大人オリジナル小説
- 旅路の果てに何を見る
- 日時: 2018/03/10 14:14
- 名前: 空白魚
初めまして!空白魚(くうはくざかな)と言います!
今作品[たびはて]に興味を持って下さりありがとうございます!
今作品には言わずもがなBL要素が含まれ、グロ要素も含まれます。如何せん私にまともな文才がないものですから読みづらかったり、誤字脱字等の初歩的な間違いがあるかもしれません。申し訳ありません。
文字化けが起こっている場合は削除いたしますのでご了承ください。
だらだらと亀更新ですが、少しでも暇潰しや楽しんでいただける内容になれば良いなと思っております(笑)
エログロ、非社会的表現が多いですので、大変人を選ぶ作品です。
無理だと思ったら閲覧はお控えください(´・ω・`)
私から出せる注意事項はこれくらいです。
以上を踏まえた上で、本編をお楽しみください!
- Re: 旅路の果てに何を見る ( No.2 )
- 日時: 2018/03/10 17:39
- 名前: 空白魚
第二歩「夢と母」
セタは夢を見ていた。それを夢だと思ったのは、とうに亡くなっている母が目の前にいるからで。母は、優しく微笑んでセタの柔らかい蒼髪を撫でていた。男であるにも関わらず肩まで伸ばして結っているのは、母が酷く自分の髪を気に入っていたようだったからで。
母の髪は空のようだったけれど、セタの髪は深い深い海の底の様で、どうにもセタは自分の髪を好きになれなかった。
母の細い指がセタの髪を指に絡めて、スルスルと弄ぶ。セタは泣きそうな心地でそれを見ていた。母は、優しい手付きでセタの目元をなぞり、どうしたの?と問う。セタは、数年ぶりに聞いた優しい母の声に、ああ、まだ私は忘れていなかったのだと、涙を落とす。
もう亡き者。夢の中だとはわかっていても、それでも、セタは子供の様に母に甘えたかった。雨の中で疲労した心を、母に受け止めてもらいたかった。それがわかったのか、ボロボロと23の男が情けなく嗚咽を漏らしても、母はあらあらと笑うだけで、情けないと叱ったりはしなかった。それが、余計にセタの涙腺を緩くする。
それでも、幸せじゃあないとはとても言えなかった。母が病に侵されて、日に日に弱っていく様を見ていた身としては、今こうやって、ふっくらとして柔らかい腕にくるまれている状況が、どれほど夢見た事か。幸せで幸せで、やはり涙は溢れた。
今まで眠ろうものなら、弱る母と、荒れていく父しか見てこなかったのだから。
「母さん、私は、死んだのか?」
「あら、何を言うかと思えば。あなたが死ぬもんですか。私が許さないもの」
カラカラと鈴の様に笑いながら、けれども確かな意思を持って母は強く言い切った。それは、生を終える時まで幼いセタの前では笑っていた母らしくあり、セタは苦笑する。母はセタの背を軽くはたくと、そんな事より、と一転して明るい声で言い放った。
「あなた、とても良い事があったんじゃないの?」
母が少し含み笑いを持たせて言った言葉に、セタは首を傾げた。良い事と言っても。雨に襲われて、挙句倒れて、天使に…。
これだ。
セタは思い出すと途端に顔を赤くして、時折つっかえながらも天使について話す。実際、エリオスは決して天使という種ではないのだが、セタは一目見ただけで、エリオスは天使だと信じてやまなかった。きっとそれは、セタに限らず、エリオスに出会った老若男女全てがそう思うだろう。それ程に、エリオスは現実離れした美しい容姿をしていた。
話していくうちに、母はやがてクスクスと笑うと、ぽつりと溢した。
「セタ。あなたまるで…その天使さんに、恋してるみたいね?」
「え」
セタは緑色の瞳を大きく見開いて、母が言った事の理解へと脳を働かせた。
と、理解すると同時に、世界がぐねりとうねる。母は、少し名残惜しそうにしながらも、真っ赤になって固まったセタに言った。
「後悔しないようにしなさいね。あとは…私も、リュウも、まだあなたを待ってはいないわ」
まだ死んじゃ駄目。暗にそう言い、最後に一撫で、セタの髪をゆりと撫でた。
セタは、ただただ真っ赤になって、うねる世界に身を任せていた。