大人オリジナル小説
- 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日
- 日時: 2012/04/06 00:03
- 名前: flesh
―プロローグ―
俺には友達がいない。
家族もいない。
だけど一人じゃない。
人はそれを『友達』と言う。
『仲間』とも言うそうだ。
どう見ればあれがそう見えるのか理解しがたいが
あれでも一応人なんだ。
中身が化け物でも形は人間なんだ。問題は中身だ。
なんだ。案外簡単な事じゃないか。
そんな悩む事でもない事を真剣に悩んでいた自分はちょっとおかしかったのかもしれない。
さぁ、今日も楽しく過ごそう不愉快な毎日を
- Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.3 )
- 日時: 2012/06/22 19:53
- 名前: flesh
「あああああああああああぁぁあぁああああああぁっぁあっ!!!!!」
早朝、病棟全体に響き渡る様な大音量の悲鳴に目が覚めた。
またか この悲鳴を聞くのは今年で5回目だ
声の主はわかっている。俺は友人の元へ向かった
階段を上り、長い階段の突き当りに彼の部屋はあった
部屋に入ると案の定うがいでもしてるかの様なしゃがれた声で首を掻き毟っていた
「おい、やめろってまた血が出る事になるぞ―?」
昨日洗面所で会った時とはまるで違う形相に少し動揺しながらも止めに入る
「ヒュー…ヒュー…が…ガが…あ…ゴホッ…ヒューヒュー…」
不安定な呼吸が続く中何とか首を掻き毟る手を止めてくれた
「大丈夫か?立てるか?」
「…」
虚ろな目で小さく頷くとベッドに身を任せそのまま深い眠りに入ってしまった
俺はそれを見届けると音を立てずに部屋を出た
友人は年に1度は絶対に発狂し、さっきみたいに首を掻き毟る
何故そうゆう行動に駆られるかは知らないが、俺がいなかったらきっと首はズタズタになってただろう。
彼は常に自分が正常である事を主張していた。
俺が気まぐれであげた本を未だに大切に持っている、そして定期的に聞くのだ「幸せってなんだ?」と。
そんなの俺が知りたい。
自室のベッドに腰を下ろし、ボーっとしていると友人のある事に気が付いた
…最近発狂回数が多くないか?
毎年多くても2、3回だったのにどうしたんだろう。
彼は自分が発狂をしている事を知らない。
首を掻き毟った記憶もまるで無い
俺はいちいちその事を聞くのは何か悪い気がして1度も聞いたことがなかった。
明日にでも聞いてみようか。
「ねぇ」
「んぁ?」
ドアからおずおずと入ってきたのはここの患者であろう6歳ぐらいの女の子だった
手が異常な程震えていて、まぶたが世話しなく閉じたり開けたりを繰り返している。なんらかの症状だろう。
「あのお兄ちゃん病気なの?」
「あのお兄ちゃんってあの叫んでた人か。ここにいる奴は皆病気だから来てるんだよ」
「じゃあ私も?」
「それはわからないけど…」
「私知ってるんだ…」
「え?」
女の子は悪戯っぽい笑みを浮かべると静かな声でこう言った
「お兄ちゃんってね体は1つなのに心は2つあるんだよ。不思議だよね?」
「…は?」
「だってねだってね!この前ね!夜に食堂でウロウロしていたらお兄ちゃんが眠れないの?って言ってきて絵本読んでくれたの。それでね、次の日になったんだけど私もう一度絵本を読んでもらいたくなってお部屋に行ったの。そしたらね誰?って言われちゃった!そんなの読んだ覚えはないって!きっと心が2つあるんだよ!」
「それはただ覚えてないだけじゃ…」
「本当だよ!だってね、その日の夜にもう一度部屋に行ってみたらまた会ったね今度は何を読もうかって言ってくれたんだよ。
だから私聞いたの昼は覚えてないって言ったくせに夜になったら思い出すんだねって。そしたらお兄ちゃんにこって笑って言ったの。俺には心が2つあるんだって!」
興奮気味の女の子は震える手を更に震わせて言った
「でね、お兄ちゃんが言ったの。あ、夜の方のお兄ちゃんね。
1つの体に2つの心が入ってるのは生活しにくいから昼のもう一人の自分にはそろそろ消えてもらうって!」
「…ソウナンダーコワイネー」
あまりに理解できない話に思わず棒読みになる
多重人格って事なのか。今まで約10年以上一緒にいて初めて聞いた話。まだ真実なのか逸話なのかははっきりしてないが俺はとりあえずバクバクいってる心臓を落ち着かせる事にした