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その日、優菜は授業に顔を出さなかった。
まぁ、当然かもしれないんだけどさ。
散々泣き喚いた癖に、最終的には睨んできたからムカついて、
ちょうど脇腹あたりを思いっきり蹴ってやった。
流石にそれには何も反抗してこなかった。相当応えたらしい。
「 ほんっと、優菜ムカつくよね。麻可に刃向うとか自滅行為じゃん 」
「 まぁ、そんなこともわからないような馬鹿だから 」
「 なっるほどねー、もう存在価値無くない? 」
「 無い無い 」
お昼休みの教室に響くのはあたし達の笑い声だけ。
皆体育館とか図書室とか行ってんだろうけど、
教室に残ってる数人の女子はあたし達をチラチラ見ては何か話してる。
それをあたしは不快に思った。
言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに――。
裏でゴチャゴチャ言う奴らがあたしは大嫌いだ。
そんなあたしの心理を察したかのように、なつが
「 何だあいつら 」と、数名の女子を横目ににらみながら言った。
喧嘩っ早い梨帆と彩弓が、そいつらに近付いて行った。
「 んだよ、おめェら。文句あんならはっきり言えよ 」
「 …! いや、違うよ、鎌田さん達の事じゃないよ! 」
「 だってあたし達の方見て何か言ってたよね? ねぇ、彩弓? 」
「 どう見たってあれはあたしらあてでしょ(笑) 」
「 ほ、本当に違うから! たっただ、優菜ちゃんいないなと思って…」
いらっとした。
あたしの前で優菜への同情を口にしたその女子にムカついた。
梨帆と彩弓は笑って「 はぁ? 」とか言ってるけど、
あたしには「 はぁ? 」では済まされなかった。
「 ちょい、お前さ 」
あたしはそいつの名前がわからなかったから、お前呼ばわり。
大して可愛くもなんともない普通の女子だった。
「 あたしの前で優菜に同情すんのやめてくんね? …虐められたくなかったら 」
いつの間にかクラスから恐れられる存在になってたあたし。
そいつは「 ごめんなさい!! 」と、頭を下げて謝り続けていた。
何、この人…――。
あたしはそれ以上何も云わずに、さっきいた場所に戻った。
梨帆と彩弓も何も言わずに自然とついてきた。
「 ――やっぱり、あれ的確だね―― 」
あたしが戻る途中で、その女子と一緒にいた別の奴が言った。
聞こえないように小声で言ったんだろうけど、聞こえていた。
でも、聞こえないふりをして、なつが食べていたお菓子を食べた。
その言われようには、慣れてしまっていたから――。
「 山瀬さんって、『 crazy doll 』がぴったりだね――― 」
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