大人オリジナル小説

生きる許可が欲しい (BL)
日時: 2021/12/09 23:44
名前: 佐藤さん

これは、病み気味の年下の男の子と、少し煩い元気な年上の男の子の、初々しい恋愛物語(になる予定)です。

注意、
この小説には、
自傷行為、暴力・流血表現 等の要素が含まれているので、苦手な方は閲覧を控えるようにしてください。

更新ペースは遅いと思われますが、どうか暖かい目で見守ってやって下さい。

12/09 ※追記
過去の文を読み返していると、様々な矛盾点や誤字、納得のいかない表現などを、発見しました。(><;)ヒェェ
そういったのを見つけた場合、予告なく修正します。なので、文章の内容などが変わっていることがあるので、予め御了承ください。
お見苦しい文で申し訳ないです…

Page:1 2 3 4 5 6



生きる許可が欲しい かもめside ( No.5 )
日時: 2021/12/10 01:15
名前: 佐藤さん

「……っい、いやっ 痛いっ……いや、やだぁ……!」
「っうるさい!アンタがちゃんと『仕事』をやらなかったから、今こうなってるんでしょ!?」
「あ゙ぅっ…!ごっ、ごめんなさっ…ごめんなさいぃっ……!」
美里さんは、俺の前髪を強く掴んで、鼓膜が破れてしまいそうなくらいの声で怒鳴り散らす。髪の毛を引っ張る力があまりにも強いので、思わず小さな悲鳴が出てしまう。
「……はぁ。そこまでにしとけ、美里。使いもんにならなくなってしまう。」
「あら、いけない。私ったら…でも、もう少し躾が必要だと思うのだけれど……恭太さんの言う通りね。ごめんなさい。」
恭太さんの言葉を聞いて、美里さんは俺の髪の毛から手を離す。少し体が持ち上げられていた状態だった俺は、解放された瞬間、体を床に強く打ちつけてしまった。
美里さんの顔が怖くて、頭が痛くて、俺はただ静かに泣き続ける。必死に涙を拭っていると、突然恭太さんの声がした。
「かもめくん。俺と美里さんは、かもめくんに期待してるんだよ。でも、その期待を裏切られてしまったから、美里さんは怒ったんだ。わかるだろ?」
うつむいたままでいると、その声が段々と近くなってくるのがわかった。うんと低く、俺を脅しているかのようなその声が怖くて、恭太さんの顔を見ることができない。何も言えずにいると、俺の頭に、ぽん、と恭太さんの手が乗るのを感じた。そして、妙にしっとりとした手つきで俺の頭を撫でる。
「……今回は初めてだったもんな。無理もないか。………かもめくん、もう一度言うが、俺たちは君に期待してるんだ。かもめくんは頑張り屋さんだから、次はきっとできるよね。ね、かもめくん?」
俺の髪の毛をくるくるといじったあと、頬へと手が滑っていく。その手つきと、恭太さんの姿が、今日俺が相手した『お客さん』と重なって、吐き気を催してしまう。でも、恭太さんの「期待している」という言葉が嬉しくて、照れてる場合ではないとわかっているのに、少し照れてしまう。もちろん顔には出していない。
次こそは、恭太さんと美里さんを喜ばせようと意気込み、少し元気が出た俺は、恭太さんの目をしっかりと見つめて、

「わかりました」


そう言った。




目を瞑っていると、ぼんやりと昔の記憶が頭に浮かび上がってくる。
初めての『仕事』はとても怖くて、痛くて、すぐに逃げ出してしまいたかったものだった。でも、コツを掴めば意外と簡単なことで、すぐにちゃんと『お客さん』を満足させてあげることができるようになった。その代わり、自分の体を犠牲にすることになってしまったが、まあ今のところ問題はない。

早めに出た俺は、自宅から徒歩で約十分のところにある、お気に入りの公園で、時間を潰していた。ここら辺は人通りが少なく、この公園は大した規模のものではないので、滅多に人がこない。だからお気に入りなのだ。
ここにある唯一の遊具であるブランコに座って、ただゆらゆらと体を揺らしていた。こうしていると、なぜか昔の記憶が蘇ってくる。昔は決して苦ではないわけではなかったが、慣れてしまえば何も感じなくなっていた。
しばらく揺れていると、だんだんと瞼が重くなってきた。俺は、家ではいつも寝れないのに、野外では寝ることができるのか…。……嬉しくない。

「いやぁっ!!こないでえッ!!」
パシィンッ
「うがっ!?」

………今のは幻聴かな?二人の悲鳴と乾いた音が響いて来たけど…まぁ幻聴だろう。
乾いた音といったら、この前の美里さんの平手打ちは痛かったな…少テストでひとつだけ答えを間違えてしまって、それで怒られたんだっけ。
頑張っているのに、結果はいつも悪いのばかり。多分俺が悪いんだろうけど…


「アンタは本当に出来損ないだわ。」


そんな言葉が頭をよぎった。ある時に言われた美里さんの言葉。
努力は必ず報われるとは、誰が言った言葉なのだろうか。俺がどんなに頑張っても結果はいつも悪いのに。この努力がいつか報われる時が来るのだろうか。

そう考えていると、目頭が急に熱くなって、一粒の涙が頬を伝った。

「……っう、ぅ………っ……」

涙を止めようとしても止まることはなく、次々と溢れ出てくる。まるで、俺の感情みたいに。

止まれ。止まれよ…。


「これ、使え」


頭上から急に声が聞こえた。顔を少し上げると、そこには純白のハンカチが差し出されていた。その手から腕へ、そして、顔へと視線を移動すると、そこには、



きらきらと煌めく金色の髪を持つ、鋭い眼差しの青年が在った。

Page:1 2 3 4 5 6