大人オリジナル小説
- 罠にハマったのはどちら
- 日時： 2020/07/22 23:00
- 名前： トリ
非常にマズイ……
目の前に料理があってそれを食べて美味しくなかったから「マズイ」っていう、そっちの意味じゃない。
どうすれば逃げられるだろうか、自分の逃げたくても逃げられないという状況に危機感をおぼえている方の「マズイ」である。
事の始まりを説明しようーー
《注意》
・ほのぼの系ストーリー重視(主が恋愛もの苦手なのでギャグ多めです)
・性的表現、多少の暴力、レイプやら追い込まれる系の事があります
・誤字脱字があったらご了承ください
《登場人物と設定》
“まちや”と言う所謂便利屋稼業を営むイチとロキとユウ、軽い仕事から裏仕事にまつわるちょっとした事まで、報酬金と内容によって依頼を受ける彼らはプライベートでは血の繋がりは無くとも家族のような関係である。そんな彼らの日常のはなし。
・イチ:主に依頼人との会話や報酬金の受け取り、乗り物の操縦を担当する交渉人。最年長だがプライベートは声を荒らげて怒ったり年下には負けないと突っかかってきたり冗談の好きな子供らしいところがある。
・ロキ:受けた依頼によって金額の査定から情報収集を担当する技術人。基本的にクールでイチには毒舌。家や建物から出ないインドア体質で外に出ても太陽には当たりたがらない、やることが無ければ寝る。逆にやることがあれば睡眠を削るという生活習慣の悪さ。
・ユウ:22歳で最年少の彼は芝居の上手さと生まれ持った容姿の良さから囮役や詐欺紛いなことでターゲットに接触を謀る参考人でロキとは違い、街を歩くことで情報を集める。プライベートでは子供の頃に受けた愛情をスキンシップで返す、お菓子やゲームの好きな幼心の残る少年のような彼。
・ジーク:ユウを誘き出すための餌(仕事)をまき、ユウを拉致することに成功する。そして、監禁部屋にて「三年前にコンビニで買い物をしたユウに一目惚れした」と語る男。20歳で童顔なのに身体はムキムキマッチョ！？
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- Re: 罠にハマったのはお前 ( No.10 )
- 日時： 2019/11/18 14:18
- 名前： トリ
そして目が覚めた時には、外の状況がわからないような窓一つ無い、電気一つのあかりで照らされた密閉空間、セミダブルのふかふかベッドに仰向けで寝ていて、隣には丸形のサイドテーブル。足は自由だったが右手と左手はそれぞれベッドの頭端に繋がれている、漫画で見る奴隷なんかがつけているような本物そっくりの枷が手首につけられている。外せないか揺らしてみるがガシャガシャと金属の擦れる音がするだけで、本物そっくりのソレは手錠とは違って手首を傷つけない仕組み。
状況を把握出来てきたころ、声が聞こえた。たった一つの出入口となる扉が開いて男が入って来る。
紙束を数えるように左手から右手へ移しながらブツブツ言って近づいてくる。男の背後で扉は重苦しく遅い動きでガチャッと音を立てて閉まった。
「ミキ、ユージン、サラ、ネッタビア、ゴルコ、フレック、ディーン……」
言い終えると男は持っていた紙を後ろへ放ってベッドに手をつき、顔を近づける。
「さて、本名はなんですか？」
整った顔立ちで妖しく笑みを浮かべる男は、ユウの追っていたターゲットでは無かった。怪しくなって眉を寄せる。
「オマエ、だれ…？」
「俺の質問に答えてくださいよ」
男はユウの言葉が予想済みであったかのように呆れたといった薄笑いをしてユウの腰辺りに跨る。顔を挟むようにベッドに手を付いて顔を近づける。
「自分の状況が理解出来ていないみたいですねっ」
と丸い目を細めて楽しそうに笑う。それを無表情で見つめる。男の目的はなんだ？そもそも彼は誰なのだ、静かに見定める。
「俺の名前、ジークって言います、20歳です」
「……何が目的？」
「うーん、アナタの……情報が欲しい」
「情報、ね」
ジークと名乗った男は一旦顔を離すとユウの腹に両手をあてて撫で回す。ジークの読めない行動に疑問を抱きつつ無駄な抵抗はしない。出来るだけ相手の情報を細かく引き出して得ることが重要だ。
情報が欲しいと言われても仕事柄、個人情報は守らなければならないし、自分達の身を守ることに関しても最低限の情報しか吐くことは出来ない。
「お仕事は、何でも屋みたいな感じですか？」
「うん」
「へえ、依頼すればなんでもしてくれるんですか？例えばヤク運びとか密売やら殺しとか」
「そういうのは受け付けてない」
「そうなんだ、なら売春とかも？」
「はあ…してな、ちょちょっと！なに、なん？！」
受け答えをしているとジークは服の中に手を入れてきて、そのまま肌を撫で回す。冷たい指先が肌に触れて驚くしゾワゾワする感覚に身体が強ばり首を上げては「なんなんだ」と声をあげるとジークは、ふふっと笑って「敏感なんですね」なんて言って質問を続けるからムッとして意識を逸らす。
「お仲間は何人いるんですか？」
「一人でやってる」
「そんなにうまく行きますかね？男だけ？女もいるんですか？」
「だから一人だって、んっ、さわんな」
胸を優しく撫でたあと乳首を弾いて摘んだりこねくり回したりするから、もどかしい刺激に命令口調になってしまう。乳首から手を離すとジークは首筋に顔を埋めて、耳に生暖かいものが触れる。
「うぅわぁー、なにしてんの」
ぴちゃぴちゃと気持ちの悪い水分を含む音が耳を占領して、嫌な気持ち。耳から首筋、鎖骨へと舌を這わせながら、チュッチュと口付ける音が聞こえる、それと共に時折ピリッとした痛みが来ることに痕がついてるかもしれないと思う。
もうユウにはジークの考えることが何一つ理解出来なかった。こんなことをしてる場合にターゲットは、なんて考えているとジークが思い出したように言った。
「あー、やっぱり女性を使うのって効果的なんですね」
「……なんのこと」
「あれ、わかりませんか？丁度一週間前ぐらいかな？女性が依頼に来ませんでしたか？」
わざとゆっくり喋るジークは「レイプされた、襲ってきた男に、警察には言わず自らの手で復讐がしたいって」と続けた。イチから聞いた内容とほとんど一致で「なぜこの男が知っているのか」と思わず息を潜める。
ユウの顔色を伺ったジークはユウの前髪を優しくかきあげて額に唇を寄せキスをする。
まるで愛おしいものを見つめるような情熱的な瞳でユウを見下ろして頭を撫でながら言った。
「アレ、全部ウソですよ、アナタが追っていたのもただの中年男性、俺が数日間手伝ってほしいって言ったら快く引き受けてくれました」
ニッコリと口に弧を描いて笑うジーク。
「な、なんのために」
まんまと、ジークの仕掛けた罠にはまってしまったのかと思い、背筋が凍る。ターゲットなどそもそも居なくて、依頼者も襲われてなんかなくて、それなら自分は何をしていたんだろうか、目の前の男の掌で踊っていただけ……？
ユウの“情報が欲しい”と言ったジークと、最近あとをつけられていたことの点と点が線で結ばれたように思った。
「アナタを呼び出して、こうするため」
誉めてっと言うような笑顔を振る舞われて血の気が引いていくのを感じた。
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