大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- 月音の短編・リク箱【リク受付中】
- 日時: 2017/03/18 16:01
- 名前: 月音
こんにちは、月音です。
今回は二次・三次・オリジナル問わずちょっとした短編を投稿していきます。
また、あればですがリクエストにもお答えしていきたいと思っています。
cp名、シチュエーション、どこからどこまでやっていいかを明記して頂き、
ここにコメント頂ければ善処します。
遅れても気長に待って下さる方のみ、お願いします。
今のところ、
悪ノ娘オリジナル
忘却の覇王ロランからニケロラ
夢王国と眠れる100人の王子様
Fate-zero綺礼ギル
声優 宮野×梶
オリジナルで戦時中悲恋
オリキャラ学生
オリキャラファンタジー系
オリキャラ双子+親友
というラインナップです。
では、どうぞ。
- Re: CP色々、一話完結でぐだぐだ書く。 ( No.6 )
- 日時: 2017/01/16 21:48
- 名前: 月音
二年前に書いた終戦記念日の為の文。戦争は忘れてはいけない。オリキャラ二人で悲恋。
なぁに、何かあるん?
別に、用はないけど
いっつも不機嫌そうやよねぇ、キミって
お前に言われたくない
ふうん、でももうキミともお別れやねぇ
何故だ?
卒業やろぉ?
そうか……
キミは卒業してから何かするつもりぃ?
天皇陛下の御為に、鬼畜米英を殺す
そんなん……聞きたい訳ちゃう
それ以外に夢などない
何で?
天皇陛下の命令の下死ねるのなら悔いはない
ちゃうやろ、生きて國を良くすんのが役目のはずや!
その國を危うくしているのは彼奴等だ
キミ一人が玉砕してどないなるんよ!
敵を一人殺せば味方の負担が減る
戦争なんか阿呆らしいて解らんの!?
戦争で亡くなった先人達を侮辱するのか!
ちゃう、そういう事と違うてやな
この非国民!
なっ……!
お前は何故生きている?國の為だ!
………
國の為の命なら國の為に捨てろ!
何でこないなことになったん……?
ちゃんと聞け!
嫌や聞きとうないよぉ……
……っ!
何で……僕はただ……
泣くな、悪かった
キミに死んで欲しゅうないからやのに……
済まない、言い過ぎた
……もうええ
待てよ
もうええて言うとるやろ
まだ何も終わってない
何なん?
好きだ
ふぁい!?
いつも厳しく当たってしまうが、好きだった
そ、それ冗談で言うていい事ちゃうでぇ!
冗談ではない、ずっと言おうと思っていた
も、もうついてけへんわぁ……
あ!?おい立て、しっかりしろ!
僕もやぁ……
何がだ?
僕も、キミが好きやからな、戦争嫌やってん
……気付けなくて済まないな
ええって
だが、もう決まったんだ
ん?
赤紙が、来た
………
でも心配するな、俺はきっと帰って来る
……ごめんなぁ
謝るな
ちゃうよぉ
謝っただろう
自分の所為やねん
どういう事だ?
僕も、行かなあかんねん
まさか赤紙が!?
うん
そうだったのか………
自分の為かもしれんなぁ、戦争嫌なん
それでも構わん
一緒の所行けるかなぁ
さあな
ただな、キミが死ぬ時は僕も死ぬからな
縁起でもないことを言うな
絶対、この約束は守るから
止めろ、お前だけでも生きろ
一人なんか嫌やしぃ!
子供かお前は……
ずっとキミと一緒にいたいんやぁ
ははっ、俺もだからな、死なぬようにする
頼んだでぇ、ふふふ!
はあっはあっ……
何なんよぉ、此処っ!
皆は、どうしただろう
止めぇ、今考えんなやぁ!
クソっ……捨て駒だったのか
止めぇ言うとるやろぉ!
何でこんなことに……
しっかりせぇやぁ!
お前だけでも逃げろ
何言うとるん!?
ここは異国じゃない、昔から交流があった
だから何なん?
船を奪えば帰れる
そんな、一緒やないと!
駄々をこねるな!
僕だけ生きたって意味ないもん!
そろそろ弾も尽きる、今しかないんだ!
ならキミも!
無理だ、一人じゃないと敵の目がある!
嫌だよぉ、嫌だ嫌だぁ!
っ解った、俺も行くから
あっ!!!
お前……何して
大丈夫?
ああ、でもお前は
大丈夫やよぉ……キミが無事なんやもん
っ!お前血が!
あはは、バレたぁ……?
手当てしないとっ!
無駄やぁ……
待て、今助けるから!
止めぇ、無駄やってぇ……
真っ赤じゃないか……
綺麗な躯じゃなくて、ごめんなぁ……
止めてくれよ、死ぬな!
一人ではよ逃げぇや……で、生きろ……
お前を置いて行けるか!
今しかないんやろぉ……?
お前が死ぬなら俺も死ぬっ!
阿呆……キミが生きんと僕の意味ないやん
きっと助けるから死ぬな!
……最期に、聞いてくれるかぁ?
最期だなんて言うなよ!
天皇陛下万歳……生きて國を良くしてなぁ
わかった、絶対に、お前もっ
あと……キミに……ごほごほっ!!
止めろもう喋るな!
今までごめんな……ずっと、大好き……
あ……あああああ!!!!
お前が死んで、もう随分経つな
俺はお前に言われた通り直ぐ逃げた
命からがら助かった
でも、お前の亡骸はまだ見つかってない
あの後直ぐに戦争は終結、馬鹿馬鹿しいよな
後少し……早かったらと思うと……
詮無いことだ
最初からお前が正しかった
俺が間違ってたんだ
こんな俺を、愛してくれて有難う
俺も、ずっと愛してる
END
- Re: CP色々、一話完結でぐだぐだ書く。 ( No.7 )
- 日時: 2017/01/16 22:17
- 名前: 月音
オリキャラ
初めて飲んだ酒の味を、俺は覚えていない。
勿論、幼かったからなどではないし、飲み過ぎたからいちいち記憶に残っていないというのでもない。
驚いたから。
ただそれだけの単純な理由である。
十月、神無月に行われる地元の祭り。そのときばかりは無礼講で、未成年だろうとも酒を飲んでも構わない。リョータ君なんかは中学生に好きだとか可愛いだとか絡んでいたし、レージュ君はろれつが回っていなかった。今日初めて会った子に「可愛くなったなぁ〜。あ、会ったことなかったっけ!」などと話し掛けていた。
「愛してるよ維心〜……」
「いや飲み過ぎだし、透真」
ぐったりとした様子で壁にもたれかかっている親友に話し掛ける。ここ数年、祭りで横笛を吹いているので、大人達にも顔が広いらしい。悪ノリで無理矢理酒を飲まされていた。その上自分でも結構ガッツリ飲んでいたから仕方あるまい。ついに輪から抜けていったので心配でついてきたのだ。
頭が痛いのか、眉間に皺を寄せている。せっかくの整った顔が勿体無い。
「頭いた……ヤバい……吐きそう」
「ガブガブ飲むからだよ。はあ、祭りだからって羽目外し過ぎだっつーの」
「……るせえ。仕方無いだろ……」
「つーかさ、未成年なのに飲むなよ。犯罪だぜ?」
「知ってるし……維心も飲めよ」
隠し持っていたのか、何処からか缶ビールを取りだしすすめてくる。からみ酒というやつだろうか。
「いらねーし」
「連れないなぁ……」
素っ気なく断ると残念そうにするから困る。ついつい飲みたくなってしまうじゃないか。
「はいこれ。あげる」
缶のお茶を手渡す。一瞬触れた手は熱く、やはり持ってきて良かったと思う。少しでも酔いを醒ました方が良いだろう。
「さんきゅ……っはあ、うまいな……やっぱ飲み過ぎは良くない」
「だろ?俺勝ち組じゃね?」
「……反論できねぇ」
目的はお茶を渡すことだったので、することがなくなった。祭り連中の輪に戻ってもいいが、透真がいないなら意味がない。
「あ、そうだ。透真の笛貸せよ」
「なんでだよ?」
「ひま」
苦笑しつつも渡してくれた透真はやっぱり優しい。その時の手の温度は少し下がっていた。
「んー、ムズいな。全然鳴らない」
「維心は初めてだろ?ならそんなもんだよ」
掠れた音しか出ない。小学生だって音が鳴っているのだから簡単なのかと思ったら、意外と難しい。
四苦八苦していると、ふと笛を取り上げられた。
そのまま口にあて、吹き始める。天狗だ。俺とは違い、綺麗な音が出ている。細長い指が笛の上で踊る。ぼうっと見ていると、笛を止め、にやりと笑った。
「維心と間接キス」
「っあ!?」
一瞬で顔が赤くなったのが自分でもわかる。
実は俺と透真は恋人だ。でも、バレないように人前では普通に振る舞い、メールもそういうのは話さないようにしようと言っていた。ここは道路だ。今獅子舞を回しているのもすぐ近くだし、誰が通るともわからない。まだ酔っているのだろうか。
「まさか維心からそんなことするとは思ってなかったよ。意外と積極的なんだ?」
「ち、違うって!知らなかったんだ!」
「ふーん」
ゆっくりと後ずさる。でもすぐに追い付かれる。こんな田舎の狭い道路では、俺が壁ドンされるのもすぐだった。
「そういやさっき、未成年が酒飲むのは犯罪、みたいなこと言ってたよな?なら、お前も同罪にしてやるよ」
「は?な、何?え、ちょ、やめっ……!」
透真は持っていた酒を口に含み、俺に口づけた。頭が真っ白になり、何もかもが吹っ飛ぶ。羞恥心も焦りも無くなり、快楽だけを求めてしまう。
「待っ……んっ、ふぁ……」
口のなかに生ぬるいものが流れ込む。きっと、酒と唾液に違いない。飲み込め、と目が語っている。息が出来ないのに飲み込めとは酷いものだが、俺は抗う術を知らない。そして、飲み込んでもいいと思ってしまっているのだった。
こくり、こくり、と喉を動かす。少しして全部飲んだ後には、舌が入り込んできた。それは的確に俺の舌を見つけ絡み合い、さらに俺を感じさせる。自分でも恥ずかしいくらいの喘ぎ声が漏れる。
どれくらい経っただろうか、透真はどんどんヒートアップしてきて、下にまで手を伸ばそうとしてきた。流石にそれはダメだと思い、手を掴んで止めた。
「悪酔いのノリでやるな」
「酔ってねーよ」
「じゃあ残りは帰ってからってわかるよな?」
「チッ……はーい」
何だかんだ言って止めてくれる透真は素直だ。俺はそういうギャップに惚れたのかも知れない。
「そろそろ移動じゃねーの?行かないで怒られない?」
「え?……うわ、ヤベ、ちょっとダッシュで行ってくるわ!」
そう言って駆け出す。かと思いきやUターンして帰ってきた。
そして耳元で囁く。
「帰ったら……な、維心」
そんな艶のある甘い声で囁かれたら、断れるわけないのに。それを知っていて使う彼は少し意地悪だ。
「今日は、透真の好きにはさせないから」
だから、俺も背伸びしてみた。
初めて飲んだ酒の味を、俺は覚えていない。
それは、こんなエピソードがあったからなのである。
END
- Re: CP色々、一話完結でぐだぐだ書く。 ( No.8 )
- 日時: 2017/01/17 21:45
- 名前: 月音
夢を、見ているようだった。
私の服装は、肘や膝、腹辺りを除いては薄い織物で覆われていた。暖かみのある独特の色で、淡いクリーム色の生地に、鮮やかな紅で縁取られていた。
私達は荒野を歩き続ける。私の前には二人の人がいた。一人は金髪に白い軍服を着たプライドが高そうな青年。もう一人は所々ハネた黒髪に黒を基調とした旅装の少年。
私は長い旅に疲労が溜まって来ていて、歩みを止めてしまう事が多く、着いて行くのに精一杯だった。また立ち止まってしまう。
「大丈夫?無理、してない?」
黒髪の方が声をかけてくれた。私はふるふると首を振り、また歩こうとする。
「大丈夫、です。まだ、歩けます」
「おい、遅れるな。道のりは長いんだぞ」
金髪の彼は私と黒髪の彼を叱る。黒髪の彼は振り返り、不服そうに言い返した。
「もう少し心配してあげてもいいんじゃないですか?まだこんなに小さいんですし」
「なら来なければ良かったんだ。過酷な旅だと分かっていながら、着いて来ると決めたのだろう」
「そうです。私なら、大丈夫ですから、エジトさん」
エジト、とは、この黒髪の少年の名前だろう。どこかで聞いたような名だ。エジトはそれでも心配そうに私を諭した。
「絶対、辛くなったら言うんだよ。ごめんね、あの人はいい人なんだけど、頑固でさ」
「分かってます。皆さん、いい方ばかりですから」
やっと微笑んだエジト。また歩き出す。
しばらくして、金髪の青年が言った。
「今からここで休憩をとる。各自適当に体を休めるように」
エジトが片目を瞑って見せた。
「ほら、やっぱり咲さんいい人でしょ?」
サクと呼ばれた金髪の青年が怒鳴る。
「おい衛士人、いらない話はするな!月の巫子も、耳を貸すんじゃない。これからまたしばらく休憩は無いぞ!」
「はーい、分かりましたー」
ふん、とサクは背を向ける。ここでは、私は月の巫子と呼ばれているようだ。エジトはこっそりと耳打ちして来た。
「咲さん、好きな子には意地悪したくなるんだけど、悪人じゃないから徹せないんだよね」
どうやら、二人とも悪い人ではなさそうだという事が分かった。
それから幾日か経ったのだろう。
金髪の青年が叫んだ。
「見ろ!着いたぞ!」
彼が指し示したのは、大きそうな町だ。石造りの建物が幾つも並んでおり、恐らくかなり繁栄した町だったのだろうが、今は活気が薄れている。
その奇妙さは、町の中枢部に近づくに連れ濃くなっていき、ついにぽろりとこぼしてしまった。
「サクさん……ここは、本当に、目的地なのですか?」
「ああ。違う筈がない。俺が十数年住んだ町だぞ?だが……もしかして……」
その時だった。
「咲さん危ないッ!!」
「!?」
エジトが叫ぶ。一瞬で周りを黒服の何者かに囲まれてしまった。明らかに殺気立っている。敵に間違いないだろう。
「何奴!俺を帝国特務小隊隊長、根木葉・咲と知っての事か!」
「………Don't kill black hear」
「Yeah」
「クソッ、アンブロッシュの奴等か……全員固まれ!互いを守り合うようにするんだ!各個確実に撃破せよ!」
「はいっ!!」
即座に臨戦体制に入る。各々武器を取り応戦するも、数で負けている。その内、段々と私の方に敵がやって来て、絶対絶命という時。
「巫子ォッ!!」
ザクリ。
私の視界が真っ白になって、真っ赤に変わっていく。私は呆然としてしまって、動く事が出来ない。どさっ、という音と共に視界が開けた。
「なっ……君!」
エジトがこちらに気付いた。私の足元にあるのは、何?ぽかんと口を開け、固まってしまう。
「クソッ……クソがああッッ!!!」
鬼神のような表情に変わり、ばさばさと敵を斬り倒すエジト。それを見て、はっと正気を取り戻した。
「?……!サクさん。サクさん!」
「はあ、はあ……月の、巫子……生きているか……ゴホッゴホッ!」
どうやら意識はあるようだった。だが、いつまで持つか……。
「喋っては、駄目です!どうして……私なんかを庇って……」
「巫子ちゃん!咲さんは!?」
敵を全員倒して、エジトがやって来る。鬼気迫る表情だ。泣きそうになりながら答える。
「今、月の力を使っています……でも、回復が追い付かなくて……」
「いい……もう、いいんだ……自分の傷くらい、分かってる。俺は……もう駄目だ」
「そんな事を言うな!あなたは生きるんでしょう!帝国を栄えさせるんじゃなかったのかよ!俺を置いていくんですか!」
語気を荒げるエジトと、何故か満足げに笑うサク。口からぼたりと血を溢れさせながらも心を奮い立たせ、一つ頼みを言った。
「頼む……最後の、わがままだ……この町の中心部にある、神殿に、ゲホッ!はあ……向かって欲しい」
私とエジトは顔を見合わせ、頷いた。
続きます
- Re: CP色々、一話完結でぐだぐだ書く。 ( No.9 )
- 日時: 2017/01/17 22:20
- 名前: 月音
エジトがサクを背負い、私は回復魔法を使いながら進む。やがて半壊状態の神殿らしき所についた。
私が先導し、奥へ奥へと入って行く。しばらく行くと、広い空間に出た。ぱたり、立ち止まる。
「月の巫子……着いたか……?」
「サクさん……見てはいけません」
「……何故だ」
「そんな……どうしてこんな」
「衛士人?……そうか」
「!?痛っ!」
サクがエジトを蹴り倒し、こちらへ寄って来る。一応回復の成果か。しかし、見てしまった。かつての同胞であっただろう人達が無惨にも、死んでしまっているのを。
「嘘じゃないのか……夢じゃあ、ないんだよな……」
床に膝をつき、両手で顔を覆う。どうしても口から漏れてしまう慟哭が、静寂の中で大きく響いた。
「羅雨座……零……愛紙……藤逆ッ……どうしてだよ……うう……うぐッ……!」
ラウザ、レイ、アガミ、トウサカ。どれもここで骸と成り果てた人の名前だろう。プライドが高いサクが泣くなんて、珍しい。月の巫子としての私はそう思った。やがて泣き疲れたのか泣き止み、すっくと立った。
「衛士人。巫子。俺は、ここでこいつらと一緒に死ぬ」
「なっ……!」
私達が驚く中、哀愁に満ちた表情で積み重なる死骸を眺める。
「どうせ、もう長くはない……なら、志半ばで果てたこいつらと共に逝こう」
「そんな、駄目です!俺は咲さんと生きたくて全てを捨てたんだ!月の巫子の力があれば、きっとまだ生きられる筈です!」
救いを求めるようにこちらを見るエジト。私は首を横に振る事しか出来なかった。
「何で……何で、こんな所で……」
エジトは絶望に打ちひしがれた。どさりとサクがくずおれる。私には、どうする事も出来ない。無力だ。
「衛士人……来い」
「はい」
「お前は……昔っから、俺の言う事も聞かない奴だった……だがな、俺は、お前の事を……誇りに思う」
「止めて下さいよッ……死んでしまうみたいな事言うのは!」
「今まで済まなかったな……今までありがとう……大好きだ」
「咲さん!俺も、俺も、咲さんが居てくれて良かったです!だからもうちょっとだけでいい……一緒に居て下さいよぉ……うう」
エジトが血だらけのサクに泣き縋る。サクは子供のように嗚咽を溢すエジトの頭を、優しく撫でてやっていた。
「月の巫子」
「はい、ここに……」
「辛い旅をさせてしまったな……悪かった」
「そんな事……」
「帝国を……宜しく頼む。帝国特務小隊隊長である俺の……遺言だ」
「はい」
喋り過ぎて疲れたのか、大きくため息を吐いた。顔も段々と血の気が失せていっている。明らかに、死期は近かった。
「怖い……怖いよ。死が恐ろしくて……泣いてしまいそうだ。だから、衛士人、月の巫子……手を、握ってくれないか……」
「はい」
「ぐすっ……はい!」
冷たくなってしまった手を握る。幾らか安心したように目を閉じた。少しして、はっと瞼を開いた。
「羅雨座?零……そうか、俺を迎えに。遅れて、済まなかった……愛紙も藤逆も、泉音に夜楽まで……今行く……じゃあな……」
すとんと伸ばされた腕が落ちた。エジトが慌てて口許を見るも、既に息は無かった。だが、彼の口許には、笑みが浮かんでいた。それだけが救いだった。
私達はしばらく、無言で神殿でサクを悼んでいた。
「……今だから、言うけど」
やがて、ぽつりとエジトは呟いた。
「俺……アンブロッシュ側の人間なんだ」
「……!」
アンブロッシュは私達とは敵の国だという知識が脳裏に閃く。つまり、エジトは敵なのだろうか。
「待って、違うよ。……俺の話、聞いてくれるかな」
そうして自身の過去を物語り始めた。
「俺はまだ幼い頃から、アンブロッシュの暗部……ダーククリムゾンとして訓練を積まされていた。物音一つ立てずに人を殺せたし、人の死なんか何とも思ってなかった。でも、誰も俺を褒めてなんかくれなかった。当時はそれも何とも思ってなかったんだけどね。孤児であった俺は、アンブロッシュの奴等にとってはマシンと一緒だったんだ。
そんな俺に一つの命令が下った。それは、戦争で敵対する帝国にスパイ……密使として潜入し、内部の情報を盗む事。そしてあわよくば重臣を殺す事だった。まだ十二、三歳だった俺なら怪しまれまいと思ったんだろうな。そうして俺は戦争孤児として帝国に潜入、ふらふら彷徨っていたところを咲さんに拾われたんだ。その頃咲さんは十六?だったかな。印象は今と全然変わらない。プライドが高くて神経質だと思った。上手い事利用してやろうと思って、俺は咲さんに取り入った。
でも出来損ないの俺は、スパイに徹する事が出来なかった。初めて俺を人間として扱ってくれた人だったんだ……咲さんは。俺の事を叱りもすれば褒めもする。俺の為に泣いてもくれたんだ。そして、一緒に笑ってくれた。親を失って寂しいだろう、辛かったろうって慰めて……俺はアンブロッシュの密偵なのにさ、ああ見えてお人好しだから、すごく優しくしてくれて。初めて泣いた。笑った。あの人を傷付けられると怒った。本当に大切な人だったんだ……」
やがて、また泣きじゃくり出した。辛く、悲しい話。多分、本当にエジトはサクが好きだったのだろう。私は何となく問うた。
「エジトさん……あ、エジトって名は、本名なのですか?」
「うん……本名だよ。俺、不器用だから、違う名前じゃ気付けないと思って。でも、漢字は咲さんが……うう……大切な人を、守れる人になれって……」
「そうですか。じゃあ、エジトさん。何故私達の情報がアンブロッシュ側に漏れていたのです?」
「………」
黙りこくってしまった。重たげに口を開く。
「……きっと、俺は信用されて無かったのだろう。だからアンブロッシュはもう一人監視を付けたに違いない。恐らくだけど。俺も咲さんも気付かないなんて、相当の手練れだよ……」
悔しげに唇を噛み締める。本国の事だけに一番苦しいのは彼だろう。
「エジトさんはこれから、どうするんですか」
「俺?……さあね。アンブロッシュにはもう戻れないし、戻る気もない」
「戻れない?」
「うん。暗部の奴等を殺した時点で裏切りは確定だから。……月の巫子はどうするの?」
「私は、地の都へ向かおうと思います」
私の口から出た言葉なのだが、全く意味が分からない。やはり夢なのだろうか。エジトも首を傾げている。また私が喋った。
「ええと、帝都?ですか?」
「ああ、帝都……どうしてまた」
「サクさんは、私に帝都へ来て欲しいと言ってました。その為に月の都まで来たのだと。七曜の国を守るためだとも。……七曜の国は、帝国の事です」
「でも、咲さん亡き今、君が帝国に関わる義理はないだろう?月の都に帰ってもいいんだよ」
「月の都はあくまで、七曜の国を守る存在なのです。アンブロッシュが七曜を落とし、月の都まで来られてはいけないと、長老様が仰って居りました」
すらすらと語られる国同士の事情。中々複雑な世界のようだ。
「なら、帝国を助けられるの!?」
エジトが身を乗り出して訊ねる。私は小さく首を横に振った。
「その手段が分からないのです。ただ、昔の古文書にうっすらとそんな事が書かれていたような気が……」
「思い出して。ゆっくりでいいから」
「ええと……『月と太陽、決して同じ天に戴く事の無き二つの星、互いに近くも離れ暮らしけり。交わらず関わらず。もしも二つの星、一つの天に戴きし時、下界の秩序保たれる事あらず。全ては大いなる天の意思に』のような感じかと思います」
「……よく分からないな」
「つまり、互いに離れて暮らしていて、決して関わり合わない月と太陽が協力したなら下界に大きな影響を及ぼすでしょう……か?」
「月と太陽って?」
「恐らく月の都に住む月の巫子と、太陽の都に住む太陽の巫子の事です」
段々とエジトの顔が輝いて来た。そして、決心したように頷く。
「決めたよ。月の巫子。俺は君に付いて行く。咲さんが遺した一つの希望……俺が受け継いでみせる」
そうして私達は帝都を目指して旅立った。そこから先のイメージは全く浮かんで来ない。夢のような、白昼夢のような、ただのインスピレーションのような話。この話はこれでお仕舞い。また何か浮かんで来たら、その時は……その時だ。