官能小説(オリジナル18禁小説)
- 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】
- 日時: 2014/11/17 00:53
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
小説カキコ本館からの移動です!
大人の複雑かつドロっとした微エロな内容です←w
更新は遅いですが、しっかりと文章としてまとまった内容に努めてるのでご了承を。
ではでは、ゆっくりしていってね!
Page:1 2
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.3 )
- 日時: 2015/02/08 02:10
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#2
朝、出勤した途端に…
何が楽しくて………!!!!
「「「早乙女せんせー!手紙読んでくれました??!」」」
「「「「ひろきせんせいー!返事くださいー!!」」」
____女子生徒から集中攻撃を受けなければならんだ……!!!!!
「あ"ーーー!!!うるさい!静かに!!ほら、教室戻りなさい!!!」
大声を出して追い払う。
…喉が痛い。
そしてそれ以前に他の先生からの視線がイタイ…………泣
心が深海の状態で職員室に入る。
「いやー、大スターですね早乙女先生。」
「マスコミに囲まれる芸能人みたいー。お疲れー。」
「・・・・もう、やめてほしいですよアレ。すっげー困ります。」
近くの先生から、色々と声をかけられる。
それに加え他の先生方からも、クスクスと笑い声が聞こえた。。。
全く、俺はこの時ばかり、高校教師を辞めたいと思った。
「いやー、あれ程の女子生徒からの支持を受けてるなんて〜。先生、ひょっとしなくても、女子生徒の一人や二人に手ェ出してない?」
振り返ると、俺の目の前には今一番会いたくない人がヘラヘラ笑いながらと立っていた。
冗談めかした声で皮肉るこの男は小田 賭(オダ カケル)、文学の先生。年は28で、同い年の同期の早苗先生とは仲がいいらしい。
そしていつも、俺に冗談目かして冷やかしを言う苦手な人。
その妙に嫌味の入ったような、笑い顔がしゃくにさわるんだよな…。
小田先生は結構しつこい上、めんどくさい。
適当に相手をするのが賢明だ。
「んな訳ないでしょう。こっちは参ってるんですよ、冗談よして下さい。」
すると、小田先生は俺にズイっと近寄りへぇー、と呟いた。
その、やけにニヤニヤとした表情が、俺をひときわ腹立たせる。
小田先生は、俺の耳元にひっそりと低い声で耳打ちをした。
「じゃぁ、今度さカワイイ生徒紹介してよー。」
どうやらこの人は、俺の気分を害すのがお好きなようで。。。
「・・・いい加減、怒りますよ。」
そう言い放ち、思い切り小田さんの顔を睨みつけた。
すると小田先生は一瞬ひるむも、いつものヘラヘラとした笑い顔に戻る。
「ごめんごめーっん、冗談だよ?そんな怖い顔すんなって。」
「冗談に聞こえないんですよ。まじ、腹立つんで勘弁して下さい。」
朝から嫌なことが立て続けに起こってムカムカする。
ヤケになって机に置かれたコーヒーをぐっと一杯飲み干した。
無糖のコーヒーは、香りは良かったけれど鋭い苦味がいつまでも口の中に残った。
_________________
小田賭 (28) 軽いノリが目立つ文学担当の高校教師。早苗とは同期で仲がいい。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.4 )
- 日時: 2015/02/08 02:14
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#3-1
長かった職員会議が終わり、時刻はもう7時を過ぎていた。
他の先生方は会議が終わり直帰したが、俺は提出しないといけない企画書が残っているので帰らないつもりだ。
暗い廊下に佇む自販機の照明が周囲を部分的に明るく照らした。
その光に吸い込まれるようにして近寄り、缶コーヒーを買う。
パシュッと栓を開く音が、廊下中に響き渡った。
コーヒーを飲みながら職員室へ向かうと、そこには早苗先生がいた。
早苗先生はこっちを見るなり、軽く微笑んだ。
俺は口元の缶コーヒーを離して笑い返した。
「早乙女先生、こんな時間まで会議ですか?」
「はい、体育祭のことでいろいろと。思ったより長引きました。」
軽い会話が終了。すると、早苗先生は隣の資料室に消えていった。
自分の机のPCを起動させ、俺はもくもくと自分の仕事をし始めた__。
数分後
俺が再び自販へ行って缶コーヒーを買い、戻った時__
ちょうど資料室から出てくる早苗先生の姿に俺は、目を見張った。
何と、資料室から出てきた彼女の腕は、とても高く積まれた資料の数々を支えていた。
か細い、華奢な腕には負荷がありすぎだ。
「早苗先生!俺、運びますよ。それ、貸してください。」
「あ、大丈夫ですよこれ位。どうってことないですから。」
どうってことないだって?
その細い腕に入っている筋から、嘘だと悟った。
「いや、運びますから、何処に運ぶんですか。」
早苗先生に持つ資料に手を伸ばす。
「ホントに大丈夫ですよ!心配ないですって。」
そう言った早苗先生は、それらを守るかのにように体をひねり、俺の手が届かないようにした。
その一瞬__
早苗先生は足首をひねって…ぐらりバランスを崩した。
彼女から離れたそれらは、紙吹雪のごとく宙を舞う。
「ぅ、わぁッ??!!」
俺はその光景を見て、右手から缶コーヒーが離れていくのに意識が廻らなかった。
「……危ない!!!、」
早苗先生の背中を支えようと手を延ばした刹那____
部屋全体が一瞬で闇に包まれた。
あれ...?
伸ばした手は真っ暗な宙を彷徨い、俺自身もバランスを崩し前方に倒れこんだ。
俺はその途中、何かに衝突してそれを押し倒すようなカタチで倒れこんで……
「ぅわッ!!!」
「きゃぁッ!!」
俺のお声と早苗先生の悲鳴が部屋中に響いた。
悲鳴のわけはいきなり暗くなったからなのか、はたまた___
考えろ、考えるんだ自分。
この状況、おそらく停電だ。
ブレーカーが落ちるなんてコトは滅多にないから違うとして、きっと一時的な停電のはず。
しかし、早苗先生の悲鳴は一体...?
早苗先生が停電ごときで悲鳴を出すとは考え難い。
俺はその理由を次の瞬間知ることになる__
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.5 )
- 日時: 2015/02/08 02:16
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
3-2
パチパチと音をたて始め、辺りの電気が普及し目の前が明るくなった。
そして衝撃的かつ運命的展開を目の当たりに、俺は息を呑み込んだ。
俺の目の前の早苗先生の体は床に接していて__
俺の手はご丁寧に早苗先生の肩を抑えていて__
俺が上で__早苗先生が下__……
“俺はその途中、何かに衝突してそれを押し倒すようなカタチで倒れこんだ。”
“それを押し倒すようなカタチで___”
“それ”とは…………………
「ぅぁあ、早苗先生???!!!」
俺が声をあげると、さっきまでポカンと口を開いていた早苗先生の顔が一瞬で赤色に染まった。
いやいや、可笑しい可笑しい可笑しい何かが可笑しい。
目の前の早苗先生は俺の知る早苗先生ではなく、
「ぁの……メガネが…///どっかいっちゃって……///」
メガネのない、早苗先生だった。
大きな瞳に、真っ赤な頬、か細い声___
俺の目は一番美しいものを見ているように、うっとりとした。
_____すごく、綺麗だ。
俺は今、目の前の女性に心を鷲掴みされてるかのように夢中になっていたんだ。。。
心臓はどくどくと高まり、思考は完全にノックアウトされていて…
理性というリミッターがぶった切られた俺は、彼女の肩を抑える力を緩めなかった。
「ぁの…、退いて下さい」
嫌だ。
俺はこのまま雰囲気の流れるがままに、
彼女を自分のものにしてしまいたいという欲望を感じた。
「早乙女先生…ッ!!あのッ!」
その必死で声を荒げる口を___
俺の口で塞ぎたくなる衝動。
そして舌を絡ませ合い密な交流をしたくなる衝動に耐えれるかなんて、もはや俺の知ったことではない。
「早苗先生…。」
低い声でそう囁き、彼女の顎を掴み、顔を近付けた__
その刹那……
___パァン!!という音が部屋中に響き、頬に痛みが走る。
俺は体を起こした。
頬にズキズキと鋭い痛みが残って、ものすごく気持ち悪い。
「……からかわないで下さい。」
そう言い放った早苗先生の顔は__
相変わらず赤い頬で、ただ…瞳に涙を浮かべていた___。
「…俺、なにやってんだろ。」
これって…
本当にマズイと思う。
俺は変だ。
大体、このドクドクとうるさい心臓は、何だ。
俺の早苗先生のことばかりでいっぱいの脳内は、何だ。
そして早苗先生の肌に触れた感触が、今でもリアルに残っているのは____
一体、何なんだろうか。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.6 )
- 日時: 2015/02/08 02:18
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
- 参照: 青柳早苗*視点
#3-2 Another ver.
「早苗先生…。」
いやらしく耳元に、低く甘く囁くその声が……私の全神経を刺激する。
それに不思議と抗えない何かが、私の心の中にあるのを全部見透かしてるようで…、
早乙女先生のそういう所、ずるいと思う。
彼が私を見つめる眼差しは、すごく情熱的で惹かれるものがあった。
だからお願い。
そんな…そんな熱っぽい目でこっちを見ないで欲しい。
絶対に、その目からそらせなってしまうから………
「離して...下さい。お願い..、」
声を絞り出して出すも、早乙女先生は聞く耳持たずだ。
誰もいない夜の職員室。
私たちのやり取りだけが、部屋中に響き渡っていた。
どうしよう。
このままいったら一体私はどうなるのだろうと思った。
こんないきなり、どうすればいいのかが分からない。
次の瞬間、早乙女先生の手が私の顎を捉え、一瞬で彼の顔と私のが近くなった時__
ふと私は冷静に考えた。
だめ…。
もし、ここで唇を重ねたら、きっと取り返しがつかなくなってしまう。
抗えずに私は、求められるがままに流されてしまう。
だから......、
だめ____!
__パァーン!!
気づいたら、私の手は早乙女先生の頬に飛んでいった。
「ぁ、……。」
いたい、
人を殴ると自分も痛いんだ。
彼を殴った後の掌の感覚…、それはズキズキといつまでも残っていた。
私が知らないうちに目頭はみるみる熱くなっていって、
吐き捨てるように言い放った。
「……からかわないでください。」
早乙女先生みたいに、若くてかっこいい先生が私なんか本気で相手にする訳がない。
私は、からかわれているから。
頭ではそう理解している。
それなのに、再びどくどくと高鳴る心臓に腹が立つ。
早乙女先生に触れていたところが、ジリジリと熱を帯びてうずいて……
私はきっと、どうかしてるんだ。
しばらくして、早乙女先生に背を向けて歩き出した時、後ろからの声に私は足を停めた。
「…からかったつもり、ないですが。」
振り返ると、真っ赤な顔で恥ずかしそうに口元を手で隠す早乙女先生の姿があった。
「_____ッ!」
やっぱり……
やっぱり、早乙女先生はずるい。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.7 )
- 日時: 2015/02/08 02:23
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
- 参照: 早乙女弘樹*視点
#4-1
「早苗先生、あのこれ明日の会議の資料ですが、」
「…そこ、置いといて下さい。」
手短かにそう言う早苗先生は俺に見向きもせずPCに目を向けたままで、机の片隅を指差した。
その態度からして俺は察する。
分かってはいたけど、これってつまり……
___猛烈に避けられている、な。
…参った。避けられてちゃ謝罪もできないじゃないか。
まぁあの時、確かに俺は抑えが効かなくて怖がらせた。
言ってみれば、セクハラってワケか。。。
「避けられのも当然、ってことな・・・。」
何やってんの俺…。
椅子の背へ思い切り体重を掛けて天井を見上げる。
ギギィッと軋む音と共に椅子の背がしなった。
「なぁ〜に、不景気ツラしてんの早乙女ーー!」
スコーンッ、いい音をして俺の顔面が丸めた教科書に叩かれる。
「ッ!そうでもねーよ。なんだよ、神崎。」
__神崎 莉奈(カンザキ リナ)。いつも元気はつらつとした前向きな人物。同い年の24歳で大学からの付き合い。俺にとって、お悩み相談所といったところ。
ちなみに童顔で愛嬌のある神崎は、俺と同じく生徒から人気がある。
そういう共通点があるからか何だか悩み事はいつも神崎に話すようになって、今現在お悩み相談所へと至る訳だ。
「今日の飲み会のお知らせにきてやったのよ。」
「飲み会?ああー、それ今日か。」
この学校の三学年担当の教員達は、仲が良くて月に一度飲み会を開く。
俺や早苗先生に小田さん、そして神崎混ざる9人が集まる。
そういえば、今日だったか…ソレ。
「忘れてたんでしょ、まぁいいけど。細かいことメールで送るから。…てか、悩み有りなさっきの顔はどうした?」
神崎は鋭い。女の勘とやらが人一倍働くのだ。
「別に、大したコトねーよ。お知らせどうも、神崎も仕事戻れ。」
「はいはーい。」
***
「はい、じゃー皆で〜?!」
「「「カンパーイ!!」」」
一点に集められたビールジョッキが、照明の光を黄金色に反射して眩しい。そしてテーブルの上には、どれも美味しそうな大皿が複数並ぶ。
ひとまず、ビールっと…。
ゴクッ…ゴク…ッ、プハァッ!!!
「くぅ〜、仕事上がりのビールウマァッ!!! 」
キンキンに冷えたビールが爽快な喉越しで喉を通過していく。
くっそ、この時ばかりは生きててよかったと心の底から思う。
よく見ると、もうジョッキの半分を飲んでしまった。
「いやー、よく飲むなぁ早乙女。若いっていいなぁ!」
「何言ってんスかぁ、小田先生だってまだ若いですって。」
アルコールが入って気分がよくなると、嫌いな小田先生との会話も苦痛でなくなる、恐るべしアルコール。
一方飲むペースが速い俺とは対照的に、隣の早苗先生はビールを舐める位で全然飲んでなかった。
この時の俺は避けられてることも忘れて、自然に話しかけた。
「あれ?早苗先生、飲まないんです?」
「…!・・お酒、弱いのであまり飲みません。」
早苗先生は一瞬、俺に驚いたような視線を向けた。
その視線と俺の目があった瞬間、少しドキッとした。
それはきっと、しばらく目を合わせてくれなかったから。
だから、もう少し長く視線が絡み合えばよかったのにと思った。
「さぁーて!酒の追加どーする??!!」
「こっちはビール生3つ!」
「俺、焼酎水割り1つ!」
ビールにも少々飽きてきたし、焼酎を頼む。
すると他の先生に渋いなぁ、と茶化された。
数分後
…焼き鳥を食べながら焼酎でも一杯やろうかと手を伸ばしたところ、どうもそのグラスが見当たらない。
可笑しいな、誰かが間違えて飲んだのか?
ふと隣を見ると、早苗先生の両手にはそれが握られていた。
「_______?!」
…なッ?!これはまさか、まさかの………??
何と彼女の握るそのグラスはあと数センチで唇に触れてめでたく間接キs…いやいやそうじゃなくて、待ってそれは俺の…!
「ぁ、ちょッ…待って」
遅かった。
何食わぬ顔でグラスを口に運ぶ彼女の横顔を、俺はまるで白雪姫が毒林檎をかじる瞬間かのように見ていた。
…おぅふw
この期に及んで間接キスしちゃったとか考えてる俺の思考回路はまさしくアホだ。
ここまで来ると、おそらく水と勘違いして飲んでるつもりなんだろうなー、何も知らない彼女は焼酎のグラスを一気に空にした。
もし今彼女が白雪姫と同じく倒れて永遠の眠りについたら、俺がキスして助けたい、が現実はそう甘くない。
「あの早苗先生…それって俺の、
「店員さぁ〜ん!な、生大ひとぉ〜ッつ!!」
………ゑ???????
俺は目の周りでの出来事に目を見張った。
俺の言葉を遮り、呂律が回ってるのか否か分からないような大声で生大を注文したのは、あの早苗先生だったのだ。
マジかよ………。
周囲も、早苗先生の豹変っぷりに驚いて一気に静かになった。
いや、まぁそりゃもの静かな早苗先生が、いきなり大声でビール生大注文すれば誰でも驚くよな、普通。
しかも、酔っ払いみたいな声で。
皆が混乱して言葉を失っている中で、小田先生が口を開いた。
「…ぁーーー、あっちゃ〜!いやー早苗は酒に弱い上、酒癖メチャわりーんだよ。…まぁ、皆気にせず飲んでて。」
…これが気にならないで居られるか、ッつー話だ。
______________
神崎 莉奈(24) 童顔で愛嬌のある性格から生徒(主に男子)からの支持率が高い。早乙女とは同期で大学からの付き合い。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.8 )
- 日時: 2015/02/08 02:24
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#4-2
「じゃぁ、これでお開きね。また学校で。」
全く、今日の飲み会は、早苗先生が酔っ払ったせいで途中から全然酒が進まなかったな。
隣で彼女が空のビールジョッキをどんどん増やしていくのを見ていて、見ているこっちが酔いそうになって、思い切り飲む気が失せた。
「あ、ちょっと早乙女先生!」
後ろからいきなり呼び止められる。
「…?何です?」
「青柳先生、めちゃ酔ってるから送ってってあげて。」
(※青柳先生=早苗)
「………………はい。」
何だか、俺は早苗先生に随分と振り回されている気がする。
「あの、早苗先生。送ってきますよ。ちゃんと歩けます?」
「らぁーいじょうぶですよォ〜。ちゃんとー帰れますぅ。」
ここまで人格を変えることができるとなんて…
改めて恐るべし、アルコール。
呂律の回ってない声で話す彼女は、思い切り足元がフラついていて見てるこっちが辛い。
最初は肩を貸して歩こうかと思ったが、現状そうもいかなさそうだ。
仕方ないな…。
「背中、乗ってください。」
早苗先生に背を向けてしゃがむ。つまり、おんぶするしかない訳だ。
「へ?」
「いいから、早く。電車逃しますよ!」
「ぃ、いやぁ〜、いいですってぇ!悪いですよぉ、そんなのー。」
ほぉ、酔っていても最低限の遠慮はするらしい。
だが、今はそんな遠慮は要らなかったり…。
「いいですから!もう、早く!」
「ぇえ〜はぃ…。重いですよぉ。」
俺の背中に早苗先生の体がのし掛かる。
何だ、全然軽いじゃないか。
そう思いながら立ち上がり、せっせと歩き始めた。
背中に感じる、彼女の体がじんわりと暖かい。
しばらく歩いていると、早苗先生が口を開いた。
「ぁの〜、迷惑…かけてますよね。」
冷たい外気に頭が冷えたからだろうか。さっきと比べて、随分と呂律が回っていた。
「まぁ、そうですよね、ホント。」
否定はしない、が…。
俺は、そのまま続けて話した。
「でも嬉しいですよ。」
「え?どぅして…。」
「こうして、一緒にいられて。」
自分で言っててすごく恥ずかしくなった。
俺も、少しだけ酔っ払ってんのかな。
こんな甘いセリフ、言えるのは今日だけだ。
今日は早苗先生が酔ってるから…特別だ。
「もぉ…からかわないで下さぃよ。」
今日は早苗先生のいつものセリフに、心なしか微かに笑みが含まれている気がした。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.9 )
- 日時: 2015/02/08 02:25
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#5-1
「早苗先生!着きましたよー!」
マンションに着くなり、背中の早苗先生に話しかけた。
しかし、反応がないため早苗先生を揺さぶる。
「あのー、早苗先生〜?」
おそらく…ぐっすり寝ているな、これは。
仕方なく再び早苗先生を2、3回揺さぶる。
…カッ。
来ない返事の代わりに地面に何かが落ちる音がした。
早苗先生を背中に背負った状態で、何とか地面に落ちたものを拾い上げると、それはカードキーだった。
このマンションのであっているのだろうか、“Room321”とナンバーが刻まれている。
俺がフゥとため息をつくと、冷たい空気に俺の吐息が白く染まった。
「部屋まで連れていけってワケか…。」
***
「ここ…、かな?」
目的の312号室に着くと、カードの認証機にカードキーを当てた。
ピピッ、
電子音と共に鍵の開く音がマンションの静かな廊下に響いた。
背中の早苗先生はというと、相変わらず起きる様子がない。
「…どんな夢見てんだか。」
起きないことには仕方が無い、俺は覚悟を決めて扉を開けた。
おじゃまします、と小声で言うが勿論返事は来なかった。
…まぁ、むしろ返ってきたら怖いんだけど。
玄関のところで、一旦早苗先生を降ろし、とりあえず壁にもたれさせる。
一気に軽くなった背中にふぅと溜息が零れた。
………、
何を思ってか俺はふとしゃがみ、壁にもたれる早苗先生を見つめた。
長いまつ毛に閉ざされた瞳はとても魅力的で、まるで天使のような寝顔だった。
そして彼女の無防備にも少しだけ開いた唇は、俺の目をしばらくの間釘付けにした。
すると俺の頭の中に一つ、邪な考えが浮かんだ。
……いや、待て待ていかん、いかん。
妄想を振り払うように、頭を揺さ振った。
おいおい、俺は何を不埒なことを考えているんだ。
気を取り直し、寝たままの彼女を抱きかかえる。
お姫様抱っこの状態でリビングまで進み、近くのソファーにそっと降ろした。
「早苗先生…。」
優しく名前を呼び、彼女の白い頬に触れる。
そしてその手で、そっと細淵の眼鏡を外した。
カチャ…と小さな音を立てて外された眼鏡によって、早苗先生の綺麗な顔だちが一層際立つ。
普段の早苗先生より、断然こちらの方が魅力的だ。
目の前のこの上なく無防備な早苗先生に、再び俺の中でムラムラと欲望が騒ぎ始める。
この際だから起きない内にこっそり…、という邪な本能は何とか俺の理性によって打ち消される。
寝てる人に悪戯なんて、男として外道だ。
彼女の美しい寝顔に相当の未練を残しながら、俺はその場を立った。
さて、帰るか。
そう覚悟を決めたその時_____
「___ッ?!」
何かに引きとめられたかのように、ピタリと足が止まる。
…すると俺の腕の裾を、細長く綺麗な指が掴んでいた。
俺の動きを一瞬で止めたそれに、淡い期待を持って振り返ると......
「早苗…先生……?」
この目でとらえた、早苗先生の薄く開いた瞳は、どこか切ないように寂しげだった。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.10 )
- 日時: 2015/02/08 02:31
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#5-2
「早苗先生...?」
俺の袖を掴む彼女の手から、細やかな震えが伝わってきた。
切なそうな顔でこちらを見つめる早苗先生にはどこか洗練された色気を放っていた。
...思わず俺が、慰めてあげたくなるほどに。
「行かないで...、下さい。」
_________ッ、
その声は震えていた。
彼女のか細い声で伝える酷く甘い訴えに、俺の心臓がドクリと跳ね上がった。
もしかして、
...これって、期待していいのかな
「...行きませんよ。何処にも。」
俺はそう言って早苗先生の手を握り、指を絡ませた。
早苗先生の指から段々と震えが治っていくのがハッキリ分かった。
チラッと早苗先生の顔を見ると、案の定赤くなっていた。
...でも、何か違う。
その赤く染まった頬に気を取られていたが、よく見ると瞳には涙が浮かんでいることに気が付く。
一瞬キラリと光ったそれは、やがて彼女の頬から静かに流れた。
早苗先生...泣いてる?
そう分かった俺はそっと、早苗先生の頬の涙を指で拭った。
「あの、早苗先生...?」
「やだ...。あの、何でもないんで、
「嘘つかないで。」
俺は涙で少し濡れた早苗先生の瞳から目を離さなかった。
「ぁ、あのッ、わたし...私、お酒が入ると、ベロベロになって...。」
「・・・ぅん。」
「頭が冷えた時に何だか...途端にこう、無性に寂しくなるの...、自分でも全然訳わかんなくて...!!」
早苗先生は下に俯いた。
顔の表情はわからけれど、段々とあつくなっていく声に彼女の心が読み取れる。
「・・うん。」
「こんなにも、誰かにすがりたくなってしまって...。」
「・・・、ぅん。」
...だから俺に。
そう思った途端、
胸が苦しくなった。
さっきまで期待していた甘く薄っぺらな欲望が、酷く馬鹿馬鹿しく思えた。
「だから...今だって早乙女先生の優しさにつけこんで…ホントに最低だって...、っ!」
「もういいから。」
そう呟いて、早苗先生の腕を引き寄せる。細身な彼女の体はすっぽりと俺の胸に収まった。
抱きしめた瞬間にふわりと香った、
ビールと、微かな香水と、早苗先生の香りに何だか俺の理性が揺らいだ。
「ぁの、早乙女...先生っ。」
少し抵抗を見せる早苗先生に、俺は一瞬腕に力を込めた。
「...寂しくなくなるまで、俺が慰めてあげますから。」
「...な、何...言って、」
「俺になら...どんだけすがったって、迷惑にならないよ。」
ただ一時的に求められる、それでもいいからと、そう思えるのは...、
俺はそこまで早苗先生に惚れ込んでいるのだろうか。
「そんな、...ど、どうしてそこまで私なんかに...優しいんですか?」
俺はフッと笑った。
その答えは、彼女自身が気付かないと意味がないから、
「ひみつ。」
俺がそう呟くと早苗先生は俺の肩に顔を置いて、安心したかのようにまぶたを閉じていた。
彼女の体の震えは、さっきと比べだいぶ収まっていた。
...けど、後に俺の背中を掴む指だけはまだ微かに震えていた。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.11 )
- 日時: 2015/03/15 22:01
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
- 参照: 青柳早苗*視点
#6
朝目覚めると、私は昨日着た服のままでソファに寝そべっていた。
頭が酷くガンガンして息が酒臭い。
典型的な二日酔いだ。
ふと目をやると、時計は朝の五時を示している。
土曜日だから時間に余裕がある。ゆっくりとシャワーを浴びよう。
そう思ってフラつく足取りでバスルームへ向かった。
ザーーーーー!!!!
熱湯のシャワーが強く私の体を打ちつける。
このまま二日酔いも洗い流してくれればいいのだけれど、相変わらず頭痛は収まらない。
「....、ハァ。」
…そういえば、自分が二日酔いするまで飲むなんて何年ぶりだろうか。
昨日のことは思い出そうと頑張ってもほとんど覚えていない。
二日酔いなんて、そういうものだと思うのだけど………
ただ、ただほんの少しだけ覚えていることもあった。
_____『俺になら、どんだけすがったって迷惑にならないから。』
優しくそう囁いた声に、触れた肌のぬくもりだけは...忘れていない。
何があったのか、全然覚えていないのに感覚だけが皮膚に残っている。
思い返すだけで、胸が切なくなるのはどうしてだろう。
キュッ、
シャワーのひねりを閉める。
するとボタボタ音を立てて身体から水滴が落ちていく。
…...訳のわからない気持ちが、私の中で膨らんで行くのが怖かったりする。
私は早乙女先生にどんな気持ちを抱いているのだろう…?
***
休日の誰もいない音楽室。
そこは静寂に包まれていてピアノと私、二人だけの世界に浸れる唯一の空間。
鍵盤を1つ、指で叩く。するとポロン...♪と小さく音が溢れる。
連続して叩くと1つの音と音が繋がり、やがてそれは長いメロディとなり響き渡る。
時間の流れさえも忘れてしまうほどに音楽の世界にのめり込むことで、私は日々のストレスや不安などの負の感情から解放される。
ふと瞼を閉じると、広がる草原の中に独り、夢中でピアノを弾く自分の姿が浮かび上がった。
......何もいらない。私にはピアノさえあれば何も必要ない。
そう思う頭の片隅で、草原の向こう側に私を見ている影が浮かんだ。
だれ?
ゆらゆらと浮かぶ影は、やがて1人の男性の姿に変わっていく。
あれは...、早乙女...先生......?
それに気付いた瞬間、鍵盤を叩く指が止まった。
「......ッ、なんで...?」
ピアノといる時間...。
何もかもを忘れる事が出来る瞬間。
なのに...どうして彼が出てくる?どうして、彼だけは忘れられない?
...こうやっていつも、彼のことばかりでぐるぐるして。
___________ばかみたい。
音楽室の鍵をかけて職員室に戻ると、そこには小田君がいた。
「よー、早苗か。今日もピアノか?」
「うん。小田君は?」
「俺?あー俺はさぁ、論文。書かないと、いい加減ヤバいの。期限間近でさー。」
小田君らしい。ふと笑みが溢れた。
「笑うなよ。こっちは必死なんだぜ?」
「うん、ごめん。頑張ってね、論文。」
「おう。」
威勢よく返事をした小田君はpcに向かってもくもくと指を動かせ始めた。
小田君は、大学からの仲で同期生として今でもよく相談に乗ってもらう事もある。
この学校で唯一、敬語で話さない相手は彼だけである。
「それじゃぁ、お先に失礼します。」
「待って。早苗、ちょっといいか?」
小田君の、珍しく真剣な声に足が止まった。
「なに?」
「昨日、早乙女先生に送ってもらったらしいけどお前酔ってたろ?...またあの癖、出たんじゃないよな?」
...、小田君は勘が鋭い。
あの後のことは覚えてないけど、多分...出たんだと思う。
早乙女先生にも、きっと迷惑をかけた。
「...ぇっと、送ってもらう途中で寝ちゃったから。大丈夫だったと思う。」
「...、ふーん?そう。ならよかったじゃん?」
そういいながら、少しだけ納得していないような顔を小田君はしていた。
本当のことなんて...。
言えるわけがないと思いながら、私は職員室を後にした。
帰宅途中の電車は、運が悪くサラリーマンで溢れかえっていた。
蒸しきった車内は暖房も聞いているせいか冬でも暑苦しくて仕方がない。
つり革を握りながらしばらく電車に揺れていると、後ろからいきなり見知らぬ男に抱きつかれる。
「ッ、?!」
あまりにいきなりで、声が出なかった。
痴漢?!
その男は私の胸元に手を回すと、1つずつボタンをはずし始めた。
大きな手がボタンを外していく動作を、私は信じられない思いで見ていた。
「ぁの、...やめて下さい...。」
いやだ...、怖くて声が震える。
大きい声を出して助けを呼ばなきゃいけないと分かっていても、声が出ない。
その手はやがて胸元に滑りこむ。
瞳が涙で濡れて、視界がぼやけて見えた。
いや...やめて。
助けて...、誰か。誰か......、
早乙女先生.......!!!!
「ちょっと、あんた。痴漢は犯罪行為ですよ。女の人も困って...、え?」
「さ、早乙女...先生?」
信じられないと、本気で思った。
でも本当に目の前にいるのは早乙女先生で、私を助けるその姿はまるで...
王子様のようだった。
「早苗先生...?」
彼も驚いた顔をしたが、私の腕を掴むとちょうど駅に着いて開閉したドアに向かって人混みをかき分けた。
私の腕を掴む彼の腕がとてもたくましく思えて...。そしてホームに着くなり、早乙女先生は私の体を強く抱きしめた。
「...馬鹿!どうして、助けを呼べなかったんですか!!もし俺が助けなかったら...、今頃...ッ!」
「...ッ、ひっく...ッ!」
「ぇ、え?ぁ、あのッ、泣くほど?」
ちがう...、怒ったのが怖かったんじゃないの。
「ち、ちが...、あなたがいなかったら..私..。怖くて..怖くて、しょうがなくて...!」
何よりも暖かくて落ち着く早乙女先生の胸に、いつまでも抱かれたいと思った。
知らないうちに、私は腕を彼の背中に回していて、しわができるんじゃないかって位に握りしめていた。
心から安堵したからか、溢れ出した涙が止まらない。
彼のシャツが涙で濡れ始めたことにも気付かずに、私はずっと泣いていた。
「ごめん...怖かったんだよね。もう、大丈夫だから。」
ポンと私の頭に手を置いたその手が、嬉しいと感じるなんて。
ああ、分かっちゃった。
きっとこれが、この感情が...
______好きという気持ちなんだ......。
- Re: 【大人の危険で】深夜26はキミと一緒に。【甘い恋】 ( No.12 )
- 日時: 2015/04/01 21:17
- 名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k
#7-1
「うわー、でっかいな...。」
目の前にそびえ立つは5階建の豪華旅館。
周りの広々とした日本邸の景色に、自分には少々敷居が高いのではないかと怖気付く。
「あの...、ここ本当にあの値段でよかったんですか?」
ひっそりとこの企画の発案者である学年主任に耳打ちをする。
「ああ。大丈夫だよ。ここ、今でいう訳あり特価てやつで安くなってるから。」
「訳あり?何がですか?」
「壁が薄いんだってさ。元が金持ちの別荘だったから?設計上、気にしなかったんだな。物音とかそーいうの結構隣に聞こえるらしい。」
...おいおい。それって、相当プライバシーに関わるよな。
まぁ、そんな訳で(?)教員旅行と称して俺たち三学年担当メンバーで温泉旅行に来たわけだ。
「...にしても、豪華だな。壁が薄いくらいで何であんなに安くなるんだろう...?」
俺がぼやくと、それに反応した小田先生が口が開いた。
「まぁ、大人の事情だよ。早乙女君〜。ここはまぁ、飽くまで泊まる場所な訳だからさぁ?」
.
「早乙女君...?」
俺の言葉に耳も傾けず、小田先生は声のトーンを落として静かに言った。
「夜な夜な“そーいう声”が漏れたら溜まったもんだじゃないよなぁ...。」
「.........、はぁ。」
ビミョーに納得した様子で俺は旅館に入った。
内装は思った通り和風でなにより煌びやかで豪華だった。
壁が薄いことを除いたら是非今度泊まりに来たいと思った。
***
「おーい!!早乙女先生〜!」
部屋にチェックインして廊下に出ると、背後から自分を呼ぶ声に振り向く。
「小田先生......?」
「お前、風呂まだだよな?」
「ぇ?ええ、はい。」
曖昧に返事をしたが、よく見ると息を上げてこちらに走ってきた小田先生は、腕に着替え束をぶら下げていることに気づく。
...まさか、
「よっしゃ、決まり。じゃぁ、行くか!ここ露天だし、サウナもあるぞ。」
やっぱりか...。
正直言って丁重にお断りしたいが、立場的にそうする訳にも行かない。
「はぁ。じゃぁ俺、束持ってくるんで。」
「おう。」
威勢よく返事をした小田先生に俺は頭の中に「?」がたくさんあった。
あれか?
裸の付き合いで仲良くなろうっていう魂胆なのか...??
よく意図が分からないが...。
相変わらず小田先生は読めない。
浴室は屋根が高く広々としていいて、窓の外は緑が広がっていた。
「すごいですね...!これ。」
「ああ、そうだな。」
木製の湯船の縁からは贅沢にも湯が溢れかえっている。
湯は少しだけ白濁していた。
これ以上湯が溢れないようにと、そっと湯船に入る。
「ぅ、ぁあ〜!これはまた....、
「いい湯だなぁー!!!」
「ちょっと、俺の言葉を取らないで下さいよぉ。」
なめらかな湯が体をまとい、肌がスベスベ潤う。
ああー、生きててよかったー。
温泉には中々入る機会がないので、久しぶりの感覚に心が躍る。
「こーいうのってさぁ、教師やってると忙しくて来るコトないからな〜。」
「ほんっと、そうですよね。疲れがとれます。」
しばらくすると、小田先生が口を開く。
「...なぁ、早乙女先生ってさぁ。」
「?何ですか。」
「好きな人とかいるワケ?」
「ほぇ、」
どストレートなその質問に力の抜けた返事が口から溢れる。
なにその、学生の頃の定番質問は。
「何だよ。」
「いえ、ゴホン、ゴホッ!
...えっと、セクシャル・ハラスメントですよそれ。」
「おい、ふざけんなー?俺をそっち側にすんなよ。まぁ、それは置いといて。」
「好きな人かぁ.....。」
自分でそう口にすると、頭に1人の女性が浮かんだ。
...早苗先生、ね。
「まぁ、そりゃー...居ますけど。」
「ふ〜ん...。もしかしてさ、早苗だったり??」
「...え、」
「もしかしてっつったが、図星?」
小田先生がこっちを見て笑った。
分かりやすいねぇ、の一言を言われ少しカチンときた。
「な、じゃぁ小田先生は?」
「いるよ。ずーっと、片思いだけどな?はは、笑えるよな。」
自嘲的に笑う小田先生に俺は意外だ、と感じた。
一途に片思いだなんて、意外と純情...。
「笑えることなんて無いですよ。変わらず好きでいるなんてカッコいいです。」
「そーか?はは、まぁね...。」
小田先生の声が少し自信なさげに下がる。
そして間を置いて呟いた。
「...、俺は早苗が幸せなら...俺も幸せだからな。」
「.........ぇ、」
「あ"?何か聞いたか、そりゃ気のせいだな。」
さっきの切なげに呟いた彼の表情に、チクりと胸が痛んだ。
そうか、小田先生も...早苗先生のこと...。
ひょっとして、小田先生が俺を誘ったのってこれを聞くため...?
そして俺たちはこれ以上言葉を交わすことはなかった。
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