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翌日、最高に機嫌悪いあたしは、今日こそ優菜を――と
思いながら無駄に長い校舎の廊下を歩いていた。
そして階段に差しかかった時、
「 麻可 」
誰だよ、この朝から――と思ったのも束の間、振り向いた先に
いたのは城倉陽翔だった。つまり、あたしの彼氏さん。
「 陽翔! 」
「 なーんだよ、その顔。ぶっさいくだぞ 」
「 だってさ…聞いてよ 」
梨帆にもなつにも彩弓にも、なかなか素のあたしは出せない。
いつの間にか、誰も信用できなくなっていた。
友達と言う存在を認めるのも嫌だった。
そんなあたしを救ったのは、陽翔だった。
陽翔にだけはなぜか素直になれてるような気がする。
あたしはクラスが違う陽翔と久々に2人きりで話せることが
嬉しくて仕方がなかった。
だからつい、優菜のこともべらべらしゃべった。
「 うーん…あいつも意味わかんねぇからなぁ… 」
「 尾嶋って餓鬼の頃からああいう人なの? 」
「 昔はもうちょいいい奴だったかな 」
「 すっごい嫌なんだよね、あのひと。あたしを馬鹿にしてんのかな 」
「 そりゃねぇだろ(笑) お前を馬鹿にする奴いんの? 」
「 いないかもね 」
階段付近で話すあたし達を他学年の奴らが邪魔そうにしながら
するすると通り過ぎてゆく。
でも今日はムカつかない。陽翔ってすごいなぁ。
暫く話したあと、陽翔は携帯を開いて「 時間だね 」と呟いた。
つまり、あたしと陽翔の別れを意味する。
ちょっと切なくなりながらも、「 そだね 」と答えて
あたしたちは別れた。
とたんに、尾嶋優菜が思い出されていらついてきた。
教室にはもうほとんどの生徒が着席してた。
席までの通路を歩いてく途中で、制服の裾を引っ張られた。
振り向くといたのは、なつだ。
『 あとで優菜の事で話あるから 』
なつはそう小声で言うと、あたしに「 座りな 」という
合図をした。あたしは軽くうなずいて席に着いた。
優菜の事で話―――。
昨日のことかな? よくわかんないけど。
いずれにしろ、優菜を待ってるのは「 虐め 」。
それからは逃れられないんだからね?―――。
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