大人オリジナル小説
- リリア所長、捕まる!!
- 日時: 2021/04/16 00:20
- 名前: 山本蒼紫
リリアの小説のお陰で、迷惑をかけられたり困っているという苦情が沢山寄せられている。
その声の一部をお聞き頂こう。
「何かリリアってズルばっかりするじゃない。ああ言うのって僕嫌いだな」
「リリアの小説って何か役に立つの?」
「よく『の』の字を『e』って間違えるじゃない。うちの子が間違って覚えたらどう責任取ってくれるんだよ」
「ちょっとはさー、いい事の一つもしたらどうなのよ」
「もう漫画みたいな本はダメダメ。絶対ダメよ。だって教育上良くないんですもの」
「大体ね、悪者なのに子供の本の主役になってるなんて事が許されていい訳?」
「研究所の変な奴らを引き連れてさ、少女達をいじめようとするだろ。酷いと思うぜ」
「あいつさ、御地なのにさ、いつも歌って出てくるじゃないか。俺、耳がおかしくなっちゃうんだ。やめさせてくれないかな」
「下品な言葉ばかり出てきてうちの正春ちゃんが悪い言葉を覚えて困ってしまいますわ」
「チョコレートなんか食べる時、嫌しんぼな食べ方するだろ。あれ困るんだよ」
あまりにも被害者の数が多いので、動物警察も黙って見ている訳にはいかなくなった模様だ。
- Re: リリア所長、捕まる!! ( No.2 )
- 日時: 2020/02/22 19:21
- 名前: 山本蒼紫
ゴシゴシゴシゴシ
牢屋にヤスリの音が低く響く。
リリア「ふん。何が誰一人逃げ出せた者のいない刑務所よ。私に不可能はないって事よ。あっさりすっぽり抜け出して、あの署長を悔しがらせて見せるわ、あははははは。」
そろそろ鉄格子もプッツリ切れた頃だろうと、リリアが後ろを振り返った。
何と、そこにはピッカピカの鉄格子が光り輝いていたのだ。
ネネカ「リリア姉ちゃん、これで鉄格子を破るには三十年ぐらいかかりそうだよ。」
ララト「僕もそう思うぞ。」
リリア「げげっ、あなた達の持っていたのはヤスリはヤスリでも紙ヤスリだったのね。早くそれを言ってよ、ぶぁっかもーん!!」
リリアはカンカン。
リリア「もう、あなた達には任せておけないわ!」
※紙ヤスリとは、金属や木などを磨くのに使う紙のヤスリです。
ゴチン
ララトの石頭で床にヒビを入れさせたリリアは、
リリア「このコンクリートをどかしてと・・・」
そこから地面に穴を掘り始めた。
リリア「今度はあなた達が看守を見張る番よ。見回りに来たらすぐに知らせるのよ。」
ネネカ・ララト「はーい!!」
ネネカ「あたし、こっち見張るよ。」
ララト「じゃ、僕こっちな。」
流石リリア。一時間ほど掘り続けただけで随分深い穴が掘れた。しかし、それと同時に
掘った土が牢屋の中で小さな山になったしまったのだ。と、その時、
コツコツコツ・・・・・・
足音が響いて、だんだんこちらに近づいてきた。
ララト「あっ、まずいな。リリア、看守が見回りに来てしまったぞ。その土、どこに隠すんだ?」
看守はリリア達の牢屋を覗いた。そこでは三人は何事もなかったかの様にお勉強をしている。
看守「おっ、勉強してるなんて関心関心。君達も反省したみたいだね。でも、ネネカとララトは何故はだかんぼなの?」
ネネカ「あたし達、毛皮が分厚いから。」
ララト「汗っかきでね。部屋ではいつでもこうなんだよ。」
あの土の行方を、君達だけにそっと教えよう。
1:ネネカとララトの体の周りに土を盛り上げ、
※袖はまくっておきます
2:土だるまを作って閉じ込めます。これなら土が増えてもどんどん周りにくっつけていけばいいだけよ。
※顔と手は出しておきます
3:ネネカとララトは土色だから、ほら。まったく変わらないでしょ。
※看守には内緒だよ!!
こうしてリリアは毎日穴を掘り続け、
看守「君達太った?」
ララト「気のせいですよ。」
二日立ち、
看守「いや、やっぱり太ったよ。」
ララト「だって刑務所のご飯美味しいんだものね。」
三日立ち、
ネネカ「ちょっともう無理があるかな。」
ララト「バレそうだよ。」
看守「何か変だなー。」
とうとう四日目の朝。
リリア「よし、穴が掘り上がったわ。ネネカ、ララト、ついて来て。」
ネネカ「へっへっへ。騙されたね。」
ララト「ばいばい。」
看守「あっ!あいつら、なんて事を!!署長に言いつけてやる。」
三人は次々と穴の中へ消えていった。
バタン
看守は急いで言子の部屋へと駆け込み、
看守「た、大変です。リリア達が牢屋を抜け出しました!!」
ところが、言子はのんびりと椅子に座ったまま。
言子「心配はいりませんよ。ここは誰一人として逃げ出せた者はいない刑務所だって言ったじゃないですか。」
そう言って机のボタンを押すと・・・・・・
ガ〜〜〜〜〜ッ
天井から16台ものテレビが降りて来たのだ。
言子「ほら、あんな所でリリア達がうろうろしているのが見えますよ。」
言子は一台のテレビを指差して言った。それから後ろにある放送用のマイクを取り上げて――
言子『ねぇ、リリア。ここから逃げ出そうったって無駄な事ですよ。どこへ逃げようと監視カメラのお陰であなた達は手に取る様に丸見えです。牢屋を抜け出した罪であと十年はここにいてもらう事になりますよ。今、看守を迎えにやるから、無駄な抵抗はやめるんですね、フッフッフッフ……。』
言子の声がスピーカーから響き渡る。リリアは悔しそうに天井の監視カメラを睨み付けた。言子は一頻り笑い、
言子「さて、リリアはどの部屋にいたのですかね。」
椅子をくるりと回し、テレビを見上げた。するとそこには、どのテレビにもリリアが移っているではないか。
言子「何、これはどういう事ですか。壊れちゃったんですか?」
言子が慌ててスイッチをあちこち押したり引いたりしていると、一台のテレビから――
リリア「あははは。残念でした。私を甘く見ないでよ。ベーッだ。」
そうだ。リリア達は監視カメラのレンズの前に持っていた16枚のポスターを針金でくっつけて回ったのだ。
最後のポスターを吊るし終わったリリアは、にたり笑って言った。
リリア「これで私達がどこにいるのか、さーっぱりわっからないもんねー。さあ、逃げ出すわよ!!」
リリア「こっちよー」
ネネカ・ララト「おー」
ダダダダダ
言子「探せ探せ。虱潰しに探して、早くリリアを連れ戻すのだぁ〜!!」
刑務所中のスピーカーから言子の怒鳴り声が響き渡ると、看守達は一斉にあちらこちらへ走り回る。
リリア「ふーっ、うまく見つからないで済んだわ。」
三人がほっと一息付いた時、近くの部屋から美味しそうなカレーの匂いが漂って来たのだ。
ネネカ「リリア姉ちゃん、あの部屋がきっとこの刑務所のキッチンなんだよ。」
リリア「そういえば、私達朝から何にも食べちゃいなかったわね。」
リリアがそう呟いた途端、
ググググググーー
三人のお腹が一斉に鳴り出した。
ララト「僕、もう我慢できないぞ。」
ダダダダダ
ララトが駆け出すと、リリアもネネカも先を争う様にキッチンへ飛び込んでいった。
幸い、食事を作る係もリリア達を探しに出ていたので、キッチンはもぬけの殻。
三人は炊き立てのご飯にたっぷりカレーをかけて、それぞれ七杯ずつおかわりをした。
残ったご飯はもったいないと丸い大きなおむすびを作り、周りを味付け海苔でペタペタと真っ黒になるまで覆った。
リリア「ここを抜け出してから後でゆっくり食べましょう。」
リリア達はおむすびを服の中に仕舞い込んで、満足そうににっこりと笑った時・・・
バーーーン
キッチンのドアが勢いよく開き、言子達がドカドカと入って来た。
言子「フフフ、やっぱり嫌しんぼのあなた達が立ち寄る所と言えばここでしたね。」
入り口を塞がれた三人はじりじりとキッチンの隅へと追い詰められていく。
ツルッ
ネネカ「ひえっ!!」
一番奥にいたネネカが悲鳴を上げた。床に落ちていたバナナの皮を踏みつけ、つるりと滑ったのだ。
ネネカはその表紙に、壁の生ゴミを捨てる穴に頭から突っ込み、地下のゴミ捨て場へと吸い込まれてしまった。
ネネカ「わあ〜!!」
リリア「逃げ道はもうここしか残されていない様ね。」
リリアはそう言うと、この穴にひらりと飛び込んだ。勿論ララトも後に続く。
ヒューン! ドサドサドサッ!
三人とも生ゴミの山に着地。ネネカは頭から突っ込んだので、リンゴの芯が左の穴にすっぽりはまっている。
ネネカ「ひひはへぇひゃん、ふぉれふぉっふぇ。(リリア姉ちゃん、これ取って。)」
リリア「そんな事は後回しよ。追っ手が来る前に早くこんな臭い所から抜け出さないと。」
ララト「臭いぞ。」
リリア達が生ゴミをかき分け、やっとの事でゴミの取り出し口から表に飛び出してみると・・・・・・
目の前にはゴツゴツと出っ張りの付いた恐ろしく高い壁が立ちはだかっていたのだ。
リリア「あははははは。脱出不可能が聞いて呆れるわ。壁にこんな出っ張りがあるんじゃ、登っていくのは簡単よ。これじゃどんなに壁を高くしても意味がないわ。」
リリアが出っ張りに足をかけようとした時・・・
ネネカ「ブァックショーイ!!」
大きなくしゃみと共にネネカの鼻からリンゴの芯が飛び出していった。
リリア「リンゴの芯は壁に――」
ぶつかった途端真っ黒焦げ。リリアが足をかけようとした出っ張りから電流が流れたからだ。
言子「フフフフフフ。驚きましたか、リリア。その壁にちょっとでも触れれば10万ボルトの電流が流れるという仕組みです。あなたももう少しで、そのリンゴみたいになる所でしたね。」
いつの間にかリリア達の後ろに言子が立っていた。
言子「さあ、もう観念しなさい。」
言子が指鳴らしで合図を贈ると・・・・・・
二人の看守がリリア達の所へ、手錠をかけに駆け寄った。
リリア「待って、それ以上近寄らないで。」
リリアはお腹から大きなおにぎりを取り出すと、前に差し出してこう言った。
リリア「この爆弾を見て!!むざむざ捕まるぐらいならこれを爆発させてあなた達も道連れにしてやるわ。それが嫌なら門を開けるのね。」
ネネカとララトも、これを見るとすぐに真似をした。
ネネカ「あたし達だって一個ずつ持ってるよ。」
リリア「こんなでっかい爆弾が三個もあれば、どんな刑務所だって木っ端微塵よ!!」
言子達はびっくりして後ずさりした。自分達の命まで木っ端微塵にされてはたまらない。
リリア「何をもたもたしてるの。」
リリアはネネカの持っていた線香花火をおにぎりに突っ込むと、火を付けて見せた。
ジジジジ・・・・・・
言子「ま、待って、やめなさい。ねぇ、早く門を開けてやるんです。」
慌てた言子が叫ぶと、頑丈な分厚い鉄の門がギギギギーッと少しずつ開き出す。
カチャ ギギギギーー
ララト「やったーー!!」
パチパチパチパチ ドスン
ララトが嬉しくなって思わず手を叩いてしまったので、爆弾、いやおにぎりが地面に落っこちてしまった。
割れた海苔の間からポロポロとご飯粒がこぼれ出る。
言子「な、何ですかあれー。おにぎりじゃないですか、くそーっ!!馬鹿にしやがって。早く門を閉めなさい。もう許しませんよ。この刑務所の最終兵器を出してやるーー!!」
言子が真っ赤な顔をして叫ぶと・・・