大人雑談掲示板

白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々)
日時: 2022/07/17 22:09
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)


小説に書くほどでもない、或いは書けるほど時間も手元の本数もない時とか。
あと暇潰しの殴り書きとか。エッ…!な部分とか、全然エッ…!じゃないのとか。

つまりは私の台詞とか、豆話とか、妄想とか、詩とか?をつらつら書こうかなと思います。
あっちは私室で寝転がってお菓子とかジュース飲んでだらだらするお部屋。
こちらはその時にうつ伏せで紙に手元遊び的に綴る部屋ですね。
綴り仲間募集中です。というか誰かかまってよー。

小説のは…あれは今も昔も小説には私、わりと本気で見つめて書いているので雑談のとこのは本当に息抜きなのです。

んじゃま、書いていこうかね。

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Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.13 )
日時: 2022/10/27 01:09
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

花を慈しみ、花に想われ(豆話L後編)

彼の不機嫌な理由が分からないまま、私は小さく首を振り否定の仕草を見せる。
「まさか、今のは縁を維持する事について話しただけだ。だが、何も考えていない事でもないよ」
私は正面に視線を流して、部屋の白い壁紙を見詰めた。
「私にだって、途切れた縁は数多ある。それは、私から薄れたものもあれば、不本意で薄れたものもあった。それでも、常に繋ぎ留めたい縁には、私なりに縁の先に繋がれたものを想い、愛し、敬うように意識しているんだ。双方の想いは大切だからね」
穏やかに瞳を細め呟く私の隣で、彼の刺がある雰囲気が解けて行くのを感じた気がした。
「そうか。そうだな。互いを大切にする事を忘れたら、側には居られないよな」
柔らかな口調で頷き返す彼の言葉に、刺はもう見えなかった。
なので、私は隣に座る彼の肩に、僅かに体重を預け身を寄せる。
「私と君の関係だって、それは同じなんだぞ。傲慢になるつもりはないが、私なりに君の事を想い、愛し、敬っているつもりだ」
彼の温もりに穏やかな気持ちで告げると、不意に彼の大きな手が、私の髪を優しく撫でた。
「そんな事、分かっているよ。ただ、今までは分かっていただけかもしれないな。これからは努力する」
ぶっきらぼうな物言いに反して、彼の手の温もりは優しい。
それで素直に頷ければ、良い人と呼べるだろうに。
「ならば、一つ問題を出そう。今私が一番欲しいものは、何だと思う?」
答えなど数多に溢れるような、意地の悪い問いだろう。それを分かって問う私の何と酷い事か。
案の定、彼は撫でる手を離し、唸り悩む。
愚かな人だ。けれど、半分正解とも言えるだろう。
「分からないのか?既に半分正解しているというのに」
私は愉快だと小さな笑い声を溢して、隣で悩む彼に告げる。
「先の半分は、君が私の事を考え想ってくれるその気持ちだ。残りの半分は、もう少し、私を甘やかしてくれ」
答えを告げる私に、彼は未だ疑問を滲ませた表情をしていた。
「甘やかしてとは言うが、俺は君が甘える仕草などあまり見た事がないな」
困惑した言葉で告げる彼に、私は苦笑を滲ませ彼の肩に顔を寄せる。
「確かに私は、人に甘える事が苦手だ。やり方を知らないからな。だが、知らない事と望まない事は別だ。私にだって、甘えを求める時だってあるんだよ。誰にでもしようとは思えないけどね」
そう告げる私の言葉に答えるよう、彼は再び私の髪に手を重ね、優しく撫でた。
その彼の仕草と、心地好い温度が答えと見て良いのだろう。
私は、柔らかな温もりに、瞳を伏せた。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.14 )
日時: 2023/02/21 01:16
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

短歌

四季彩の 笹舟一つ 流れゆく
君思いしは 我に映えつつ

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.15 )
日時: 2023/03/22 22:40
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

白ミニ丈チャイナを着せたなら(二次BL台詞集:文スト)
基本設定
変装用の衣装に手違いとして、白のミニ丈チャイナ(深いスリット)の入った紙袋を渡されたとする。
場所は探偵事務所の会議室。

大宰の場合

会議室に変装用の服が入った紙袋を置いておいたと社長から言われた。
成る程。確かに、布地の入った紙袋が一つ、会議室の長机に一つある。
「ふーむ。成る程成る程。えい!」
社長の用意したものだ。危険は無いと判断した大宰は紙袋の外側を見渡すと、両端を軽く掴み、机の上に中身を落とすように紙袋を逆さまに持ち上げた。
ぱさりとした衣擦れの音と共に、落ちた白い滑らかな布地は東洋の装いを用いた刺繍の服だった。
やけに布地が少なく、切れ目の目立つ服に思える。
その布地の端を、大宰は親指と人差し指で摘まみ上げる。
「おや?これはこれは。そうか。んー成る程なぁ」
摘まみ上げた布地の正体に気付くと、大宰は下を向いたり天を仰いだり。瞳を伏せ、大袈裟な立ち居振舞いで悩んでいるような素振りをみせた。
そのまま数秒後。パッと笑顔で瞳を開くと、急急と着替えに取り掛かった。

-数分後-

「見て見てー!似合う?」
音を立てて会議室の扉を開けた大宰は、何等恥じらう事も無く、身をくねらせて白いチャイナ服を着た姿で登場した。
偶然居合わせた国木田と谷崎。中島は物音に反応して大宰の方を見る。
「大宰さん!?え?何…!?何でそんな格好を!?」
第一声は驚き慌てる中島の声と挙動。
「大宰、貴様と言う奴は、また」
第二の憤怒と苛立ちの交ざる声音と表情は、国木田のものだった。
その感、谷崎は会議室に急ぎ入り、空になった紙袋を確認する。
紙袋の外側の底には、成る程。小さく泉鏡花に贈る予定だったらしい文字が書かれていた。
そう言えば一週間程前、自身の妹が何やら泉鏡花宛の贈り物をするとかという話をしていた気がする。
つまり、その紙袋と本来大宰に渡す予定だった衣服の紙袋が何処かで入れ替わり、気付かずにこの会議室に置かれる事となったのだろう。
会議室の外。事務所内は国木田の怒鳴り声と、大宰がふざけている声音で騒々しくなっていた。
おそらく中島は二人の間に立ち、国木田を落ち着かせようと頑張っているのだろう。
全く、この事務所はいつも何等騒ぎ事が多々溢れている。
「脱げ!そんな気色の悪い格好を何時までしているつもりだ!」
国木田の怒鳴り声。
「いやーん。国木田君のえっちぃ」
大宰のふざけた気色の悪い声。
もう暫く過ぎれば、事務所の面々も揃うだろう。
その時の各々の反応が想像ついた気がした。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.16 )
日時: 2023/03/23 21:49
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)


白ミニ丈チャイナ服を着せたなら(二次BL台詞集:だかいち)

基本設定

東谷准太が雑誌撮影の際、他の女性モデルが着ていたチャイナドレスを見て思い付き、吟味を重ねて白ミニ丈チャイナを購入。
後、西條高人の自宅マンションにて、プレゼントと称してシックな紙箱に入ったそれを渡す。

「プレゼント?俺にか?」
その日の夜も東谷准太に拉致られて帰宅した西條高人は、ソファに座り寛いでいた。
車から降りる際、東谷が何やら荷物を手にしていた事には気付いていたが、其れが自身への贈り物とは知らずにいたのだ。
「はい。高人さんに似合うと思って、昼休憩の時間に買ってきたんです」
相変わらずの天使の微笑み。無駄に天使の羽根が散っていそうな笑顔である。
「そうか、開けて良いのか?」
贈る側なのに、嬉しそうにしやがって。
内心そんな文句を呟き、装飾の細い紙紐を解き、箱を開こうと手を掛ける。
その様子を天使はにこにこと見守っていた。
「何だ、これ」
開けた箱に収まっていたのは、白い絹地に淡い紫や緑色の刺繍が入った滑らかな布地の服。
一見して良く分からない布地を取り出し広げて、改めて見る。
表は首まわりを隠す様に、袖は短い。何ならば裾丈も短く、横に深いスリットが入っている。
裏を返すと、背などの布地は確りあったので、幾分かマシと言えるだろう。
白いチャイナ服。女性物の。丈もやたらと短い。
「おい、これ、可笑しくないか」
休憩時間に購入したと言うのならば、買い間違えたというわけでも無いのだろう。
ゆっくりと視線を東谷に移した西條の瞳は、恐る恐るといったところだろうか。
そんな彼の視線を受けておきながら、東谷はポケットの財布から千円札を一枚取り出す。
「高人さんなら、きっと似合います!何も可笑しくなんてありませんよ」
笑顔で言う東谷を見る西條の瞳からは、呆れの色が増していく。
いや、千円とか、似合うとかの問題ではない。
強いて言うのなら、目の前の天使の頭の中が可笑しい事に間違いないだろう。
「いや、無理だろう。サイズとか。前提とか」
呆れの色を滲ませた西條の片手には、白いチャイナ服。
普通に考えて、着る理由もない。
「高人さん。どうしても、だめですか?」
だが、目の前の天使が捨てられた子犬の様な悲しい表情で問うた瞬間、断る言葉を見失ってしまった。
「いや、駄目って訳じゃないけど」
言葉に悩む西條に、東谷は未だ悲しい表情のまま返事を待つ。
本音を言うのならば、着たくない。こんな服、似合う気がしないのだ。
だが、目の前の東谷を思うと、断れない。
「一回だけだからな。今回だけだぞ」
ポツリ答えた西條は、チャイナ服を片手に寝室へと向かった。
後、想像通り恥じらう西條と、喜び興奮した東谷の夜が更けていった事は綴らずとも伝わるだろう。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.17 )
日時: 2023/08/02 03:56
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

泥中一片(豆話:前編)

その日も、友人は庭の池を眺めていた。
植物を好む友人の庭は、小さいながらも季節の植物が繁り、生垣の側には樹木が木陰を落としている。
生い茂る植物の青々とした香りが、柔らかに流れていく。
そんな見事な庭だというのに、友人の庭の池には生き物の気配が一つも無かった。
「そんなに池が好きなら、花なり鯉なりで飾れば良いだろう」
縁側に腰を下ろした私が友人の背に告げると、友人は振り向かずに言葉を返す。
「この池は、これで意味を成しているんだ」
友人が変わらず眺めている池は、お世辞にも澄んでいるものでは無く、囲う岩は緑に苔むしている。
せめて池の水を抜き、磨きあげれば僅かなりとも見映えするだろうに。
泥の沈んだ、生き物の気配の無い池に何の意味があるというのか。
友人の背を呆れた表情で見守る私に、友人は少し身を返して苦笑を浮かべ手招きをする。
「なあ、君の目に、此はどう見える?」
気怠さを隠さず近寄る私が隣に立つと、友人は池を見詰めたまま私に問いを投げてきた。
「どうって、そうだな。汚い池だな。手入れの一つでもした方が良いんじゃないか?」
率直な物言いで答えた私の表情を、友人は横目に一瞥する。
その友人の表情は呆れと、微笑みが雑ざって見えた。
「この池は、何も無い池じゃないんだ。君は、睡蓮という花を見た事はあるかい?」
友人は時として、師のような物言いをする事がある。
これもまた、その一つなのだろう。
私は友人の横顔から再び池へと視線を向け、訝しい気持ちのままに答える。
「あれだろう。公園とかの池に浮かんで咲いている白い花」
思い浮かべたのは、公園にある大きな池と、水鳥。そこに所々咲く白い睡蓮だった。
あの景色は涼しげで、気を落ち着けるのに良い風景だ。
広い池に水鳥が仲睦まじく寄り添う姿や、白い花が咲くのは実に映えるものである。
だが、それに比べて目の前の小さな池には花一輪も無い。
意味が分からずにいる私に、友人は視線を池へと向けたまま小さく頷いた。
「色は他にもあるけど、概ね合っていると思う」
頷く友人の二の句を、私は慣れたように待つ。
「では、君は池に咲く睡蓮を綺麗だと思うか?」
案の定の二の句は、何とも平凡な是非の問いだった。
この友人は時としてやたらと難しい事を問うのだが、今回は実に簡単な問いである。
池に咲く睡蓮を、綺麗だと思うか否か。そんなものは人それぞれだろう。
だが、多くは花に美しさや癒しを覚えるものとも言える。
「綺麗なんじゃないか?少なくとも、私には綺麗に見えた。この池にも咲かせれば、少しは映えるんじゃないか」
時折流れる風が、植物の葉や花を揺らして心を澄ましていく気がした。
とはいえ良い加減、何も無い池を眺めるのも飽きてきた。
そんな私の思いなど気付かず、不意に友人は視線を池から私へと向け、意図の分からない問いを投げる。
「では、何故綺麗だと思ったんだ?その公園が綺麗だったからか?水が澄んでいたのか?」
友人の問いは、難題なものも多い。やはりこれも、その類いなのだろう。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.18 )
日時: 2023/08/13 02:36
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

 泥中一片(豆話:後編)

池に咲いていた睡蓮の花を、何故綺麗に見えたのか。
いや、そもそも花一輪。星一つ。命一生。他の数多。
それらを綺麗だと思う者は多くても、それ等を何故綺麗に思えるのかなど、疑問を覚えて答えを知る者達は少ないだろう。
綺麗に理由など無い。そう言い切れれば何れ程楽か。
私の沈黙に、友人は一瞬諦めたような雰囲気を纏った気がした。
「例えば君は、広い花畑に居たとして、其処に咲く小さな一輪の花の美しさに気が付けるだろうか?同じ種類の花も、他の美しい、淡い、豪華な花々が同じく生い茂っていたとして、その一輪に気付けると思うか?」
友人の視線は遠く、其処には幻想の花畑が在る様だった。
広い花畑で、他に数多の花々が咲く中で、小さな一輪の花に気が付く。
おそらく時間を掛ければ、目的の種類の花を見付ける事は可能だろう。
だが、数多の綺麗な花々の中で、小さな花一輪を綺麗だと気が付けるかは別である。
「それが、睡蓮の話とどう繋がるんだ?」
肯定出来ない私は、言葉を濁して友人に問う。
そんな私の心中等を知らないであろう友人は、更に例えを上げた。
「では、その一輪の花を、水を注いだ柄の無い白盆に浮かべたとしたら、君はその花を綺麗に思えるだろうか。君の想う花弁を、茎を、葉を持つ花が、水に浮かぶ姿は綺麗か?」
そう問う友人の言葉に、私は水盆に浮かぶ小さくも愛らしい花を思い浮かべる。
するとどうだろうか。先程は何も浮かばず、彩りに惹かれる事もなかった花が、唐突に淡く華奢で綺麗な花に思えたのだ。
「それは、綺麗だと思う」
未だ答えの出ない私の言葉に、友人は頷いた。
「私はね、水盆の小花や池の睡蓮が綺麗に想えるのは、其処にそれしか無いからだと思うんだ」
友人の答えは、澄んでいるのに何故か寂しく聴こえた気がした。
「水盆という、池という白紙の上に、花が一輪在るというのは、無に唯一無二の有が在る姿だ。多くがあれば、一つの有に憂う事も、花弁一片を想う事も無いだろう。それが、私の想う答えで、この池を良しとする理由だ」
友人の言葉は、やはりどこか寂しく聴こえる。けれど、その答えは確かに一つの答えで、間違いとは言えなかった。
見下ろす池は変わらず生き物の気配が無く、苔の付いた岩に囲まれている。
底に薄く泥の溜まった、素朴な池だ。
その時、一瞬突風が吹き、庭木の若葉が一枚、池に舞い落ちた。
水面に触れ舟となった若葉は、其処に薄い波紋をふわりと漂わせ、池を白紙とした絵になる。
たかが木の葉一枚。青々と繁った森の中ならば、何も想うことの無い一片。
しかし、目の前の苔むした岩。泥と透明な池の水。その透明な水に波紋を描く木の葉は、絵に成る程の様だった。
「それが、意味だよ」
呆けた表情で池を見る私に、友人は僅かに悦を交えた声音で池の意味を説いた。
先程迄は汚い池だと思っていたのに、友人の話を突風一つ。木の葉一枚で意味を知るとは。
「そうか、確かに此は意味が在るんだな」
沁々と納得した声音で頷く私の隣で、佇む友人は、あの池の睡蓮を想わせた気がした。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.19 )
日時: 2023/09/07 06:50
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

 短歌

深々の朧掛かる紺紫晴らせぬ秋の宵月下

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.20 )
日時: 2023/10/28 04:07
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

天秤の受け皿(豆L前編)

以前から思っていた。
長年の付き合いがある友は不思議な人だと。
何処までも深く底が無い。故に掴めない友である。
今こうして友の庭でアフタヌーンティータイムを過ごしている時も、友は変わらない薄笑みを浮かべていた。
何を視ているか解らない表情が何処か気に入らない。
「なあ、お前は何を考えているんだ」
友の手製というママレードジャムを、温かな紅茶にティースプーン一杯を入れて混ぜる。
渋く芳しい紅茶の香りに、オレンジの爽やかな香りが良くあった。
紅茶とジャムはこんなにも容易く溶け合うというのに、何故目の前の友とは上手く合わないのか。
其が酷く気に入らず虚しさを覚えていた。
「何と言われても、紅茶が旨いなと考えているよ」
友の何気無い言葉が逸らされた様で、更に苛立ちが色濃く染まっていく。
友は何時もそうである。聡明な友ならば、私の言葉一つすくう事など容易いだろうに。
「そうじゃなくて、僕にはお前が解らないんだよ。何時も何時も飄々として、少しくらい理解したいと思うのに。お前は何も見せないだろう」
苛立ちを吐き出すように告げた言葉に、私は言い切った瞬間酷く後悔した。
何がとは言えないが、少なくとも今目の前の友が僅かに表情を曇らせ、薄い憂い混じりの苦笑を浮かべさせたのは私なのだろう。
無意識で何処かは分からないが、きっと友を傷付ける言葉を私が吐いたのだ。
それなのに友を知らない私には、その傷一つも見付けられない。
「君は、私を知りたいのか?」
目の前の傷付けた私に、やはり友は手を差し伸べる言葉で問う。
傷付けられても怒りも反発もしない。ただ穏やかに、親愛の情を容易く向けられるのだ。
「知りたいさ。お前は僕の友人だ。ならばいざという時支えに成れる位置に、同じ位置に在りたいと思う。でも、僕はお前の事を何も知らないじゃないか」
苛立ちはもう無かった。代わりに溢れた私の想いには憂いが染まっていた。
酷く虚しい。空は快晴でアフタヌーンティーには良い日だというのに、温かな紅茶は無機質な味がした。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.21 )
日時: 2023/10/28 04:48
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

天秤の受け皿(豆L:中編)

私の言葉に、友は憂うでも憤りでも無い。無垢な疑問の表情を浮かべていた。
「何も知らないと言うが、君は私の好きな菓子も、苦手な生き物の事も知っているじゃないか。何ならばスリーサイズでも教えようか?」
友の無垢な表情は、確かに私の知っている僅かな友の一面である。
友は聡明だが、時折幼い子供の様な面も持ち合わせているのだ。
「いや、そうだけどそうじゃなくて。お前は僕に無い思考を持ち合わせているだろう?それは非凡なものだ。そして僕は凡人なのだろう」
私の言葉に友は何も口を挟まず、聞き続けていた。
「非凡と平凡には、越えられない溝がある。でも、それじゃ駄目なんだ。少しでも近くに在りたい。それを成すために、僕はお前を知りたいんだ」
告げた私の言葉は、やはり友の表情を僅かに曇らせた。
「それは、興味か?」
訝しげに瞳を細めた友に、私は句を足す。
「違う!君を友として親愛しているから、知りたいと思っている。興味が僅かにも無いとは言わないが、これは親愛からの願いだ」
嘘偽りの無い答えを吐いた。情があるから、願い望むのだ。
愛するものを知りたいと願う欲は、止めどないものである。
だが、友の声は何処か冷めて聞こえた。
「親愛ねえ。愛。それって本当に愛なのかな?」
怒りではない、けれど遠い距離を感じる友の声と雰囲気に、私は呑まれないよう堪えていた。
「君は、恋と愛の違いってなんだと思う?」
唐突な恋愛の問いに、今度は私が無垢な疑問を浮かべてしまう。
恋と愛の違い?愛はまだ話の流れとして分かるが、恋など無関係な問いだろう。
「恋は、浮かれた思考になってしまうものだな。判断力が鈍るものだ」
唸り答える私の二の句を、友は静かに待つ。
「愛は理解したい気持ちが芽生え、近くに在りたいと願うものとか?」
私なりに悩み答えた言葉に、友は酷い呆れの表情を浮かべていた。
「なんだ、言いたい事があるなら言え。悪かったな、僕みたいな凡人にはこれくらいしか言えないんだよ」
矢継ぎ早に私が言葉を発すると、友は紅茶を一口味わい言葉を返す。
「私は恋と愛の違いを問うたのだが、それはどちらも恋だろう」
溜め息一つ溢しそうな友に、私は友の答えを待った。

Re: 白楼さんの落書き帳(NBGLR18オリ二次、台詞豆話等々) ( No.22 )
日時: 2023/10/29 06:25
名前: 白楼雪 (ID: ZaRDEJta)

天秤の受け皿(豆L:後編)

一つ溜め息を吐くと、友は続けて持論を話始める。
「私は、恋とは自己的で、愛とは受容の範囲の問題だと思う」
友人の冷めた物言いに、私は言葉に詰まった。
そんな私に友は捕捉が必要だと考えたのだろう。
「恋というのは、想う側にとって恋慕の相手との日々に一喜一憂するものだろう?今日は相手を見れるだろうか。気づいてもらえるか。挨拶、会話、あわよくば出掛ける約束等が叶うか否か。そんな物事に駈られる事が多々あると私は思っている」
友は淡々と言葉を続けていく。
「だがな、それは相手の視点から見れば、何ら重要な事では無いんだよ。少しばかりの好意があれば、無いよりは有れば良いと取るかもしれないが、無かったところで其ほど重要な事では無い。況して無関心に思われているのなら、なおの事相手の日々に意味を持たない事だ」
友の言葉は何処までも冷徹で、だが事実だった。
「しかし、恋という切っ掛けが無くては恋愛の愛は生まれない。つまりその自己的な感情は、必要不可欠でもあるんだ」
友の捕捉に私は僅かに気持ちが楽になった気がした。
そうだ。恋愛において恋は必要で、たとえ自己的と謂われようとそれも愛の形だろう。
そんな私の希望を、友は愛について語ることで容易く砕いた。
「とは言え、自己的が許されるのは恋の内だけだ。愛は一方的な自己では成り立たないよ。自分と相手がいて、交わす処に愛は宿るんだ。愛する者に自己を押し付けては、愛しているとは到底言えないだろう」
友の言葉に、私は辿々しい反論を口にする。
「自己的とは限らないだろう。会いたいと思ったり、触れたいと願ったり、知りたいと望むのは相手の為にもなるはずだ」
友の見解を否定しなくては、私は私の答えに疑問を懐かなくては成らなくなる。
疑問を懐くという事は、先程迄親愛と思っていた友への理解も親愛で無くなってしまうのではないか。
それはとても寂しい事に思えたのだ。
だがそんな私の想いも、友には届かないのだろう。
「君が誰かに想いを懐いたとしよう。恋人となったとしても良い。だがな、君が会いたいと、触れたいと願った時、必ずしも相手も同じ心を懐いているとは限らないだろう。忙しく疲れて休みたいのかもしれない。ストレスや苦痛で触れられたくない時も、行いたくない事や話したくない事。知られたくない事もあるとは思わないか?」
友の言葉に、私は返せずにいた。
何時だって誰にも誰かの心は分からないものだ。一瞬一秒先の想いや感情など、容易く解れば苦労しない。
喩え追体験が叶ったとして、私は私で友は友だ。同じ感情も心も成り立たないだろう。
「それに対して愛とは、それらを何れ程受け止め、思い遣り、妥協や許容出来るかという物事だ。謂わば受動的なものだな」
友の諭す様な声音はいつの間にか穏やかな色を魅せていた。
「親愛も愛だ。私は確かに先程君に言われた言葉に思うものの一つ二つがあった。だが、それを受け止めて許容するのも親愛だと思っているよ」
友の声音は既に始めと変わらない柔らかな物になっていた。
「お前は、知られたくないのか?」
友の心を知るために、親愛の一片を得る為に私は問いを投げる。
すると友は何時ものように淡い笑みを浮かべた。
「知られる事が幸せとは限らないよ。そもそも君が私を知ろうとしたところで、知り得るとは限らないだろう?知り得た所で私に何の得がある?何の確証もない。得られず払わされるだけで終わった時、君は私に何を払えるんだい?」
ああ、友はやはり非凡だ。視ているものが違うのだろう。
悔しい。寂しい。何がとは言えないが、この溝が埋められない事実もまた変わらないのだろう。
そんな悲壮な私に気づいたのだろう。
「良いんだよ、君は君のままで。知らない事と知れない事を知ったんだ。その上で友として居てくれるのなら、それが親愛だ。私はそんな君だから友人でいたいと思うんだから」
紅茶は既に冷めているのだろうに。冷えて不味い紅茶を飲む友は、幸せそうに薄笑みを浮かべていた。

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