…………… ねぇ、知ってるよ。
アンタが叶を殺そうとしたんでしょ?
だって叶は、絶対に自殺なんて考える子じゃない。
物静かで冷静沈着。それが、私の自慢の叶だったんだから。
それを……それをね。
アンタが壊したのよ!!!!!!
私の、普通だった日常が全部、脆く壊れていったの。アンタのせいで、アンタのせいで!
「“私”を返して………」
力なく、うわ言の様に呟いた。
私は自分の声で目を覚ましてしまったようだ。しかし、目元が熱い。何故だろうか。
それとは売って変わって、頬は冷たかった。まるで、涙を流しているようだった。
涙………? 私が、涙なんて。
そう思って目元を軽く手で擦った。
「っ」
ズキンっと、頭に痛みが走った。まるで衝撃波のようなそれは、無防備な私の後頭部を狙った。
涙とか、もうどうでもいいや。
痛い。鈍い痛みだ。
叶はもっと、痛かったのかな……? 不意にそんな疑問が脳裏をよぎる。
「痛いよぉ………っ! 助けて、叶……っ」
大きく声を漏らした。目の前に叶が立っている。
顔はよく見えないけれど、私の大好きだった、あの時のままの諏訪ノ森 叶の姿だった。
私は助けを求める為に、右腕を前に突きだして、叶の腕を掴もうとしてみた。何度も、何度も。
しかし掴めるのは空気だけだった。
「か、のぉ…………? 」
ふと見えた叶の横顔。唇は震えていた。そして、笑っているような気がした。
叶はそのまま私の腕を掴んだ。捕まれた、という感触はなかったけど、確かに私の右腕は、叶の手の中にあった。
「忘れなイで。私を殺そうとシたのは、アなタなのよ」
叶は笑う。
虐めを受ける者を見て、
「ざまあみろ」 と。
叶は憎む。
笑う彼女の声を聞き、
「殺してやる」 と。
私は何の為に生かされたのですか?