大人二次小説(BLGL・二次15禁)

【東方project】東方雑多談《R-18》
日時: 2023/09/08 06:51
名前: 徘徊人

皆様、お初にお目にかかります。東方projectの二次創作を書かせていただきます徘徊人です。

タイトルの通り、東方projectにおける短編を書いていけたらなと思いますので、今後ともよろしくお願いします。


【ご注意】

《R-18要素を含む内容になります》

・稚拙な表現が目立つ部分が多々ございます。日々精進を重ねてはおりますが、何卒、温かい心でお見守り頂けたらと存じます。

・基本、その物語毎にオリジナルの主人公(名無し)が登場する為、予めご了承くださいませ。

・ご利用の端末によっては大変見辛く表示されてしまうことがあるようです。その点についてもご理解いただけると幸いでございます。

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Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.7 )
日時: 2023/09/17 23:30
名前: 徘徊人


【妖狐は油揚げ屋を好む】





真夏日が続く幻想郷。昼は蝉、夜は蛙が合唱する。不快な湿気に我慢しつつも、僕は昼前の人里の大通りを歩く。

汗ばむ身体と、それに濡れる衣類……出来ることなら早く家に戻って湯船にでも浸かりたいところなのだが──



「油揚げー、油揚げですよー!真夏日が続いて食欲不振ならば、是非とも油揚げを買うて食ってみてくださいませー」



──生計を立てる為の商売を棒に振ることなど出来るはずもなく。こうして油揚げを売っている。僕の声を真面目に聴いてくれる者など、大通りを通る中で一人とていやしないのに、まるで誰かに呼びかけるかの如く僕は声を張る。

客足はぼちぼち……といった所。しかし、昼間のピークを過ぎれば閑古鳥が鳴く。こうなってしまえば、売れ残りは確定してしまう。まあ、油揚げの商売も親から継いできたもので、今の人里の流行に付いていけてないのは大いに自覚しているワケだが……それでも、この商売を続ける理由はあった。






夕暮の人里、店仕舞いの準備を始めつつ、期待に胸を膨らませて『ある方』が来るのを待っていた。

「──ああご主人、まだ油揚げは残っていますか?」

来た──金色に光る瞳を宿し、耳を隠しているのか2本の尖りが特徴的な帽子を被る金髪の女性だ。腰から伸びる九尾の尾から解るように、彼女は妖だ。それはそれは大層ご立派で美しいお狐様だ。

「あっ!はい!もちろん御座います!小分けでお包みしましょうか?」

昼間の時よりも明るく朗らかに受け応えをする僕がいた。そう、僕は彼女に惚れている。それこそが、この商売を続ける理由であった。

「そうですねぇ、油揚げを肴にお酒でも嗜もうかと思いまして。ああ、ただ……あまり大食いな方ではないと、私は自負しているのですが」

そんな何気ない雑談でさえ嬉しい。僕は油揚げを手際良く小風呂敷に詰めて、彼女に手渡す。

「……ああ、ありがとうございます、ご主人。どうも私は、この油揚げにぞっこんのようで、こうして夕暮れ時の人足が落ち着いた頃を見計らって、ご主人のお店に通うのが日課になってしまっているようです」

「ふふっ、嬉しい御言葉でございます。油揚げを焼いて、お野菜たっぷりのすき焼きなんかにすれば、きっとお酒も更に進みますよ?」

「ほう、それは良いですね……。どうにも我が家は、肉よりも油揚げを好んでおりまして。とても魅力的な提案です」

「ふふっ、お勧めになります」

その方は妖怪だというのに、とても人間らしく、それでいて、とても可愛らしい魅力を兼ね備えていた。このお方に油揚げを勧めて、買ってもらえるだけで僕としては満足である。

「──こうも会話が弾むのは貴女様ぐらいでしてね、ふふっ」

それは事実であった。いまこの瞬間に味わっている喜びを素直に伝えるのも気恥ずかしく、店の苦労を語るような雰囲気で誤魔化していた。

「それはそれは里の人間も勿体無いですね、ご主人からはこんなにも良いコトを教えていただけるというのに」

「ぁっ、あははっ!そ、そう言っていただけて何よりでございます」

もっと適当にあしらわれると思っていた。しかし、返ってきたのは実に丁寧な返事であった。僕を気遣ってくれたのか……いずれにせよ、惚れたお方から褒められたことが嬉しく、頬を少しだけ赤らめてしまう。彼女に察せられていないと良いのだが──

「ご主人は素直なお方のようで」

「えっ、、」

「あら、図星ですか?ふふ、そんなご主人だからこそ、より油揚げを美味しく思えるのでしょう。貴方のようなお人に作られる油揚げは幸せ者ですねぇ」

か、完全に見透かされている……。こうも恥ずかしげ無く褒められたことなどないので、僕は顔から火が出る思いであった。

「ご、ご勘弁を………顔の火照りがおさまりませんので……」

「おや、それは失礼しました。でも、本当に美味しいのですよ、ご主人の油揚げは。また来ますね」

最後に再び僕の店を訪れてくれることを伝えると、彼女は踵を返して歩き出していった。

「ぁっ、ありがとうございましたっ!」

彼女に向けた礼の言葉は、果たして聞こえただろうか。僕は、この幸せがいつまでも続いて欲しいと、願いながら家路を辿るほか無かった。





翌日も、そのまた翌日も、彼女は夕方になると人里に現れる。そしてその度に売れ残ることのないようにと、いつも多めに油揚げを買ってくれるのだ。僕はそんな彼女に再び礼を伝える。





「──いつもありがとうございます」

その日は珍しく、油揚げを買った後も僕が店仕舞いを終えるまで待ってくれていた。

「ご主人、今宵も貴方の店の油揚げを肴に、お酒を愉しみたいと思っていまして……宜しければ、この後お付き合い願えますか?」

「え!?あっ、はいっ!僕などで良ければっ!」

願ってもないお誘いであった。今までは油揚げを売る最中に談笑する、その程度だった。それが今日は、僕をお酒に誘ってくれたのである。まるで夢でも見ているような気分であった。

喜びのあまり、油揚げの詰まった風呂敷を落としそうになり、それを抱えるように腕を折り畳んでしまう。

「──ふふっ、ご主人は可愛いですね」

「かっ、からかわないでください……」

「いえいえ、本当のことを言ったまでですよ」

「ほ、本気にしますよ?本気で勘違い……しちゃいますよ?」

「構いませんよ?ご主人が勘違いしてくれるのであれば、尚更良いので」

彼女の微笑は、今まで見てきた微笑みの中でも特段美しかったように思えた。




──夜、月明かりに照らされて、僕と彼女は二人並んで、鈴虫が鳴く夜道を歩く。1人で油揚げの商売を営んでいるものの、僕はまだ15歳ほどの若造。未だお酒に縁はなく、知人から誘われても飲酒は自粛していた。

しかし、今宵の彼女は僕と呑むことになるであろうお酒を愉しみにしているらしく、一升瓶が入った手提げ袋を腕に通しては、嬉しそうに尾を揺らしていた。

「……お酒とはどのようなお味で?」

「おや、呑んだことがないのですか?」

少し驚くような表情をして、彼女は僕に問うてきた。どのみち明らかになってしまうことだろうし、隠し事をしていても仕様がないと思った僕はここで素直に打ち明けることにした。

「お恥ずかしながら、お酒を飲んだことがないのです。ですが、今宵は貴女様にお酒の愉しみ方を教わることが出来ますので、むしろ楽しみにしている次第でして」

「ふふっ──いやはや、お酒の味を知らないというのに、ご主人は1匹の妖怪を誑かしてしまうとは……罪な男ですね」

僕は首を傾げた。彼女からそんな冗談を言われても、何も心当たりは無い。何か妖怪なりに僕をからかうような冗談を言ってくれたのだろうか?

「ああ、すみません。こちらの話です。ご主人が気になさるようなことではありません」

「そ、そうですか……」

「ええ、そうですとも」

返事に戸惑う僕を気遣ってくれているところからすると、僕は何か悪い反応をしてしまったような気がする。しかし、彼女の表情は曇ることなく、寧ろ何か喜んでいるようであった。僕としてもそれは嬉しいことで、安堵の笑みを溢した。

「さあ、到着致しました。此処が──今宵の酒席ですよ」

人里の夜道を暫く歩いていたが、いよいよ目的地に到着したようである。僕は彼女の指さす先を見る。すると、其処には1軒の宿屋が建っていた。

「えっ、え!?こ、こんなところでお酒をお呑みに!?」

「おや、不満でしたか?ならば仕方ありません、先ほどのは忘れて──」

「いえいえいえ!滅相もないですっ!呑みたいです!呑ませてくださいっ!」

慌てて僕は否定をした。しかし、宿屋に誘われては此方も緊張せざるを得ない。しかもこの宿屋……男女の密会によく使われる貸席だ。

「あ、あの……宿屋……なのですか?」

直接に聞く勇気などあるはずもなく、僕は仄めかすように彼女に問うた。

「ええ、何かと都合が良いでしょう?宿屋なら酔い潰れても安らげますゆえ」

「そ、そうですね──」

これから彼女と2人きりでお酒を呑む。そう考えただけで僕の心臓は張り裂けそうなのに……貸席だなんて。僕の中で悪い期待が芽生えてくる。

「おや、顔が赤いですよ?熱でもあるのでしょうか?」

彼女は僕の顔を下から覗き込むように見つめてきた。その顔が大層美しく、呼吸すら忘れてしまうほどに魅入られてしまった。金色の瞳が夜間の中で一層と輝き、今すぐにでもその桜色の美しい唇を奪いたくなってしまうほどで、真夏の夜の暑さなど気にする余裕など無かった。

「───ぁっ!だ、大丈夫ですっ!お気になさらず!」

「大丈夫ですか?お暑そうですが」

心配そうな表情を見せてくれるが、僕はそれどころでなかった。なにせ彼女の顔が……否、彼女の綺麗な顔立ちが、息のかかる距離にまで近づいたのだ。彼女から仄かに香る甘い吐息に、ふわりと心地良い感覚に包まれてしまっていた。それなのに、心臓の鼓動だけは激しかった。

「ま、真夏の夜ですから──っ!」

「ふふっ、それなら早く涼みに行きませんと。では入りましょう、ご主人」

そうして、彼女は僕の手を取り、宿屋の扉をくぐる。不意に手を握らたことで、僕は激しい幸福感と緊張に包まれる。宿屋の主人と会話をしている最中も、彼女は僕の手を離す事はなかった。

Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.8 )
日時: 2023/09/18 10:41
名前: 徘徊人



主人に案内されるように、僕たちは2階への階段を上がっては、通路の奥にある和室に向かう。室内に入った僕たちに、主人は『ごゆっくりと』と挨拶しては襖を閉めた。

僕たちは卓上に油揚げが入った小風呂敷や一升瓶、2人分のお猪口を置くと、お互いに向かい合うように座布団の上に座る。お酒を呑む準備が整ったようで、彼女は嬉しそうにしていた。

「さてと、先ずはご主人にお酒の呑み方を教えてさしあげましょう」

「よ、宜しくお願いします」

「お酒の呑み方とのことですが──私のこれをご参考に」

彼女は右手の親指と人差し指で丸を作り、口元に持っていった。そして、盃を傾けるジェスチャーをする。その様子は何処か妖艶に見え、僕は息を呑む。

「では、失礼して」

彼女は卓上のお猪口にお酒を注ぎ込む。透き通るような白い酒が注がれていき、やがて1杯目が出来上がった。そして、僕の分であろう2杯目も注ぎ終える。

「ほら、ご主人も……どうぞ」

彼女が僕にお猪口を差し出す。僕はそれを両手で握り込むように受け取り、それを軽く掲げた。

「ええと、乾杯……ですか?」

お伺いするように彼女に問う。

「そうです、どうぞご一緒に」

「っはい、それでは──乾杯」

「ええ、乾杯」

僕たちは乾杯をして、お猪口を口元にまで持ってきては、その小さな一口分のお酒を呑み込んだ。初めて味わうお酒は実にまろやかで、大変美味であった。

「んっ、っはぁ……」

喉を通れば、じんわりと熱が身体を循環するように広がっていく。初めての感覚であったが、それは決して不快なものではなかった。

「ふふっ、初めてはいかがでしょう?」

お猪口から口を離し、卓上に置こうとしたその時、僕はお猪口を再び彼女に奪われる。そして次の一口を注ぐ。

「はい、まろやかさがあって……それでもって味わいがすっきりとしていて──とても美味しいです」

「ふふ、それは重畳でございます。さあ、遠慮などなさらずにどうぞ」

こんなにもお酒が美味しく感じられるのは、僕が惚れた九尾の狐様と晩酌しているからなのか?彼女は優しい微笑みを見せながら、次の1杯を勧めてくれる。

「あ、ありがとうございます……」

初めてのお酒による不思議な感覚もあるが、落ち着くことのない動悸も相まって、僕の身体は次第に熱くなっていった。しかし、彼女はその熱を冷ます暇も与えてはくれなかった。

「ふふっ、まだお呑みになりますか?」

彼女は再びお猪口を差し出してきてくれた。僕はそれを両手で受け取ろうと──したが、酔いが回ってしまったのか、身体のバランスが上手く保てずに、お猪口を滑らせ、卓上に落としてしまう。

「あ、ご、ごめんなさいっ!ら、藍さんっ!汚れてらっしゃいませんか!?」

お猪口を慌てて拾い上げようと手を伸ばす。しかし、お猪口に手が触れるか触れないかの距離になって、僕の手は彼女に制された。

「ご安心を。汚れてませんので」

そう言って彼女は優しく微笑む。それを聞いて僕はホッとするものの、彼女から発せられる次の一言に目を見開いた。

「……ふふっ、私の名前、知ってらっしゃったのですか?」

「っ!!?」

「大丈夫ですよ、何も心配はいりませんよ。どうか安心なさってください」

彼女はそう言って、お猪口に再びお酒を注ぐ。そしてそのまま、それを口に含んでしまった。それは僕の────

「ふぅ………美味しいですね、『このお酒』は」

「ぁ、あの……それ、僕の……」

言葉が上手く紡げない。ただ、僕はその行動の理由を知りたくて、彼女をただ見つめていた。

どうして彼女は僕の飲みさしを飲んでしまったのか。そして────彼女が唇を舌で舐める光景に、どうして僕は見惚れてしまっているのだろうか。

「ふふっ、そんなに見つめられては、恥ずかしくなってしまいます」

「ぇ、ぁっ、ご、ごめんなさいっ……」

宿屋に来た際に芽生えた悪い期待の所為か、はたまた……もう酒に酔ってしまったのか。彼女の一挙一動のすべてが妖艶に見えてしまい、僕の瞳が彼女に釘付けとなってしまっていた。

「さて、喉を潤すのはこの程度にしておいて、ご主人の油揚げを戴きましょう」

そうして、彼女は今宵の酒の肴である油揚げが包まれた風呂敷を身体の前に引き寄せる。そして、結び目を解くと、油揚げを1枚取り出し、箸で小さく裂く。それを重ねて半分に割り、卓上に上半身を乗り上げるようにして、その片方を僕の口元に差し出してきてくれた。

「ほら、どうぞ」

「ぁ、っ……あむっ……」

少し躊躇った後、僕はそれを口に含んだ。彼女が差し出してくれてのもあってか、よりいっそう美味しく感じてしまう。

「ふふっ、どうですか?美味しいですか?」

「は、はい……とっても……」

正直、緊張や恥ずかしさが入り混じっていて、味なんて分からない。しかし、ここで変に答えてしまえば、次は無いような気がして、僕は素直に答えた。

「それは良かった……では──」

彼女はもう片方の油揚げを小さく裂いては、箸で摘み上げ、それを自身の口へと運んだ。

「んっ、こちらもとても美味しいです」

彼女は油揚げを口に含みながらも、その味を僕にしっかり伝えてくれる。そんな些細な気遣いにすら、僕は胸をときめかせてしまっていた。

「ふふっ、もう酔ってらっしゃるのですか?お顔が赤いですよ」

「ぁ、っ……その、お酒、のせい……だ、と……思います」

僕もよく分からなかった。胸の鼓動が激しく、思考も揺らぐ、だけれども気分は幸福そのものであった。少々荒い息遣いをする僕を見つつも、彼女は談笑を始めた。

「それにしても──まさかご主人が私の名前を知っているとは、少し驚いてしまいました」

「あっ……そ、それは……す、すみません……」

「謝ることはありません。寧ろ嬉しいのです。できれば、今からでも名前で呼んでいただきたい程に」

彼女はそう言って、僕に強請るような視線を送る。それもまた可愛らしい。

「ぁ、ぇっと……藍……さん?」

「はい、ありがとうございます」

彼女は満足そうに微笑むと、残ったお酒を呑み干した。そんな彼女の表情を見て、僕は自然と口元が緩んでしまう。彼女がお酒を呑む姿を見ているだけで、身体が熱く、幸せな気分になるのだ。

「おやおや、もう少しお酒を呑んでいただきませんと。お酒は奥が深いのです、その程度でやめてしまわれては損をしてしまいますよ?」

そうして、彼女は僕のお猪口を持ったまま対面側から回ってきては、すぐ側まで寄ってきた。そして、僕を優しく抱き寄せては口元にまでお猪口を持ってきてくれた。その一連の動作が、また僕の思考を掻き乱す。

「ら、藍さんっ、お、お身体がっ──」

「ご心配なく、私はご主人を信頼しておりますので」

そう言って、彼女は僕の髪の毛を撫でながら、ゆっくりと言い聞かせるように耳元で囁いた。彼女の吐息が耳に掛かる度に、身体中に電気が走るような感覚に襲われてしまう。

「さあ、私のお酒を呑んでやってください」

その甘い囁きは、耳から脳に響くように入り込み、思考そのものを侵食してしまう。彼女が僕のお猪口にお酒を注ぐと、僕はそれを躊躇うことなく口へ運んだ。

「んくっ、んっ、美味しい……です」

「それは良かった。さあ、どんどんお呑みになってください」

彼女は僕の肩に手を置き、ただお猪口にお酒を注ぐ動作を繰り返した。そしてあっという間にお猪口を傾けきり、僕は完全に酔いが回ってしまった。

「はぁ、はぁ、藍さん……なんか、とっても熱くて……」

酒に酔った僕の身体は熱を帯びて、そのままその場に倒れ込みそうになる……が、しかし、彼女は僕の身体を優しく抱き留めてくれた。

「ふふっ、まだまだ、お酒は沢山ありますが──酔い潰れてはいけませんね」

「はい、そう……ですね──」

気付けば、僕は彼女の方に体重を預けて寄り掛かっていた。そんな状態になりつつも、僕は彼女の瞳を見つめていた。どこか気品高そうな眼差し、吸い込まれるようとはまさにこのことだ。ふんわりとした藍さんの柔らかな身体と尻尾に心地良さを覚え、僕は至福の時間を味わう。

「ふふっ、幸せそうな表情を浮かべてらっしゃいます。とても愛らしいですね」

彼女は僕の頬を優しく撫でて、そのまま頬を両手でそっと包み込んだ。その仕草に、僕はもう……なにも考えられなくなる。今自分がどうするべきで、これから何をして、何をされるのか。そんなことすら考えられない程に、ただ彼女に惹かれて、酔いが回ってしまった。

「おや、ご主人……お顔が真っ赤ではありませんか?」

「っ、ぇ……藍さんに………酔わされてしまいまして………幸せで……」

酔った勢いで大胆な発言をしてしまった。しかし、彼女は優しく微笑んでは、ただこちらを見つめる。彼女が妖怪であることは重々承知している。けれども、僕の恋心は留まることを知らない。彼女の美しさと優しさに惹かれて、僕は彼女の虜になってしまっているから。

「ふふっ、幸せですか……私みたいな者に酔わされて?」

「藍さん……僕は……好きで……」

ふわりとした意識の中で、僕は藍さんに想いを伝えてしまった。貸席にて酔うに酔わされ、今やこうして優しく抱き寄せてくれている────こんなの、勘違いして当然だ。僕の良くない期待は収まるどころか、溢れかえってしまいそうになっているし……勘違いであるのならば此処で『お開き』にしておきたかった。

「ご主人は、私のような妖に惚れてしまわれたんですね……」

彼女は僕の頬から手を離す。あぁ……漸く理解してもらえたのか。藍さんなりのスキンシップでも、僕にとっては理性を大きく揺さぶる誘惑であった。だからこそ、僕がもう限界であることを知ってもらい、離れてもらう必要があった。

「………ふぇ?」

しかし、藍さんは僕の目の前まで自分の顔を持ってきた。そして、綺麗な金色の瞳をこちらに向けて、妖艶に微笑んだ。

「ぁ……い、いけませんよっ……」

僕は咄嗟に顔を背ける。しかし、顔を彼女の両手で掴まれ、正面に向かされる。そして、彼女はそれを肯定するかのように、小さく「はい」と呟いた。

「ご主人はお優しいのですね」

「ち、違います……僕は……そんな──」

彼女が再び、僕の頬を片手で包み込むようにして触れてくる。その動作が心地よく感じられて、僕の中から何か温かいものが溢れ出て、それが全身を駆け巡るように熱くした。

「ご主人、お顔が真っ赤です」

「っ、ぁ……藍さん……」

「私もご主人に惚れた妖ですよ?」

彼女はそう言うと、その白く透き通った手を僕の首に回して更に引き寄せてきた。互いの息がかかる程に、僕と彼女の距離は縮まっていく。それに合わせるかのように、胸の鼓動は早くなっていく。それはもう、唇と唇が触れ合ってしまいそうな距離にまで。

Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.9 )
日時: 2023/09/18 11:10
名前: 徘徊人

「ご主人は、私のことが……好きで?」

「すき、です……っ……」

「ふふっ、そうですか。私もですよ」

彼女が、僕を抱き寄せるようにして、更に身体を密着させた。僕の顔は彼女の胸に埋められてしまう。柔らかな感触が僕を包み込んで離さなかった。そして、彼女はそのまま僕を身体から引き剥がすと、僕の瞳を見つめた。

「っ、藍、さん……ぼ、ぼく……もう心臓が、はちきれそうで」

酔いの気分に惑わされて、僕は藍さんへの愛を吐露する。焦らされる接吻に対して、僕の悪い期待は更に高まっていた。

「ご安心ください、私が鎮めてあげますからね……」

そして、彼女は僕の唇へと、自らの唇を近づけた。僕はただ、目を瞑りその時を待ちわびる。彼女の息遣いが聞こえる程に近くなって────熱が伝わってきて────遂に僕らの唇は重なった。

彼女はただ、唇を触れ合わせ、啄むように優しく僕の唇を奪う。互いの唇が重なる度に、互いに呼吸を合わせて、互いの呼吸を重ねる。

「んっ……ちゅっ……ん……ご主人、口を開けてください」

彼女は唇に優しく触れながら、僕にそう囁きかける。僕の中に入ってくる甘い囁きは、僕の頭を蕩かして、快楽の渦へと巻き込んでくる。そんな未知の快楽が怖くて、僕は僅かに口を開けた。

「んちゅ……っ、ふ……ぁむっ……」

すると、彼女は僕が口を開けた瞬間に、唇を押しつけ、僕の口内へ舌を入れてきた。互いの舌が絡み合い、淫らな音が脳内に響き渡る。

「んんっ……ちゅっ、ぁむ……ん……」

彼女の唇から漏れる吐息が、甘く蕩けるような喘ぎが、僕の耳を伝って脳内を淫らに犯していく。それに、お酒の味が艶めかしく伝わってきて、互いを官能的な気分へと塗り替えていく。

「はむ……っ、ちゅっ……ぁ……ご主人、可愛らしいお顔ですね……」

「っ、んんっ、ぁぅ……ぼく、も……もっと、藍さん……と」

僕は彼女に言われるがままに、口を大きく開いて舌を差し出した。そんな彼女の舌を僕の舌で触れると、彼女は嬉しそうに微笑んでくれる。

夢でも見ているのだろうか?こんな幸せなことがあって良いのだろうか?そんな思考すら、酔いの気分に飲み込まれて、次第に消え失せていく。

「んふ……っ、ちゅ、っ……ぁむ……んちゅ、ちゅっ」

互いの舌を触れ合わせ、それを絡ませ合い、そして互いが互いを貪り合う。まるで溶け合うかのような感覚に陥り、僕は次第に快楽に痺れては藍さんの甘い唾液を口端から溢してしまう。 

「んえぁ……ぁっ」

そして、藍さんはゆっくりと唇を離していった。互いの唇を繋ぐように銀糸が伸びて、そして途切れる。

「んっ、ちゅっ、ふふっ……ご主人、お顔、真っ赤ですね」

「はぁ、っ……えへ……藍さんのせい、ですよ……」

僕の言葉に、彼女は少し驚いたように目を見開きつつも、すぐに笑みを浮かべる。その微笑みは妖艶で、僕を魅了し続けている。肩で息をしてしまうほどに、藍さんの接吻は極上であった。口内だけでなく、脳内までもが解かれては溶かし尽くされてしまう感覚────僕は彼女からキスの気持ち良さを植え付けられてしまっていた。

「おやおや……下が大変なことに」

「っ、あ……ご、ごめんなさ……」

彼女が僕の下腹部に視線を移すと、そこでは僕の陰茎が履物越しに熱く勃起しては、快楽の汁を漏らしてシミを作ってしまっていた。それは仕様がなかった。何せ、僕は宿屋に入る前から──この熱い興奮と情欲に耐え続けていたのだから。あのような接吻をされては、それも限界を迎えて氾濫してしまうのも当然のことであった。

「ご主人は、意外と厭らしいようで」

彼女はそこにそっと手を添えると、耳元でそっと囁く。

「ふあ、っ……ちが──こ、これは、その……」

そう言って慌てる僕に対して、彼女は再び唇を重ねて黙らせてきた。舌を絡ませ合う度に聞こえる卑猥な音で余計に興奮してしまう。そんな淫らな自分に嫌悪感を抱くと同時に、ジックリと見つめながら舌を入れてくれる藍さんにどうしようもなく興奮してしまう。

「ふふっ、ご主人の身体も正直なんですね」

「っ、ぁ……ご、ごめんなさい……」

履物の上から僕の陰茎を指で優しく撫で回す彼女の手つきに、僕の身体は悦んでいた。白く細い人差し指と中指で、履物に浮き出てカタチが露になった僕の陰茎を挟んでは、ゆっくりと焦らすよう上下に擦ってきた。

「構いませんよ、素直に悦んでくれているのですから──もっとシてあげます」

そう言って、彼女は僕のことを強く抱き寄せながら再度唇を重ねてくれた。先程と同様に激しく舌を絡ませ、互いの快楽を貪り合う。

彼女の柔らかな胸の感触、華奢な身体から伝わる温もり、そして淫らに混ざり合い溶け合う舌と舌……あらゆる感覚が僕の脳内を支配しては、更に興奮させた。

それに、彼女の九尾の尻尾が僕の頭や足元で枕となっており、極上の寝心地を提供してくれている。故に、僕の目はどんどんと蕩けていって、彼女に対する愛で胸がいっぱいに満たされる。

「っ、んっ……ぁ、んんっ……」

僕と彼女の呼吸は互いに荒くなり、最早まともに息をすることすら忘れてひたすら互いを求め合った。そして遂に、僕の身体は限界に達する。履物越しの彼女の手つきに腰を震わせながら、僕は絶頂を迎えた。

「イクっ、も、もうっ……イキま、す……っ!」

──どぷっ……びゅくびゅく……ぴゅっ……

「んぅ……ふふ、ご主人……気持ちよかったですか?」

精子を大量に吐き出す快感に頭が真っ白となる。加えて、履物の中がじんわりと温かくなるような感覚に戸惑いながらも、僕はなんとか返事をした。

「は、はい……すごく気持ちよくて……」

その言葉に彼女は優しい笑みを浮かべると、僕の履物を脱がし始めた。

「ふふっ……こんなに汚してしまって……」

履物を脱がされた瞬間、濃厚な陰茎臭が僕の鼻を掠め、恥ずかしさを覚える。射精したばっかりで敏感になった陰茎は空気に触れてビクビクと痙攣していた。それを見た彼女は、顔を陰茎の方に近づける。

「んちゅ……っ、ぺろ……」

そして、僕のモノを一舐めすると、そのまま口に含んできた。温かな口内の感触に襲われながらも、僕の身体は快楽に悶えてしまう。そんな僕のことを察したのか、彼女は口中で舌を動かし始めた。

「んっ……ひほち、よはほうで……ごひゅひんっ……」

彼女の舌が僕の陰茎を包み込み、まるで陰茎が舌に溶かされるかのような気分に陥ってしまう。あまりに心地よすぎて、僕のお腹の奥からなにかが込み上げてくるような感じに襲われた。

「あむっ……んふ……っ!」

彼女は突然僕の陰茎を強く吸い込んで、そのまま喉へと誘った。彼女の喉奥に吸い込まれていって、根元まで咥え込まれる。そしてそのまま、彼女は激しく顔を前後に動かした。先程よりも更に激しい快楽に僕は腰を抜かしそうになる。

「んぁ、っ……あぁぅ……で、る──っ!」

僕は思わずそう叫んでしまうと、腰を浮かせて思いっきり彼女の喉に精子を漏らしてしまった。彼女はそれを一滴も零さず呑んでいく。喉を鳴らす度に淫らに身体をくねらせる彼女を見ていると、思わず興奮してしまい、陰茎が呼応するようにビクビクと震えた。

「んくっ……ご主人の、美味しいです」

「ぁ、ぁぁっ、ら、んしゃ──ぁっ」

妖艶な微笑みの彼女に褒められながら、僕は快楽に身体を震わせて、だらしなく声を漏らした。

「おやおや、そんなに乱れてしまって……ふふっ、可愛いです。本当に」

彼女は近くにあった一升瓶を持っては、残り僅かであった酒を直接呑み干す。そして、そのまま唇を重ねてきて、甘く優しい舌で僕の口を愛撫する。舌を絡ませ合い互いの熱を交換するかのような接吻に翻弄されつつも、僕は快楽に酔いしれる。ダメだ──酔っているというのに、更に酔わされてしまう。

「んちゅっ……ぁむ……ちゅ」

このまま蕩けてしまいそうになるほどの快感を覚えながらも、僕の脳内で僅かに残った理性が、このまま快楽に溺れてしまっても良いのかと問いかけてくる。しかし、そんな理性は、彼女の抱擁の前では無意味であった。

「ご主人、次は私の番ですよ」

そう言って、彼女は僕の身体を押し倒してきた。抵抗する気力さえない僕は、ただ彼女を受け入れて身体を委ねるだけしか出来ない。けれど、それがかえって彼女の興奮を誘ってしまったようだ。

「酔っては快楽に溺れ、想いを寄せる妖に堕とされていく───ご主人にとっては、何れも初体験でしょうから、きっと夢心地に違いありません」

妖艶な微笑みを見せる彼女は、僕の身体に手を這わせて、ゆっくりと撫で回していく。彼女の指先が触れた所がゾクゾクと熱を帯びるかのような感覚に、思わず身を捩らせる。

「今から私がすることをしっかり覚えて帰ってくださいね?ご主人はこれから何度も体験されますから」

「っ、え……それって、どういう──んんっ!?」

僕が問いかけるよりも先に、彼女が僕の唇を奪った。そしてそのまま強引に口をこじ開けられ、彼女の舌を口中に招き入れさせられる。そして、そのまま僕の舌に自分の舌を絡めてきた。先程よりも激しく情熱的に舌を動かされて、僕は蕩けるような快感に支配されてしまった。

「んむっ……んっ、ちゅ……ご主人……ちゅっ」

獣のように激しい接吻──まるで別の生き物が僕の口の中で暴れ回っているかのような感覚に、脳が蕩けていくようだった。思考することを許されず、ただただ彼女に溺れていくだけ。

「や、やぁ……藍しゃぁっ──お、おかひくなりゅ」

「んっ……ふふっ、良いのですよ、おかしくなっても。ご主人は私のものになるまでこうして……んっ、ちゅっ……一緒に溺れていくんですから」

そう言って彼女は尚も僕の口内を犯してくる。舌と舌が絡み合う度に淫らに水音が響き渡り、それによって更に興奮が増してしまう。

「そろそろ……喰らい刻でしょうか?」

そう言って彼女は自身の服を脱ぎ始めた。僕が視線を外せないでいるのを理解しているようで、彼女は蠱惑的な笑みを浮かべては僕の視線を捕らえるように、徐々に裸体を晒してゆく。

そして服を脱ぎ終わると、彼女はその豊満な乳房を露にして僕に見せつけて、それを僕の手に握らせた。温かく柔らかな感触が掌全体に広がってゆく。

「藍さんの……素敵です………」

「ふふっ……嬉しいです」

彼女は嬉しそうに微笑むと、僕の耳に唇を寄せて、囁くようにこう言った。

「これからご主人には、私の大切なところを色々と……犯してもらいます」

その言葉を聞いた瞬間、僕の胸が高鳴った。まさか、そんなことを言われるとは思っていなかったのだが……期待してしまう自分がいるのも確かだった。しかし、不安も大きく募る。

「っ、そ、それって……」

「──ですから、主人のその可愛らしいお口で先ずは私のココを……ね?」

そう言って彼女は僕の手に握らせた乳房を上下に動かしていく。それと同時に僕の耳に舌を入れ、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め回してきた。彼女の吐息と水音が脳内に響き渡ると同時に、ゾクゾクとした快感で身体が震えてしまう。

「ぁっ、藍、さぁん……」

「ふふっ……ほら……早くしないと私──ご主人のことを貪ってしまいますよ?」

彼女の吐息にはお酒の匂いが染みついており、僕の頭は更に酔いしれ、正常な判断が出来なくなってくる。

「で、でしたら……そ、その……いただきます」

震える手でなんとか乳房を動かしつつ、僕は意を決して彼女のその乳房にしゃぶりついた。その瞬間、口の中に甘い味わいが広がると共に舌の上に広がる濃厚で甘美な味に興奮を隠せなくなる。

「っ、んっ、あっ!」

彼女が感じたのか、艶めかしい声色で喘ぎ声を漏らす。その声がまた僕の興奮を誘い、さらなる奉仕を促すのだ。

「んっ……ふふっ、ご主人はそう……そうやって夢中で啜ってくださればよろしいのです……」

そのまま僕は一心不乱に彼女の乳房を貪っていく。まるで赤子に戻ったみたいに無我夢中になりながら彼女の胸を堪能していた。けれどそれは、僕にとっても彼女にとっても至福の時であった。

「ふっ……ぁ……あぁん!い、良いです……ご主人……とってもお上手で……っ!」

気がつけば僕の下半身は再び熱くたぎっており、彼女の声を聞く度にびくんと跳ね上がっていた。そんな僕を見た彼女はクスリと笑うと、僕の陰茎をその細い指先で触れてきた。それだけなのに僕の身体はまるで電撃を受けたかのように激しく痙攣を起こしてしまう。

「ふふっ……興奮だけで達してしまいそうなのですね。可愛いです」

そう言う彼女は僕の目を見ながら再びキスをしてきた。そして、そのまま身体を密着させ、僕の陰茎をお尻で挟む。ぷるんと柔らかな感覚が陰茎を襲い、それがまた気持ちいい。

「んくっ──っ!」

いきなりの強烈な快感に、僕は彼女の口内に喘ぎ声を漏らしてしまった。けれど彼女は一向に口を離すことなく、寧ろ舌を絡ませてくる始末だ。

このままでは彼女の身体に精子を掛けてしまうことになる。しかし──

「んちゅ……っ!ふっ……いいですよご主人。そのまま私のお尻に射精していただければ……」

そう言って彼女はもう一度強く僕のモノに尻肉を付けて擦り上げた。その強烈すぎる快感に、僕は身体を大きく仰け反らせてしまう。どぴゅっと彼女の尻に精液を掛ける──しかし、彼女の尻圧のせいで、それだけじゃ収まらず、僕はそのまま再度絶頂を迎えてしまったのだ。

「んぐぅっ──!!」

僕の頭の中でなにかが弾けたのか、視界が真っ白になってゆく。その射精の最中も彼女は僕の口から離れない。

「んっ……ちゅるっ……ふふっ、ご馳走様です」

そう言って彼女は、妖艶な瞳を僕の方に向けて来た。しかし、意識を朦朧とさせる僕を見ては……少し残念そうに笑っていた。

「嗚呼……喰べてしまいたいのですが、そんなに果ててしまえば体力も限界でしょう。初めての酔いもあることですし、残念ですが今宵はここで──」

そう言って彼女は僕の身体から離れていき、僕の身体から降りる。そして、僕の下腹部に顔を近付けると、そのまま僕のモノを咥え始めた。

「んっ……ふっ……っ!」

生暖かい舌が僕の陰茎を包み込み、柔らかい唇で強く吸われる。そしてそのまま彼女の口の中に出し損ねた精液が漏れ出てゆく──しかし彼女はそれをものともせず、決して口を離そうとはしなかった。

「ら、らんしゃ──んあァッ!」

尿道に残っているものまでも吸い尽くそうとするかのような吸い上げに、僕は思わず身体を震わせて声を上げた。そんな僕の様子を見てか、彼女はようやく口を離した。そして彼女は僕に向かって優しく微笑んできた。

「ふふっ……綺麗にしておきましたよ」

「……っ!」

その笑顔を見た途端、僕の中でなにかが音を立てて崩れ落ちたような気がした──僕はもう目の前の妖に骨抜きにされてしまったのだということを悟りながら……意識が薄れてゆく。

藍さんは僕のお猪口を再度持ち直しては、そこに新しく持ってきた酒を注ぎこんで艶めかしく一飲みする。

「ふふっ……どうでしたか?私のお酒は」

藍さんは僕の隣でそう問い掛けてきた。長い尻尾がフサフサ触れて擽ったらしく、僕は思わず身を捩った。どうやら、答えてくれるまで休ませてくれないらしい。とても可愛らしいお方である。

「幸せでした……僕、藍さんが買いに来てくださるから油揚げ屋を続けてこれたんです………たとえ、妖怪の狐様であっても、藍さんを愛しています…………喰べられてしまっても後悔は……ありませんから…………」

眠気の中で何とか言葉を紡いだ。しかし、彼女には届いたのかどうか、分からない。

「はい……私もですよ……ご主人──れなくとも───ていますから──」

薄れゆく視界の中で最後に彼女の顔を見た。彼女は蠱惑的に微笑んでいたが、何処か悲しげな目をしていた。

Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.10 )
日時: 2023/09/17 23:28
名前: 徘徊人



目が覚めれば……見覚えのある寝室の天井が映っていた。僕は上体を起こして身体を確認すると、寝間着を着ていて、尚且つ布団まで掛けられていた。

「あ、あれ──?」

其処は間違いなく自分の家であった。昨夜は……どこか違う場所に居たような気がするのだが、記憶に煙が掛かったかのようにハッキリと思い出すことが出来ない。

「…………夢、何か凄かったなぁ」

どんな夢であったかも思い出す事はできないが、それはもう幸せな夢であったのは覚えている。

「………あれ?」

布団から出ようとする僕の視界に映ったのは、卓上に置かれた空の一升瓶とお猪口、そして綺麗に畳まれた風呂敷であった。其処に添えられた置き手紙の内容が気になり、僕は寝惚け気味の千鳥足で卓上にまで向かう。そして、目を擦りながら、その綺麗で美しい文面を見た。

『昨夜の晩酌は如何でしたか?ご主人と酌み交わしたお酒の味もさることながら、私に溢してくださったご主人の上汁も美味しゅうございました。あぁ、ご主人……今宵もまた、貴方にお酒の愉しみ方を御教えしたい気分です。次こそは、この執念深い狐の中に、お酌してくださるのでしょうね。愛しています。油揚げではなく、ご主人を喰べ尽くしてしまいたいほどに。』

息を呑んだ僕は今日も油揚げを売りに、いいや──藍さんを求めに、暑っ苦しい人里の大通りへと向かうのであった。





END

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