大人オリジナル小説
- 旅路の果てに何を見る
- 日時: 2018/03/10 14:14
- 名前: 空白魚
初めまして!空白魚(くうはくざかな)と言います!
今作品[たびはて]に興味を持って下さりありがとうございます!
今作品には言わずもがなBL要素が含まれ、グロ要素も含まれます。如何せん私にまともな文才がないものですから読みづらかったり、誤字脱字等の初歩的な間違いがあるかもしれません。申し訳ありません。
文字化けが起こっている場合は削除いたしますのでご了承ください。
だらだらと亀更新ですが、少しでも暇潰しや楽しんでいただける内容になれば良いなと思っております(笑)
エログロ、非社会的表現が多いですので、大変人を選ぶ作品です。
無理だと思ったら閲覧はお控えください(´・ω・`)
私から出せる注意事項はこれくらいです。
以上を踏まえた上で、本編をお楽しみください!
- Re: 旅路の果てに何を見る ( No.4 )
- 日時: 2018/03/12 08:06
- 名前: 空白魚
第五歩「不死と悪魔」
ぐらりと世界が大きく揺れる。レオンの姿に靄がかかり、背景はぐちゃぐちゃと混ざって原形を留めていなかった。
吐き気が襲ってくる。頭もガンガンと痛み、エリオスはひゅうひゅうと呼吸をする事で精一杯だった。今動けば恐らく吐いてしまう。それを知っていたからこそ動けなかったのだが、エリオスの細い首に、褐色の指が絡む。躊躇ないそれはいっそ清々しく。エリオスの呼吸を奪ってしまった。
かふ、と空気を吐き出して、息を吸えない事に涙が垂れる。どうしようもなく、苦しかった。
「お、とぅ…さま…くる、し…っ」
自分の声が出ているのかも判別が出来ない。ただ世界はぐるぐると回り、気持ち悪さと体内を這い回る痛みが脳を占める。褐色の腕に、エリオスの白い腕が絡みついた。力のない弱弱しいものだったが、離してくれと訴える様に。
それでも離さずにいれば、やがてエリオスの口から唾液が垂れた。腕も、最早添えているだけ。そこで、唐突にレオンは腕を放した。空気が喉になだれ込んでくる。欲していたものとはいえ、それは大きな苦痛を伴って。
ベッド脇にある黒い袋に手を伸ばして、エリオスは吐いた。二百年近く何も食べていない胃から出されるのは言わずもがな胃液位しかなく。痛みだけが体を電流の様に駆け巡り、エリオスの両目からは美しい涙が惜しげもなく溢れるばかりだった。
部屋を満たすのは、エリオスの泣き声と、そして、レオンの執着のみで。
荒い息の中もう何も口からは出なくなり、それでも薬のせいか気持ち悪さと痛みは襲ってくる。何度経験しただろう。何度も、何度も。それでも慣れないのは、きっと、きっと。
きっと、自分の体が忘れてしまうから。レオンが残そうとしている傷すら残さない白い肌が、ただ恨めしい。
エリオスが袋を何度も何度も失敗しながら、力が入らず震える指先で縛るのを眺めて、そして、縛り終わったその瞬間。きらりと牙を覗かせて、その首筋に食い付いた。牙を突き立てて、溢れる血を一滴も逃すまいと口内に招き入れる。声もなく目を見開いてはくはくと口を開閉していたエリオスは、やがて力なくその場にくたりと倒れた。後ろからレオンがのしかかっている状態では、まるで営みの最中の様に見える事に、果たしてエリオスは気付いているのか。
「…ぁ、あ、…ぅ、さま…あっ、…んっ…」
エリオスの蕩けた声がレオンの耳を大きく刺激する。鼓膜を揺らし、まるで麻薬の様に。
「…エリオス……お前は俺のものだ…そうだろう…?誰にも、やるものか…ああ、俺の、大事な天使…」
ぺろりと肌を舐めて、甘い味に舌までイかれたとレオンの口元に微笑が浮かぶ。
良いものだ。俺はどうせ、エリオスに堕ちてしまっている。そう、笑った。
エリオスの視界が、痛みが、少しずつ引いていく。この瞬間は、エリオスにとってとてつもない快感だった。ビクビクと体が跳ねる。あられもない声が喉を吹き抜けていくが、エリオスは構わなかった。
早くこの痛みから、苦しみから、開放して、お父様。気持ちいい事、いっぱいして。
頭が緩んで、最早それが言葉になっているのか、頭の中でだけ溢れた言葉なのかわからなかったが、レオンの、熱い息が首筋に触れるのが、最高に心地よかった。気持ちいい事。それが待っていると思うと、体が火照って仕方なかった。
レオンがエリオスに注いだのは、世界で一人しかいない悪魔と吸血鬼のハーフであるエリオスの、悪魔の方の血を濃くするもので、エリオスの体には無理を強いる事になる。じゃあ何故そんなものを打ったのだという話だが、エリオスの本当の父、ルベンは淫魔であり、淫魔の血は極上であった。エリオスの体にもその極上の血が流れているわけだが、吸血鬼にとって同じ吸血鬼の血と言うのは一種の麻薬にもなりうる危険物であって、廃人になる気はレオンにはなかった為、こうして吸血鬼の血を薄くしていた。
その代わりにエリオスは血が荒れる痛みに悶えるが、その血を吸ってやることで、痛みは軟化されていく。
吸血鬼に血を吸われるという行為には、時折、快感も混じるものだから、エリオスはその部分を大きくとっているのだろう。吸血を、気持ちいい事と捉えるようになっていた。後は、恐らく、本当に気持ちいい事も、望んでいるのだろう。
「エリオス…足、開け」
レオンの低い声が、エリオスの頭をくらくらと木霊する。
そこには[気持ちいい]という感情はあっても、愛は無かった。背徳も、感じない。
エリオスは、愛を知らなかったのだ。
こくこくと頷いて、エリオスは足を開く。レオンも、ネクタイを緩めて、初めて、本当に優しく笑った。
「愛してるよ、エリオス」
ああ、頭がくらくらする。エリオスは、ただ、嬉しい、と笑うしかなかった。