大人オリジナル小説
- 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日
- 日時: 2012/04/06 00:03
- 名前: flesh
―プロローグ―
俺には友達がいない。
家族もいない。
だけど一人じゃない。
人はそれを『友達』と言う。
『仲間』とも言うそうだ。
どう見ればあれがそう見えるのか理解しがたいが
あれでも一応人なんだ。
中身が化け物でも形は人間なんだ。問題は中身だ。
なんだ。案外簡単な事じゃないか。
そんな悩む事でもない事を真剣に悩んでいた自分はちょっとおかしかったのかもしれない。
さぁ、今日も楽しく過ごそう不愉快な毎日を
- Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.8 )
- 日時: 2012/05/14 21:25
- 名前: flesh
『―♪―♪――♪ガッ…ガガッ――♪―♪』
今日も最悪な目覚めだ。いや、今日は特別最悪な目覚めかも。
異臭と激しい頭痛で体を起こした瞬間ひどく視界が歪む。
なんなんだ、この臭いは
辺りを見回そうと手を動かした時違和感を覚えた
ぐちゃと卵が潰れたような音
見てみると何か赤い液体がついている
俺は本能的にその液体を手から振り払う
気持ち悪い。なんだこれ。ケチャップ?
考え込んでいると、俺しかいないはずの部屋から誰かの呼吸音が聞こえた
隣の部屋までは壁がとても厚いので聞こえるという可能性はない
よく見るとベッドの下に誰かいる
頭をグイッと動かしてその音の正体を確認するとこの前俺に絵本を読んでくれと頼んできた女の子がぐったり横たわっていた
俺が読んだ覚えもない絵本を昨夜と同じように読んでくれと頼んだあの女の子が頭から血を出してぐったりしていた
俺はまず生きてるのか確認した呼吸音は一応聞こえているが瀕死状態に近い
ほぼ死体に近い生き物を見て意外と冷静な自分を気持ち悪いと思いながらとりあえず頭から流れ続けてる血を拭いた
そういえば俺の手も真っ赤っかだ。
俺がやったのだろうか、女の子の横には読んでと頼まれた絵本が乱暴に置かれている。その角には血がほんの少しついていた
俺なのか。俺なのだろうか。俺が殺した。俺は正常だったはずなのに。俺は奴らと同じになってしまったのだろうか。
「え…あ…っどうしたんだ?これ」
聞き慣れた声がドアの方から聞こえた。
「血…出てるじゃねぇか。何があったんだよ」
俺の部屋で会うのは初めてなはずなのに、前…というか最近会ったような気がする友人が棒立ちのまま女の子と俺を交互に見る。
「…」
その視線に耐えられず友人を視界から外し頭の血を拭き続けた
「…あのさ、医者に診せた方がよくねぇか?」
「…」
返事をしない俺に友人は少し間をおいて「俺が運ぶ」とだけ言い女の子を抱きかかえた
廊下に出ると相変わらず奇人が勢ぞろいで一日一日が過ぎるのを馬鹿みたいに待っている
自分の事で精いっぱいなのか誰も俺達には目もくれない
医務室まで会話を一切交わさず奇声が飛び交う廊下をひたすら歩いた
友人はきっと俺がやったのだと思ってるだろう
実際俺がやったのかもしれない、精神病院に入れられたって事はどこかに異常があるって事だ
俺が自分の意思なく人を殺してしまったのもうなずける
呼吸をするのが、足を規則的に動かすのが急に難しくなった。
『俺は正常だ』
違う、俺は正常なんかじゃない。異常者なんだ。異常者…だったんだ。
心の隅っこにあった『正常』の反対。『異常』
薄々思っていた。俺はやっぱり異常だったんじゃないかと。
友人はまだ黙ったままだ。