大人二次小説(BLGL・二次15禁)

【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18【完結】
日時: 2019/03/12 15:54
名前: 無冬

初めまして、ようこそいらっしゃいました。
初投稿です!

ここでは【黒子のバスケ】のキャラクター黄瀬涼太とオリジナルキャラクターをくっつけます。
タイトルにもあるように黄瀬攻めで、主人公(受け)は白城 洸流(しらき ひかる)です。

※暴力あり(いじめ、殴る蹴る)
(無理矢理行為に及ぶモノは無し)
物語は原作に沿っているつもりですが、少々粗がございます……
物語中、
  *  *  *
↑があったら物語内で時間経ちます。
 * SIDE――○○―― *
↑があったら視点変わります。

白城洸流は黄瀬涼太と幼馴染で高校は別。中学はバスケ部所属。
黄瀬涼太、身長189cm。白城洸流、身長170cm。


【本編】
プロローグ>>1 第一話>>2-5 >>8-12
第二話>>13-14 第三話>>15
第四話>>16 第五話>>17
第六話>>18-25 第七話>>26-44
エピローグ>>45【終】

【その後的なもの】
『雪の日』>>47『デート』>>48-49
『花見』>>57-61
『渡さない-邂逅編-』>>62-72
『渡さない-接近編-』>>73-86
『渡さない-決着編-』>>87-90

【もしもの話】
『ウサギ編』>>50-55

※5/3 最後のご挨拶 >>91

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Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.10 )
日時: 2017/05/03 17:21
名前: 無冬 ◆vczVbPqLLA

(side:洸流)続き-6


今朝目が覚めたのが早かったため、自転車ではなく徒歩で来ていて、ゆっくりと街を散策していた。
途中赤信号につかまり、少しボーっとしながら信号が変わるのを待っていた。
「洸流」
不意に名前を呼ばれ、そちらを振り返ると懐かしい顔を見つけた。
「…………伊崎(いざき)君」
出来れば君の顔は見たくなかった。
口に出しかけた言葉を飲み込み、彼の――――伊崎結友(ゆう)の名前を呟くに留まらせる。
茶髪で、チャラい印象を受ける容姿。背が高くて、高校生に見えなくもない、少し大人びた顔立ち。恐らく、僕のアルバイト先に顔を出した人物。
制服を着崩し、両手をズボンのポケットに入れたままこちらに向かって数歩足を進めた。
「何、その呼び方」
不愉快そうに顔を歪めながら話し掛けて来た彼は帝光中の後に行った学校で一年間同じクラスになっていた。
「…………関係ないでしょう、僕が君を何て呼ぼうと」
僕は、中学が変わった時にそれまでの人間関係を一掃した。そして、高校に上がった時も。だから知り合いでも、黒子君の時と同じで今までのようには呼ばないと決めている。
「――――じゃあ、僕はもう行くから」
信号が青に変わり、僕は逃げるように一歩を踏み出す。
「――――待った」
彼に腕を掴まれてしまい、仕方なく足を止める。
「離してくれる? 君に用はないから」
冷たく言い放つが、伊崎君に怯む様子はない。
その代わりの様に僕の腕を掴む手に、更に力が籠った。
「俺は話があるから」

僕は仕方無く逆らうのを止め、彼に腕を引かれてどこかに連れて行かれる。
「あのさ、痛いんだけど」
腕に後が残りそうなほど強く掴まれても困る。流石に伊崎君から逃げたらその後どうなるか分かっているから逃げはしないし。
「洸流がひ弱なのが悪い」
と言いつつ少しは力を弱めてくれたが、さすがに身動きが取り辛い。
どこに連れて行かれてるのかも判らないまま引きずられるように彼の後を付いていく形で歩いていると、辿り着いたのは高架下にあるバスケットコートだった。
――――ガタンガタンガタンッ!
丁度電車が通り過ぎ辺りに音が反響した。
「……目的地に着いたんでしょ? 手、いい加減離してくれる?」
どうせ時間はまだあるし、話すかバスケをしたら解放されるだろうし。
そう思いながら伊崎君に声を掛けるとすんなりと手を解放された。
彼は辺りを見回し、バスケットボールを探す。落ちているのを見つけるというよりは隠したものを見つけるよな仕草で辺りを見回していた。
腕を解放された後、軽く痺れていた手を掃うように振り、血を巡らせながら人気の少ない場所にバスケットコートがあるのを不自然に思う。手造り感のある少し歪んだ線、独立している錆の目立つ二つのゴールポスト。
「……それで、話って何?」
電車が来るたびに振動が来るコンクリート製の壁に寄り掛かり、腕を組みながら僕から話を切り出すと彼はこちらを振り返った。
「あー……」
一瞬、僕を連れて来た理由を忘れていたのか溜め息のような唸りの様な声が発せられ、目つきが変わる。
まるで、獲物を捕らえた肉食獣のような瞳で彼は僕を静かに捕らえる。
ぞくり、と久し振りに見たその目に恐怖のような畏怖を憶えた。
「聞かなくったって、解ってるくせに」
低く彼から発せられた言葉に鳥肌が立ち、思わず右手で自分の左腕を抱えた。
「俺と、勝負しよう」

伊崎君はどこからか持ち出してきたバスケットボールを手に、コートの確認をしている。
うーん……やっぱり辛いかな。今回は。
勝つ確率が七割って所だし。
「一年以上振りだな、こうやって向き合うの」
口角の緩んでいる伊崎君に嬉しそうに言われ「あぁ、うん」と曖昧な返事を返し、重心を低く構える。
…………今、気が付いたことが一つ。
――――僕って負けず嫌いなんだなぁ……。

今までだって勝ち戦しかしてきた憶えないし。相手との強さが五分だと戦うのを躱していたが、相手のクセを熟知していれば勝つ確率が格段に上がるため戦ってはいた。

「さぁ、始めるぞ」
伊崎君が僕に確認を取り僕が頷くと、踏み込む足に力を入れたのが見て取れた。
僕は静かに息を吸い込む。
「今度こそ、勝ってやる」
「僕は今まで、負け戦は受けた事ないからね」
彼を軽く挑発すると解りやすく顔に苛立ちが浮かび、迷わず僕に向かって突っ込んでくる。
昔からの伊崎君のクセは変わっていないようで一安心する。
伊崎君の手と地面を往復するボールを、自分の方に来るように強く弾き、ボールを奪う。
「っ……!」
頭に血が上りやすくて猪突猛進。――――うん、大丈夫。間違いなく勝てる。
自分の勝利を確信し、伊崎君側のコートへ走る。
ボールを奪いに来る伊崎君を避けながらダンクシュートを決めるべく跳躍した。
「チッ……」
彼も僕の後を追って跳躍していた。すると側から僕よりも長い腕が迫って来ていた。
だがその手は空しく空を掻く。
ネットを揺らす音の直後からゴールポストが揺れる音がガタガタ、ギイギイと聞こえる。
僕達はほぼ同時に着地すると、後を追ってボールが地面に落ちる。
「もう一回――――!」
「えぇー……もう無理…………っ――――?」
伊崎君の再戦の申し立てをされ、体力が持たないと断った直後、奇妙な音を耳が拾う。
――――ギィィィィィィィィィッ!
激しく鳴り響く音の正体の方へ顔を上げると、ゴールポストが軋みを上げながらこちらに向かって倒れてきていた。
「えっ――――」

――――ガシャアアアアアンッ!
数秒後、派手な音を鳴り響かせながらゴールポストは倒れた。
その瞬間体全体に痛みが走り、視界が真っ暗になった。

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.11 )
日時: 2017/09/20 12:41
名前: 無冬 ◆vczVbPqLLA

(side:洸流)続き-7


「あっぶな……」
不意に頭のすぐ上から降ってきた声に驚き、それと同時に視界も開ける。
「洸流、大丈夫?」
目の前に、伊崎君。その後ろに、青い空の中で爛々と輝く太陽があった。
――――助けて、くれたんだ。
今の状況に理解するのに少し時間が掛かったが、理解できた途端にハッとなる。
「結友ッ、怪我は?!」
上半身を勢いよく起こして問い詰める様に訊く。
「俺様の反射神経舐と運動神舐めてんじゃねーぞ」
怪我をしているともしていないとも明言しない彼の足元に視線を移すと見た感じだと怪我はなさそうだった。
「っ……」
だが次の瞬間、伊崎の顔が苦痛に歪んだ。
「ゆっ……伊崎っ……」
「いや、そこは結友って呼ぶところでしょ」
場違いな感想を言う伊崎君を無視して、彼の足を見る。
「どっちが痛い? どの辺?」
左右の足首そっと触れると「ッ……」と再び顔が苦痛に歪む。
恐らく右足首だ。
「ちょっとごめん」
伊崎の右足首にそっと触れてみる。すると先ほどは角度的に見え辛かったのもあり、気付かなかったが僅かに腫れているのが触れて分かった。
「軽度の捻挫だと思うけど……ちょっと待ってて」
コートの傍にあるベンチの上に置いておいた自分の鞄を漁り、テーピング用のテープを取り出す。
「何でテープなんか持ってんの?」
伊崎の当然ともいえる疑問に、僕は苦笑を漏らす。
「癖だよ。なかなか抜けなくて」
靴と靴下を脱がせて手早くテープを巻く。二年近くテーピングなんかしてないのに手は覚えてるみたいで頭で考えるよりも早く手が動いていた。
「……取り敢えず、応急処置だからちゃんと病院行ってね」
テープを巻き終わり、立ち上がってから手を差し出す。
「ん、サンキュー」
僕の手を握り、右足を使わないようにしながら伊崎君は立ち上がった。
「っと…………助けてくれてありがとう」
彼が立ち上がったのを確認し、少し躊躇うように言うと彼に抱きつかれた。
「ちょっ――――」
「いやー、怪我なくてよかったわー」
伊崎君はそう言いながら僕の背中をトントンと叩き、肩に手を回す。
「っ、怪我、してるじゃん」
彼の右足首を指しながらそう言うと「そうじゃなくて」と言われた。
「洸流に、って言わなきゃわかんない?」
そう言って、伊崎君は微笑んだ。

  *  *  *

伊崎君は、バスケの試合になると頭に血が上りやすくなって、猪突猛進になる。
だけど、コートの外だと飄々とした印象を受ける。
そんな二面性に惹かれる女子は多かった。クラスが同じだった僕はよく彼が告白されているのを目撃していた。
色々な子が声を掛けて、顔を赤く染め、好きだと告白をする。
場所や、女の子のタイプは――当然と言えば当然なのかもしれないが――毎回違った。
でも、毎回彼の態度と別れ際のシチュエーションは変わらなかった。
毎回、女の子は泣きながらその場を走り去って行く。
初めてその場を目撃した時は物凄く驚いてなぜ女の子を泣かせたのか少しキツめの口調で訊いてしまった。
そしたら何て事無いというように伊崎君は答えたのだ。
「告白されたから振った」
「好きじゃないから?」と訊くと、伊崎君はうーんと考えてから首を横に振った。
「いや、うん、まあ、それもあるけど…………俺、好きな人いるし」
好きな人がいる。でも、付き合ってもないし告白もしてないから振られてもないと続けて僕に言った。
「告白しないの?」と訊くと困ったように笑い、はぐらかされてしまった。

それから少しした後、僕は彼に告白された。

正直、嬉しかった。友達に好かれている事が。でも僕は彼を友達としか認識できず、断った。
それでも彼は友達でいて欲しいと言われた。僕も、それを望み今までと同じく友達として接していた。
そんなある日、彼は僕の秘密に気が付いた。

それもあって少し彼と距離を置いている時、僕は自分の置かれた状況に耐えきれなくなって引っ越した。
それ以来会ってもいなければ、連絡もしていなかったのだ。

  *  *  *

「あーあ。ここで別れるの勿体無いなぁ……家まで送ってくれてもよくない?」
彼は大学生の兄に連絡を取り、駅で待ち合わせる事になった。
怪我をしている伊崎君をベンチに座らせ、僕は彼の正面に立って次の電車の時間をネットで調べていた。
「勿体無いって言われても無理だよ。怪我させたのは悪いとは思うけど、僕にも用事があるし」
もう一時間もしないうちに妹達との約束の時間になってしまうため、時間と睨めっこをしている状態なのだ。
まだ間に合うとは思うが、ギリギリになってしまったら妹に遅れると連絡をしなくちゃと思いつつ、周りを見るとすぐ傍に車が止まった。
「うわー、来るの早っ、空気読めよ兄貴ー」
車から降りてきた伊崎君と同じくらい長身の男性に伊崎君は不満を漏らす。
「俺を迷惑だと思うなら歩いて帰れ」
お互いに憎まれ口を叩きながらもお互いに笑い合っている。
相変わらず仲が良いな、と思いつつ、僕は彼に頭を下げる。
「お兄さん、すみません。僕のせいで伊崎君が怪我をしてしまって…………」
申し訳なさそうに――本当に思っているのだが――言うと、伊崎の兄――――伊崎晃樹(あき)は目を丸くした。
「え、いや、それはいいんだけど…………洸流君……だよね? 何か雰囲気変わった……?」
彼は弟の事はどうでもよさそうに流し、僕に対して興味を示す。
「え、いや……気のせい、です――――」
「変わった変わった。俺の事伊崎君って呼んで来るしー」
横から――というか正確には斜め後ろから――伊崎君が茶々を入れる。
「……どうせお前が何かしたんだろ」
冷たく晃樹さんは伊崎君にそう言って小さく溜め息を吐く。
「いやー、俺なんもした憶えないけどねー」
「ま、それは置いといて。洸流君、結友が迷惑かけてごめんね。ここまで付き添ってくれてありがとう」
柔和な笑みを浮かべ、僕に相変わらずの優しげな声で伊崎君を無視し、礼を言ってくる。
「いえ……僕の不注意ですから……」
事実を言うといやいや、と彼は言う。
「こいつが悪いでしょ」
僕に変な気負いをさせないために彼は言ってくれるが、僕は彼の気遣いにどう返したらいいのか困ってしまう。
「まー、そういう事にしとけば? 兄貴はしつこいから」
終わりの見えないこの会話に伊崎君が入り、取り敢えず彼の不注意となってしまった。
「それより、時間ないんでしょ?」
伊崎君の言葉にハッとなり時間を確認すると電車が到着する時間になっていた。この電車を逃すと次が十分後なので待ち合わせの時間に間に合うか間に合わないかのギリギリになってしまう。
「やばっ――――すみませんッ、僕はもうこれでッ!」
「うん、気を付けてね」
「またねー」
急いで二人と別れ、走ってホームへ向かう。
伊崎君の最後の言葉が「またね」だった事に、少し引っ掛かりを持つ。
また、会う可能性があるのか。


走ったおかげで心臓はバクバク言っていたが、ホームに着くと同時に電車が来たので飛び込みにならずに済んだ。
時計を見ると五時半を指していた。
「ギリギリだ……取り敢えず、少し遅れるかも……っと……」
妹に約束の時間に間に合わないかもしれないと連絡をし、ホッと息を吐く。
頭がズキズキして、少し胃が痛む。
走ったからか、伊崎君兄弟(たち)に会ったからか。
そこそこ席の埋まっている車内に数人立っている人はいるものの、そこまで混んでいるという印象は受けない。
ドアの傍で電車に揺られながらボーっと流れる景色を眺める。
この景色のように、僕の日々は過ぎて行く。
一日一日、何かをしていないと、辛くなる。
ずっと涼太の事ばかり考えている自分が嫌だった。
自分で、決めた事にまだ踏ん切りがついていない自分が、嫌いだった。

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.12 )
日時: 2017/05/03 17:32
名前: 無冬 ◆vczVbPqLLA

(side:洸流)-8


一度家に帰り、待ち合わせ場所に向かうのに電車に乗った。
学校に行く方向とは逆の電車で、あまり乗り慣れない。

妹達とは駅で待ち合わせしているから駅に着いたら探せばいいだけだ。

待ち合わせをしているうちの一人、妹の後姿をすぐに見つけたが、どうやらナンパされているらしかった。
……いつもの事だ。
「――――灯里(あかり)」
後ろから声を掛けると、灯里は嬉しそうに振り返る。
あれ? そう言えば輝哉(てるや)が居ない。
「あ〜、よかった〜!」
灯里は僕に抱き付いて待ち合わせしてましたアピールをする。
「んだよ、彼氏いんじゃん」
ブツブツと男達は呟きながら去って行った。
「もう! 輝哉が居なくなった隙にこうなるんだからッ!」
灯里は相当ご立腹らしい。
居なくなった隙にって事はトイレかな?
「灯里〜、兄ちゃ〜ん!」
あ、来た。
僕より背が高い弟が戻って来た。
「あれ? 灯里、怒ってる? もしかしてまたナンパ?」
輝哉がそう訊くと灯里は怒りが収まらないのかぷいっとそっぽを向いてしまった。
苦笑しながら僕が灯里を宥める。
「まあまあ……」
「中二をナンパする神経が解んない! 明らか大学生でしょ、さっきの!」
――――中二が小学生ナンパしてんのと同じだって!
怒りはなかなか収まらないみたいだね……。
まあ、でも高校生ぐらいには見られてると思うけど。
背もバレーボールやってるからそこそこあるし、顔も中学生の割には大人びてるし。
輝哉もそうなんだけど。
一応双子だからそう言う所は似てるのかな。
「あにい、今失礼なこと思ったでしょ」
ギクリとする。嘘は誤魔化しきれないし、本音とも言えないから苦笑を漏らすと、灯里が深い溜め息を吐いた。
「まったくもう……うちの男共は……」
輝哉と一緒にショボーンとする。
妹に怒られる僕と輝哉……うん、いつもの事だ。
「ま、いっか。今日は私の買い物に付き合ってくれるんでしょ? 行こう!」
灯里は天真爛漫だから白城家のムードメーカーで、いつもみんなを笑わせてるから。
灯里の笑顔を見ると自然に笑える。
嫌な事も、忘れられる気がする。
輝哉が笑うと、心が和むし。
悩みなんてどうでも良くなる。

それから灯里の買い物に付き合い、輝哉と共に僕は荷物持ちになった。輝哉も少し買い物をし、僕は二人を家に送ってから自宅アパートへ帰った。


元々、僕から二人を誘って今日、無理矢理予定を入れたんだ。
二人が駄目だったらふらっとどこかへ出かけるつもりだった。
でも、二人が「良いよ」って何も聞かずにオーケーしてくれた。
二人は、多分僕に気を使ってくれてるんだと思う。
灯里は時々僕の様子を窺って満足そうな顔をしていたりもしたし、輝哉は僕に色んな話題を振って来るし。
悪いと、思ってる。
中学生の二人に寄り掛かって、一人で立てる事さえ難しくて。
一人で立とうとさえしない僕は、現実逃避をして日々を過ごしているから。
忙しくしていた方が後ろを振り返らずに済む。
そう思って夏休みをあんなにハードにしたのに、肉体的にただただ疲れて行くだけで、他はいつもと何も変わらなかった。
意味が無かった。

涼太に会いたい。
声を聴きたい。
触れたい。
名前を呼んでほしい。
また、笑って欲しい。
傍に居たい。
謝りたい。

ずっと、想いばかりが頭を巡る。
名前を呼びたくなって、口を噤む。
涙が出そうになるのを必死に堪える。
僕に泣く資格なんてない。涼太の名前を呼ぶ資格もない。
「ごめん…………ごめんなさい…………」
ベッドの中でただただ謝罪の言葉を独り、呟き続けた。
届かないと解っていても、それでも謝りたくて。


第一話『高校一年生の夏休み』完

Re: 【黒バス】腐向け 黄瀬×(オリキャラ) R18 ( No.13 )
日時: 2017/09/20 12:42
名前: 無冬 ◆vczVbPqLLA

第二話
『逃げた理由』
(side:洸流)


「白城君」
十一月中旬。
もう忙しく過ぎ去る日々にも慣れた頃。
僕はまた、彼と再会した。
「…………黒子君」
まあ、今回も偶然だと思う。
学校が終わった後フラフラしていたら声を掛けられただけだし。
「お久し振りです」

二人でファストフード店へ入り、隅の席で向い合せに座った。
「……今度はウィンターカップを見に来ないかって?」
彼の言葉を予想してそう訊くと「はい」と素直に返事が返ってくる。
「……無理だよ」
ホットコーヒー片手にそう答えるがどうやら彼は引く気は無いらしい。
「……黄瀬君は、変わりましたよ」
その先の言葉を彼は敢えて言わなかったが、僕には聞こえていた。
――――君はまだ、変わらないんですか?
反論なんてない。
反論なんて出来ない。
「…………前みたいに、純粋にバスケを楽しんで……もしかしたら、前以上かもしれません」
それは良かった。
僕が丁度引っ越す頃に皆が変わり始めていたのに気付いていたから。
「……黒子君も、変わったしね」
自分を必要としてくれる場所を見つけた人は、強くなる。
今の、黒子君みたいに。
「…………そうかもしれませんね」
いつまでも変わらない僕と違って、皆は変わっていく。
黒子君はあの頃と、明らかに目が変わっていた。
最後に会ったあの時、黒子君は寂しげな目をしていた。
でも、今の彼は生き生きしている。
とても楽しそうで。
「ちゃんと、黄瀬君と向き合ってあげてください」
それは、涼太のためか、僕のためか。
「……君が居なくなった後、黄瀬君は――――」
「そういうの、要らないから」
それ以上聞いたら今以上に涼太に会いたくなってしまう。
「黄瀬君は、君を待ってるんですよ」
さっき少し強めに言葉を遮り、その話はしたくないと目で訴えたのにも拘らず、強引にまた話を始める。
「……僕は、涼太に会う資格なんて無いんだよ」
それは、自覚して物凄く傷ついた事。
未だに諦められず、一人になると涼太の事ばかり考えてしまうからいつも何かに集中するようにしている。
「それは、君だけが決める事ではありません」
でも、事実には変わりない。
だって僕は、あの時涼太から――――あの現実から逃げたんだ。
そんな事をしておいて、
「ごめん、もう帰る」
コーヒーを一気に飲み干し、そう言って僕は立ち上がる。
これ以上話していたら、色々な事を思い出して辛くなるだけだから。
「今度こそ来てください。絶対に」
僕は彼の言葉に応えず、ごみを捨てて店を出た。


あの時、僕は。

  *  *  *

「何でお前が――――!」
「お前のせいで――――!」

あの頃僕は、虐められていた。
僕はベンチにも行く事もほとんど無く、マネージャーとして桃井(ももい)さん――女子マネージャー――と一緒に選手達の体調管理等をしていた。
僕は人の体調不良や怪我、試合時のクセを見抜き、監督や桃井さん、更には司令塔である赤司(あかし)君や部長である虹村(にじむら)先輩にも伝える役割をしていた。
しかし、レギュラーの一人である三年生が足首の怪我を隠し、練習している時いつものように僕は気付いて近くに居た監督と桃井さんにすぐさま伝えた。
勿論、すぐに赤司君にも伝わり、レギュラーを降ろされたという事があった。
その際、その三年生に二人きりになれる場所に連れて行かれて「何で怪我してるって伝えたんだ」と言われ、殴られた。

そこから、僕は皆の不満の捌け口になったのだ。

一年生に命令されると言う屈辱、すぐに切り捨てる監督。
一年生レギュラーである四人への嫉妬。
顔を殴られる事は無かったが、身体は良く殴られ蹴られていた。
何人にも、ほぼ毎日。

そんな時、涼太がバスケ部に入部した。
相変わらず涼太はスポーツ万能でグングン成長して。
すぐにレギュラーになれた。
それから更に暴力は酷くなっていくばかり。
モデルをして、あまり真面目にバスケ部の練習に参加しない涼太がなぜレギュラーに選ばれてるんだという不満が多発していて、僕は暴力や暴言に耐えるのが辛くなっていた。

「なあ、白城……ちょっといいか?」
重い体を引き摺りながら部活が始まる体育館へ向かう途中、わりと温厚なレギュラーである三年生に声を掛けられた。
「え、あっ、はい……」
僕に相談なんてするはずないし……先輩も、僕でストレス発散かな?
何て諦観していたら、先輩は気まずそうにこう言った。
「実は今膝ちょっと痛めててさ……そんな大事じゃなかったから良いんだけど……監督とかに知られたらレギュラー降ろされかねないし……もうすぐインターハイだから、黙っててほしいんだけど……」

口止めだった。
去年、僕が駄目にしたあの先輩は一週間安静にしていれば治る程度の怪我だった。
でも、あの先輩は引退前、最後の試合にベンチにさえ入れてもらえなかった。
そんな先輩に監督は「怪我をするほど軟なお前をレギュラーにしても勝つ事は出来ない。お前の代わりはいくらでも居る」と言い放ったのだ。
それを目の前で聞いていたこの先輩は、それを恐れてる。
でも、僕はこれしか仕事が無いのだ。
「えっと――――」
出来ない。そう、断ろうとした時、
「頼んだぞ」
威圧するようにそう言って後ろを気にしながら先輩は逃げるように去って行った。
多分、理由は先輩の後ろに赤司君が来ていたから。
「白城」
怪しげに赤司君は微笑み、僕の名前を呼ぶ。
「赤司、君……」
ちょっと驚いて言葉が出て来なかった。
いつも赤司君の気配に気付く僕が、初めて気付かなかったから。
「相談事かい?」
「あ……うん。ちょっとね」
間違ってはいない。
今、この場でさっきの話を言うべきか迷う。
最悪、練習の時違和感さえなければ誤魔化せるし。
初めて僕は赤司君の信頼を裏切る事になるんだろうか。
「ふぅん……まあ、いいさ。遅れてしまうよ、早く行こう」
と言いつつ赤司君はいつもの歩調で僕の斜め前を歩き出す。
歩くと、体が痛い。
でも、息が切れたら気付かれる。
だから平静を装いながら僕は彼について行く。
いつか気付かれたら相当怒られそうだな……涼太とか、赤司君とか……青峰(あおみね)君も。
なんて思いながら、僕は歩を進め続けた。

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