官能小説(オリジナル18禁小説)

ミロスラワの場合
日時: 2015/11/28 11:54
名前: 斎藤ロベール

ミロスラワのことは、学校中の皆が知っていた。喧嘩になれば男とも殴りあい、倒れて動けなくなっても決して負けたと言わない気の強い女子。曲がったことが嫌いで、不当な出来事には一人で突っかかっていく無鉄砲。徒党を組まず、友達もいない変わり者。
無表情のことが多く、大抵の生徒には、学年を問わず恐れられていたし、いわゆる不良グループからは敬遠されていた。教師ですら、声をかけるのを憚っていたくらいだった。ただ、実際にミロスラワのほうから何かされたという者は皆無であった。人を寄せつけないその雰囲気が、恐ろしい女だという先入観を周囲に浸透させていたのだった。
その姿からすれば、ミロスラワはむしろ美しい少女だと言えた。十四歳になったばかりだったから、女らしい体つきには遠かったが、真っ白い肌にすらりとした体型、濃い金色の、肩より長い髪、赤茶色の瞳、はっきりしているのに甘やかな声質、よく見ると柔らかい印象を与える目鼻立ちなどは、ミロスラワを知らない道行く男子の気を惹きつけてやまなかった。

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Re: ミロスラワの場合 ( No.8 )
日時: 2015/12/10 06:28
名前: 斎藤ロベール

舟橋正仁(まさひと)場合
ミロスラワは差出人の名を見て驚いた。まず目を疑ったものだが、字体からもそれが先生であることは明らかだった。
舟橋は細身の中年で、社会科の教員である。気が弱そうな男だった。クラスに教科を教えに来ている以外、ミロスラワと特に関わりもなかった。自分の行動が教員に知られ、これは現場を押さえる一つの手口かと思ったけれども、文面は違っていた。
自分は変態性欲を持った人間で、子供にしか惹かれることがない。人生に流されて教員などしているが、これは自分の傾向のためではないから安心してくれていい。だが、周りを対象に囲まれながら何もできないでいることが苦しくてならない。今、この手紙を君に書いたかどで、自分は罪に問われるかもしれない。それでも、自分の苦しみが終わることは、恐らくこの先もないのだから、目の前にある機会を逃したくない。
おおよそ、そんな内容であった。
ミロスラワは混乱した。そして恐れた。教壇に立っているような、言わば近くて遠い特殊な大人が、性欲などを持っている。性欲とは、何か、存在全体を襲われるかのような、不気味な情熱なのだとミロスラワは直感した。怒りなどとは性質のまったく異なるグロテスクさがあった。
脚の震えが止まらなかった。築いてきた心のありようがこの手紙に震撼させられているのをミロスラワは感じた。自分が内心、気づかぬところで教員という大人を信頼していたのだと分かった。その信頼が崩れていく。しかしまた、不安とともに、生来の深い同情の思いが激しく波のようにうねり出して、少女の目は眩んだ。

Re: ミロスラワの場合 ( No.9 )
日時: 2015/12/11 06:32
名前: 斎藤ロベール

保健室のベッドでミロスラワは夢を見た。それは、人の見ている夢を外から見るという変な夢だった。
座った僧侶がこちらを向いてうつむいている。その僧侶の前の床板に、出したばかりらしい男の証拠が溜まっている。とても一度の量ではないだろうと、ミロスラワには思われた。
僧侶は裾をまくってまた手に握った。手は激しく動いたが、今度は飛びもしなかった。それから僧侶は疲れて座ったまま居眠りを始めた。眠りながら、眉間には皺を寄せていた。心の中で戦って、するのを我慢しているのだろうか。しかし僧侶のまくれた裾から見えている物は、また硬くなってきた。

Re: ミロスラワの場合 ( No.10 )
日時: 2015/12/13 09:49
名前: 斎藤ロベール

僧侶の後ろには大きな金色の仏像が立っていた。千手観音だった。千手観音は僧侶の厚い信仰の対象だったのである。
その千手観音が、生きた姿で僧侶の夢に現れた。まばゆい輝きに照らされた全裸の僧侶は、硬いままの男を隠しもせず、ただうろたえていた。
観音は真っ直ぐ僧侶に近づいてきた。一足ごとにその背丈が低くなっていく。千の腕は二本になった。髪が腰に届くまで伸び、ついに観音は、白い光を放つ裸の若い娘になった。
むき出しの男の体に肌を優しく合わせて、娘は僧侶を抱きしめた。温かな光と体温とにすっかり包まれた僧侶は、自分に娘の全てが与えられていることを悟った。
僧侶はそこで目を覚ました。衣服を整えると、観音像に向かい合掌した。僧侶の心には、もはや何の迷いもなかった。
ミロスラワも目を開けた。ミロスラワは、保健室の天井を見ながら、自分にある決意が沸き起こるのを感じていた。

Re: ミロスラワの場合 ( No.11 )
日時: 2015/12/14 05:20
名前: 斎藤ロベール

ミロスラワの場合
その日の朝、ミロスラワはいつものように父の位牌に短い般若心経を唱えてから、考えた。
待ち合わせ場所は舟橋正仁の自宅にしてあった。シャワーでも浴びて、体をきれいにしておくべきだろうか。しかし、舟橋の要求には、少女の体から出るもの全てが慕わしいとあった。
ミロスラワは、男の恥については思いを寄せ続けてきていたが、女の恥はほとんど考慮したことがなかった。だから、篠崎に見せた時に自信がなかったのだが、自分の体から出てきて自分でも厭わしいと感じている物を、他人の、しかも異性に晒して与える行為が、まともだと思えないのは当然だと思われた。
自分に恥を晒してきた男子たちは、随分辛かったのではないだろうか。ミロスラワは、シャワーを浴びるのをやめた。「少女」などに幻想を抱いている無知な教員に女の実際を思い知ってもらうのも、大切なことだと考えた。
舟橋の家は遠かった。市電に乗って、町の反対側まで行かなければならない。春は桜の名所、秋は紅葉の名所となる真言宗の大きな山寺のすぐ近くに舟橋のいるマンションがあった。着替えが簡単にできるよう、学校のジャージで行こうかとも思ったけれど、目立つのは先方に困るだろうと、長袖のティーシャツにカーディガンを羽織り、下はスカートにした。肌寒いくらいをよしとしたつもりだったが、電車内は、よく晴れた天気のせいで暑く、腋の下や背中が汗ばんだ。
一面の紅葉が目に鮮やかだった。ミロスラワは四階建てのマンションをすぐ見つけた。最上階までエレベーターで上ると、呼び鈴を鳴らした。戸は返答なく開けられた。

Re: ミロスラワの場合 ( No.12 )
日時: 2015/12/15 07:19
名前: 斎藤ロベール

「いらっしゃい。」
舟橋は、寝巻きのような部屋着を着ていた。ミロスラワは、何の前置きもいるまいと、部屋に上がった途端スカートを下ろした。
「待って。僕に脱がさせて。」
と教員が慌てて止めた。
ミロスラワは恥ずかしくて真っ赤になった。覚悟を出ばなで大きく挫かれた気がした。ここでスカートを上げるのもおかしい。少女は、普段着に下だけ半裸の異様な格好のまま立っていた。
「ちょっと座って。いくつか確認しておこう。」
「先生に言うことは何もありません。」
「君にはルールがあったよね。」
「あれは生徒の決め事です。先生ならあたしを補導したりもできるわけじゃないですか。」
「逆に、君には僕を訴える権利がある。十年後になっても、多分ね。」
「あたしは決めてきたんだから、人のせいにしたりしません。今なら、まだ先生は何もしていないし、補導できますよ。やっぱりそうだったんですか?」
舟橋は、違うよと答えた。ミロスラワは間を置いて
「でも、そのほうがあたしは良かったかも。」
と言った。
舟橋はそれを聞いて、自分は本当に犯罪を犯そうとしているのだと、胸が痛んだ。子供の信頼を裏切る呪わしい性質を持った自分を改めて認識した。ミロスラワの言った通りに今なら言い換えることができるだろう。しかし、何のためにこの少女は来たのだろう。

Re: ミロスラワの場合 ( No.13 )
日時: 2015/12/17 13:17
名前: 斎藤ロベール

舟橋がミロスラワのことを知ったのは、インターネットの書き込みからだった。学校の裏サイトがあることを、生徒の立ち話を耳にして知った舟橋は、そこから特定できる生徒を見つけた。舟橋はその生徒を呼んで話を聞いた。生徒は、ことが明るみに出てミロスラワに復讐されるのを恐れていた。
舟橋は、他の教員に伝えず、自分でサイト閉鎖の手続きをした。この生徒の話はミロスラワに伝わるかもしれないが、取り敢えず証拠は消えたわけである。もともと、ミロスラワの名前はサイトに出ていなかった。ただ、金髪赤目のエムとだけあった。

Re: ミロスラワの場合 ( No.14 )
日時: 2015/12/17 13:24
名前: 斎藤ロベール

「もう脱いでいいですか。脱がせたいなら早くしてほしいです。」
立ち尽くしていたミロスラワが、下着に手を掛けながら言った。
言ってから、どうやったら先生のような人は満足できるのかと尋ねた。子供はみんな大人になるではないかと、浮かんで当たり前の疑問だった。あたしに今日なにかしても、あたしは来年もっと女になっている。これから毎年こんなことを、生徒の誰かに先生はしていくんですか。そうミロスラワは、詰め寄る調子で聞いてみた。
舟橋は黙っていた。うつむいて涙目になり
「帰りなさい。呼んだりして悪かった。」
と言った。
ミロスラワの顔に突然狼狽の色が浮かんだ。なぜか酷く慌てた様子で、帰りませんと返した。そして、トイレに行っているあいだに、したいことを紙に書いておくよう、舟橋に命令口調で頼んだ。火のようなミロスラワの迫力に舟橋は驚いた。

Re: ミロスラワの場合 ( No.15 )
日時: 2015/12/19 21:04
名前: 斎藤ロベール

戸を閉め忘れたらしいトイレから、ミロスラワの用を足す音と、それを流す水音が聞こえた。
格好を変えずに戻ってきた少女に舟橋は紙を渡した。少女はそれに繰り返し目を通し、また顔を赤くした。そして紙を丸めてごみ箱に捨ててしまった。
自分が言う通りに動いてほしいとミロスラワは舟橋に伝え、間近にしゃがんだ。トイレのあとなのだろう。下着の真ん中が少し縦長に濡れて沁みになっていた。
「シャツを捲って胸を触ってください。」
舟橋が従った。汗のにおいが忽ち舟橋を陶酔させた。触れてみると、思春期の力に満ちた固い張りであった。舟橋は迷わず口を付けて強く吸った。明らかにミロスラワの感じていることが、下着の沁みの広がりとして表れた。
「腋の下を嗅いでください。」
舟橋が従った。舟橋は、ミロスラワの白い腋の下を、片方ずつ、嗅いでは口づけしていった。息の荒くなった少女は、沁みのところを自分で掻きはじめた。その動きは次第に乱暴に速まっていった。
「おへそにキスしてください。もう!」
「なんだよ?」
「遅いんだもん!」
ミロスラワはそう言うと、下着をさっさと脱いでしまった。

Re: ミロスラワの場合 ( No.16 )
日時: 2015/12/21 01:04
名前: 斎藤ロベール

「勝手に進めるなよ。」
「ここ、早く擦ってください。」
「そんなの、なかったぞ。」
「じゃあ、割れ目を開いて、汚れたところを舐めてください。ああ、こういう女、最低!」
ところが、言葉を聞いた舟橋も、言ったミロスラワも、共に笑い出してしまった。笑いは互いに止まらず、後を続けられなかった。
笑うミロスラワの腹の上で頭を抱かれた舟橋が、子供のようにはしゃいで言った。
「人間の悩みは、特に男の悩みなんて、ばかばかしいことが本当は多いんだろうかね。」
「でも、本当にばかばかしいかどうか分かるまで、女のあたしは付き合うことにします。」
「もう、やめようか。」
「あたしはいいけど。射精だけはしてください。体に悪いから。先生は動かなくていいです。」
「君は処女じゃないのか。」
「調べてみてください。」
本当は、初潮さえ迎えていないミロスラワだった。
しかし教員はもう漏らして縮んでいた。胸を触った時には出てしまっていたのだという。ここは見なくていいのかと聞いたら、いいと答えた。確かに、もう続けられない柔らかさだと見えた。
「あとで写真でも送ります。先生みたいな人は女の子のこと知らなすぎるんです。」
ミロスラワは、男の後処理を丁寧にしつつも、さっきの紙にあったことはいずれ全部すませるよう、舟橋に諭した。

Re: ミロスラワの場合 ( No.17 )
日時: 2015/12/22 12:37
名前: 斎藤ロベール

帰宅してからミロスラワは今日の出来事について考えてみた。
自分は夢で見た観音菩薩のような行ないをしようと思っていた。決意はあったが、片や悲壮な響きの伴っていたそれは、力の足りないおこがましい行為だったかもしれない。真剣に考えた末の閃きは、おかしな結果になった。力みのない一種の和解を状況にもたらした。舟橋とああしていたとき、心にゆとりが生まれていた。
夢の中の僧侶は舟橋と自分の二人だったのではないかとミロスラワは思った。本物の観音菩薩があたかも横にいて、閃きが与えられたかのように感じられてきた。
父親の死とそれにまつわる出来事も、また世の中の悲しみも、男子との関係も、ひょっとしたらもっと違う見方で捉え直せるかもしれない。偉大なものに任せて、成り行きを信じてみようかとミロスラワは思った。
まずはそのため、自分が大人になる前に、舟橋の思いは遂げさせなければならない。そして、自分に恥を打ち明けてくれたお礼として、五百円あげるのだ。
ミロスラワは、来週の約束全部と小遣いの残りとを確認することにした。
                             (おしまい)

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