大人オリジナル小説
- サイキック!
- 日時: 2020/06/06 22:34
- 名前: 宇目崎 ◆HvKWmbrNOQ
宇目崎(うめざき)と申します。よろしくお願いします。
気合を入れて、最後まで書いていきたいです。何があっても最後まで書ききるつもりでいるので、皆様どうかお付き合いのほどよろしくお願いします。
この小説は不定期ながら月1〜2更新を目指しています。更新する曜日は日〜水曜日の間が多いかと思います。
目次は親記事ではなく>>1に貼っております。
※複ファにて連載していましたが、事情により此方の方へ移動しました。
《注意》
・グロ、流血、性的、暴力表現含
・ジャンルは異能寄りです
□目次【>>1】
■2019/08/26 スレ立て
- Re: サイキック! ( No.6 )
- 日時: 2019/08/27 12:33
- 名前: 宇目崎 ◆HvKWmbrNOQ
〈01/3〉
――眩しい。八日城はパチッと目を開けた。窓から空を見上げると、昨日の大雨が嘘のように晴れていた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。事務所の電話を借りて、学校に長期間休むことを伝えたまでは記憶にある。
八日城は上体を起こし、辺りを見回す。昨日と何ら変わりない。物が乱れている様子も無い。天知は既に目を覚ましているのか、姿が見当たらない。八日城はソファーで寝ていたせいか、バキバキと体が痛んでいた。
「......は、もう九時......」
ふと時計を見ると、針は直角になっている。八日城は寝惚け眼を擦り痛む体に鞭打てば、ソファーから立ち上がった。今日は平日、普通ならば登校すべき時間だ。しかし、八日城は学校から休む許可を得ている。少しくらい寝坊したところで、何の問題もない。
「......ようやくお目覚めか、この寝坊助が」
「あ、天知さん! ......って。天知さんも起きたばかりでしょう、それ。頭どうしたんですか?」
「うるせー。三時まで起きてたんだから仕方ないだろ」
八日城が後ろを振り返ると、呆れ気味な眼差しを向ける天知が居た。天知はいつものマグカップを持って、定位置へ座る。マグカップの中身は熱々の珈琲だ。天知はズズズと珈琲を啜り飲みながら、八日城に向かって軽く悪態を付く。
しかし天知も人のことを言える立場ではない。いつも以上にボサボサの髪の毛。眠たそうな目付き。八日城にそれを指摘されれば、ぷいっと顔を逸らして溜め息を吐いた。
「なんで三時まで起きてるんですか......」
「......準備だよ、お前がさっさと寝るから一人で全部したってわけだ。ったく」
より一層深い溜め息を溢す天知に、八日城は首を傾げる。数秒して「あー」と曖昧な返事を返すと、意味が分かったように数回頷いた。そういえば、電話をしたあの後は事務所に泊まるという話をした気がする。別世界に行くための準備がかかるから、二人がかりで作業すると言う話だったか。八日城は「すみません、眠たかったのでつい」と頬を掻いて笑い、誤魔化した。
「では、後は身支度するだけですね」
「......ああ、顔洗ってこい。飯は向こうでも食べられる」
天知は珈琲を飲み干すと、洗面所の方を指さしながらそう言った。八日城が洗面所の方へ消える。
天知はそれをちらと見つつ、懐から写真を取り出す。くしゃくしゃに皺が寄ってしまっていた。やはり、写真に撮された人物は顔だけくり貫かれていた。気持ちが悪い。一人で見ているとじわじわと鳥肌がたってくる気さえする。
「天知さーん、終わりましたよ」
八日城が戻ってきた。顔を洗ったからか、先程よりも血色が良いように見える。八日城は口角を上げて天知に近づくが、天知が持っているそれに気付けば分かりやすく眉を寄せた。天知は顔を顰める彼女に「しまえば良いんだろ」と呟きつつ、写真を懐に収める。長いこと写真を眺めていたらしい。近付いてきた八日城は洗顔ついでに新たな学生服に着替えていた。
天知は立ち上がると、地下へと通じる階段に体を向けた。
「じゃ、早速行くか」
「え? そのボサボサな頭で......ちょっとぐらい櫛でとかしましょうよ。ほら、こっちに来て」
やる気十分な様子の天知の言葉。背を向ける天知に八日城はポカンとすると、苦笑しながらそう述べた。天知はムッとした表情を浮かべて、手招きする八日城を軽く睨め付ける。だが、すぐにチッと舌打ちすると八日城の傍に歩み寄った。子供みたいで分かりやすい。八日城は突っ込まれない程度にフフフと笑った。
天知の髪は癖が付きやすい癖毛だ。手櫛で櫛るだけでも、しょっちゅう指に引っ掛かってしまうほどだ。櫛の隙間に絡まった髪が引っ掛かった時、櫛ごと無理矢理引っ張ると彼女は痛がる。それを承知して、丁寧な手つきで櫛を動かした。
十数分、天知の寝癖と格闘する。
寝癖は多少落ち着いたが、これ以上はヘアアイロンを使わないと厳しいだろう。八日城は「終わりましたよ」と天知の肩を叩けば、櫛を片付けた。
「......あんま変わってなくないか?」
「いえいえ、マシになってますから」
「そーいうもんかなぁ」
天知は毛先を掬いながらぼやいた。