大人雑談掲示板
- 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々)
- 日時: 2022/07/17 22:09
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
小説に書くほどでもない、或いは書けるほど時間も手元の本数もない時とか。
あと暇潰しの殴り書きとか。エッ…!な部分とか、全然エッ…!じゃないのとか。
つまりは私の台詞とか、豆話とか、妄想とか、詩とか?をつらつら書こうかなと思います。
あっちは私室で寝転がってお菓子とかジュース飲んでだらだらするお部屋。
こちらはその時にうつ伏せで紙に手元遊び的に綴る部屋ですね。
綴り仲間募集中です。というか誰かかまってよー。
小説のは…あれは今も昔も小説には私、わりと本気で見つめて書いているので雑談のとこのは本当に息抜きなのです。
んじゃま、書いていこうかね。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.3 )
- 日時: 2022/07/27 22:00
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
少年が羽化する頃(後半)
唇が重なり合うまで、あと一センチ。
ほんの僅かに詰めればその柔らかな感覚に触れられる。
そう思っている俺の肩を先生は、片手で軽く押し離した。
「好意がなくても様々な欲を充たすだけならできるだろうね。ただ、それだけでは充たされるのは八割弱でしかない。いや、もしかすると半分も充たされないのかもしれないな」
二歩程の距離を取った俺に、先生は溜め息交じりに講義を語る。
「例えば、そうだな。君は自慰の経験はあるかい?あれは俺の今言っている事を実に解りやすく表現できるだろうね」
自慰という言葉にも顔色一つ変えない先生は、やはり理知的で夕焼けの赤い陽光に綺麗な表情が映えた。
「そりゃ自慰くらいありますけど、それが何だって言うんです?」
高校生にもなれば、生物として自然とそういう欲も興味も湧く。
目の前の先生に向ける俺の欲求も、その一つでありそれ以外の何んなのか分からずにいた。
そんな俺の疑問に答えるように、椅子に座った先生は俺を見上げる。
「君は、自慰をする時何を考える?雑誌か動画かイラストか。或いは妄想の一つでもしたりした事はない?」
そう問う先生の薄い唇が心なしか淫らに見えた気がして、俺は視線を逸らした。
「そういうものは、時々使いますけど」
敢えて全否定はせず言葉を濁したのは、目の前の先生を想像して致した事があった事を俺も流石に言う勇気はなかったからだった。
だが、先生はその事には触れず更に続けた。
「そうだろう。その際、対象は君の欲を高まらせる対象を選ぶだろう?まさか、何の気も起きない物は使わないだろう。つまり、キスやそれ以上の事をするにはそれらの要素が多い程充たされるという事だよ」
そう告げると先生は椅子から席を立ち、一歩俺との距離を詰め微笑む。
「必ずしも好きじゃないといけないわけではないけれど、君が俺とキスをしたいと思うのなら、その理由があるはずだろう?俺にはその理由を聞く権利くらいあると思うんだけど、どうかな?」
再び二つの唇の距離は一センチとなる。
俺は緊張で喉を一つ鳴らすと、小さく理由を囁いた。
夕闇が夜に変わり暗くなる保健室の室内で、俺と先生の影が重なった。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.4 )
- 日時: 2022/08/11 05:26
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
銀鐘と鎖〜悪魔の魅了〜(小話NL(前編)
夕暮れの橙色が夜の闇に呑まれ、月の無い澄みきった夜空に覆われた刻。
深い森の奥で、烏の喧騒が僅かに聴こえた気がした。
「月の無い夜、黒鳥の声とは…少し不穏ですね」
静かな郊外に建つ教会の表扉前にて、若い牧師の男性が森の方へと視線を向け呟く。
この西洋教会の管理を国に任命されて数年。中性的な容姿の青年は、瞳を細め夜空を見上げてから手元へと再び視線を下ろす。
「ここで最後ですね。さて、帰るとしましょう」
教会の表扉の鍵を閉め、鍵束を使い古した革鞄に仕舞う。
そのまま教会近くの自宅である一軒家に帰ろうと遊歩道へ振り向くと、森の方から数羽の烏が大きな羽音を立てて牧師の家の方角へと飛び立っていった。
今夜は随分と烏が騒がしい。
牧師は訝しげな表情を一瞬浮かべるが、気にせず遊歩道へと歩を進めていく。
遊歩道を数歩進んだその時。牧師は背後に生き物の気配を感じた。
人の気配に良く似てはいるが、どこか胸をざわめかせるような不穏を纏う気配。
背後の気配の正体は気になる一方、不気味な不安を青年は感じていた。
「どちら様でしょうか?」
このまま歩を速め、自宅に駆け込む選択もあったが、それは牧師の住まいを知られる危険性も伴う。
それならば、この場で事を納めた方が良いと思い、牧師は背後を振り向きながら気配へと問う。
そんな牧師の視界に映ったのは、人であって人に有らざる者だった。
「今晩は牧師さん。本当は月の美しい夜の方が雰囲気も良いのだけれど、新月の夜も素敵なものよね」
牧師の正面に漂うのは、日の光に焼かれる事を拒んだような白くしなやかな肌を、布地少ない黒の深いスレッドに裾の広がったロングドレスで着飾った艶のある淑女だった。
彼女の髪も瞳も、その背に生えて見える鳥のような翼も、夜の闇に良く似た漆黒。
その黒に映える白い肌は大胆で、両腕はもちろん、鎖骨から大きく胸元の谷間も露に、柔らかそうな脚は内太股までもが見えるほどに艶やかな魅了のある姿だった。
「今晩は。貴女は、人に有らざる者ですね。ここは教会も近い。貴女には合わない場でしょう」
牧師は地に脚を着けず漂う淑女へと視線を逸らさず微笑む。
これが人に有るものならば、彼も彼女の装いに戸惑い言葉に悩むだろう。
だが青年の目の前に佇み翼を静かに羽ばたかせる彼女は、その限りに入らない。
牧師は嘗て読んだ書物に記されていた悪魔と呼ばれる存在を思い出し、彼女にその特徴が診られる事に気づく。
観察するような視線と牧師の物言いに、淑女は嬉しそうに薄い微笑みを浮かべた。
「驚かないのね。それに私達種族への知識もあるみたい。さすが私が一目置いていただけあるわ」
彼女はそういうと白く滑らかな指先で空中に文字らしき物を綴った。
次の瞬間、彼女と牧師を捕らえ包むように夜闇は光を失い、牧師の視界を奪った。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.5 )
- 日時: 2022/08/13 11:32
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
銀鐘と鎖(小話NL後編)
光の無い暗闇。身動ぎをしても視界の闇は何処までも暗いままだった。
牧師が戸惑い一歩後ろへと歩を下げると、いつの間にか靴裏に伝わっていた遊歩道の固い土の感触は、柔らかな羽毛布団のような感触へと変化していたらしい。
その柔らかな靴裏の感覚に足を取られた牧師はバランスを崩し、後に尻餅を着き崩れた。
「あらあら、大丈夫?牧師さんったら慌てたのかしら?」
暗闇の向こうから先程の悪魔のからかうような優しい声が響き、牧師を円く囲うように遠くに幾つもの蝋燭が火を灯り始めた。
蝋燭の灯りは均一に離れ壁に立て掛けられており、そのせいかこの空間は未だに薄暗い。
だがそれでも先程よりは幾分か視界は明るくなり、牧師の視界はこの薄闇の空間を認識させていく。
牧師の崩れ座る床は床ではなく、白い円状の洋風寝具だった。ここが寝具であるという証を指すように、牧師の背側には控えめなフリル装飾の柔らかな枕も置かれている。
次に牧師は周囲と天井を見上げる。室内は何処までも暗闇が続いているのかと始めこそ思ったが、どうやら漆黒を基調とした天井に壁紙が暗闇をより演出していただけで、此処は室内のようだった。
「ふふっ、今の貴方の様子。人間界で言う『借りてきた猫』というものかしら?」
彼女の声にはっとした牧師は、斜め奥へと焦り視線を向ける。
「此処は、何処です?私に何か用でもあるのでしょうか?」
緊張で喉を一つ鳴らし、牧師は身を強張らせ彼女を見詰める。
その牧師の様を嬉しそうに見つめ返して、彼女はゆっくりと牧師へと距離を詰めていく。
一歩ずつ近寄る彼女の妖艶な姿。彼女が羽毛寝具を軋ませ縁に膝を乗せると、彼女の白い肌が蝋燭の灯りに淡く照らされ艶を想わせた。
柑橘の果実に蜂蜜を絡ませたような甘い匂いは、香を纏っているのか彼女自身の薫りなのか。
牧師の心音は僅ずつ乱れ、下腹部に熱が灯り始める。
「用事?有るわよ。その為に何日も掛けて下準備を踏んだのだから」
そう答える彼女は静かに牧師を覆い抱くように、牧師の膝に乗り、彼の頬をしなやかな指先で撫でる。
蛇に睨まれたとはこういう事を言うのだろうか。牧師は悪魔の細めた黒く艶のある瞳から目を逸らせず、抵抗を忘れたかのように微動だに出来ずにいた。
「貴方のような清らかで綺麗な人間の男性、私にとっては最高の御馳走よ。ゆっくりと味わって、愛玩にしてあげるわ」
吐息の重なり合う距離で、悪魔が微笑む。
愛玩という言葉に、牧師は意図を察したが、不思議と抵抗の気持ちは失せていた。
神に使え導く牧師という立場だった。常に清く正しく在れと思っていた。
だが何故だろう。今、牧師は目の前の美しい悪魔に惑わされ魅了に浮かされる感覚に、不思議な安堵を感じていたのだ。
彼女に誘われるまま堕ちれば、楽になれる。
「神に使えていたとしても、抗えぬ時は来るものですね」
牧師は自身を嘲笑うように溜め息を一つ細く吐き、悪魔へと視線を向ける。
甘い柑橘の香りが牧師の唇へと触れ、ベッドが小さく軋む。
薄闇の色は、牧師の心を悪魔の誘いに染まる様に似ていた。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.6 )
- 日時: 2022/08/20 17:21
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
崩壊の地に花束を(詩)
今は無と為り今は亡と成り 崩壊の地に塵が吹く
地の崩壊は何ぞ 崩壊故は何ぞ
崩壊導き師は何ぞ 花束を置くものは何ぞ
弾かれた時に終わりは始まり
残されたのは 塵の残像
塵に墓標の意となるか異となるか
遺された花束に色はあるか
何れ塵も去り行く地に 花弁の跡に愁いは蹟を遺すか
何れの意もトキスギレバ塵も残らず
全ては無と為り夢と為り永久に為り
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.7 )
- 日時: 2022/09/04 01:29
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
待ち猫が見る夢現(L豆話)
ふかふかのベット。最近好きなカリカリご飯。お水は濾過機能付きで、常に新鮮な美味しいお水。
首に付けられた鈴付き首輪は少し煩わしいけど、彼奴があほみたいに喜んでたから受け入れてやった。
彼奴は僕から見てちょっとあほだからな。僕が見守って側にいてやらないと、ダメなんだ。
彼奴は優しくて呆けているところがあるから、誰にでも手を差し伸べて頑張り過ぎるから僕が居てやらないと。
(早く、帰ってこいよ。最近朝は早いし、夜は日付が変わるまで帰って来ない)
ふかふかのベットは寝心地が良くて好きだけど、僕はもっと寝心地が悪い彼奴の膝の上の方が何か落ち着く。
カリカリご飯もお水も、彼奴が僕のために気を付けてくれてるって知ってるけど、彼奴が側に居ないとあまり美味しくない。
首の鈴の音も彼奴の笑顔が見れないなら、煩わしいだけで嫌いだ。
(帰って、来るよな。もう、外が暗いぞ)
少し肌寒い窓辺に飛び乗り座ると、僕は月の無い夜空を見上げ心の内に不安を滲ませる。
真っ暗な夜空は、僕の心の中をも黒く染みていく。
心の黒い染みは不安と寂しさを混ぜ合わせ、少しずつ冷たく染めていく感覚がした。
(だ、大丈夫だ!こんなの昨日も一昨日も、最近ずっとだ。それでもいつも帰ってきてるんだから)
首を小さく横に振り不安を拭い散らすと、僕はベットに向かい傍らに置かれたお魚のぬいぐるみにぎゅっと抱きつく。
彼奴が、何か僕が寂しがらないようにとか言って、匂いを付けてたぬいぐるみ。僕の大切なお魚ぬいぐるみだ。
このお魚を抱いていると、ちょっとだけ心の黒い染みが薄れる気がした。
(早く、帰ってこい)
瞳を伏せベットでぬいぐるみを抱いていると、不意に玄関の方から小さな足音が聴こえた。
その瞬間僕は瞳を開き、耳を澄まして鼻を効かせる。
この足音。このお魚とよく似た香り。間違える筈がない。
僕は急いでベットから降り、玄関へと続く廊下の扉前に向かい座る。
扉に爪を立てる?鳴き声を大きく響かせる?そんな事をすれば、まるで僕が彼奴の帰りを待ち望んでいたみたいじゃないか。
僕は、そんな事しない。はしゃいで喜んでるみたいな事してたまるか。
「ただいま。最近遅くなってごめんな。でも明日からはゆっくり出来るから、もっと早く帰れるようになるからな」
扉を開けて現れた奴は、今日も僕を見ると嬉しそうに笑った。
疲れてる癖に。寝不足な癖に。毎日僕を撫でるのは絶対やめないんだ。こいつは。
本当にこいつはあほな奴だ。ただ、こんな奴が好きな僕も大概なのだろう。
「にゃぁん」
そう一鳴きすると、僕も喉を鳴らしてこいつの足に擦り寄ってやる。
朝は毛が付くからとか言って嫌がるからな。夜は思いっきり擦り擦りしてやると決めているんだ。
擦り擦り、チリチリ。擦り寄る度に首輪の鈴が小さくなる。
困ったように、けれど嬉しそうに笑うこいつの顔は今日も俺の好きな笑顔だ。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.8 )
- 日時: 2022/09/16 05:03
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
華々舞い留まる蝶会瀬(L豆話前編)
夜も深まり静なるままに刻々と時は流れる。
京の宮は見廻り人や刻を告げる人等の気配こそ定期的にあるが、殆どの者は寝所にて寝静まるか部屋にて綴りの一つでもしているのが常の時だった。
だが、勤め以外でも寝所を出て、何処其処へ気配を薄め通う者も少なくはない。
「今宵も彼奴は余所の花か」
独り寝所の部屋にて、私はポツリと呆れを混じらせた言葉を呟く。
想い人と呼ぶには、彼奴は軽薄で浮世離れな色恋好きで、とてもではないが本気になろうと想えない者だ。
彼奴が多くの花を渡り行く蝶のような者だというのは、既に理解しているのだから。そんな者に本気になるなど愚かにも程がある。
だからこそ、私は文を綴る事を辞め気を引く真似はしない事にした。
(どうせ彼奴の事だ。魅了匂わす文など、日々の寝所の寝物語に成る程届いてるだろうよ。その内の一つが減ったところで気づきもしないだろう)
部屋と廊下を仕切る帳の隙間から、薄い月明かりが滲む。
帳の向こうの月は、今夜も綺麗だろうか。それとも、薄曇りが霞めているか。
寝所に座り帳を扇ぎ見上げる。けれど何かを諦めたように溜め息を一つ溢すと、床へ着こうと身動ぎをした。
その時、帳向こうの廊下に人の気配がした。
「今晩は。今夜は雲が薄く、月が綺麗ですよ」
帳の向こうから聞こえた声は、久し振りに聴いた浮わつき蝶の声。
その声に私は不機嫌な思いで瞳を細め座り直す。
「昨夜の月と花も嘸や綺麗だった事でしょう」
淡々と、けれど落ち着いた声色で言葉を返す私に、蝶は苦笑を小さく溢した。
「昨夜は花を愛でなかった、等と告げたところで意味がないだろうな。君にその手の浮世事は通じない」
数秒の間を置いた蝶は、困ったように帳向こうで告げてきた。
それについて私がとやかく返す言葉はない。蝶の言葉に否定も憤りも意味を成さなず、私自身の心境にもその二つの思いはなかったのだ。
とはいえ、慰めや慈しみの言葉を掛けてやるのには、蝶はあまりにも罪深い。
一輪の花を愛でる者もいれば、数多の花を渡り行く者も居るのが世というものなのだから、それを理解している私に何が言えるというのか。
おそらくそんな私の想いも蝶は察しているのだろう。
「月の明かりに輝く花は、多種各々に美しいものだよ。花を愛でたいと想うのは男の性分だ」
未だ声に困り燻りが滲む蝶の言葉に、私はついに呆れた物言いで返す。
「本当に君は駄目な奴だよ。数多の花を愛でるも良いが、花の美しさは刻々と色を変えるものなんだぞ。数多の花に心移りを繰り返していれば、いずれ花の色変わりにも気づかず散り行くというのに」
私の言葉に、帳向こうで蝶が言葉に詰まる気配がした。
「君が数多の花を愛でる事を、私はとやかく言わない。私はそれを既に知っているからな。だが君が私を一輪の花と捉えるのなら、刻々と色を変えいずれ散り行くものだと知っておくべきだ」
落ち着いた声音を意識しても、私の言葉はどこか棘が見え隠れしていた。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.9 )
- 日時: 2022/09/16 06:04
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
華々舞い留まる蝶会瀬(L豆話後編)
棘を見せる真似は、叶うならば避けたかった。
言葉に滲む起伏は往々にして感情の影が在り、そこを悟られる事を避けるために敢えて抑えていたのだ。
何よりも厄介なのは、私が蝶の情に悟いように蝶もまた悟い所があった。
「それは、嫉妬か?確かに他の華々も綺麗だが、私が留まり行くのは何時も文を綴る華々ばかりだよ。一つの花を除いてはね」
帳に背を触れさせたのだろう。僅かに帳が揺れ、蝶が機嫌の良い声を呟く。
「帳に寄るな。破れるだろう」
案の定思いの影を悟られた私は、不機嫌な声音で話を逸らす。
だが蝶はこれしきで諦めるほど立ち去るものでもない。
「帳を思うなら、部屋に居れてくれないか?晩秋とはいえ、この時間は冷えるものなんだよ。凍えてしまう」
飄々とした口調で居を求める彼に、内心そのまま凍え散れと悪態を告げてしまいたいところだが、そろそろ見廻りの者が廊下に現れかねない時だ。その者の口が何れ程か分からないが、要らぬ火の粉を掛けられては堪らない。
「君が凍えようと構わないが、他の花に知られては迷惑だ。さっさと入れ」
煩わしい心情を表情に浮かべながら、私は静かに蝶の入室を許可する。
「ありがとう、宵闇の月も多種の華々も綺麗だが、私の心に映えるのはやはり君という花一輪だよ」
久しく見えずにいた蝶は、今夜も変わらず浮世の優で愚かな蝶だった。
「心にあるというのも今この時の話だろう。明日には別の花がそこに咲くのだろう。君は、そういう奴だ」
ゆっくりと距離を詰める蝶に、私は冷たい言葉を返す。とうに理解しているのだ。蝶にとって私自身も数多の花の一輪でしかないのだという事を。だからこそ傷を浅く止める為に距離を保つのだ。蝶を深追いしたところで、花は蝶を得られないのだから。
だが今夜の蝶はどこか顔色を変えていた。
「君は、そんなに私が信じられないか?確かに今までの行いを思えばそれも致し方無いだろう。だが、私とて一輪の花を思う事もあるんだよ。君が望み想い交じらせてくれるのなら、君という花一輪を思う蝶にもなるというのに」
蝶の声音と表情は苛立ちに悲しみ、それと自虐を混ぜ合わせたものを感じ、その雰囲気に私は呑まれ思考が止まる。
目の前の蝶は何時もの浮世とは違い、それは純粋な想いを秘めた一人の恋に溺れた姿に見えた。
「何だ、それは。今さら辞めてくれないか。此処数日で漸く落ち着いてきたというのに」
視線を泳がした私の言葉に、蝶は視線を合わせるよう促す仕草で私の両頬に手を添えた。
「此処数日考えていたんだよ。文のない花の事ばかりをね。そのせいか宵闇の月も多種の華々を愛でる術も忘れてしまったんだ。責を取れとは言わないが、せめて文のない一輪の花を愛で続けたいと思っているんだ」
何時に無く真剣な物言いの蝶。いや愛しい人を、私は苦笑を滲ませ抱き寄せた。
「私は蝶が去ればすぐに散るぞ。その覚悟があるのならば、君だけの花になってやるよ」
そう囁く私の言葉に、愛しい人の体温が僅かに上がった気がした。
今夜からは、物思いに触れる事も減るだろう。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.10 )
- 日時: 2022/09/27 03:19
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
無花果の花(L豆話)
秋の始まりに漂う残暑と言うものは、時の流れを惜しむ名残とも呼べるだろう。
その名残を愁いか、夏の暑さが薄れ行くせいか、秋にはどこか物悲しい感覚を覚えるものだ。
「しかし、どうしたものかな」
そんな秋晴れの空の下。私はウインドウショッピングと称して街中を散策していた。
休日の今日、私が街に来たのは、ある人に渡す贈り物選びの為だった。
他者に何かを贈るのは、何時も難しいものである。
何せ贈り物というのは、贈る相手が喜ぶ事を前提に考えなくては成らないからだ。
予算や時間。縁の名の下に定番とされる物等、数多の選択肢はあるが、一番大切なのはどんな形にせよ贈り先の相手が喜ぶか否かが何よりも重要視しなければならない。
「予算は一応大丈夫だが、彼奴の好みに合うか…。いや、やはり他に探そう」
私は小さなアンテイーク調の雑貨店にて琥珀色のビードログラスを手にしていたが、小さく頭を振りグラスを元の棚に戻す。
あのグラスは、確かに私としては良い品だと思った。
曇り硝子に木の葉の彫刻。軽く持ちやすく日常使いにも悪くはない。
だが、私はあの人ではないのだ。彼奴の好みに合わなければ、何の意味も成さない。
それから数時間。合間に昼食も挟み、外の暖かさに陰りが指し始めた頃。私はとある書店に視線が流れた。
「書物か。いや、本の嗜好も時によって変わるからな」
そう思い店内から立ち去ろうと考えたその時、私はレジ付近に飾られた商品棚へと気が付く。
その飾り棚には、多種多様な和紙を用いた栞が彩り鮮やかに飾られていた。
今はどうかわからないが、確か彼奴は書物を好んでいたはずだ。
栞ならば数枚幾つかの種類を合わせて贈れば、あの人の好みに合うものもあるだろう。
小さく薄い物だ。嵩張る事もなく、使わずに装飾として置く事も可能だ。
「これにしよう。使わなければ、勝手に塵にでもしてくれれば良いのだから」
そう考えた私は数枚の栞を手に、レジへと急いだ。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.11 )
- 日時: 2022/10/09 13:33
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
酔い月に思う(豆話二次BL:D灰ラビ神)
淀んだ泥に沈むように。深く深く呼吸も叶わない闇の底に堕ちていく。
多くの悪魔を葬ってきた俺の手は、神から見ても穢れに充ちているのだろう。
元々俺の存在は歪だったのだ。造られた存在。救済の名の下、武器を振るい命を削ってきた。
身体は、まだ持つ。六幻も側に在る。だが、心は酷く磨り減っている感覚がしているのだ。
深夜の教団。私室にて不意に眠りから覚めた。
今も時折見るあの夢。泥に沈む地と、白い蓮の花。そして知らない女の背中。
これは、俺が造られる前の誰かの記憶だろう。
夢の中の記憶を振り払うように俺は六幻を手に、私室から出て中庭へと向かう。
中庭に踏み込むと、夜風の冷たさが心地好く、俺は瞳を薄く閉じる。
冷たく柔らかな夜風に触れた事で、思考は落ち着きを取り戻し、夢見も薄れていく。
数秒の間の後にゆっくりと瞳を開き六幻に手を掛けると、背後から人の気配がした。
その気配へと一切の淀みなく鞘に納めたままの六幻で斬りかかると、気配の招待は一歩下がり寸前で容易く避けて見せる。
気配の正体は見慣れた馬鹿な兎。長い腐れ縁であり、軽薄な素振りで底を隠している嫌な兎である。
兎は突き付けられた鞘に驚いた仕草で苦笑を浮かべるが、容易く避けたあたり嘘臭いものだ。
その様子に俺は一瞬一睨みを浮かべ、すぐに六幻を引き呆れた声音で兎に問う。
こんな時間に何をしているのか。任務だの知識の記録だのはどうしたのかと。
それらを問われた兎は任務帰りの気晴らしだと答え、こちらに問い返してきた。
それを俺も気晴らしだと答えると、何故か兎はにやけた笑みを浮かべたまま居着こうと壁に寄りかかった。
その様子に俺が煩わしい表情を見せるが、兎は黙って佇んでいた。
払うのも煩わしい俺は、一人六幻を手に素振りを始める。
空は変わらず夜闇の中。白く欠けた月が浮かんでいる。
時折軽口を兎と叩きあう。休憩の際に近況を語り合う。そんなたわいのない一時なのに、兎との会瀬は心が落ち着いた気がした。
明日は終わる会瀬かもしれないというのに、明日もある気がしてしまう会瀬。
終わりは必ずあるものだが、今はこの酔いしれそうに綺麗な白い月の下で、憂いを晴らす時を過ごそう。
- Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.12 )
- 日時: 2022/10/24 20:50
- 名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)
花を慈しみ、花に想われ(豆話L前編)
「縁というのは、植物に似ているものだよ」
リビングのソファに座る私が告げた言葉に、隣に座る友人である彼は訝しげな表情で温かなカフェオレを一口飲む。
「何だ唐突に。そもそも縁と植物に何があると言うんだ」
彼はテーブルにカフェオレのマグカップを置き、チラリとこちらに視線を向けた。
確かに彼が訝しむのは、当然の事だろう。
何の脈略も無く、私の口から溢れた些細な一文なのだから。
とはいえ、その一文を吐いた責として、話のネタとして紡ぐ事も吝かではない。
「君は、今まで生きてきた中で、生物も無機物とも常に何等かの縁が多くあっただろう?良い事も悪い事も、薄くも厚くもだ」
白い天井を穏やかな表情で見つめ、私は全ての物に繋がる言葉を発する。
それを隣に座る彼は、静かに聞き頷いた。
「だが、今もその全てと繋がっているわけではあるまい。瞬きの間に消えて見える縁もあれば、現状で深く繋がっている縁もあるだろう。ならば、何故その差があるんだ?」
私は天井から視線を彼へと向け、師が弟子へと問う様子で彼に言葉を紡ぐ。
縁とは、五感の何れか一つと繋がった時点で、無意識に出来るものだ。
けれども、その多くは僅かな時で薄れ、生涯の中に保ち続ける縁等、奇跡のような確率の数しか残らないだろう。
ではそこにある、薄れる縁と残る縁の違いは何処にあるのか。
「何処って言っても、それは好きか嫌いかとか、興味の有無じゃないか?」
数分の沈黙の後、隣に座る彼は絞り出した声音で答えを口にする。
確かに、朧気な言い方をすれば、彼の答えも正解の一つと言えるだろう。
「及第点だな。確かに好きか嫌いか、興味の有無は縁に関係も深いだろう。だがな、それだけでは縁は続かないよ」
私の言葉に、彼は『ならば他の答えを言ってみろ』と視線で促してくる。
「先程言ったが、縁とは植物のような物だ。植物には光りや空気、栄養に土に水。温度管理等々とても手間が掛かるものだろう。それを縁に直すと、縁を保つには互いへの興味と慈しみ、思い遣りに理解。情に距離感等の多くを適切に保たないと長く維持出来ないものだ」
私の言葉に、彼は瞳を細め思案の様子を見せる。
「けれど、もう一つ植物と縁に似た部分がある。それは、与えすぎても駄目になるという事だ。強すぎる光やバランスの悪い空気、極度な温度や過度な水分管理は、何れも植物の命を奪う。縁というものも、過度な干渉や濃厚な情、雑多な距離感では、縁を築く事は難しいんだ。つまり、植物も縁も、常に調整管理が必要という事だ」
先程の植物との件を繋げ終えた私に、彼はゆっくりと瞳を開けこちらを見る。
「君は、何時もそんな事を考えて、縁を維持しているのか?」
そう問う彼の言葉は、何故か不機嫌の色が滲んで聴こえた。