大人オリジナル小説
- 君を探し、夢に囚われる
- 日時: 2012/08/05 17:54
- 名前: 黒雪
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11566
夢の中で出会った君に誓ったのは、現実世界でも君を探すこと。
でも――その夢から『抜け出せなくなって』しまったら、どうすれば良いのだろうか?
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初めまして! あるいはこんにちは。
黒雪と言います。
複雑ファジーで参照の小説、『あなたの薔薇は何色ですか?』を書いています。
まぁ、それが初めての作品な訳でこの話は2作目ということになります。
完結しないうちにスレを立てている私は地雷に片足を乗せたようなものですね。
でも、更新を放棄することは絶対にしないので、よろしくお願いします。
おかしな所があっても、生暖かーい目で見てくださると嬉しいです。
更新開始日
2012,08,03
+目次+
始めに
>>1 >>2
プロローグ
第一遍 >>3-4
第二遍
本編
- Re: 君を探し、夢に囚われる ( No.3 )
- 日時: 2012/08/05 17:46
- 名前: 黒雪
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
プロローグ 第一遍 第一幕
真っ暗な空に輝く無数の星と、怪しげな光を放つ満月。街灯さえも無い、このコンテナにも月明かりは差し込んできた。
「ハァッ、ハァッ」
荒い息と、狭い道を駆け抜ける音が真横に立ち並ぶコンテナに反響して何十倍にも聞こえ、ますます恐怖心を煽る。
月明かりに照らされる自分と、立ち止まった姿の影。不気味に揺らめく影は、月が高く、高く、上るにつれてはっきりと形作ってゆく。
ムクムクと立ち上ってきた雲が、今、まさに月を覆い隠そうとしていた。
影がだんだん薄くなり消えてゆく――消えた。
あぁ、俺の命もこの影のように消えてゆくのか。――アイツミタイニ。
――カツン。――カツン。ゆっくりと近づいてくる足跡に怯えながら俺はまた、走り出した。
夜、11時。
コンビニでのバイトを終え、帰路に着いた俺を待っていたのは、街灯の下に佇む一人の男だった。
最初はなんとも思わなかった。
しかし、前を通る時に薄っすらと笑いを浮かべた、見覚えのある顔に戦慄が走る。通り過ぎてしばらく経った時に振り返ると真後ろにいる。俺が走ればそいつも走るし、立ち止まれば止まる。
後をつけられているのは何も考えなくても分かった。だから、俺は意を決してそいつに話しかけた。
「何か用ですか? さっきから後をつけられて迷惑してるんです」
返事の変わりに俺が受け取ったのは、鋭い痛みだった。
腕を押さえると、生暖かい、ヌルッとした感触とズキズキした鈍い痛みが走る。
そいつの手には、街灯に照らされて鈍い銀色の光を放つ小振りのナイフが握られていた。刃先からは、真っ赤な鮮血が滴となって滴り落ち、地面に血だまりが出来つつあった。
今度こそ止めを刺そうとして、真っ直ぐに心臓を狙ってきた切っ先を必死でかわすと、俺は走る――生きるために。
息を切らして飛び込んだ通路の先は行き止まり。
「早く引き返さないと、あいつが来た時に……」
「誰が来た時に?」
「ヒッ!」
尻餅をついて振り返った真正面にあいつは立っていた。いつの間に着替えたのだろうか。T-シャツにジャージという格好から、真っ黒なローブへと服装が変わっている。変わっていないのは、艶々と黒光りする革靴と手に持った銀色のナイフ。少し時間が経ったためか、切っ先はどす黒く変色していた。
通路の奥へ、奥へ、と俺が後ずさる度に、カツン――カツンと乾いた足音を響かせてそいつも迫ってきた。一歩歩くごとに顔に笑みがよぎってゆく。
「ッ!」
背中に固い壁の感触が伝わってきた。――モウニゲバハナイ。
「何を……。何が目的なんだよ! 大体……誰だよ、お前……」
そいつはフッ、と軽い笑い声をもらすと俺の目の前に顔を近づけてきた。
「もう、俺の顔を忘れたのかなァ? 清水君は。お前が三日前に殺した颯だよ」
どっかで見た顔だと思っていたが、お前だったのか。颯。
颯が話す傍から、顔がどんどん変わってゆく。頬がこけ、目が落ち窪み、瑞々しく白かった肌からは水分が抜けると干からびて茶色くなり、まるでゾンビのようになっていった。
「何が目的かって言ったよなァ。決まってるじゃないか。お前を道連れにして、復讐するためになァ!」
颯はナイフを振りかぶると俺に向かって真っ直ぐに突き刺した。――目の前に赤い、真っ赤な鮮血が飛び散り、全身が壊れるぐらいの激痛が走る。
「うわああぁぁぁあぁ!」