大人オリジナル小説
- 旅路の果てに何を見る
- 日時: 2018/03/10 14:14
- 名前: 空白魚
初めまして!空白魚(くうはくざかな)と言います!
今作品[たびはて]に興味を持って下さりありがとうございます!
今作品には言わずもがなBL要素が含まれ、グロ要素も含まれます。如何せん私にまともな文才がないものですから読みづらかったり、誤字脱字等の初歩的な間違いがあるかもしれません。申し訳ありません。
文字化けが起こっている場合は削除いたしますのでご了承ください。
だらだらと亀更新ですが、少しでも暇潰しや楽しんでいただける内容になれば良いなと思っております(笑)
エログロ、非社会的表現が多いですので、大変人を選ぶ作品です。
無理だと思ったら閲覧はお控えください(´・ω・`)
私から出せる注意事項はこれくらいです。
以上を踏まえた上で、本編をお楽しみください!
- Re: 旅路の果てに何を見る ( No.1 )
- 日時: 2018/03/10 16:45
- 名前: 空白魚
第一歩「雨と旅人」
その日は、誰もが唸るような大雨だった。大地を責め立てんばかりに降りしきる雨粒は、道行く人々の体力をじわじわと、しかし確実に削っていく。そんな日だった。それは大きな樹木が満ちる森林の中だろうと変わらず。
セタは、べったりと雨に濡れて肌に張り付いたボロくさいマントをずるずると引き摺りながらも、必死に足を前に踏み出していた。
「…っ、なんてことだ。こんな激しい雨になるのであれば、遠回りでも街を通るべきだった」
ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、セタは呟いた。それはここに至るまでに既に三十回程口にしているのだが、それでもまだ言い足りないらしい。哀れな旅人は、数十分前の自分を軽く恨んでいた。
それでも、どれだけ祈ろうとも過去の事は過去に過ぎず、ただ目の前に続く終わりの見えない森を進むしかなかった。
一歩が異常に重く目の前が霞むが、セタは歩みを止めるわけにはいかなかった。この森の中には人喰いの魔物が出るという。そりゃあ、腰に携えた大剣で倒せないほど弱くはないと自負はしているが、それでも、今は体力を消耗したくない。出来る事なら、早くこの森を抜けたかった。何よりも恐ろしいのは、魔物じゃあなく、別のものなのだけれど。
セタが一歩を踏み出した時、ガクリと膝が折れた。まだ歩ける、そう思ってはいても体の方は限界なようで。思うように、足が動かなかった。セタの顔が、焦りに目を見開く。今この場で倒れるのは、決して最適じゃあないとわかっていたからだ。
なんとか前に進もうとばかりにずるずると体をお荷物の様に引き摺っているが、もうじき動けなくなるだろう。小刻みに体が震えていた。寒さに、その唇は青くなってしまっている。やがて、頬が地面に擦りついた。ぎゅう、と体を抱きしめるが、雨水は容赦なくセタの体温も体力も奪っていく。
「……ああ、私は、…ここで…」
死んでしまうのか。そう呟きそうになって、セタは慌ててかぶりを振った。それを認めるのが、とてつもなく恐ろしかったのだ。
赤子の様に、使い物にならないマントと小さなポシェットを抱きしめて、死にたくない、とこぼす。
まだしたい事も、行きたい所も、知りたい事だって。沢山、それこそ山の様にあるのだから。
ああ、嫌なんだ、死ぬのが。私は、死ぬ事が恐ろしい。
セタの頭が、段々とぼんやりしていく。言葉にするなら、眠かった。眠ってはいけないと思うのに、眠気は襲ってくるばかり。
誰か、と口を開いた瞬間に、セタの前にそれは現れた。
カサリと草が揺れて、それがセタの前に足を踏み出す。真っ白な髪は薄暗い森の中でも綺麗に存在を主張していて、その瞳は、まるで鮮血の様に美しい赤。何故かぶかぶかの黒いシャツしか羽織っていないそれは、大胆に晒された太ももから奥はぎりぎりで見えない程度で、ミルクの様に真っ白な肌は、酷く美しかった。
セタは、言葉を失ってそれのあまりの美しさに息を詰まらせる。
腰まで伸びた白髪は、水をキラキラと輝かせていて、それでも激しく風に揺れる事は無かった。
その理由も、すぐにわかる。それの傍では、小さな妖精が驚愕した表情でセタを見ていたからだ。その妖精は風を司る種で、一目見て相当な上級だと思わせた。
それは特に表情を変えず、その真紅の瞳でセタを見詰めた。
「…ぁ、……」
くらり、とセタの視界が激しく揺れる。それの姿が見れないのが勿体無くて、セタは思わず呟いた。
「あなた、は…天使、なのだな……」
無意識にこぼしたそれに、しかしそれに、大きく自分で納得していた。
それは、まさしく天使と表現するに相応しい程に、セタの心を惹きつけてやまなかったのだから。
ほぅ、と息を吐いて、セタはどさりと頬を地面に擦り付けた。それの隣で、妖精はあわわと慌てて見せる。
先程までずっと無表情だったそれも、少しだけ目を見開いてセタに駆け寄った。少し荒いが、息はある。風の妖精が近くに寄ったからだろう、セタを襲っていた強風は、微弱になっていた。雨粒は、あまり変わらなかったけれど。
「エリオス、どうするつもりですの?このままじゃこの人の子は死んでしまいますわ」
風の妖精は、不安げにセタの額を小さな手で撫でた。熱い。熱があるのは確実だった。
エリオスと呼ばれたそれはセタの体を見回すと、大きな大剣を見つけて、さらりと撫でた。真っ白なそれを、華奢な腕が撫でるのはアンバランスに見えるのに、けれどもどこか、そこにいるのに違和感を感じないような。
エリオスは、その体のどこにそんな力があるのか、軽々と大剣を持ち上げると、同じ様にセタを背に担いだ。
風の妖精はあら、と意外そうにエリオスを見やるが、エリオスは特に気にした風もなく、ぼそりと呟いた。
「こいつさっき、私を見て、天使だと言ったんだ」
裸足のまま、その足を踏み出す。世辞にも華奢とは言えないセタを担いでいるというのに、その足取りは少しもブレていなかった。