大人オリジナル小説
- 肉まんの味
- 日時: 2019/09/16 23:54
- 名前: 南雲
雪の降る季節、クリスマスは彼女と過ごしたくて周囲の誘いを端から断っていたのに、当日の朝彼女から別れを切り出された。
クリスマスなんて最悪の日だ。
彼女に振られて納得のいかないまま別れて、やきもきするし周りでイチャつくカップルに腹立たしく思う。
それなのに人混みの中に居たくて、大きなクリスマスツリーの鉢に見立てた石段に腰掛けて、ちらほらと降り始めた白い埃と水分の塊を見ていた。
「あれ?…まあ、いいや。ねえねえ!肉まん、食べる?」
「……は?」
そんな時に俺は彼と出会った。
- Re: 肉まんの味 ( No.3 )
- 日時: 2019/09/22 08:34
- 名前: 南雲
分け合って食べた肉まんは冷たかったけど美味しかった。
その後二人で楽しく会話しながらバーで呑んで泥酔並みになってしまった彼を背中におぶってホテルに入った。ラブホじゃなくて普通のホテル。
流石に男二人では入りにくいラブホはやめた。
だが予想外だったのが二つ。一つは彼と話してても悪い気はせず普通に楽しい、もう一つは彼が潰れるほど酒を飲んだこと。お酒には弱いみたいだが、これからヤるってことをもう忘れてんじゃないかってぐらいで。
ホテルの部屋に着くなり彼はベッドにうつ伏せで倒れた。俺は軽くシャワーを浴びてバスローブを着てから出てきたら、入る前と同じ体制でベッドに居た。
あれ、これ寝てるんじゃないか?
挿れられる方だって自覚したら寝たふりでもして誤魔化そうとしてるのか?このまま朝まで?いやいや、冗談じゃない。
なんだかんだ言ってヤれそうだなって思ったから一緒に居たわけだし俺の我慢、限界だから。
この際なんでもいいよ、一発ヤらせてくれたら。一人で処理は虚しいからやりたくないだけだし。
俺がベッドに膝をついて彼の隣に転がり耳元で優しく甘く声をかけてみる。
「ねえ、寝たの?」
「…んー…」
「起きて、俺を一人にしないで?」
「……あ、つい…」
「ん?なに?」
「あーつい、あつい」
うつ伏せの背中に覆いかぶされば顔を動かしてモゴモゴと喋り出した。どうやら本当に寝ていたようで、酔ったことで体が熱くなって密着されると嫌なのか俺が上から退くとすぐに上体を上げて服を脱ぎ始める。
通常は酔っ払いの行動だと思うが、俺をヤリモクで誘ってきたなら寝起き早々お相手ができる切り替えの早い人ということになる。数時間前に初めて会ったばかりで会話はしたけど、行動の読めない人だ。
顔から首や鎖骨まで真っ赤ではだけたシャツから覗く肌は白いが程よく筋肉がついていた。下はベルトだけ外すと今度は背中からベッドに倒れた。小さな寝息が聞こえ、規則正しく胸が上下する。頭の先から爪先まで、まるで芸術品を見ているかのような美しさ。ニット帽で覆っていた髪はサラサラの茶髪。
喉が鳴った音にハッとして自分の下半身を見れば少し立ち上がっていた。頭を抱える。初めて男で欲情したのに軽くショックを受ける、だがこれも彼女と別れたことの不満が大きかったせいだろうと思い込むことにした。
初めにちょっかいをかけてきたこの人が悪いのだ。所詮カラダだけの関係で、この一晩の関係なのだ。寝ていたでスルーなんて許さない。
俺は彼の腹の部分に跨って、顔の横に両手をついて首筋にキスを落とした。