大人二次小説(BLGL・二次15禁)

【完全】穏やかな二人【オリジナル】
日時: 2014/11/28 20:08
名前: 見習い人形師

 初めまして、見習い人形師です。
 此処で初めてスレ作りました。
 R18に立てましたが、その表現は少なくなると思います。そして完全にオリジナルです。
 基本的には短編をぽんぽんと書いていこうと思います、リクエストも受け付けているのでコメント下さったら嬉しいです。
 また、過度の誹謗中傷は止めて下さい、メンタルがぶち壊れてしまいます。
 やんわりしたオブラートに包んだ励まし(アドバイス)ならまだ受け入れられるので、誤字・脱字などありましたら教えていただけるとありがたいです。


・執筆開始
 2014/11/28

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Re: 【完全】穏やかな二人【オリジナル】 ( No.1 )
日時: 2015/08/06 08:42
名前: 見習い人形師

「 はらりら 」 
※おっさん受け


 遠くでけたたましい金属音が響いていた。腕を伸ばすが其処に確かな感触はなく、重い瞼を開けてみるが朝日に目が眩んでよく周りが見えない。手の甲で目をこすると少し視界が開ける。体と腕を精一杯伸ばして手に取った目覚まし時計を数分見つめてみるが、そう言えば自分に止め方は分からないのだった。あれこれと弄ろうにも、そもそもどう弄ればいいのかも分からないため、けたたましくなり続ける目覚まし時計を心配そうに眺めながら起き上った。

 眠っていた場所は太陽の匂いがするふかふかとした真っ白なベッド、しかもシングルではなくダブルの大きなものであった。それが中央に備え付けられたその部屋は暖かな木造式のもので、木の良い香りとゆったりとした気流が常に流れていた。真っ白なベッドから足を踏み出し、琥珀の肌を持った男は、手に目覚まし時計を持ったまま、戸惑った様子であたりを見渡していた。





 年の頃は三十半ばほどだろうか、肩にかかるほどの黒々とした髪には先ほどまで眠っていたため寝癖がついており、切れ長な漆黒の双眸も眠気で濁っている。端正な顔立ちだったが、今ではその顔も不安で幼く歪んでいた。体には白く清潔そうなシャツを一枚だけを纏っており、そのなめらかな起伏の美しい脚は朝日の柔らかな光に照らされ、まるで彫刻のようだった。素足のまま辺りを歩いてみるが、男はまるで全てを始めてみるかのような、そんな表情を浮かべ続けていた。椅子、机、その上に飾ってある菫の花。それぞれに指先で優しく触れ、その感触に驚いたような顔をする。何もかもを初めて目にする、赤子よりもさらに脆い存在のようにも見えた。

「やぁ、菫」

 扉の開く微かな音に男は振り返っていた。そして親しげな声が男を呼んだ。菫――それが男の名前のようだった。菫の不安げだった顔に、微かな安堵の笑みが浮かんだ。

「……志野、さん」
「熱は下がったみたいだね、よかった。……まだ無理をして声を出しちゃいけないよ」

 駆け寄ってきた菫を満足そうに眺め、その髪を片手で優しく梳きながら頭を撫でるのは、菫よりも一回りほど若い青年だった。

 青年――志野は優しげな鳶色の瞳を細めて笑い、そっと抱き寄せると素直に彼の肩に顔をうずめる菫を愛おしげに眺めていた。しかし未だに鳴り響く目覚まし時計の存在に気付いて苦笑を洩らし、菫から少し身体を離すと、しっかりと彼の手の中におさまっていた赤いデジタル時計の銀色のボタンを指先で押した。

「ごめんね、止め方、分からなかったか」

 菫が申し訳なさそうにこくりと頷くと、志野は気にしなくても良いんだよ、と愛おしげに菫を眺め、その頬に口づけを落とす。それだけで菫は嬉しそうに目を細め、うっとりとした様子で小さな吐息を漏らしていた。

 志野は菫の手を取ったままベッドへと移動し、座らせると、体温計を取り出して彼の艶やかな唇を指先で撫でる。そうすると、菫はひくりと息を呑みながら微かに口を開く。志野はその様子を眺め、良い子、と笑みを浮かべながらその中に体温計を優しく差し込んだ。機械音が正確な体温を把握したという合図を出すまでこのまま待つことになる。

 口の中に何かを入れられるのは不安だったのだろう、菫は時間がたつにつれて不安そうに自分の前に立つ志野を見上げていたが、その優しげな笑みを見るたびに安堵し、再び俯く事を繰り返していた。そう長い時間は経たずに軽やかな機械音が終わりを知らせ、再び唇をなぞると、そっと口は開かれ、志野は体温計を引き抜いた。

 熱は完全に下がった様で、いつのも彼の平均的な体温を数字は示していた。安心したように笑みをこぼした志野を見て、菫は良かったんだと納得していた。菫はこの行為の意味を理解してはいなかった。

「熱はもう下がっていたよ、辛くなくなったでしょ? 昨日までは起き上がる事も出来なかったもんね……もう大丈夫」

 志野は菫に微笑みかけながら頭を撫で、ベッドのそばに据え付けられた椅子へと彼を座らせた。ちょうど朝日が差し込むようになっている大きな窓のそばにそれはあり、眩しそうに目を細めた菫に眩しいか問いかけ、薄いレースのカーテンを閉める。少し待っているように、と菫の肩に手を置き囁きかければ、従順な彼は小さく頷くだけだった。

 志野は菫に見える程度の場所に備え付けられているキッチンへと移動し、簡単な食事の料理を始めた。その無駄のない動きを菫はぼんやりとしたまなざしで眺めていた。しばらくして漂ってきたいかにも美味しそうな匂いに、微かに目が見開かれる。出来立ての料理が自分の前に運ばれてきた光景を驚きながら眺めていた菫に志野はスプーンを持たせ、向き合うように自身も朝食を用意し椅子に座った。そのまま食べ始めようとする菫を優しく制し、両手を合わせてやってからいただきます、と二人で声をそろえて言う。

 菫のスプーンの握り方は、まるで赤ん坊そのままだった。突き刺すようにして食器から朝食のスクランブルエッグをすくう菫の食事の仕方ではぼろぼろと食材が机や服にこぼれてしまう。志野は苦笑を浮かべながらもそれを拭きとってやり、そっと彼の手を取ってスプーンの持ち方を変えてやる。菫はそのたびに申し訳なさそうに表情を曇らせ、俯いて、食べ始める。


 それが二人の朝の始まり方だった。いつも通りの朝だった。 

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