歌が早苗に惚れた瞬間から薄れていたのかもしれないのだ。
「早苗、嫌いにならないで」
世間はまだまだ同性愛に厳しい。
風歌も早苗を好きになるまで、同性愛には否定的だったくらいだ。
同じ女性だったから好きになったわけではなく、もし早苗が男性だったとしても、きっと風歌は早苗を好きになっただろう。
しかし早苗はそんな風歌の気持ちなど知るよしもないし、風歌から打ち明けた事もないのだ。
それを思えば彼女から見た風歌の存在は、ある日突然同じ女性の同僚に告白されて、更に情事にまで流したような存在である。
早苗に嫌われ関係が壊れても受け入れるしかないだろう。
深い呼吸をするように吐いた風歌の言葉は、諦めのような靄が滲んでいた。
けれど諦めの言葉に早苗が返したのは、予想外の言動だった。
「なんで嫌いになるの?私はまだなにも返事していないのに」
隣に寝転がる風歌をふわりと抱きしめ、風歌の頭を抱えるように早苗が優しく問いかける。
「私ね、風歌の事が友人として好きなのか、恋愛として好きなのかまだわからない。なんなら、人として好きなのかもしれないし」
呆然とした風歌の頭を、早苗の手が優しく撫でる。
その触れる温もりが心地好くて、彼女の側にずっと居られたらと風歌は思う。
「でもね、風歌とキスしたりして一つだけわかった。私、風歌とならしても良いし、したいと思えたよ。だからそれが答えでも良いかなって思ってる」
早苗が今どんな表情をしているか気になった風歌は、そっと離れて顔を上げようとするが、早苗が離してくれる気配はなく、そのまま早苗の胸に顔を埋めるままとなった。
その為早苗の表情は分からなかったが、それで良かったのかもしれない。何故なら今の風歌の表情も戸惑いと喜びできっと頬が薄紅に染まりきっているだろうからだ。
「風歌の事、友人としても同僚としても、人としても恋人としても、全部引っ括めて好きじゃ駄目かな。他の答えが見つからないから」
風歌を抱く早苗の声が、少し苦笑と幸福が交ざりあって聞こえる。
風歌自身も、いったい早苗の事をなぜ好きなのか。どう好きなのかなど答えようがないのだ。
ただ、気がつけば早苗の側にいたい。他の誰よりも特別でありたいと思っただけなのである。
この気持ちに明確な答えなどわからず、しかしそれでも風歌の中に浮かんだのは恋慕だった。それだけだったし、それは今も変わらない。
だからお互いに何もわからないままなのだ。
「早苗、私早苗が好きだよ。この先も好きでいたい」
緩んだ早苗の腕から離れ、少し照れたような早苗の額に淡い口づけを重ねる。
「ありがとう。私もこの先ずっと風歌の隣にいたい。大好きよ」
嬉しそうに弾んだ声で早苗が微笑んだ。
気がつけば部屋に掛けられた壁時計が夜を示していた。
そういえば今朝のニュースで今夜は冷えると言っていたはずだ。
夜飯はどうしようか。疲れた身体では買い出しも調理もままならないだろう。
そんな思考を浮かべていると、隣から小さな寝息が聴こえてきた。
「早苗?寝ちゃったのか」
寝息をたてている早苗は、幸せそうに瞳を閉じ眠っていた。
その姿を見守っていると、風歌も眠気が増して瞼が重くなってくる。
もうこのまま眠っても良いのではないだろうか。柔らかな布団と愛しい恋人の温もりに身を任せ、風歌はゆっくりと眠りに落ちていく。
外は今頃淡い雪でも降っているだろうか。
その淡さは二人の恋慕のように優しい雪だと思いたい。
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