大人オリジナル小説
- 猫缶 短編集
- 日時: 2020/03/22 22:09
- 名前: 緋猫
短編を書いてみたくなりました。こちらは本当に気が向いた時だけですので不定期です。
TLだったりBLだったり。もしかするとGLが入るかもしれませんがそれはまだ未定です。
気軽に読んでいただければ嬉しいです
目次(NO)
「君のように」>>1-2
「募らせた愛」(レイプ描写有)>>3-4
- Re: 猫缶 ( No.1 )
- 日時: 2020/03/12 12:16
- 名前: 緋猫
君のように
高校2年生の春 小さい頃高校生ってもっときらきらしていて大人だと思っていた。だが今思えば高校生なんてただ年だけ重ねて勉強を頭に入れた小学生と一緒だ。というか小学6年生の方がしっかりしていた気がする。私はいつ大人になったと実感できるのだろう。
「________虚…だから…-√……おい…凛!」
「...…えっ!はい!」
突然自分の名前が呼ばれたため、なにも考えずに反射神経だけで立ってしまった。
いきなり立ち上がったことで皆の視線が一気に私に集まる。
「おい…授業中にぼーっとするな…よし凛立ったついでだこの問題解いてみろ。」
数学の先生に名指しされ答えざるおえなくなってしまった。
黒板には虚数やら実数やらiやらが書かれてあり、なにも聞いてなかった凛としてはただ悩むふりをした後これ以上恥を重さねないためにもただ頭を下げるしかなかった。
「りん〜新学期初めての授業だってのにぼーっとしちゃって…どした?まだ眠い?」
授業が終わり休み時間になった途端友達が駆け寄ってきた。彼女は去年も同じクラスだった千佳。一緒のクラスになった途端に意気投合した唯一の友達だ。友達作りが下手なわけではないが千佳以上に話が合う人もいなかった。
「春眠暁を覚えず〜ってやつかな。」
「最近知った言葉をよくも知らないで使わないほうがいいと思うよ。今時誰も使わないし馬鹿に見える。」
馬鹿という言葉にバキュンと心臓を早打ちされたような感じでがっくりとうなだれた。
「どした?そんなに落ち込んで。ちょっと抜けてるところが凛の良いところなんだから。」
「良いところでも馬鹿は嫌なの……ッ!」
悪気はないのだろうが今のの凛にとっては傷跡に塩を塗り込むような行為だった。
うーうーと唸り声をあげて否定する
「あっ…もしかして去年同じクラスだった湊人くんのこと気になってるの?」
『湊人』その名前を聞いた途端今まで呻いていた凛がピタリと止まった
「あっ図星?」
なんでこんなにわかりやすいんだと笑いながら話す千佳を憎らしそうに睨む
湊人というのはマンションの部屋が凛と隣同士で小さな頃から遊んでいたいわば幼馴染という存在。小学生の時などは親同士の交流などで遊ぶ機会があったが中学に入ると挨拶する程度に高校に入ってからは話もしなくなってしまった。
いや一回だけ入学式の時に同じクラスだと知り小さな頃みたいに仲良くなれるだろうかと話しかけたことがあった。それはもう自然に。だが話しかけた凛に顔も向けずに無視をした。その瞬間ああもう仲良くはなれないのかなと落ち込んだ。だが凛は何か行事がある度に湊人を目で探してしまっていた。体育祭ではどの競技に出るのかなや文化祭で働いている姿が見たいなとか
来年も同じクラスだったら良いなとか。
だが湊人は2年生で特進科に進んでしまうという話を噂で聞いた。特進科とは一流大学に進むため勉強に力を入れているクラスだ。特進科に進むと朝早くから学校で勉強会をして夜は各自自主学習というハードスケジュールだ。湊人は頭がいいのは知っていたがまさか特進科に進むとは思っていなかった凛はこれ以上仲良くはなれないとわかっていながらも落ち込んだ。
だが特進科に進んだ湊人に負けてはいられないと凛は自主学習を始めてみたり難しいことを考えてみるようになった。
「あれ…もしかして数学の時間ぼーとしてたのって湊人くんの事考えていたから?」
「違う…うう…これ以上言わないで…!!!!」
湊人に負けないように難しいことを考えてみたなんて言えずにううううっと休み時間中は呻き続けた。
授業が終わりあとは帰るだけになった凛は千佳を遊びに誘おうかとも思ったが千佳は他校の彼氏と約束しているとかで断られてしまった。よくいう制服デートというやつだ。
千佳は凛よりもずっとただデートに行っただけでとても大人に見えた。
やっぱり大人っぽい人は違うなとか思って彼氏と彼女のデートを想像すると相手はいなくてもとても素敵なものに見える。
自分だったら誰と付き合うのかなと少し周りの男子ともしも付き合ったらと考えているといつのまにか湊人のことを考えていることに気づき頭を振って否定した。
(あああ…湊人でこんな妄想するなんて…こういう一人で考えるのが頭がいいってわけではないか…)
学校でこんなことを妄想してしまった恥ずかしさで凛はそそくさと帰り支度をする。
一回湊人の顔が出てくると頭から消すことも難しいわけで湊人に学校で会えたらあいさつくらいはできるかなと少しだけにこにこ帰路につく。
マンションのエレベーターの到着を待ちながら親の勤務体制を思い出す。
(今日はお母さん夜勤だからお父さんのご飯かな。お皿洗いくらいは手伝おう。)
お父さんのTHE男の料理をドヤ顔で出すところを想像すると少し笑えてくる。
(あっ来た。)
エレベーターに乗り自分の住む階のボタンを押し扉が閉じると思った時にガンっと手が出てきて、扉が開いた。とびらをあけたのは他の誰でもない湊人だった。
今凛はマンションのエレベーターで汗をだらだらと流しながらただボタンの方を見ていた
(っていうか…湊人ッ!?なんでいるの…なんで今乗っちゃったのかな…!)
学校で妄想した彼氏と彼女のような関係の湊人と凛という状況が頭にふと浮かびわかりやすく真っ赤になった。
だが乗った後も湊人は無言で背を向けている凛としてはどんな顔をしているのかはわからない。
そんな状況で頭の中でもきゃあきゃあ言えるわけもなくだんだん湊人が見ている気がしてどんどん背中を丸めた。
(だ…だけど…挨拶もしなかったらもっとおかしいよね…だよね…っ!)
そう考えると一応幼馴染がこの状況で話もしないのはおかしいよねと自分の調子のいいように考えた。
「こんばんは湊人…さん…」
へらっと後ろを振り向きどきっと胸がなった。湊人は腕を組みこちらを見ていたのだ。
「…………」
沈黙で突き刺さる視線がとても痛い。なんで挨拶なんてしたんだいや挨拶したことには公開はしていないが。どうか一言でもいいから喋ってくれと湊人に願った。
「こんばんは。“凛”」
湊人声で自分の名前を呼ばれた凛はばっと湊人をみて心の底から嬉しそうに笑った。
「名前覚えててくれてたんだ…嬉しい…」
へへへと笑う凛ははっと顔をぐしゃぐしゃと触って馬鹿みたいな顔を見せないように努めた。
名前を呼ばれただけでここまで嬉しいなんて予想していなかった凛はいくらマッサージしても抜けきらない笑みにこまり、湊人に背中を向けた。
「凛何してるの?」
いきなり変な行動に出て後ろを向いた凛の顔を覗き込んできた。
「うわっ!…え…う……」
さっきみたいな幸せな感じの心があったかくなるような感じではなく、心臓が爆発しそうな感覚に目が合った瞬間凛は一気に顔を赤らめた
目を見開き真っ赤になりながら固まる凛に湊人もどう接すれば良いのかわからずに固まってしまった。
目的地に着いたことは湊人に降りてと肩を叩かれたことで気がついた。そんな自分が恥ずかしく、逃げ出してしまいたかったが、ここでなにか共通の話題でも作らないと一生話せない気がして先に行ってしまった湊人を引き止めた。
「あの…勉強を教えてもらえませんか……?」
「……。わかった。じゃあ家に来て。」
凛の方向を見て少し考える様子をみせた湊人に迷惑だっただろうかと-のことばっかり考えてしまい勝手に1人で落ち込んでくる。だが次の言葉を聞き飛び上がって喜びたい気持ちを抑えありがとうと良いなるべくお淑やかに後ろをついていった。
「ここは-だから虚数になるからI は二乗しても+にならない。これさえ覚えれば後は1年の時に習ったことを使えば解けるよ。」
おお…っと目を輝かせたがそんなのもバカみたいなのかなと思い落ち着いて解いてみる。
「えっとここはこうでしょ〜ふふん1年に習ったことくらいならできるよ〜」
1年くらいのだったらしっかり解いて馬鹿じゃないことをアピールしようと思ったが、
「間違えてるけど。」
「っえ!?どこ!?」
湊人の書いた例を参考にして書いたはずなのに違うなんて…と頭の残念さに落ち込んでしまった。
それから基礎からちゃんと教えて貰ったが、自分のできると思ってた問題の不正解が続きこんな馬鹿な姿を晒すことになるなら教えてなんて言わなければよかったと後悔した。
「でもここはちゃんと合ってる。えらいえらい。」
頭を撫でられた感触とちゃんと解けてた嬉しさにまた頬が緩む。
「やった…!本当に解けてる…っ…!」
手を出して解けた嬉しさから両手で手をぱちぱちと叩く幼い頃からの癖が出て手を引っ込めようとした。
「その癖まだ残ってたんだ。」
頭を尚も優しく撫でながら湊人は優しく微笑んだ。
(笑った顔久しぶりに見た…)
小さな頃はよく泣いたり笑ったり怒ったりしていたが中学生にも上がる頃には笑うこともなく無表情でいることが多くなった。
そんな顔に懐かしさを覚えて撫でている手に頭を擦り寄せた。
「そんなに気持ちい?頭撫でられるの。」
髪を指で梳くように撫でられて気持ちよさそうに目を瞑ってこくんと頷いた。
「そんな無防備な顔しないでよ。今目を開けないと家に返さないよ?」
だがそんな忠告は湊人を安心しきって眠そうになっている凛には聞こえない。