官能小説(オリジナル18禁小説)

創作BL短編等
日時: 2025/07/06 09:51
名前: 四阿

別所での創作やうちよその短編等を書き留めていきます。R18からプラトニックまで様々。
ちゃんとしたキャラ背景の説明等は出ませんので、脈絡が分かりにくい所多々あるかと思います。
宜しくお願いいたします。

【作品】

「狼藉」和泉 七瀬×渚 夕凪>>1

「和泉 七瀬の見解」/和泉 七瀬・端幡 燈香×花咲 彩葉>>2

「羽化」/端幡 燈香×花咲 彩葉>>3
「延命」/端幡 燈香×花咲 彩葉>>4

「瑕疵」/霄代 綴×霄代 繭>>5

Page:1



Re: 創作BL短編等 ( No.1 )
日時: 2025/05/08 22:32
名前: 四阿

「狼藉」/和泉 七瀬×渚 夕凪


こうしていれば忘れていられる。
「や、っあ゛、それ…ッ」
こうしていれば無視していられる。
「なな、せッ……な、っう゛、やだ…!」
こうしていれば。
没頭していれば。
片付けられない頭の中に、目を向けなくて済む。
濁った目も、ひずんだ声も、その季節の事も。
一人で居れば全部が鮮明で、全部が押し潰しにくる。
あいつが死んでから、ずっと。
録音したものを延々と喋り続ける玩具みたいに、変わらない表情、変わらない声色。分別の出来ない記憶。
それら全部、ここにはない。
「な、っせ、…ッ何、なんなの、なんか言えよ、」
彼が手を此方に伸ばす。頬に指先の温度を感じる。
熱い。あついな。こんなに体温を上げて、必死に自分を求めている。目を合わせれば、涙で潤んだ葵色が、不安と快楽でパンクしそうになりながら此方を見上げているのだと分かって。
「…大丈夫、だから」
それしか言えずに、また奥に入り込む。太腿を持ち上げたままぐっと腰を押し当てて、とん、と彼の一番弱い所をたたく。
今回ばかりは怒られるかな、とか、考えたのに。
最低限の確認だけでほぼ言葉を交わさないまま、何も伝えずにここまでの事をしてしまっている。その癖、彼の口からは酷く焼き付くような嬌声ばかり。
甘えてしまう。だってここにはノイズがない。
世界から全く切り離されたようなこの部屋で、自分と彼、それだけ。それだけなのだと思わせてくれるから、どうしようもなくて。
「夕凪、…ね、…お願いだから、拒まないで」
…どうしようもなくて、なんて柄にもない。
狡い事をしている自覚はある。でも、こういった衝突、…否、自分一人の衝動。それを前にすれば簡単にぐらついてしまう程脆い人間だ、なんて事は、誰より自分が一番理解している。
思い出したくない。思い出したくない。
この熟れた声と吐息だけを聞いていたい。震える体の熱を、重い快感を、享受していたい。
感情の種類に良いも悪いもない。それらは等しく、時に凶器にさえなり得るものだ。…今、自分が彼にこうして向けているように。
「ッも、…っ七瀬、お前なに、何で今日そんな我
慢すんの、ッ…いつ終わんだよ…!」
「…やだ、もうちょっと、…ッ」
我慢、って。終わらせたくないから、我慢もするだろ。もう少しただ気持ち良いだけでいたい。
その後の事なんて考えたくない。だって片付けは下手くそなんだ。

「夕凪、…ゆうな。…ごめんね、」

もう少しだけ、散らかしたままで。

Re: 創作BL短編等 ( No.2 )
日時: 2025/07/06 09:33
名前: 四阿

「七瀬 和泉の見解」/七瀬 和泉・端幡 燈香×花咲 彩葉


カフェの昼営業が終わり、夜営業に向けた仕込み前の休憩時間。カウンター席に座って後ろを向き、ぼうっと一点を見つめる僕の雇用主。と、その視線が注がれる先の男。
閉店しているにも関わらず席に座って何かの作業をする彼は、ここの従業員ではない。なのにこうして居座ったり、時には店の手伝いにも回っているというのは、つまりそれだけオーナーが特別扱いをしている事の表れで。しかし、それを訊こうが決まって「同居人」としか言わないのだ。

その癖いろは、と呼ぶ声は、自分や他の従業員の名前では、聞いた事のない甘さを伴う。


以前彼と、食材の買い足しにスーパーまで行った事があった。
にこやかで話が上手で、道中気不味くなるような心配もすぐになくなって。…だから、少しだけ踏み入ってしまって。
「あの、…花咲さんとオーナーって…付き合ってる、んですか」
「ええ?ないない!」
彼は驚いた顔をして此方を向いた。しかしへらりと笑った後は少しだけ俯いて、自ら否定、をした事にどうしてか傷付いているようにも見えるような、寂しそうな表情に変わった。
「…あいつはそんなんじゃないよ。もっとこう……薄い、っていうかさ」
それにはそうですか、としか言えなかったが。
声色が下がっているのが分かりやすい。やっぱり言い切る割に寂しいんじゃないか。

寂しい、だろうにこの男は。

(……マジで、何処がだよ)
彼を見つめるオーナーの目。燃えるような視線を、それを送る意味を、僕だってよく知っている。
自分がかつてそうだったように。
死ぬ程の幸せを望んだように。
この人だって、本当は。
「…燈香オーナー」
「あ?」
「あんた、別に薄い訳じゃなくて、あの人の前で"それ"出さないだけですよね」
あの時の花咲さんと同じような少し驚いた顔で此方を見る。
どうしてそんな二人して、自分の中にしまい込んでおいたのに、とでも言うような表情が出来るんだ。
人の心の機微等に敏い自覚は確かにある。
オーナーも花咲さんも、抑え込んで抑え込んでこれなのだろうと分かる。でも外野に伝わるようでは隠しているなんて言えないだろう。
隠し切れない程、きっと本気なんだろう。
「はッ……、で?それがどうした」
分かりやすい空笑いの後、ふっと背を向けてその先言葉は続かず黙る。まるで品定めでもするようでいるが、しかし此方の言葉はあまり待っていないようだった。
「どう、って」
「あいつはこんなモン知らなくて良いんだよ」
相手が食い気味に口を開く。先に感じた通り、訊く癖に言葉は大して求められていない。反射的に何かを言おうとしただけで実際頭には適切な台詞なんて浮かばなかったから、それは別に構わないのだけれど。
オーナーは立ち上がって再び此方を向いた。身長がある分座っているより威圧感が増して、決して優しい顔つきだとも言えない人だから、どうしても重い雰囲気を纏っているように見えるのは仕方のない事で。
仕方のない事だが、しかし。

「わざわざ人の恋路に口出す位なら、お前もその体たらく何とかすれば」

しかしそれは、仕返しというにはあまりにも、鋭すぎるんじゃないか。

「……煙草吸って来ます」
逃げるように、でも静かに落ち着いてそう言って裏口の扉へ向かう。今度こそオーナーは何も言わず、ひらりと片手を上げて了承を示していた。
ポケットから煙草とライター、携帯灰皿を取り出す。中々つかないライターに変な焦りを感じながら、カチカチと音を立てる。漸く火をつけた後は、いつもより少しだけ長めにふかしてみたりして。
甘い香り。苦味を通って、香りとはまた少し表情の違う甘味。
ああ、何だか、すごく。
言いようのない不安を感じたからなのか、彼等に当てられたからなのかは分からないが、気付けばまだ冴えない頭でスマホを取り出し、メッセージを漁っていた。

『ねえ夕凪』
『今日の夜会える?』

Re: 創作BL短編等 ( No.3 )
日時: 2025/05/12 23:24
名前: 四阿

「羽化」/端幡 燈香×花咲 彩葉

「燈香、今日何」
目の前の男が訪ねる。
「…炊き込みご飯と味噌汁と、あと何か…付け合わせあんま決めてねえ」
それに自分が答える。
変わらない、いつもの会話。学校が終わって、二人でスーパーに行って、俺の家で夕飯を作って食べる。その、家に着いた開口一番。
「あー、さっき買ってた小さい帆立!あれ使うの?」
「そ。安かったろ?美味い出汁も出るし、彩葉も好きかと思って」
炊き込み用と味噌汁用、欲張って二つ買ったパックを袋から取り出す。彼は楽しそうに笑って、冷蔵庫に使わない食材をしまってくれた。
もう随分勝手が分かっていて、何処に何を入れるとか、これはすぐに使うだとか、そんな判断も容易いようだ。まるで一緒に住んでいるみたいだ、と。そんな風に頭に浮かべる事が、最近は増えてきてしまって。
この時間を、彩葉を、大切にしている。勿論、汚さない為の引き際は守ってきた。
劣情も何も押し込めて、表に出すのはいつだって優しさであるように。
綺麗なグラスを、手袋を着けて丁寧に磨き上げ
るように。
「…あー……悪いんだけど、飯炊けたら起こして「くんない?」
此方の仕込みが終わり、炊飯器のボタンを押したのを確認した彩葉が少しだけ目を擦る。テスト期間もあって疲れてしまったのか、ふにゃりとした笑顔でソファに座って。
だから俺は何も言わずに寝室に行き、毛布を持って戻り彩葉の体にかけてやる。だって風邪をひいてはいけないから。…こいつの環境を、分かっているから。
「お前は優しいよなあ」
彼が目を閉じたまま、とろとろと柔らかな声を出す。
当たり前だろ、優しくしてるんだ。そうしなければいけないと思うから、お前にいっとう優しくしてるんだ。それでなければ、家に上げたりなんてしない。
「…そうでもねえだろ」
当然そんな事は言える筈もなくて、ぶっきらぼうな口を開く。今度はふわりと目を開いて、しっかり此方を見た。
「いいや、優しいよ。…本当、誰にでもそうだろ」
腹の底がざわつく。眉をほんのり下げる彩葉を、見つめる事しか出来なくて。
「お前、よく周りの手伝いとか、重そうなモン持ったりとかしてあげてんじゃん。女子からの人気案外高えんだぜ、知ってた?」
足元からぞわぞわと何かが駆け上がり堪らなくなる。理性が、全力で警報を鳴らしている。
「何かさ、今こうやってお前ん家で飯食わせて貰ってるけど、優しさはそんな特別な訳じゃねえのかもって」
やめろよ。もう、頼むから。これ以上は。
待って。待てってば。
そんな、

「そしたら、俺だけなら良いのになって思っちゃって」

酷く傷付いた顔をして、どうしてそんな事が言えた?

もう駄目だ。これは駄目だろ。全部、こいつが悪い。
ずっと大切にしていた男の上に跨る。上体を倒して顔を近付けて、頬を掴んで、それから。
「お前が、おまえがほんとうに、俺のものになれ
ばいいのに」
情欲が声に乗って漏れ出ていく。必死に押し込めていた物が形を成して、喉の奥から這い上がっていく。

ああ、どんなに丁寧に扱っていたって、壊れるのは一瞬だ。
自分でも手垢の一つさえ許さなかったグラス。を、今から舐めて噛み砕いて、呑み込んでしまおうと。

夕飯の時間だから腹が減ったのだ、仕方がない。
そう割り切るにはあまりに心が未熟で、どうしようもなく泣きたくなった。

Re: 創作BL短編等 ( No.4 )
日時: 2025/05/26 22:14
名前: 四阿

「延命」/端幡 燈香×花咲 彩葉


いつからこうなった。とか、そんな事を振り返ったって仕方がない。
ただ自分に得体の知れない感情が芽生えた時も、今の関係になってからも、俺は変わらず必死で。
変わらず、この男を渇望している。


「彩葉、ッ気持ちい、?」
「ん、ッぅ゛、きもち…っ」
身体が、頭が、熱い。彼が受け入れてくれる箇所も、全部。重過ぎる快感に、くらくらする。
「もっと、もっとほしい、っとぉ、かッ…」
今でさえどうにかなってしまいそうなのに、そんな甘ったるい声で自分の名前を呼ぶから、余計に熱に浮かされる。
でも、まだまだ飢えは満たされない。
自分の両手指を彩葉のそれと絡めて、ぎゅっと握って、この時間が続けば良いのにとただ思う。
揺さぶって、壊して、こうして自分の手の中にずっと納めておけたらどれだけ良いだろう。

幾らキスをしても、身体を重ねても、全然足りなかった。自分がこんなに欲の深い人間だとは知らなかった。
目を合わせれば瞬間、やけに喉が渇いて、堪らず彼に手を伸ばす。そうして抱き締めて組み敷い
て、優しく触ってやる度に潤む青白橡の瞳に、酷く欲情した。
お願いをすれば可哀想だと思う事もさせてくれた。何だって赦された。
最初は小さな欲求から始まり、それが次第に大きくなっても、彩葉はいつも頷く。そして上擦った声で悦ぶのが、愛おしかった。
それでも渇いて仕方がないから、彩葉が誰にも取られないように外堀を固めようとした。
誰よりも彩葉の事を理解して、誰よりも彩葉の望みに準ずる事の出来る人間になろうと努力をして。
「花咲彩葉の隣には端幡燈香だ」と、周りが自然に認識するように。
そしてそれは自惚れでも何でもなく、本当に当たり前として焼き付いた。
ずっと一緒に居る事を不思議がったり咎めたりする人間は、誰も居なくなった。彼に、好意を差し出そうとする人間も。
だってそんなものは、俺だけで良かった。

「とおか、っやだ、なんで」
「あ?どった、」
動きを緩めて浅い所だけを擦るように動いてやると、切なげに腰を浮かせながら震える。
あのどうしようもなく熟れた声で自分を強請るのが聞きたいと、思ってしまった。
多分こいつも気が付いている。こうなれば口に出すまで望む物を与えない事にも、それは自分のただの我儘である事にも。
「奥、いれて。おまえで、いっぱいになりたい
此方に向ける青白橡から、とうとう涙が溢れる。
それにぞくりとして思わず笑みをこぼすと、彼の後孔にもきゅ、と力が入った。分かった、と繋いだ手を離して頭を撫でる。そしてまた激しく腰を動かせば、びくびくと身体を跳ねさせ自身のモノを簡単に先走りで汚すのだ。
「とお、かぁ゛…っそれ、ッすき、」
「ッ、ちゃんと知ってる、…」
そう。全部知っている。何処をどうされるのが好きなのかは全部、彼が教えてくれた。
最奥を叩くように深く押し込むと一際高い声を出す事。それをゆっくりした時のじわりと襲う快感にも弱い事。その後また抽挿を激しくして舌を絡めてやれば、簡単に果ててしまう事。
何度も抱き合う中で自分だけに暴かせてくれた彩葉の痴態だ。他の誰でもない、自分だけが見て、きたものだ。
これがもっと欲しい。奪い尽くしてやりたい。
だからこそ、彼に与え続ける。
自分の抱える醜い感情を、快楽に溶かして混ぜ込んで、少しずつ少しずつ伝えていく。
でも好きだとか愛しているだなんて、そんな言葉では済まされない。それに恐らく、それが似合う程給麗なものでもないだろう。
だから彼への気持ちを示すには、これしか方法を持ち合わせていない。

腰の動きは止めずに、透明な液体ばかりがだらだらと溢れる彩葉のそれに手をかける。彼はびくりと肩を襲わせ目を見開いた後、腕を懸命に伸ばし、絶るように俺に抱きついた。直後、背中にひりつく痛みが走る。彼の爪が引っ掻いたのだろう。
一度に留まらず、二回三回と繰り返す。
痛い、痛い。でも、気持ち良くて仕方がない。
彼が身体に残る事がただ幸せなのだ。彼がくれるものなら、痛みだろうと関係ない。何だって欲しいと思うから。


それだけの事をしても、付き合いたいなんて望まない。いや、きっと望んではいけない。
自分がそうしているように、彼に依存されている自覚はある。その上でセックスまでしている。
だからこそこれで満足しておくべきだ。
今以上なんてない。ここにあるのは執着と肉欲だけで、コイとかアイだなんていう代物じゃない。
どうせ離れない。離れられない。
何も、変わらない。
際限なく求め続けるし、渇きもなくならない。
声も、身体も、根底の脆さも、花咲彩葉の全てを一つも余さず自分の物にしたい。そういう欲を抱え続ける。
みっともなく。情けなく。
あの時、そうして丁寧に磨き上げていた筈のグラスを噛み砕いてしまったんだから。
だから、いつかこいつに"もう逃げたい"と言われるまでは。
くどくて胸焼けする程の重い泥濘の中、終わりを先延ばしにし続ける。
本当はさっさと終わってしまう方がずっと楽で正しい筈なのに、それでもずっと、苦しみながらこの碌でもない感情を背負って。

あと何日一緒に居られるだろうか。

Re: 創作BL短編等 ( No.5 )
日時: 2025/07/06 09:48
名前: 四阿

「瑕疵」/霄代 綴×霄代 繭

最中、こいつが背中に回してくれる手は優しい。
優しいというより、酷く弱い。
子供の頃からずっと消えない傷痕。体が修復しきれなかったらしい、白く膨れたそれの幾つも残る背中。そこに触れる繭の温度は、いつも遠慮が
ちだ。
どんなに蕩けさせても、意識を手放すんじゃないかと思う程与えても、そんな所だけはどうしたって理性的に思えて。…いえ、こいつの根底を考えれば、これは寧ろ本能なのかもしれないが。
確かに少し爪が立てば、鈍いがしっかりひりつく痛みは走る。薄い布越しに触れるような、決して気分の良い物ではない感覚。体調や天気次第で、刺激なんてしていなくてもそれは重くなる事だってある。
きっと全部理解してこいつなりに大切にしてくれているのだと、それこそ痛い程伝わる。
でも、そんな事なんて気にしていられない位飛んでしまえば良いのに、とか、どうしても考えて止まらない。

「……爪、立てて。大丈夫だから」
そう促せば、此方を見つめながらくっと力を入れる。そんなに目で訴えなくたって、良いと思っていなければ、ハナからこんな事は言わないのに。
腰を進めて、奥に入り込んで、高く苦しげな声と共に更に指先が傷に食い込もうとする。
痛い。痛い。…きもちいい。
自覚出来る程の甘ったるい息が勝手に出ていく。
きっと相手にも伝わっている。
でも違う、ちがう痛い事が好きな訳じゃなくて。
こんなの、繭じゃなければなり得ない。

「つづ、り、…ッ?」
繭は相変わらず窺うように、濡れた鳩羽色を此方に寄越す。
ああもう、そんな風に見んなよ。柄でもねえ事言ってんのは、自分が一番よく分かってる。
だって良いじゃねえの、どうせお前ならそれも愛してくれんだろうが。

誤魔化すようなキスにも、悦ぶようにくぐもった声が二人分重なる。全身がぞくぞくして、挟るような腰の動きも一層増して。その癖手つきだけは優しく彼につく肩口の傷痕を触ってやれば、きゅっと中が締まって。
自分達における傷痕というのは多分、忘れられない、忘れてはいけない過去だ。繭にとっては失敗の証、俺にとってはそれまでの人生。…いや、正しく人と言えるものでさえなかったかもしれない。
でも、互いがそれを愛してはいけないなんて事もない筈で。
丸ごと包み込んで一緒に生きていくと決めたから、俺にもきちんと触って欲しかった。

傷によって張った皮膚は、"次"がないように、という計らいか、今度は傷がつきにくくなる。
でも、痛みは感じられるのだ。愛する人間から与えられるこの痛みは。
甘く宿って、じくりと肌の奥に残ってくれるのだ。
辛かった事なんて全部放って、こいつの痛みにしたい。
だから、

「…まゆ、もっと」

お前の傷にしたいよ。

Re: 創作BL短編等 ( No.6 )
日時: 2025/07/07 18:55
名前: ドリームボックス

BLっていいですよね

Page:1



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