大人オリジナル小説

肉まんの味
日時: 2019/09/16 23:54
名前: 南雲

雪の降る季節、クリスマスは彼女と過ごしたくて周囲の誘いを端から断っていたのに、当日の朝彼女から別れを切り出された。

クリスマスなんて最悪の日だ。

彼女に振られて納得のいかないまま別れて、やきもきするし周りでイチャつくカップルに腹立たしく思う。
それなのに人混みの中に居たくて、大きなクリスマスツリーの鉢に見立てた石段に腰掛けて、ちらほらと降り始めた白い埃と水分の塊を見ていた。

「あれ?…まあ、いいや。ねえねえ!肉まん、食べる?」
「……は?」

そんな時に俺は彼と出会った。

Page:1 2 3 4



Re: 肉まんの味 ( No.1 )
日時: 2019/09/21 12:36
名前: 南雲

突然聞こえてきた「あれ?」と言う声に見上げていた視線を落とせば、目の前にはニット帽とマスクで覆った顔に厚めで高そうなコートを羽織った青年が小さめのビニール袋を片手に持って立っていた。
俺とバッチリ目が合って丸くなる目。

初対面の人に驚かれても反応に困る、心が少し落ち着いてきたのにまた怒りが募ってくるのを感じて視線を逸らせば、何を思ったのかその人は俺の隣に座ってきてビニール袋から紙袋に包まれたものを目の前に見せてきた。

「肉まん、食べる?」
「……は?」
「こんな寒い日にはさ、あたたかいものが食べたくなるよね」

寒いのかピッタリと密着して話す声は低めのハスキーボイスで、近くで聞かないと上手く聞き取れる自信が無いけど落ち着く声だった。
ずっと湯気の立つ肉まんを片手で持っていたから「あつ、熱いっ…食べないの?」と手の上で肉まんを踊らせながら困ったように言ってくる。
変な人には絡まない方が吉だと考え、ひと席分ズレて距離を置きながら答える。

「結構です」
「お腹すいてない?肉アレルギーとか?にんにくがダメ?アンパンが良かった?」

わざと開けた席をすぐに詰めてきて、またピッタリ隣にくっつくその人は質問攻めをしてきた。初対面の相手に慣れ親しくするこの人を睨みつけながら言う。

「貴方なんなんですか?さっきから。迷惑なんで俺に構わないでもらえますか」
「…」

俺の発言に俺を見つめたまま固まるその人は眉を少しだけ下げてしゅんとした。少し言い過ぎたかな?なんて思うけど事実を取り消したら状況は変わらないだろうと思い、その人を見つめ返す。
澄んだ黒い瞳で三白眼よりの目元と大体の顔の輪郭しか見えないけれど小顔で顔が整っている人だと思った。まあ、マスクでいくらでも誤魔化せられるけど。

Page:1 2 3 4



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。