大人二次小説(BLGL・二次15禁)
- 【東方project】東方雑多談《R-18》
- 日時: 2023/09/08 06:51
- 名前: 徘徊人
皆様、お初にお目にかかります。東方projectの二次創作を書かせていただきます徘徊人です。
タイトルの通り、東方projectにおける短編を書いていけたらなと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
【ご注意】
《R-18要素を含む内容になります》
・稚拙な表現が目立つ部分が多々ございます。日々精進を重ねてはおりますが、何卒、温かい心でお見守り頂けたらと存じます。
・基本、その物語毎にオリジナルの主人公(名無し)が登場する為、予めご了承くださいませ。
・ご利用の端末によっては大変見辛く表示されてしまうことがあるようです。その点についてもご理解いただけると幸いでございます。
- Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.1 )
- 日時: 2023/09/08 07:19
- 名前: 徘徊人
【魔女の淫猥】
或る日──僕は人里にて憧れの人形師と会話をした。それは天気に関する些細な内容であったけれども、僕にとっては一生の思い出に残るであろう小さな幸せであった。
僕は早くに親を失い、1人で生活を送ってきた。僕の仕事は解読士であり、よく稗田邸や鈴奈庵に呼ばれては、古文書などを読み明かしている。先日はその功績が人里の外にまで轟いたのか、かの人喰い悪魔が住むとされる恐怖の館──紅魔館からも依頼が来た。
しかし、紅魔館の方々は為人が良く出来ていた。僕を客品として丁重にもてなしてくれ、解読作業に勤しむ際にも様々なサービスを提供してくれた。その為、帰る時には……紅魔館に対する価値観が大きく変化していた。
「────!」
帰りの夜道、ランタンを灯して前を進む僕の視界に見覚えのある女性が映る。それは紛れもなく、あの人形師の方であった。名はアリス・マーガトロイドという。花のように優しく嘘偽りのない人柄で、人里では知らぬ者など居らぬ程の淑女だ。
何故、彼女が深夜に森を歩いているのかは理解が及ばなかった。しかし、彼女の手荷物であるバスケットから見えた2人分のサンドウィッチ────他の誰かと逢瀬をしていると考えるのが妥当である。その憶測を想った途端、僕は強烈な嫉妬に駆られた。
「…………」
そんな嫉妬心に嫌気が差した僕は、外套を深く被っては彼女を見ることなくすれ違おうとした。
「──誰?」
僕の気配を見逃すこともなく、アリスさんが振り向きざまに声をかけてきた。その声音は微かではあるが、まるで僕を不審者として警戒しているようにも聞こえた。
「……ぁ」
「あら、いつか人里で会話した子じゃない。この時間の森は危険だけど……迷子になっちゃったかしら?」
「え、あっ……は、はい……」
彼女に質問されているというのに、あの日に会話したことを覚えてくれていた──いいや、僕のことを憶えていてくれた、という喜びが頭一杯になっていた。故に、僕はまるで花開く桜のように、嬉しさから頬を紅に染めては、言葉足らずとなってしまっていた。
「ふむ……何処から来たの?」
「こ、紅魔館の方から……」
「紅魔館!?あの吸血鬼の館に行って来たっていうの!?」
「は、はい……」
「何でまた、こんな危険な道を……」
アリスさんはそう言って、心配そうに僕の顔を覗き込んできた。それは正しく親切心が故の行動であったのであろうが──その行動が、僕の胸に強烈な一撃を加えることとなった。
「……」
「な、何かしら? 私、何かヘンなこと言った?」
胸を押さえた僕を見て、アリスさんは困惑しながらそんなことを言った。しかし、今の僕は、彼女の一挙一動全てが胸に突き刺さり、痛みすら生じるほどであった。
「ま、まぁいいわ。紅魔館から人里までならそう遠くないし、送ってあげましょうか?」
「い、いえ結構です……」
「遠慮しないで。ほら……」
そうして彼女は僕の手を優しく握りしめ、森の出口まで案内してくれた。そこには街灯も無ければ、家も無いというのに……闇夜を照らす月よりも彼女の笑顔が眩しく感じ、僕は魂を抜かれたような気分で彼女を見ていた。
「ん、これで大丈夫ね。もう深夜なんだから、家に帰らなくちゃダメよ?」
そう言って、アリスさんは森の出口まで案内してれた後、再び森に引き返そうとしていた。せめてもの感謝をと、僕は必死になって声を出す。
「あ、あのっ!」
「ん、何かしら?」
「ぁ……ぁ、ありがとうございます………そ、その、お気をつけて……」
「ふふっ、ありがとう」
「──ッ!」
去り際に、アリスさんは優しく微笑む。その刹那、僕はまるで雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。心臓が高鳴り、全身が熱くなる。それは初恋とでも言うには余りに激しく、烈火の如き恋情であった。
あぁ、彼女は僕を憶えてくれていた。彼女は僕に優しくしてくれた。僕は彼女に何一つ優しいことをしていないというのに──彼女は僕の為にあの笑顔を向けてくれたのだ。
- Re: 【東方project】東方雑多談《R-18》 ( No.2 )
- 日時: 2023/09/08 08:31
- 名前: 徘徊人
それから数日して、僕は再び紅魔館の大図書館に古文書や魔術書などを解読する仕事で呼ばれては、かの大魔法使いであるパチュリー様の対面に位置する作業台にて、魔術書に記された言語の解読作業を行っていた。
「────」
僕が解読する傍ら、パチュリー様は本を読んでは、時折、僕に質問を投げかけてくる。大抵の内容は昨日と同じだった。
「ねぇ、この文字はどういう意味?」
「はい、それは──という効果を持つ術式を──」
「む、それじゃあこっちの意味は?」
「はい、それは──という効果を持つ術式を──」
「ふむ、じゃあ──」
「─────」
パチュリー様からの問いを聴いている最中というのに、僕の頭の中は昨夜のアリスさんで満たされていた。あぁ、あの眼差しに、あの視線に、あの微笑みに──僕はいつか堕ちてしまうのではないかと思って止まない。彼女の全てが僕の心を狂わせ、魂を惑わす。
だが、僕はそんな想いを抱いてしまうこと自体が罪であると知る。それほどまでに、アリスさんは清く正しい方なのだ。そう、僕のような穢れた存在が抱いて良い想いではないのだ。
「──じゃあ、次はこの文字ね」
「は、はい」
僕がそんなことを考えている間に、パチュリー様は次々と言葉を投げかける。そうだ、今は彼女のために働くべきだ。僕は邪念を振り払うように、古文書の解読作業に集中する。
「────」
……だが、やはり僕は集中を削がれる。
「──調子が悪そうね、火照ってる」
「え、あっ!……ご、ごめんなさい!」
「……どれ、触診してあげる」
パチュリー様はそう言って、読んでいた本を机の上に置き、静かに立ち上がる。そして、僕のもとまで歩み寄ると、手を伸ばしてきた。
「さぁ、手を出しなさい……」
「は、はい……」
パチュリー様が僕の手を握れば、そこからは熱が込み上げてくる。まるで火の玉に触れているかのような感覚が、全身を駆け巡る。
「ふむ、確かに熱があるようだけど……体温以外の異常は見られないわね」
「そ、そうですか……」
「──恋慕」
「っ!?」
そう言って、パチュリー様は再び椅子に腰かける。僕は驚きのあまり、目を見開いて彼女の次の言葉を待った。
「恋……そう、貴方恋してるのね」
パチュリー様はそう言って、僕の様子を観察してくる。その視線は興味深そうに、そして哀れみに満ちていた。
「そ、そんなっ……僕なんかが恋だなんて……それに、アリスさんは相手にもされません……」
「あら珍しい」
「……え?」
「アリス。貴方はいま無意識にアリスの名を口にしたわ。可哀想に」
パチュリー様は僕に可哀想と言って、静かに目を伏せた。その意味が分からず、僕は首を傾げる。しかし、パチュリー様は憐れむように僕の眼を見つめて──
「貴方はアリスに恋している、とは言ったけど──アリスが貴方に恋をしている、とは言えないわよ?」
「──ッ!」
「……聞きたい?あの子の想い──」
「い、いえっ!ぼ、僕が淺ましかっただけなので……!!ご、ごめんなさい……すぐに作業に戻ります……ので……っ」
僕は胸の痛みに堪えながらも目の前にある魔術書の解読を試みる。しかし、魔術書の内容を読むよりも早くに、パチュリー様は言葉をかけて来た。
「涙、出てるわよ」
「ぁ……っ」
僕にはパチュリー様のその一言が、鈍器で殴られたかの如く痛く感じた。思わず、その痛みを堪えるように顔を手で覆っては眼を閉じる。
「恋煩いに効く特効薬は無いけど……」
そう言って、パチュリー様は再び椅子から立ちあがると、僕のもとまで歩み寄る。そして、今度は僕の顎先を指で持ち上げ、無理矢理に僕の頭を持ち上げてきた。
「ぁ、うッ」
「──ふふっ、本当に珍しい。貴方、そんな眼でアリスを見たのね」
パチュリー様はそう言って、僕と視線を合わせてくる。僕はそんな彼女の視線から逃げられるはずもなく、ただただ見つめ返すことしか出来なかった。
「恋は人を美しくする。でも、行き過ぎると身を壊す恐ろしい病よ──それに、貴方はこれからもっと残酷な現実を見ることになる」
「……ぇ?」
「貴方はその恋に身を滅ぼすから」
そう言って、パチュリー様は僕の顎から手を離し、視線を逸らす。そんな彼女の言わんとしていることが理解出来ず、ただ呆然としているとパチュリー様が言葉を続けた。
「あの子は貴方に特別な情は抱かない。彼女の心の席には……魔理沙っていう先客が居るから──今からでも、その恋慕の想いは捨てるべきよ」
「ま、魔理沙……?」
「えぇ、霧雨魔理沙。直接の面識がなくとも知ってるでしょう?」
彼女は数多の異変を博麗の巫女とともに解決してきた英雄として名を馳せる人間の魔法使いである。それはパチュリー様が仰るとおり、僕でも知っている。だけれど、よりによってその魔理沙という人をアリスさんが好いていたなんて……。
「──っ、忘れます……はい、パチュリー様が仰るとおりに、僕は、この恋慕を、捨て、ます……」
パチュリー様の一言は、まるで胸を張り割くかのように鋭く、僕の心を掻き毟っていく。僕はアリスさんと結ばれない。それを自覚した途端、僕の視界が歪んだように感じた。
「そう……ふふっ」
そう言って、パチュリー様は再度椅子に座りなおせば、再度机に置かれた本を手に取って開く。そんな彼女の次の言葉をもって、僕は紅魔館を後にした。
「また、何か困ったことがあればいらっしゃい。私は歓迎するわよ、貴方を」
「……はい、ありがとうございました」
パチュリー様のその言葉に、礼を述べて小さく頷く。しかし、今の僕にはその礼すらも億劫に感じていた。