大人オリジナル小説

二重人格者
日時: 2011/03/02 17:40
名前: 鈴蘭

プロローグ

『キミ』はいつも守ってくれた。
2人で1人だ、とも言ってくれた。
いつも心の中にいるよ、とも言ってくれた。
『キミ』が『オレ』になっている時は『オレ』の記憶が消えてしまう。そんな時『キミ』は『オレ』にあった事を話してくれた。

かけがえのない、友達で、保護者だった。

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Re: 二重人格者 ( No.1 )
日時: 2010/08/03 13:58
名前: 鈴蘭

「キョウ」
大きな鏡の前で俺はキョウの名前を呼ぶ。そうするとキョウは俺の心の中で返事をしてくれる。キョウは姿を俺に見やすいように姿を鏡に映してくれる。
『何ですか、馨』
「ねぇキョウ、俺ねまたモデルの仕事が来たんだよ」
他人から見れば、単なる独り言をしている少年にしか見えない。おかしな光景だ。この光景は前に一度姉に見られてしまった事がある。その時は姉に怒られた。俺は「…お父さんと話してる」って言っただけなのに。
「それでねっマネージャーさんが付く事になったんだ!」
『馨、それは良かったですね』
「うんっ!キョウにも早く見せたいな」
キョウはクスリと笑った。
『楽しみにしています。馨、モデルの仕事は楽しいですか?』
馨は少し悲しそうな顔をし、うつむいた。
「…楽しいよ」
『…馨?何かあったのですか?』
馨は黙ったままだ。
『…馨が言いたくないのであればそれを無理に聞き出そうとはしませんよ』
馨の顔がようやく上がった。
「キョウ…」
馨は申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん…キョウ…俺の口からは言えないや…!」
馨は無理して笑っていた。キョウは馨の事なら何でも分かってしまう。無謀な事だと分かりながら。
『……無理を、しないでください…』
そう言い、キョウは消えていった。

今思えば、とても6歳児の行動では無かった。
キョウの存在が馨を大人にしていた。

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