02
数日後、あたしは妙な胸騒ぎを感じた。
何だろう、何かがおかしかった。
でも心当たりなんてないから、
普通に学校に行った。
「 あ、小春おはよ! 」
「 美月ちゃんおはよ。 」
クラスメイトは、普通だった。
皆といつもどおりのあいさつを交わす。
「 小春、おはよ。今日も晴れるねぇ。 」
「 おはよ、叶野さん。いい天気だよね 」
もちろん、叶野さんだって普通。
桜香さんも、美紅さんも。
「 っていうか思ったんだけど、"愛依"でいいから 」
「 え、でも… 」
「 いーの! あたしがイイって言ったんだから。 」
「 えー…。…うん、じゃあ愛依って呼ぶね 」
「 桜香と美紅も…いいよね? 」
「 ったりめーじゃん! 」
「 ありがとう。」
普通どころか、気分がいい日だった。
叶野さん――愛依達は、許可をしない
人には、名前では呼ばせないから。
だからあたしが「愛依」とかって
呼べる許可をもらえたのは
すごく誇りな事だった。
― キーンコーン...
鐘が鳴り、学校が終わる。
今日はお母さんもお父さんも
帰宅が遅いって言うから、
学校の図書室に残ることにした。
「 あれ? 小春帰んないの? 」
「 うん、親遅いから。 」
「 そっか。小春も大変だね。じゃあね。」
「 ばいばーい! 」
愛依達に別れを告げて、
あたしは荷物片手に
図書室へ急いだ。
― ガラッ。
誰もいない、夕陽の指す図書室。
あたしは、一番奥の日当たりのいい席に
静かに座った。
…すごく、心地よい。
そんなウトウトなあたしのところへ、
「 …あれ? 綾瀬じゃね? 」
誰かがやってきた。