官能小説(オリジナル18禁小説)

悪い飼い主、無知な猫(NLR18)
日時: 2022/02/06 01:44
名前: 白楼雪


悪い飼い主、無知な猫というタイトルの官能小説を淡々と亀更新で書いていきます。
内容は売れ残りだった猫の獣人の女性と、何と無くそれを飼う事にした家事に無頓着な男性の話です。
所謂「なんか可愛い獣耳女が俺を求めていたから飼う事にしたぜ!」的なある意味夢のあるテーマです。

一応R18なシーンのある物ですが、主の思考書き方から恋愛要素が濃い事だけ了承して貰えたら助かります。

では、始めます。

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Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.26 )
日時: 2022/09/17 04:34
名前: 白楼雪

可愛らしい女性が涙を浮かべ見詰めてきたら、日々の日常ならば男性として戸惑い言葉に耳を傾けるものだろう。
だが情事の時に見る女性の涙は、時として欲を煽るものだ。
柔らかで繊細な身体に甘く喘ぐ声。艶混じりの吐息に、熱に潤んだ瞳。しなやかで綺麗なのに、それと合わせるような淫らな雰囲気と白蜜が欲を煽ってくるのだから冷静になれるわけもない。
「大丈夫だから、慣れたら良くなる」
その為俺は不安と苦痛で拒む琥珀の訴えを遮り、強引にモノをゆっくりと埋め、薄膜を突き破っていく。
「やだ…っ、いた…い、あきらのばか」
瞳の涙を散らした彼女は威嚇するように猫耳を立て、亮の両肩を押し拒む。
けれどここで半端に止めてしまえば、琥珀にとって亮への不信感と情事への嫌悪だけが残るだろう。
俺自身への不信感は亮の自業自得として受け入れられる事だが、情事について嫌悪だけが残るのはこの先の未来を思うとどんな形にせよ良いとは思えない。
「ごめんな。でももう痛い事はないから、ゆっくり力抜いてくれ」
言い訳じみた思考を浮かべながら琥珀の蕩けるようななかに、俺は自身のモノを奥まで埋めると動きを止め、彼女の髪を優しく撫でる。
威嚇するように逆立った毛並みの尻尾と猫耳。困惑に瞳を潤ませ睨む猫の獣人。
その憤りや不信感は、通常の獣ならば爪を立て引っ掻かれても可笑しくはないだろう。
けれど、彼女は獣人であり一人の綺麗な女性である。
言葉も通わせられる、交流の得やすい淑女だ。
「ふぅ…はぁ…あきらの、ばか。いたいのきらい」
爪で引っ掻かれる事は無く、代わりに僅かな怒りの込めた呟きを溢された。
数度の深呼吸を重ねる事で苦痛も僅かに薄れたのだろう。彼女の身体からは余分な力が抜け、強張りも解けた気がした。
「ごめん、でもあとは気持ち良くなるだけだ。だから許してくれないか?」
苦笑混じりに乞う俺の言葉に、琥珀の耳が小さく揺れる。
「あきらだから、ゆるしてあげる」
俺よりも幼い雰囲気のある彼女は、年上の女性が説教を終えた後に溜め息を吐くような表情で許しの言葉を告げた。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.27 )
日時: 2022/09/24 04:23
名前: 白楼雪

あのペットショップのケージに座り、亮を見上げていた幼い瞳の彼女が、今は欲を覚えた艶のある瞳で見詰めてくる。
獣人について興味が薄かった昨日までは、彼等彼女等を愛玩にする事など理解もなかったというのに。
(いや、俺は未だに愛玩という理解はないな)
俺に組み敷かれ抱かれる琥珀の甘い喘ぎ声に煽られるまま、亮はゆっくりと律動を重ねていく。
僅かに響く淫らな水音。薄れる苦痛と、律動を重ねるたびに色濃くなる欲を顕す甘美な彼女の鳴き声。
熱に潤んだ瞳を細め見詰める琥珀の表情に、俺は触れて抱いて欲を抑えられずにいるのだろう。
琥珀が獣人だから情事に駈られるのではない。琥珀と名付けた一人の女性だから抱き欲を懐くのだ。
(出会ったその日にやって惚れるとか。生き急ぐにも程があるな)
内心の呆れは、亮の表情に薄い苦笑を滲ませた。
「ん…あきら、なんでわらうの?」
どうやら亮自身の口元にまで薄い笑みが浮かんでいたらしい。
ばかににされたとでも思ったのだろう。甘美に喘ぐ間に、彼女は不機嫌を猫耳と尻尾に顕して不満そうに問う。
「琥珀があまりにも可愛いから、幸せなだけだ」
どう返せば良いか一瞬悩んだ俺は、端的にだが純粋な答えを囁く。
その言葉に訝しげな様子の彼女はそれ以上追求する余裕も無いのか、蜜に蕩けたなかを締め付け小さく身を震わせた。
「あっ…あきら、からだ…ふわふわして、あつくて…なんかきちゃう」
甘く切ない喘ぎ声で不安を口にする琥珀は、果ての意味も知らないのだろう。
甘くざわつく濃厚な感覚に堪えようと身を僅かに震わせ、亮のモノをなかで締め付けてやまない。
「大丈夫だ、琥珀。俺も、同じ感覚だから。一緒にイこうか」
熱く蕩けそうで、それでいて程好く吸い付いてくる彼女のなか。
奥を突く度に小刻みに震え吸い付かれる感覚は、欲を駆り立て俺も果てを感じざる得ない。
「あきら…っ、やっ…だめ…っ。あぁ…っ」
意味も分からず、けれど堪えるにも限界だったのだろう。
琥珀はか細い鳴き声を上げて果ててしまった。
「くっ…ぅ」
そんな彼女に数秒遅れて、俺も彼女の奥に果てのまま白濁を注いだ。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.28 )
日時: 2022/09/30 03:17
名前: 白楼雪

果てた余韻と艶のある乱れた呼吸を整える彼女のなかから、亮は自身のモノを抜くと、寄り添うように琥珀の隣に寝転がる。
艶のある瞳は未だ快楽の色が残り、柔らかく豊かな胸は呼吸を重ねる度に起伏を見せていた。
それも数分もすれば落ち着き、彼女は微睡んだ瞳で亮を見詰め返す。
視線が重なり十数秒。こんな時上手い返しの一つでも出来れば良いのだろうが、それを容易く行える程の器量は俺にない。
なので仕方なく沈黙のまま彼女の言葉を待っていると、琥珀は溜め息を吐くように発する。
「あきら、おなかへった」
初めての情事において、彼女の最初の一言は空腹を訴える言葉だった。
憤りでも嫌悪でもなく、喜びでも幸福でもない。生物の三大欲求の一つを告げた言葉。
いや、確かに色欲を充たす行為は、エネルギーを使う事である。それを思えば、その一声も当然のものだろう。
「俺も、腹へった気がするな。出前でも取るか」
彼女の言葉に気が抜けたせいか、亮も空腹を口にした。
その日に出会った女性を買い、家に連れ込む。混浴を重ねて、何も知らない女性に淫らな奉仕をさせる。その上ベットに連れ込み初めてのうを奪い、事を終えた後には出前の注文という。
端的な言葉にしてみれば、亮自身の行いは犯罪の匂いがしそうなものである。
「あきら?おなかへった」
しかしベットに寝転がり擦り寄る彼女は、空腹の雛鳥の様に催促を重ねており、その姿に俺は安堵の吐息を溢しスマホにて出前を取る。
だが今まで物をあまり知らずにいた彼女には、亮の行動の意味が分からない。
その為琥珀は催促を繰り返す様に黒猫の尾をタシタシとベットに叩き、表情に不機嫌を滲ませていく。
「あぁ、出前って言うのはな。飲食店にこれで料理を注文して、ここに届けて貰えるんだ。たぶん三十分位で来るから、もう少し待て」
出前が届く三十分先まで、亮が細々と説明を重ねたのは言うまでもなかった。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.29 )
日時: 2022/10/05 05:22
名前: 白楼雪


 三滴目 猫の目


琥珀と名付けた猫の獣人を飼い始めて既に一ヶ月。
彼女を家に迎え入れてから一週間弱で、先ずは彼女を獣人専門の病院へ連れていった。
その際俺は、獣人専門の病院というものを改めて知ったのだが、基本的な造りは人間の個人病院とあまり変わらない印象を懐いたものだ。
それもその筈、彼女等彼等は確かに獣の遺伝子も秘めて生きているのだが、半分は人間の遺伝子を持つ生き物なのだ。
一般的な犬猫等とは違い、人間の言葉で意思の疎通が取れる。体格も人間のそれとあまり違いはない。
知識を与えればそれを糧に、人間と変わらない暮らしも可能なのだ。
その事を俺は、獣人専門の病院という環境と、医師や看護師達。そして他の獣人達の姿を見て内心安堵の頷きをしたものだった。
それと病院帰りには、最初に琥珀を連れていった女性物の服屋と、大きめの書店に立ち寄った。
あの日女性服の知識を何も持たない俺と琥珀に親切に対応してくれた女性店員は、亮達の姿を見掛けると嬉しそうにまた色々な衣服を勧めてくれたものだ。
とはいえ、琥珀の方は相変わらずの着せ替え人形状態となり、訳もわからず振り回されている様子だったのだが。
服屋の帰りに立ち寄った大きめの書店では、琥珀は少し興奮したように書店内を巡っていた。
それでもやはり一番気になったのは幼子向けの絵本のようだったが、それ等の本と合わせて、俺は彼女の勉強用に幼児向けの参考書や問題集と、自炊の為の料理本等も購入した。
それが今から四週間前の出来事である。
「琥珀、もうすぐ出来るから、テーブルの上片付けてくれ」
思考の中で回想していた亮は、現在夕飯作りの最中である。
今までは自炊など面倒なだけで、男一人の食事など簡単な物で良いと思っていた。
だが今は琥珀という可愛らしい女性との二人暮らしである。彼女との暮らしを思えば自身の健康もそうだが、何よりも琥珀の健康を大切にしなくてはならない。その為、琥珀には学問と日常生活に必要な知識を。亮自身は料理を勉強すると約束したのだ。
「亮、テーブル片付けた」
俺の言葉に参考書を閉じてテーブルを片付けてくれた琥珀の言葉は、勉強の甲斐もあって片言な雰囲気がかなり薄れて聴こえる。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.30 )
日時: 2022/10/14 10:57
名前: 白楼雪

「ありがとうな。これも運んで貰えるか。俺はこっちを運ぶから」
片付けを終えた琥珀がキッチンに来たので、炊きたての白米を盛り付けたご飯茶碗二つと、ほうれん草のお浸しの小鉢を二つ。それに紺と薄紅の箸を各々一膳ずつ乗せた丸盆を彼女に任せる。
丸盆に乗せられた物は何れもひっくり返した時などに危険の少ない物としているが、それでも未だ料理を運ぶ事に不慣れな琥珀の足取りは、どこか緊張感があり真剣な表情だった。
とはいえ、俺自身もそれを急かす真似はせず、焼きサンマと大根おろしを乗せた角皿を二枚と豆腐と刻みネギの味噌汁を二杯。醤油差しを乗せた盆を右手に。水の入った二つのグラスを乗せた盆を左手に持ち、彼女に続く足取りでリビングのテーブルに近寄る。
テーブルに料理等を乗せるとお盆を隅に纏めて置き、彼女と対面して席に着く。
「いただきます」
亮が席に着き紺色の箸へと手を伸ばすと、琥珀も薄紅の箸を手に可愛らしく手を合わせ食前の言葉を告げた。
たかが一ヶ月、されど一ヶ月。
ペットショップで売られていた頃は、本当に幼子のように何も知らなかったらしい琥珀は、今では食事も風呂の仕方も確りと覚えていた。
また言葉の読み書きも始めこそ平仮名しか読めなかったというのに、今では人間で言う小学一年生程の読み書きを覚えたのだ。
獣人の心身の成長と言うものは亮自身まだまだ分からない部分も多いが、それでも贔屓目とはいえ彼女の成長は優秀と言えるだろうと俺は思っていた。
けれどこの一ヶ月で成長したのは、琥珀だけではなかった。
それを表すように目の前のテーブルに広がる和食料理は、その何れもが亮の手料理である。
まだ琥珀と暮らす前の亮は、食事など冷凍食品やレトルト。外食やインスタントで構わないと軽視していた。
だがペットという形とはいえ、やはり一人の女性を保護下に置き共に寝食をする事を思えば、やはり食事等も考えなくてはならないと思い立ったのだ。
亮自身の食事はどうでも良い。しかし琥珀には健康に育ってほしい。そう考えた結論が自炊である。
栄養バランスを考え、彩りも考える。好き嫌いを減らしてやる為に、食材も気にかけなければならない。
そう試行錯誤した結果、亮自身の料理の腕も、一ヶ月程でかなり上達したものだ。
「うん、今日も良い出来だな」
豆腐の味噌汁を一口飲み俺が一言感想を告げると、琥珀がじっと亮を見つめてきた。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.31 )
日時: 2022/11/05 00:00
名前: 白楼雪

黒猫の耳をピンと立て、物言いたげに見つめ続ける琥珀の様子に、俺は無意識な素振りで淡々と待つ。
「亮、私もお料理したい」
数秒の間を置いて吐息を一つ溢した彼女は、強い意思の宿る瞳で亮に告げる。
料理をしたい。そう告げる琥珀の言動は、成体に近い女性相手に思い浮かべるには失礼と知りながらも、幼子が親の行う事を真似したがる様を想わせた。
元々その綺麗で豊かに育った容姿と比べ、琥珀の内面は幼少期の子供と変わらないものなのだろう。ならば、文字を覚え、日常生活の基礎を学び始めた彼女が次の成長として亮の行いを真似しようとするのは常の事なのかもしれない。
「料理か。料理なあ」
食事を進めながらも亮の返事を待つ琥珀に、俺は言葉を濁しながら悩む。
琥珀の内面を幼子と捉えるならば、今の亮の思考は父兄の思考と呼べるだろう。
現に彼女の料理への興味に、亮はやれ包丁やピーラー等は怪我をしかねないだの、火を使う事は勿論、電子レンジやオーブンさえも火傷の恐れを考えてしまうのだから。
包丁や刃物を使わず、加熱調理の必要性が一切ない料理。それか菓子の一つ等を考えながら、亮は瞳を細め唸る。
そんな亮の様子に不安を覚えたのだろうか。
「亮、料理だめ?」
猫耳を悲しげに伏せ、琥珀が弱々しい声で更に問う。
叱られた猫や幼子を想わせる彼女の表情に、亮の選択肢は一つしか残らずにいた。
「いいや、琥珀の手料理が楽しみだな。何を作るか一緒に考えよう」
先程迄の悩みを一蹴する言葉を亮は微笑み答えてしまう。
遠い昔から伝えられている言葉があるのだ。
男と言うものは、女の涙に弱いという言葉が。
不安そうに猫耳を伏せ、潤んだ瞳で問われた言葉を、何故断れるというのか。
琥珀の場合は素なのだろうけど、元来男性というものは悔しいながら、たとえその涙が嘘であろうとも女性に泣かれる事には弱いのだ。
況してやその涙が普段滅多に見る事のないものであれば、どれほど表面上取り繕ったとしても、男性の内心は戸惑いと困惑に満たされてしまうのだから実に困り者である。
「俺としては、やっぱり最初はあまり道具を使わずに作れるものが良いと思うんだ。サラダとか冷菓とかさ」
料理の許可を出した以上は、せめて危険性を最低限排除したものを提案したいものだ。
その為、亮の口からは饒舌に刃物や加熱調理を避けれる、サラダやアイスクリームの類いの案が綴られていく。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.32 )
日時: 2022/11/16 01:57
名前: 白楼雪

「冷菓?」
亮の上げた料理の一つとして、琥珀は不思議そうに言葉を発する。
「冷菓っていうのは、冷たくて甘い食べ物だ」
彼女に冷菓の類いを与えた事がない事に気づいた俺は、スマホのタブレットを起動してアイスクリーム類の画像を適当に見せていく。
バニラにショコラ、抹茶にフルーツ系と、映された画像を琥珀は興味深そうに見詰めていた。
「作ってみるか?」
夕食よりも画像に夢中な彼女に、先に夕飯を食べ終えた亮がボソリと問い掛ける。
難しい冷菓は材料も多く扱わないといけないが、シンプルなバニラや抹茶アイスならば手間も少ないだろう。
多少足りない物があったとしても、近くのコンビニで何とかなりそうだ。
そう考えていた亮の言葉に、琥珀は猫耳をピンと立てて頷く。
「夕飯食べてからだぞ。材料も確認しないとな」
食後の温かな煎茶を啜りながら告げると、琥珀も急ぎ夕飯を食べ始めた。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.33 )
日時: 2022/12/04 10:31
名前: 白楼雪

 ※※※

夕飯を終えて洗い物を済ませた後、亮と琥珀は冷蔵庫を確認した。
その結果、バニラアイスの材料として必要な生クリームやバニラエッセンス等が無い事に気づく。
スマホを片手に琥珀と顔を見合せると、彼女の表情には不安の色が滲んで見えた。
亮としては、材料が足りないのならば明日以降に予定を変えても良いと思っていたのだが、期待から不安へと表情を移していく彼女を見てしまうと、選択肢は一つしかなかった。
『これくらいなら、近所で買える。行ってくるから待ってろ』
琥珀の髪を一撫でした亮は、彼女の不安を払拭する為に急ぎ近所のスーパーマーケットにて材料を買い揃え、部屋に帰宅したのが今から三十分程前である。
「卵と砂糖。バニラエッセンスに、生クリーム。これで全部だな」
台所のテーブルに材料を並べ、琥珀と亮はスマホを片手に確認していく。
本来ならばステンレスの容器や電動泡立て器なども欲しいところだが、そこはプラスチックの保存容器と普通の泡立て器で補うとしよう。
「亮、これが冷菓?になるの?」
手洗いを済ませた琥珀が、隣で材料を訝しげに眺める。
彼女が材料を見つめる表情に、亮は微笑み頷いた。
「なるさ。まずは卵を割り入れて、混ぜながら砂糖か」
スマホをテーブルに置くと、亮は別の容器に卵を割り入れ、泡立て器を使い混ぜていく。
「混ぜるのしたい」
すると隣で見ていた琥珀が手伝いをしようと声を発したので、泡立て器を彼女に渡して、亮自身は容器に砂糖やバニラエッセンスを注ぐという共同作業になった。
懸命に混ぜ続ける琥珀の真剣な様子を見守る事数分。
始めは黄色だった卵液は、薄い黄色に変わりとろみがついていく。
「琥珀、これはもう良いと思うから、次は生クリームだ」
スマホの調理過程写真を見比べ告げると、琥珀も頷き泡立て器を止める。
「生クリームは、結構頑張らないとだな。俺が混ぜるから交代な」
琥珀から泡立て器を受け取るとそれを一度洗い、生クリームを入れた別の容器にて、俺自身が今度は生クリームを泡立てていく。
成る程。確かにこれは、電動泡立て器が欲しいところである。
さらりとした液体の生クリームは、まるで固形になる気がしない。
それでも懸命に泡立て続ける事十数分。二の腕に疲労が溜まり始めた頃、ようやく生クリームは柔らかなホイップクリームへと変わっていった。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.34 )
日時: 2022/12/24 02:31
名前: 白楼雪

「あともう少しだな。これをさっきの卵液に少し混ぜるのか。それで混ざったら、両方を合わせると」
スマホの画面を見つめ亮が確認していると、隣で琥珀が卵液の入った容器を両手に抱え持っていた。
「私やりたい」
そう告げる琥珀に泡立て機を手渡すと、俺は卵液の入った容器にホイップクリームを少し加えてやり、混ぜるように促していく。
促された琥珀の真剣な横顔は、やはり料理を覚え始めたばかりの幼児を想わせるものだった。
それから数分。全てのホイップクリームを取り込んだムース状の卵液は、大きめの保存容器に流し入れられていた。
「冷凍庫で三十分か。少し時間があるから、琥珀は休んでて良いぞ」
冷凍庫に保存容器を収めると、俺はシンクの洗い物を前にして琥珀に声を掛ける。
だが、琥珀は何故か俺の隣に寄り添い立たずむ。
彼女の仕草の意図が分からずに言葉に悩んでいると、琥珀が俺の顔を見上げた。
「洗い物する」
意気揚々とした表情で告げる琥珀の声は、強い意志が滲んで聴こえた。
菓子作りで気が高ぶっているのだろうか。今夜の彼女は随分と積極的に見えるものだ。
とはいえ、何事も気負いすぎては空回るものだ。
「ありがとうな。でも、冷菓作りはまだ終わりじゃない。後で二度混ぜて、最後に盛り付けもしないといけないんだ。その大事な仕事は琥珀に任せたいから、今は居間で休憩していてくれ」
琥珀の髪を撫で言い聞かせると、彼女は素直に頷き居間のソファーに座りに行った。
実際の事を言えば、冷やした冷菓を混ぜる工程も盛り付けもそれほど重要な事ではない。
冷凍庫に入っている冷菓を混ぜ忘れたところで食感が硬くなる程度の話で、盛り付けもやり方等何とでもなるのだ。
それでも、これはきっと琥珀にとって大切な仕事となるだろう。
何せ初めての食べ物作りなのだ。可能な限り達成感を持たせてやりたいし、洗い物等の未だ不慣れな事で何か失敗をして気落ちさせる事は避けたい。
その為敢えて俺は、琥珀に居間で休ませる事にしたのだ。

Re: 悪い飼い主、無知な猫(NLR18) ( No.35 )
日時: 2023/01/13 23:21
名前: 白楼雪

食器を洗いながら、時折居間へと視線を僅かに向ける。
居間のソファーに座る黒猫は、絵本を両手に開き黙々と読んでいた。
けれど彼女の長くしなやかな尾がその機嫌の良さを示している事に気づくと、亮の口元にも小さな笑みが浮かんだ。

 ※※※

洗い物を終え、冷菓を一度混ぜ終えてから三十分程過ぎた頃。
琥珀と亮は再び台所の机で、準備に取り掛かっていた。
「亮、冷菓すくう道具ないよ?」
食器棚から白磁の小さな深皿を二つ取り出していた俺に、琥珀がスマホを片手に持ち問い掛けてくる。
彼女の持つスマホの画面に写っているのは、アイスクリームをすくう専用器具が撮られていた。
確かに、亮達の家にそんな道具は無い。
「そうだな。これで何とかしてみるか」
だが、専用の器具など無くとも、人には知恵があるものだ。
亮の片手には、カレー等を食べる際に使う大きなスプーンが二本握られていた。
「確か、これでも綺麗に盛れるって聞いた事があるんだ」
そう告げた後、俺は琥珀からスマホを受け取り、スプーンを使用してすくう方法を検索してみる。
「これだな。おお、結構良いんじゃないか?」
スプーンを使用した方法の画像に写る盛り付けは、バニラと抹茶のアイスクリームを各々細長い玉子型に整えられ、バニラの上に抹茶アイスが重なった綺麗なものだった。
隣で画像を見た琥珀も、満足そうに数回小さく頷く。

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