大人オリジナル小説
- 猫缶 短編集
- 日時: 2020/03/22 22:09
- 名前: 緋猫
短編を書いてみたくなりました。こちらは本当に気が向いた時だけですので不定期です。
TLだったりBLだったり。もしかするとGLが入るかもしれませんがそれはまだ未定です。
気軽に読んでいただければ嬉しいです
目次(NO)
「君のように」>>1-2
「募らせた愛」(レイプ描写有)>>3-4
- Re: 猫缶 短編集 ( No.3 )
- 日時: 2020/03/19 19:47
- 名前: 緋猫
募らせた愛
娘が一人暮らしをするとき親は口うるさく心配をするものだ。
「ちゃんと食べていけるの??」だとか「紫苑ずぼらな方だしちゃんと起きられる??」とか。それはもううるさく耳にタコが出来るほどだ。親の言いたい事も十分に理解出来るがそれにしても過保護すぎだ。私を10歳の小学生だとでも思っているのか。
その結果親と衝突したまま逃げるように引っ越し先に来てしまった。
1年ももうそろそろ過ぎようかという時期、今となってはちょっとぐらい親の話を聞いても良かったかなとも思うが、一人暮らしを止める気はさらさらない。
だが最近困ったことが一つある。
「いい加減にしてよね…」
1人で帰路についているにも関わらず自分の他にもう一つ後をつけているような足音が聞こえてくるのだ。
今日が初めてでは無いので確実に私を付けている人がいるのだろう。人気のない道だからか余計恐怖を覚える。警察に行こうかとも考えたが実害が出ていないので説明もしにくい。大ごとにしたらそれこそ親は実家に強制連行するだろう。こんなよく分からないストーカーのお陰で滅茶苦茶になったらどうしてくれるんだ。と怒りすら覚えた。
(一緒に帰ってくれる友達知り合いなんていないし…ましてや彼氏に頼むのも気がひける…)
一応彼氏についていく形で上京したのだが最近任されているプロジェクトが最終局面を迎えているらしく忙しくてたまらないようで、終電近くで帰っているらしい。こんな時に邪魔になるようなことはしたく無い。
しかしストーカー直接面と向かってやめてくださいと言う勇気もなく、そそくさと早く着けと言わんばかりのスピード家に帰った。
朝はストーカーに会うことはない。今までの経験から分かってはいたがやはり家から出る時は恐る恐る扉を開け、ストーカーが居ないかを確かめる。
だが、ストーカーの顔が分かるわけでもなく、しかも男か女かも分からない時点でもしストーカーがいても分からない。
もしも私の隣をストーカーが歩いていたとしても気づけないだろう。
(なんで私怯えながら生活しなきゃいけないんだろ…)
こんなこと言うのも変かもしれないが朝から晩までつけられることが無いのはとても助かる。
だが安全であるという保証はどこにも無い。実害が出てからでは遅いとは分かっているが、このまま付けられているだけならばそのうち飽きるだろうと考えている安心しきっている自分もいた。
(やっぱり今日もついてきたか……)
雨が降っているので足音はあまり聞こえないが、だが水溜りを踏む音を聞きついてきたと確信した。
(なんで特に美人でも無い私を…恨まれるような事したかな……)
朝は実害が出なければ〜と考えていたが、暗い夜道を1人歩いているとやはり怖くなる。誰かに頼りたいと強く思った時携帯電話が振動した。
緊張の中だったので心臓が止まるかとも思ったが名前を見て頬がほころんだ。
「もしもし…うん。もうちょっとで家に着く」
彼氏からの電話だけで救われた気分になった。話によると休憩時間中に紫苑の声が聴きたくなり特に用事もなくかけたようだった。
やっぱり人と話をしていると気分が癒される。電話に意識を集中させるといつもの寂しい長い道が早く感じられた。
アパートが見えると余計に安心感を覚える。だが、もうそろそろ仕事に戻るという彼氏の言葉にすごく落ち込んだ。
「そんなことがあったんだ、大変だねぇ。あ、そっちも仕事に戻る?そっか…」
人に呼ばれたらしく慌ただしく電話を切る。そんな様子にはぁとため息が漏れた。
(寂しいのに…気がついてくれてるのかな…)
彼に気がついて欲しい。そんな事を考えてしまい、面倒くさい女にはなるまいと頭を左右に振る。
落ち込んだままアパートの階段を登ろうとするとつるんと足を滑らせ視界いっぱいが空になった。
(やっちゃった…そういえば今日雨だったぁ!!)
顔に当たる水滴を感じゆっくりと体が地面に引き寄せられる。全てがスローになったような気がする。
するとぐっと体が支えられた。一瞬他の住民に助けられたかとも思ったが、ここは二階建ての小さなアパートだ。しかも私は1人で歩いていたはず。なので多分。
「あなた…毎晩私のこと…付けてますよね…?」
ほぼほぼ確信したような声で後ろの人に話しかけた。
後ろの人は何か言っているが雨の音のせいかよく聞き取れない。
紫苑はおそるおそる振り返ると嬉しそうな顔で紫苑を見つめるをしている痩せ気味の男がいた。
え…なんで…なぜ笑っている……?と男性の表情の意味がわからなくなった。
だがまず支えてもらっているのは怖いので今よりも一段上に上がった。だがいきなり足にきた激痛に顔をしかめた。どうやら滑らせた時に変な角度に捻ってしまったらしい。いきなりの事でストーカー(仮)の目の前で女の子らしくない声を上げて痛がった。
「大丈夫!?紫苑足怪我したの??」
立っているのも辛く、中腰になっているとストーカー(仮)は慌てた様子でこちらに詰め寄り足を触った。
「やめてください…よっ!!」
(触られただけで痛いんだから!!!!)
靴を脱がしタイツ越しに捻ったところを触った。
「イッッ…た…ぁ!痛いです!!本当にやめてくださいってば!!…ッぅ…!!」
叫ばれるのは流石にまずいのか紫苑の口にハンカチで猿ぐつわをした。
それも笑顔のままだ。このままではまずいと携帯電話を探すが転んだ拍子にどこかに飛んで行ってしまったようだった。
猿ぐつわをし終えると外されないように手をまとめ上げた。
押さえつけられているので手は使えないが、足は使えると雨がざんざん振る中紫苑はくぐもった声を上げ抵抗し水しぶきを上げる。足をばたつかせていると笑顔のままこちらの顔を除き込んだ。
ストーカーの笑顔に恐怖を覚えびくりとしたとたん余計に恍惚とした表情で紫苑を見つめる。
「は…はゃしへふはひゃい…!!!!」
ぞわぞわと悪い予感ばかりがこみ上げてきて涙を流しながら叫んだ。
その瞬間最初から近かったストーカーの顔が視界いっぱいに広がった。
「ひッ…ぅ…ひひゃ…!!!」
キスだと理解るのには少し時間が必要だった。だって唇にあるのは布の感触だけで布越しに唇が当たっているのだから。
「ち……ぅ…ん…」
唇を吸ったりちろちろと舐めたり嫌だ嫌だと体で抵抗するも押し付けられているので意味がない。息苦しいのでぼーっとしてくる。
ずっとずっとずっと15分…いやそれ以上か。唇を塞がれ続け体に力が入らなくなったのを感じるとストーカーはやっと顔を紫苑から離した。唇を完全に付けたわけでは無いと知っていても、切れる銀の糸を見ると彼氏に対して申し訳なさが溢れた。
「さて、それじゃあ立ってね」
ストーカーは自分が立つと紫苑の手を引き立たせた。
「ッぅ…いひゃ……」
足の痛みで意識を覚醒させる。だが、長いキスのせいで腰がくだけてしまって抵抗したくても出来ない。
そんな紫苑の様子をみたストーカーは嬉しくてたまらないような笑顔だった。
介護を受ける老人のようにストーカーに引っ張られながら自分の家の前に着くと、紫苑のカバンから鼻歌を歌いながら自分の家の鍵のように取り出し紫苑を部屋に引き入れた。