大人オリジナル小説

肉まんの味
日時: 2019/09/16 23:54
名前: 南雲

雪の降る季節、クリスマスは彼女と過ごしたくて周囲の誘いを端から断っていたのに、当日の朝彼女から別れを切り出された。

クリスマスなんて最悪の日だ。

彼女に振られて納得のいかないまま別れて、やきもきするし周りでイチャつくカップルに腹立たしく思う。
それなのに人混みの中に居たくて、大きなクリスマスツリーの鉢に見立てた石段に腰掛けて、ちらほらと降り始めた白い埃と水分の塊を見ていた。

「あれ?…まあ、いいや。ねえねえ!肉まん、食べる?」
「……は?」

そんな時に俺は彼と出会った。

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Re: 肉まんの味 ( No.2 )
日時: 2019/09/22 07:30
名前: 南雲

数秒見つめ合った後、真剣な目つきになったその人は俺に寄りかかっていたのをやめて両手で持った肉まんを見つめながら言った。

「…なんだか、寂しそうに見えたから」
「…えっ?」
「なにかあったのかなー?なんて…」
「……」

そんな顔に出ていたのか?他人に心配されるような顔してたのか?

「なーんてねっ!冗談だよ!オレが寂しかっただけー!クリスマスに一人なんて嫌だよー」
「……」

ちょった真剣に考えたのに、パッと明るい顔で目を細めたその人は、俺に抱き着いてきてまるで愛犬や子供を相手にするように俺の肩に頭を擦り付けてきた。
まんまと引っかかってからかわれたことにムッとしたがとても悪い妙案を思いつき、俺は提案してみた。

「それなら、今日は俺と一緒に居ますか?」

なんて、悪ふざけで言った言葉に俺の肩から頭を離したその人は何故か少し潤んでいた瞳を細めて頷いた。

「うん!あ、一緒に居るなら、はい。この肉まんはお兄さんのねっ」
「一緒に食べましょうよ、半分こして、はい。」
「うわぁ!ありがとう!」

こんな路上で他人をからかって自分に堕ちるように体をくっつけてきて誘うなんて、上手いハニートラップだな。でも有名人でもない俺を引っ掛けてくるんだから、ただのヤリモクのゲイなのかな?
だったら丁度いいから相手をしてもらおう!不満をぶつけるだけでも大丈夫そうだし。

そう思いながら、受け取った肉まんを二つに手で分けて半分を彼に渡す。
嬉しそうにお礼を言って両手で半分にした肉まんを受け取った彼はマスクを外す。

高い鼻に薄い唇、荒れてない綺麗な肌は頬の部分が寒さで少し赤らんでいて、肉まんを食べる時に開けた口から覗く白い歯と赤い舌、全てが完成された整った顔立ちをしていた。まるでマンガから出てきた王子様のような顔立ち、美しくて驚いて、思わず唾を飲み込む音で彼と同じところに自分は存在していること確かめた。

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