大人オリジナル小説
- 正義の見方 いじめ小説
- 日時: 2015/04/24 15:22
- 名前: 花 ◆vRrlz9.Wps
傍観者を徹した少女の独白。
私は中学生の頃、いじめられていた。
きっかけは些細な事だ。
昔から絵を描くのが好きだった私は、放課後に残って絵を描いていた。
その絵はコンクールで入賞して、凄く凄く嬉しかった。
でも、それを良く思わない人だって居るだろう。
その日から私はいじめられた。
私が教室に入ると、水を打ったような静けさに包まれる。
机の上には沢山の憎悪が書かれていた。
周りを見渡すと、半分は気まずげに顔を反らし、いじめグループは笑っていた。
私は何も考えずさっさと席につく。
苦しくて悲しくて堪らない。
だけども、世の中には私よりもずっとずっと辛い思いをしている人がいるのだ。
お母さんだって、父が出ていってから女手ひとつで私を育ててくれている。
そんなお母さんの背中を見ていたら、いじめられているなんて言えるはずなかった。
誰かが止めてくれる、なんて無かった。
教師だって精々注意するぐらいだ。
何故なら、いじめる人の主犯格はこんな人だったから。
人が少し優位に立つと自分の立場が怖くなっていじめてしまう、弱い心を持った子だ。
その子はリーダー気質もあり、課題を教えてあげたりとなにかと気前のいい子だった。
それに、親が理事長の親友だと言うことも有名だった。
そんなこともあり、私へのいじめは誰かが止めることもなく卒業まで及んだのだ。
中学卒業と共に、お母さんの安定した仕事が決まり、田舎に引っ越していく。
その頃にはもう、絵を描くことはやめてしまっていた。
一度切ります。
このお話は創作で、実在の人物、団体、地名とは全く関係ありません。
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- Re: 正義の見方 いじめ小説 ( No.2 )
- 日時: 2015/04/24 21:35
- 名前: 花 ◆vRrlz9.Wps
最後は、教室だった。
委員会で忘れ物をしてしまった私は、クラスに戻る。
そして何やら教室が騒がしく、外から覗くとそのなかには、踞って嗚咽を漏らすユウコちゃんと、いじめグループがいた。
嫌な予感がして、耳を立てる。
どうやら、ユウコちゃんはみんなの前で髪を無理矢理ハサミで無惨に切られたようだだた。
長い髪を凄く気に入ってる、とあのくしゃっとした笑顔で笑っていたユウコちゃんの髪が、赤いハサミで切られてしまった。
私は泣くユウコちゃんに近づけず、もらい泣きするように教室の前で泣いた。
ああ、どうして。
あんなにも、昔の私にそっくりなのだろう。
教師にも助けて貰えず、クラスから嘲笑われるあの恐怖。
もう嫌だ。
自分勝手な私は、その日からユウコちゃんに近づくことはなくなった。
ユウコちゃんを無視した私に、周りは賛成するように大笑い。
その結果、沢山の友達が出来た。
ユウコちゃんはそれでも私に何かを察したのか、ごめんねと申し訳なさそうに謝って、話しかけてくることもなくなった。
高校を卒業したその翌日、ユウコちゃんが自殺したという報告を聞いた。
冷水を被ったように、汗がびっしょりと出てきてその場から動けなくなる。
ああ、ああ、ごめんなさい。
ユウコちゃん、ごめんなさい。
そんな言葉ばかりが、何度も何度も私の頭のなかをぐるぐると廻る。
ユウコちゃんの遺書には私たちのことは全く書かれていなかったそうだ。
そんな私は大学を卒業し、素敵な人に出逢え、子供も生まれた。
今日は一年に一回の墓参り、ユウコちゃんの命日だ。
夫にその事を話すと、叱られ、そして慰められた。
墓を掃除して、花を変え、墓の前で手をあわせる。
娘は黒髪で、伸ばすのが好きなようだ。
そんな娘を見ていたら、ユウコちゃんを思い出して、私は泣いていた。
涙が止まらない。
ごめんなさい、ごめんなさいユウコちゃん。
私が弱いせいで、貴方を助けれなかった。
ばかで弱い私のせいで。
まだクラスに馴染めない私に声をかけてくれたユウコちゃん。
もうユウコちゃんのくしゃりとした笑顔は見れない。
あの綺麗な黒髪に触れない。
きっと、逃げた私にユウコちゃんにもう一度会う資格など無い。
あの日から、何が正しくて、何が悪いのか分からなくなってしまった。
あんなにユウコちゃんを間接的とはいえいじめてしまった私は、幸せになる資格などないのに。
いじめグループも今では幸せに過ごして、ユウコちゃんの墓参りに時折来ているそうだ。
それはもう、後悔して。
ねぇユウコちゃん。
私が言えた話ではないけれど、ユウコちゃんが死んで、構成したいじめグループは偉いと言えるのでしょうか。
あれは、正義なのでしょうか。
ユウコちゃんが死んで、私は後悔して何度もユウコちゃんに浅ましく謝ります。
これが、正義なのでしょうか。
ばかな私は、今でも何もわかりません。
私は、正義の見方が何なのか分からなくなってしまいました。
ごめんなさい、ユウコちゃん。
ごめんなさい、ごめんなさい。
―――――
後悔した少女と正義の見方。
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