Episode 1
01
「 小春っ! おはよ! 」
「 あっ、叶野さん、おはよ。」
あたしは、綾瀬小春。
市立中学の3年生。
クラスでは目立ちもしないけど
嫌われてもいない、
誰とでも話せる"中立"的立場だった。
親友はいない。
でも、苦痛に感じることはない。
こうやっていつも、
誰かしら話しかけてくれる人がいるから。
「 ねぇ、小春。今日の家庭の班、一緒になろ? 」
「 うん、いいよ。でも珍しいね? 叶野さんから依頼なんて。 」
「 あたし、裁縫苦手だからさっ! 桜香と美紅と4人でいい? 」
「 うん。誘ってくれてありがと。 」
あたしは、比較的何でも出来る方。
運動も勉強も、料理も裁縫も。
凄く得意なものなんてないけど、
いろいろとバランスよく出来る。
だから、その単元が苦手な人は
よくあたしを班に混ぜてくれる。
このおかげで、班編成に困ったことはない。
あたし自身、クラスに苦手な人が
いるわけでもないから。
「 小春ちゃん! 次の移動教室一緒行こー 」
「 あ、うん! 次って何だっけ? 」
「 えっとね、理科理科! 」
こんな生活も3年目に入っていた。
だから当たり前に、
これからもそうなんだと思っていた。