官能小説(オリジナル18禁小説)
- 【BL】掃き溜め
- 日時: 2022/03/15 03:59
- 名前: 綴 凪
つづり なぎと申します。
創作キャラのBLです。元々昔別の所で書いていたのをこちらに引っ張って来ました。
ストーリー進行などはあまり気にせず、好きな所だけ小ネタ程度に書いていく事になるかもしれません。
宜しくお願い致します。
【登場人物プロフィール】
[大学生BL]
広瀬 蒼斗>>1
相楽 皷>>2
憂月 薫>>3
天城 弥生>>4
澤原 三好>>5
[高校生BL]
燈凪 紫>>15
朽葉 吉乃>>16
【作品】
[大学生BL]
澤原 三好×憂月 薫
・三好の家で幸せに苦しくなる話>>6-14
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- Re: 【BL】掃き溜め ( No.1 )
- 日時: 2022/03/14 20:04
- 名前: 綴 凪
「広瀬 蒼斗(ひろせ あおと)」
21歳大学3年生
僕/君・あなた/〇〇君・〇〇さん
男娼をやっている。そこでの名前は聖(ひじり)。
一人で居るとどうしようもなく不安で怖くて酷く泣きじゃくり、その後は倒れ込み意識を失う。特異体質、発作のような物。
幼い頃の母親の自殺と父親の放蕩が原因。
男娼を続ける理由は発作の防止ともう一つ、恋人である皷を嫉妬させる為。
客を煽り身体に痕を付けさせたり等もする。
嫉妬に狂った皷を感じたい。どこまでも依存して、どこまでも依存されたい。そんなただのドM。
皷に傷を作られるので蒼斗の身体はいつも傷だらけ。
縄痕、噛み痕、キスマーク、痣、火傷痕など色々な物がある。
事後に今にも泣きそうな顔で手当てをする皷を見て密かに興奮している。
「あは、良いよ。…今日は幾らで僕の事買ってくれるの?お姉さん」
「お兄さん、これ僕の番号。欲しくなったらいつでも連絡頂戴ね」
「皷君、愛してるよ。だから僕だけ見ててね」
「僕の誕生花の花言葉って"善良"なんだって。…こんなの、僕からは随分かけ離れた言葉なのにねえ」
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.2 )
- 日時: 2022/03/14 20:27
- 名前: 綴 凪
「相楽 皷(さがら つづみ)」
21歳大学3年生
俺・私(仕事時)/あんた・お前/〇〇さん・〇〇君・呼び捨て
ヘビースモーカー。JPSを好んで吸う。とは言え仕事の時は専らコーヒー。
蒼斗の恋人。DV持ちで、蒼斗限定のストーカーのような人物。
蒼斗がわざと皷の嫉妬するような事をしている事にも気付いておらず、全て素の行動だと思っている。つまり振り回されているだけ。
家事全般こなせる器用な人間。蒼斗が全く駄目なので、蒼斗の身の回りの事も含めてほぼ全て皷が行っている。蒼斗が他の人に世話を焼かれているのを見るとあからさまに苛立つ。
蒼斗とのセックスの時は興奮に伴い嫉妬や独占欲が表に出て来て、殴ったり噛んだりなど酷く痛め付けてしまう。
時には煙草の火を押し付けたり、首を絞めたり等も。
大学の他、仕事は在宅での物書き。蒼斗の男娼としての収入と、皷の物書きの収入で二人で生活している。実際皷の収入で事足りる位には稼いでいるので、蒼斗には辞めて欲しいと思っている。
「蒼斗、シャツ。ボタン掛け違えてる」
「ごめん、ッ俺、だって蒼斗が首にこんなモンつけて帰って来るから、不安になっただけでっ…」
「…蒼斗愛してる。頼むからもう、客取んないで」
「俺はクズだ分かってる。でも何しても許されんだよ、本当に怖い位綺麗に笑うんだ。何で、身体売るのも辞めねえ癖に、そんな事」
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.3 )
- 日時: 2022/03/14 21:02
- 名前: 綴 凪
「憂月 薫(うげつ かおる)」
25歳大学非常勤講師
私/君・あなた/〇〇君・〇〇さん
蒼斗達が通う大学の先生。非常勤ではあるが頼まれ事や相談も多く、割とずっと学内に居る。
名前だけ見れば女性なので、会った時に残念がられたりする。よく名字を「うづき」と間違えられている。
一部生徒に「薫ちゃん」と呼ばれたりするが基本的にはおっとりとした性格なので本気でなければ怒るというよりさらりと流すタイプ。しかし名前で呼ぶ生徒は名前で呼び返すようにしている。
髪の毛が長めで綺麗。女子生徒に「髪弄らせて」とよくされるがままになっている。
歳の離れた妹が居る。何だかんだ甘く、少し高めのコンビニスイーツ等も買ってあげてしまう。
幼い頃の事故の所為で片目が義眼。もう片方の肉眼も視力が少し弱い為普段は眼鏡を掛けて生活している。天気や気温、夢見や精神などの体調次第で手術した義眼の方が痛むが、学校など人目につく所では笑って済ませている。
感情が昂ったり余裕がなくなると固めの敬語が外れる。それでも丁寧な喋り方ではあるが、威圧感も少し出て来る。
煙草はむしゃくしゃした勢いで吸う事がある。銘柄に拘りはなく、その日の気分で適当なものを選ぶ。
弥生の事が好きだが、当の弥生は身体ばかりでこちらに好意は向いていない。その上三好とも身体だけの関係が出来てしまい罪悪感を持っている。
「み、三つ編み、?私には若過ぎるんじゃ…ッ」
「三好君だけだ。…こんな、恋人じみたやり方をするのなんて」
「すき、本当にすきです、弥生君」
「利用したくないなんて、どの口が言うのだろうな。私が一番、残酷な事をしているのに」
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.4 )
- 日時: 2022/05/11 17:39
- 名前: 綴 凪
「天城 弥生(あまぎ やよい)」
20歳大学2年生
俺/君・あんた/〇〇君・〇〇ちゃん・呼び捨て
蒼斗と皷の後輩で、三好の先輩。皷程ではないが煙草の消費はそこそこ早い。ラッキーストライクのエキスパートカット14ミリを好む。
笑ってばかりで胡散臭く、掴み所のない人間。空気は読んでもそれをスルーするので、今じゃなくても良いような事を平気で言う。が、実はやる相手は選んでいる。
案外勘も鋭く、薫が自分の事を好きだという事には割と早く気が付いた。そして自分の事を振り解けない事も分かった上で身体だけの関係を続けている。薫が三好とも関係を持ったのを知ってからは、薫の方から離れてくれるのを待っている。
蒼斗の事が好き。よく蒼斗を買ってはセックスをして口説く。勿論相手はプレイの範疇としてしか「好き」の言葉を返してくれないので、じわじわと傷付きながらもそれが癖になっている。
家庭環境はあまり良くない中で育った。その影響で、自分の事を好きになるような人間に興味がない。
浮気症の父は殆ど家に帰って来ず、母はそんな父に癇癪を起こし続けていた。それを「一人に固執するからそういう事になるんだ」と冷めた気持ちで見ていて、だからこそ絶対に自分の事を好きにならなくてどれだけ暴いても許される蒼斗に心酔している。
「しかし良いの?"憂月先生"…教え子とこんな身体だけの関係持ってさ。しかも二人も」
「はは、弄んでる?…そんなの、薫ちゃんだって一緒でしょ」
「こんな時に好きとかやめてよ、白けんじゃん」
「手に入らなければ、あんな苦しさとも無縁でしょ。だから特定の相手なんか死んでも作りたくないの」
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.5 )
- 日時: 2022/03/14 22:06
- 名前: 綴 凪
「澤原 三好(さわはら みよし)」
19歳大学1年生
俺/お前・あんた・君/〇〇さん・〇〇ちゃん・呼び捨て
弥生の後輩だが、恋敵の為あまり仲良くない。寧ろ蒼斗や皷の方が三好を可愛がっている。
弥生の事は嫌いだけどあからさまに避けたりはしない。ただ言う事は言うし敵意剥き出しになる事もある。
何事も要領が良く頭が良い。しかし提出物だけはいつも遅らせる。期限のある物が苦手という訳ではなく、単に薫に怒られたい、ひいては構って欲しいだけ。
交友関係は割と広く、その癖いつも両側は女性に挟まれている事が多い。
皷程ではないが、「美術系…?その顔で?」と言われるいかつさ。身長もある上仏頂面なので警戒されがち。だからファーストコンタクトは笑顔を心がけていたら、割と誰からも好かれる人間が出来上がっていた。元々コミュ力が高いのもある。
薫の妹の事も可愛がっている。「三好さん、優しい人だね」って妹に言われてる薫が複雑そうな顔してるの見て少し面白がっている。
元々男に興味があったわけではなく、本当に好きになったのは薫が初めて。女性とすらまともに続いた事がない。
弥生に抱かれているのを知っていて自分も薫の身体を望んだ。後悔しながらも受け入れてくれる薫に少しだけ付け込んでいる。
「あんた、先生弄んでるだけだろ。蒼斗先輩の事諦められもしねえ癖に」
「薫ちゃん、どういう風に触って欲しいの。…言ってよ、俺何でもするから」
「えっ…俺そんな怖い顔してた…?ごめん、ちょっと集中しててさ」
「狡い事してんのは分かってる。…でも、我儘一つで先生を繋ぎ止めておけるんだったら、それも良いって思ったから」
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.6 )
- 日時: 2021/08/30 18:15
- 名前: 綴 凪
【澤原 三好×憂月 薫】1
「薫ちゃーん、レポート持って来たよ。単位頂戴!」
コンコン、と扉を叩く音が聴こえ、一つ馴染みのある高めの声が近付いて来る。授業の資料を作っている為あまり顔を上げる余裕はなかったが、喋り口調や机を挟んで私の目の前に椅子を持って来る様子で三好だとすぐに分かった。一旦作業を中断し、冊子を受け取って確認をする。
「ああ、分かりました。…うん、確かに。それじゃあ座らなくて良いので椅子を戻して帰って下さい」
「えー?だって今日一緒にご飯食べる約束でしょ!別にここで待ってたって困らないじゃん」
本当に困らなければこんなに拒んだりしていない。…という言葉は、相手の気持ちを知っている為飲み込んだ。しかし、此方にはこの人間を受け入れたくない理由が山程あるのも確かで、それなのに何度も離れるように伝えていても踏み込んで来る三好に、最近は半分諦めかけている。
「……じゃあせめて、そこに置いてあるレポートの山、仕分けをしておいて下さい。ただ入り浸るだけなんて許しませんからね」
居ても良い、と言ってしまったような物である。相手も当然そういう解釈をしているらしく、先程よりもぱっと明るい嬉しそうな顔をしながら紙の山をカサカサと弄り出した。
溜息をつきながらも結局こうして甘やかしてしまう。絆されかけているんじゃないか、なんて考える自分にも心底嫌気がさして、なのに三好に依存している事実にどうしようもなく腹を立てた。
「なんか薫ちゃん俺にだけ冷たくない?まあでも、そんな薫ちゃんも好きだけどさ」
「だから、…どうして私なんですか。大体三好君、半年位前まで彼女なんて一ヶ月もてば良い方だったじゃないですか」
三好は元々男が好きだった訳では全くないし、ましてまだ成人もしていない教え子。気の迷い等で済まされても可笑しくない筈なのだ。
例えば自分が本当に絆されてしまったとして、そんな事で馬鹿を見るのは御免だ。
今でさえ、最悪だと思っている位なのに。
「別に、だって本当に好きなんだもん。…あ、ねえ終わったよ。薫ちゃんももう終わらせて早く行こうよ」
そう急かす相手の前には綺麗に学籍番号順に整理された冊子が。見やすく束ごとに何番から何番までと付箋も貼ってくれている。
「君はこういう事もすぐに出来て要領も良いのに、どうしていつもレポート提出だけはギリギリなんですか……」
「うーん…期限守るのが苦手だから?」
「他の所のは余裕を持っていると聞きましたけど。…まあ良いです、三好君も外出る準備して下さい。行きますよ」
はーい、と返事を聴いた後、机を片付け薄い羽織を着る。物の少ないバッグを持って三好の方を振り向くと、既にドアの前で私の事を待っていたようだった。
「俺腹減ったよー……薫ちゃん何食べたい?」
「私は好き嫌いそんなにないので、三好君の好みでどうぞ」
「じゃあ俺今日魚の気分!美味い刺身あるとこ行こ!」
こう普通にしていればまるで恋人みたいなのに、なんて考えて胸が痛む。自分がただ相手の好意を利用して振り回しているだけなのに、よくもそんな思い上がった事が考えられたな、と、重い罪悪感を引き摺りながら、三好に言われるままに部屋を後にした。
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.7 )
- 日時: 2021/08/21 05:04
- 名前: 綴 凪
【澤原 三好×憂月 薫】2
美味しい物を食べてお腹も膨れたので、会計を済ませて店を出る。これから起こるだろう事への罪悪感なのか、それとも単なる嫌悪なのかは自分でもよく分からないが、それでも行く前よりも重苦しい感覚に襲われているのは確かで。
三好が言っている言葉にも上手く耳を傾けられず、ほぼ空になった頭で会計を済ませ、いつも店員に向かって言う筈の「ご馳走様でした」の言葉は、とうとう一文字も出て来なかった。
「はー美味かった!…で、薫ちゃん。この後ウチ来るでしょ」
そう口を開く三好と対照に、やっぱりこうなるか、と思いながら口をつぐむ。好きでもない、なのに身体は許している。そんな相手の所に「行く」と言ってしまうのは、つまり自ら犯されに行くのと何ら変わりない。
暫く黙っていると、急に三好にぐっと腕を引かれ、そのまま引っ張って歩かされる形になってしまった。
「あ、ッあの、三好君…!!」
「薫ちゃんにしてみればこうやって、無理矢理連れて行かれるって体になる方が都合良いでしょ。だから良いよ、俺の事利用させてあげる」
そんな事を言いながら、掴んだ腕を離さず進む三好。次はしっかりと断らなければ、家に入ったらもうやめよう、離れようと言って、置いてある私物だけ持って早々に帰らなければ、と。ぐるぐると思考を巡らせながらも歩かされる足は止まらない。人通りの多かった筈の街中を抜け、気付けばいつの間にか閑静な住宅街、その一角のマンションの前に来てしまっていた。
何を言う事も出来ず、階段を覚束ない足取りで登る。
カツン、カツン、と二人分の足音が響き、それが止めば今度は鍵を回す音。そしてドアが開いた所で、私は漸く、あれ以降閉ざしきっていた口から言葉を出した。
「あの、三好君、…もう、ああいう事は……置かせて貰っている私の物だけ持って帰りますから…」
「…はァ?」
俯いていても分かる程のピリっとした空気を感じる。恐る恐る上を向くと、やはり顔をしかめた三好がそこに居た。
怒っているような、何かに耐えているような、そんな顔で私を見下ろす。
「のこのこ好きだっつってる男の家に上がっておいて、まだそんな事言うわけ?」
はっ、と分かりやすい空笑いの後、先程までとは違う威圧感のある低い声でそう言った。
「や、ッ違、三好君が腕を引っ張って連れて来たんでしょう…!?」
「違わねえよ。あんたが何もかも忘れてぶっ壊れてえって顔してたんだろうが」
読まれている、と思った。
三好を受け入れたくない、傷付きたくない、自分には好きな人が居る。でもその実好きな人は振り向いてはくれないし、穴を埋めてくれる人が欲しくて、無理矢理犯されて一時だけでもいっぱいにしてくれる人間が欲しかった。
しかし、そんなに、顔に出ていただろうか。それとも、ただ単に三好がよく見ているだけの事なのだろうか。
どちらにせよ、ここまで言われてはもう、繕う必要もなくなってしまった。瞬間、糸が切れるように自分で必死に押さえ込んでいた欲が顔を出す。
「…じゃあ、分かってるなら早く抱けよ」
するりと首に両手を回し、身体を密着させる。身長差がある為唇へのキスは叶わず、その代わり首筋に吸い付いた。
「は、ッ薫、ちゃん…?」
「私の事を満足させてくれるのではないの?まさか、すぐにくたびれたりなんてしないだろう」
少し挑発的な態度を取る。三好は一瞬眉を顰めた後すぐに笑い、今度は少し屈んでキスをする。口の中を蹂躙され、舌を出して絡めようとすると少し強めに噛まれてひりつくような痛みが広がった。
「はは、人の事煽ったお返し。ほら、先にシャワー浴びて来な」
やりたい事は山程ある上言いたい事も出来てしまったが、シャワーを浴びない事には何も出来ないし進まない為、その言葉に、まずは従う事にした。
- Re: 【BL】掃き溜め ( No.8 )
- 日時: 2021/09/05 01:08
- 名前: 綴 凪
【澤原 三好×憂月 薫】3
シャワーのお湯に当たりながら、まだ私は思考を巡らせていた。
結局向こうの思い通りだなんて考えてみるが、自分が何より"そうされる"事を切望してしまっていた事実に半ば無理矢理気付かされる形になって、その浅ましさに恥ずかしくなり、なんて自分勝手なのだと、消えてしまいたくなった。
それだって全て、確かに自分のせいなのだ。本命を諦める事も、三好を受け入れる事も嫌で、なのに三好に居なくなって欲しくない。そんな中途半端な、自分のせいなのだ。
しかしこうしていたって仕方がない。取り敢えず風呂場から出て、何もかも忘れて三好でいっぱいにしてもらおう、と。そんな事を考えながらシャワーを止めて、風呂場の扉を開けた。途端に、寒気がしてくしゃみが出る。
身体を洗い終わった後どれ位ああしていたのだろうか。このままでは冷えてしまうと思い、すぐに服を着て三好の部屋へと戻った。
「薫ちゃん遅かったね。すぐ湯冷めするんじゃない?温かいコーヒー淹れようか?ココアもあるけど…」
「…ココア。でも良いですよ、台所勝手にお借りしますから。三好君も早くシャワー浴びて来て下さい」
心配そうにしていた三好にそう言って突き放すが、当の本人はうん、と一言、嫌な顔や素振りを一つも見せずに風呂場へと向かっていった。
私も居間へ移動し、冷蔵庫から牛乳を、キッチン下から鍋を取り出し、注いで火にかける。そして後ろの食器棚から自分に用意されたカップとスプーンを出してココアパウダーを入れ、沸くのを待つ。
こうして当たり前のようにある自分用のカップや、何も訊かなくてもどこに何があるか分かってしまうキッチン周りに、常習的に家に出入りしてしまっている事を改めて実感してまた気が重くなった。
考え事ばかりしていると、牛乳が鍋の縁に泡を作り始め、次第にグツグツと音が出て来る。もう良いだろうと火を止めカップに牛乳を入れて、先程のスプーンで混ぜた。そしてミルクココアが出来たので三好の部屋に戻り、ベッドにもたれるようにして床に座る。舌を火傷しないように気を付けながら一口すすると、口の中に広がる甘い味にほっとした。
猫舌である事と、三好を待つ間手持ち無沙汰にならないようゆっくりゆっくり飲み進めて、いよいよもう一口といった所になって部屋のドアが開いた。
「ごめんね、お待たせ」
三好がタオルで髪の毛を拭きながら此方に笑いかける。ふわりと香る風呂上がりの相手の匂いに、自分も同じ匂いを纏っているのか、なんて柄にもない事を考えた。
「別に、そんなに待ってなんていませんよ」
くい、と残りのココアを飲み干す。一口しかなかったのと時間をかけて飲んでいたので、もう温みはなくなっていた。
カップと掛けていた眼鏡をベッド脇の机に置き、三好の方をじっと見つめる。しかし三好は微笑むばかりなので、焦れったくなって自らベッドに寝転んだ。
「はは、何薫ちゃん、やっぱ待ち切れてないんじゃん」
「貴方がさっさと動かないからです」
挑発的な事を言いながらまたがって来る三好に対して若干の苛立ちをそのままぶつける。それでもやはりこの男は、相変わらずの笑顔で、愛おしそうに笑うのだ。
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