大人オリジナル小説
- 不登校の理由
- 日時: 2014/01/18 02:17
- 名前: 原野 玖絽子
原野 玖絽子と申します
小説初心者です
皆さん、アドバイスとかくださると嬉しいです
どうかよろしくお願いします
- Re: 不登校の理由 ( No.3 )
- 日時: 2014/01/18 21:57
- 名前: 原野 玖絽子
私立聖華女学院中等部において、緋月かんざしは有名人であった。入部三ヶ月目の陸上部で、上級生を差し置きエースの座に登りつめたスポーツ少女。学年首席で、さらに美少女ともなれば、本人の否応関係なく噂になるというものだろう。
彼女は入学当初、まずその美しさにおいて注目された。
大きな猫目に雪のような白い肌、りんごのように赤い唇。烏の濡れ羽色の艶やかな黒髪、触れれば壊れそうな華奢な体……。私も一度彼女を見たことがある。そのときの印象は、『まるで制服を着た、目の大きな日本人形』だった。
次に彼女が話題になったのは、中間テストの順位結果が張り出されたときだった。
500点満点。
その完璧な数字に、学年中がどよめいた。唯一平静でいたのは、2点差の498点を取った、葉山つばめだけだった。葉山は、
「あーあ、一問間違えちゃった。」
てへ、とでも言うように、ぺろりと舌を出していた。
緋月かんざしが最後に噂になったのは、夏休み明けの始業式の朝のことだった。
夏休み中、緋月は陸上の全国大会で準優勝し、始業式ではその表彰式が行われることになっていた。
しかしその始業式に、緋月が姿を現すことはなかった。
その朝、彼女は校舎の階段で足を踏み外し、救急車で病院に運ばれていた。緋月が階段を転げ落ちていくところを見た者は、誰一人いない。階段の下でうずくまっていたのを、先生の一人が発見したのだ。
入院した彼女は、そのまま学校に来なくなった。少しも笑わなくなり、いつの間にか陸上部を辞めてしまったそうだ。
そんな緋月に対する周囲の対応は、初めのころはとても暖かいものだった。同情し、優しい言葉をかけた。寄せ書きを書いたり、千羽鶴を作ったりと、応援ムードだったのだ。けれど半年もたつと、彼女たちは人を励ますことが面倒になり、緋月を忘れていった。教師たちも、最初は緋月に対して哀れみの目を向けていたが、生徒たち同様忘れていき、たまに思い出すと、「不登校の緋月さん」と呼ぶようになっていた。
そうしてスターから不登校児に身を落としていった緋月かんざし。
「彼女を学校に引き戻して欲しいの。」
それが、学級委員長になった私の最初の仕事だった。